ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第45話「なつよ、東京には気をつけろ」【第8週】

あらすじ

東京での生活をスタートさせたなつ(広瀬すず)は、兄・咲太郎(岡田将生)を知るカスミ(戸田恵子)を訪ねてクラブ・メランコリーへとやってくる。カスミはなつを誘い、近所のおでん屋・風車ののれんをくぐった。カスミは、風車の女将(おかみ)・亜矢美(山口智子)に、なつが子供の頃に生き別れた兄を探しに、東京にやってきたことを熱心に語りだす。しかし、なつが咲太郎の名前を口にしたとたん、亜矢美が動揺し始めて…。

45話ネタバレ

クラブ・メランコリー

カスミ♬『可哀そうだよお月さん なんでこの世の幸せは ああ みんなそっぽを向くんだろ』

<なつは 東京・新宿にいました。>

カスミ「ありがとうございました。」

カスミ「ねえ もしかして あなたは…?」

なつ「お久しぶりです。」

雪之助「いや~ いかった! あなたの歌声はね すばらしいです!」

カスミ「どうも ありがとうございます。」

雪次郎「すいません お酒に酔ったみたいで…。」

カスミ「ああ… いいんですよ。 あなたは 確か 咲坊の…。」

なつ「はい。 奥原咲太郎の妹です。 兄が 今 どこにいるか知りませんか?」

カスミ「知らないわね。」

なつ「そうですか…。」

カスミ「ちょっと お酒につきあってくれる?」

なつ「えっ?」

おでん屋・風車

1階店舗

雪之助「寒くないですか? そんな恰好して。 ちゃんと 挨拶…。」

カスミ「あっ こんばんは。」

亜矢美「あら カスミねえさん いらっしゃい。」

カスミ「はい こっちよ! お客さん 連れてきたのよ。」

亜矢美「まあ うれしい お客様。 いらっしゃいませ アッハハ…。 いらっしゃい。」

なつ「おばんです。」

亜矢美「あっ… おばんです。 ハハハハ…。 どうぞ。」

<なつは 亜矢美さんとの出会いの意味を まだ 知りませんでした。>

雪次郎「父ちゃん… もうやめれって。 な。」

雪之助「心配すんな 雪次郎。 ここ どこよ? 新宿だべ お前…。」

雪次郎「もう分かったって…。」

亜矢美「北海道からじゃ 遠かったでしょう。」

なつ「はい。」

亜矢美「おでん 好きなの言って。」

カスミ「遠慮しなくていいのよ 私のおごりだからね。」

亜矢美「じゃあね。 おすすめの このばくだん 食べてよ。」

なつ「すいません。」

雪之助「あの~ 私 熱かんにして下さい。」

亜矢美「お~ はいはい。」

雪次郎「それは もう 出さなくていいですから!」

亜矢美「出しますわよ。 商売 商売!」

雪次郎「え~…。」

亜矢美「レミちゃんも 好きなの言って。」

レミ子「はい。 それじゃ… はんぺん 大根 ちくわぶ コンニャク 卵 ツミレ がんもどき!」

亜矢美「分かんないけど 全部入れときます。」

レミ子「あ~ お願いします。」

亜矢美「今日は ステージの帰り?」

カスミ「そう クラブ メランコリー。 この3人はね 私の歌を聴きに来てくれたのよ。」

亜矢美「おねえさんの古くからのお知り合い?」

カスミ「人を捜して 私を訪ねてきたのよ。」

亜矢美「あら 人捜し?」

なつ「はい。」

カスミ「子どもの頃に生き別れた お兄さんですって。 それがね 私と同じ ムーランルージュで働いていたんだって。 去年の夏ごろよね 捜しに来てたのは そのお兄さんを。」

なつ「はい。 その時 兄には会えたんですけど また今は どこにいるか分からなくなって。」

カスミ「だからね 今度は お兄さんのそばで暮らすために 東京に出てきたんだって。」

なつ「いや 兄にとっては 迷惑になるだけかもしれませんけど…。」

カスミ「名前 何ていうんだっけ?」

なつ「奥原なつです。 あっ 兄の名前は奥原咲太郎です。」

カスミ「ムーランルージュじゃ 咲坊って呼ばれてた子なのよ。」

亜矢美「はい 熱かん…。」

雪之助「あ~…。」

雪次郎「やめれって いや もう…。 あっ もう…。」

雪之助「なみなみ… ついで下さい。」

雪次郎「いや もう あっ もう…。」

雪之助「あのね 女将… 女将 あの この子はね なっちゃんね 本当に苦労したんだわ。」

亜矢美「そうなの?」

なつ「おじさん いいって… そったらこと ないから。」

雪之助「ある。 あるべ! 子どもの頃によ 北海道の牧場に預けられてさ これがね そこにいたのは なんとまあ 人の苦労を 苦労とも思わねえような おっかない開拓者のじいさんでな 牛のね… 牛の乳搾り できなきゃ 学校に行くなって言われてたんだよ。」

雪次郎「いや もう いつの話してんだべ。」

雪之助「なっちゃん なっちゃん… あれだべ あの~ ほら つらくなってよ 牧場を飛び出したことあったべ?」

なつ「おじさん…。」

雪之助「あったべ!」

なつ「あったけど…。」

雪之助「あったべ! ほら あの 東京のお兄さんに会いたくなってよ 飛び出したことあったべや? ところが… ところがですよ 女将… 女将!」

亜矢美「ん… はい?」

雪之助「その兄さんってのがね これ 会ってみたら もう これ ろくでもねえやつでな…。」

亜矢美「あら…。」

雪之助「警察のね やっかいに なるようなやつだったんですよ!」

雪次郎「もう やめれって! なっちゃんに失礼だべ そったらこと言ったら!」

なつ「別に いいから。」

雪之助「なっちゃん あれだよな… お兄さん 川村屋に借金残してんだべ? その借金 返すためにね なっちゃんは 皿洗い 川村屋でやってるんです。」

なつ「いや おじさん それは違うっしょ!」

雪之助「そういうことにも なるべさ。 おい 雪次郎! お前 支えてやれ!」

雪次郎「うん…。」

雪之助「分かったか? 雪次郎 お前…。」

雪次郎「おっ…!」

なつ「あっ! おじさん…? えっ…?」

雪次郎「支えなきゃなんねえのは そっちだべよ…。 しょうがねえな もう… 飲み過ぎだべ 弱えのに…。」

なつ「あっ すいません もう帰ります。」

亜矢美「北海道?」

なつ「いや… 川村屋です。 寮があるんで… すいません ごちそうさまでした。」

亜矢美「気を付けてね。」

なつ「はい。 ごちそうさまでした。」

雪次郎「すいません ごちそうさまでした。」

玄関

雪之助「寒い… 寒い…。」

なつ「えっ…?」

レミ子「咲ちゃんにさ…。」

なつ「咲ちゃん?」

レミ子「お兄さんに 私にも返すように言ってよ。」

なつ「兄は あなたにも お金を借りてるんですか?」

レミ子「お金じゃない…。 私の心よ。」

なつ「はい?」

レミ子「心の操! 真心を一晩 貸したままだから…。 返してもらうわよ。」

なつ「さっぱり分かんねえ…。」

1階店舗

カスミ「ごめんね。」

亜矢美「知らせに来てくれたのね おねえさん。」

カスミ「あとは 亜矢美ちゃん次第よ。」

川村屋

社員寮

なつ「すいません 佐知子さん。」

佐知子「何が?」

なつ「せっかく 一人で部屋を使ってたのに…。」

佐知子「私も 最初は相部屋だったのよ。 だから 気にしないで。」

なつ「佐知子さんみたいな人で いかった。」

佐知子「私も あなたで よかったわ。 困ったことがあれば 何でも言ってね。」

なつ「ありがとうございます。」

佐知子「咲ちゃんからは 何も聞いてない… わよね? 私のこと。」

なつ「咲ちゃん?」

佐知子「そりゃ 言えないか…。」

なつ「えっ?」

翌朝

雪次郎「あっ なっちゃん 早えなあ。」

なつ「遅いよ。 どうしても 早く目が覚めちゃって 布団の中で我慢してたんだから。 う~ん 牛が恋しい…。」

雪次郎「そう。」

なつ「おじさん 大丈夫?」

雪次郎「さっき 目 覚めて 二日酔いで苦しんでるわ。 水 持ってこいって。」 父ちゃん…。」

(雪之助の声)

なつ「あっ おはようございます。」

佐知子「おはよう。 早起きで偉いわね。」

なつ「いや 癖なんです。 あっ 自分でやります…。」

佐知子「あのさ…。」

なつ「はい?」

佐知子「これ 少ないけど… お兄さんに渡してくれる?」

なつ「えっ?」

佐知子「少しでも 足しになればと思って。」

なつ「えっ 何ですか? これ。」

佐知子「お金よ。」

なつ「えっ なして お金を…?」

佐知子「力になりたいからでしょ。 私からじゃ 遠慮して 受け取ってくれないかもしれないから あなたから渡してあげて。 ね。」

なつ「あっ あの… 兄と 何かあったんですか?」

佐知子「ハッ… やだ… まだ ないわよ。」

なつ「まだ…? えっ もしかして 兄は あなたにも 借りがあるんですか?」

佐知子「借りなんてないわよ。 私と咲ちゃんは 同志だもの。」

なつ「同志?」

佐知子「この新宿で ずっと 一緒に 強く生きていこうって誓ったの。 ハッ… やだ…。」

なつ「やだ…。 兄って どんな人なんでしょう…。 怖…。」

おでん屋・風車

1階店舗

「こんにちは。」

亜矢美「はい ご苦労さん。」

(戸が開く音)

咲太郎「ただいま!」

亜矢美「咲太郎…。」

咲太郎「何だよ しけた面して。 相変わらず不景気か? 神武景気も ここまでは 届かないか。 ま 元気出しなって 母ちゃん。」

亜矢美「あ… おでん 出来たばっかりだけど 食べるかい?」

咲太郎「うん。 風車のおでん 久しぶりだなあ。」

亜矢美「あんた また 新宿に戻ってきたの?」

咲太郎「ここしか帰る所がないだろ。」

亜矢美「で 今は何やってんの?」

咲太郎「今? 今は 新劇の劇団 手伝ってんだ。」

亜矢美「新劇?」

咲太郎「昨日は千秋楽だったんだ。 ちっとも もうからないけど うん… 役者は いいんだよ。 あっ ほら ムーランルージュも最後の方は 新劇みたいだって言われてたろ?」

亜矢美「うん…。 やっぱり そっか まだ知らないか…。」

咲太郎「えっ?」

亜矢美「それで帰ってきたってわけじゃないんだ。」

咲太郎「何の話だ?」

亜矢美「(ため息) あんたの妹 新宿に来てるよ。 北海道から。」

咲太郎「えっ なつが!」

亜矢美「あんたを捜してる。 今度は こっちで暮らすために 出てきたらしいよ。」

咲太郎「何で? 今更 俺なんか…。」

亜矢美「あれは… 追い出されたんだね。」

咲太郎「えっ… 北海道をか?」

川村屋

厨房

「まず 卵を こうやって 白っぽくなるまで泡立てる。 それから さっきの粉も もう一回 ふっとけよ。」

雪次郎「はい! 分かりました!」

光子「なつさん。」

なつ「はい。」

光子「これから忙しくなるから 今のうち ごはん食べておきなさい。」

なつ「はい。」

おでん屋・風車

1階店舗

咲太郎「俺のせいか…!? 俺のせいで なつは 一人で東京に来たのか…!」

亜矢美「妹さんはね 北海道で それは それは 苦労してきたらしいよ。」

咲太郎「いや そんなことはないだろう! 去年の夏に会った時は 幸せだって言ってたよ。 一緒にいた おばさんだって…。」

亜矢美「お前が そう言わせたんだろうが。」

川村屋

厨房

「熱いよ 熱いよ…! 何だ まだ泡立て終わらないのか。 早く粉もふって バターは 湯煎にかけとけよ。」

雪次郎「はい…。」

<なつよ 何だか 咲太郎に 勘違いされているみたいだけど もうじき 会えるかもしれないよ。>

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