あらすじ
なつ(広瀬すず)の兄、咲太郎(岡田将生)は亜矢美(山口智子)から、なつが東京に来たことを知らされる。北海道でひどい目にあい、東京に逃げてきたと勘違いした咲太郎は、考えるまもなく、なつが働く川村屋にどなり込む。店に姿を現した光子(比嘉愛未)に、なつを連れて帰ると言い放つ咲太郎。なつの手を取り川村屋を飛び出した咲太郎は、なつに会わせたい人がいると言い、突き進んでいく。行き着いた先は…。
46話ネタバレ
川村屋
厨房
杉本「お前 何度言ったら分かるんだ! 仕事は 見て覚えるんだ。 いちいち 指示待つな。 本当に やる気あんのか?」
雪次郎「はい!」
杉本「お前のやる気は 返事だけなんだよ。」
雪次郎「はい!」
なつ「頑張れ…。」
おでん屋・風車
1階店舗
咲太郎「俺のせいか…!? 俺のせいで なつは 一人で東京に来たのか…!」
亜矢美「北海道で 妹さんは それは それは 苦労してきたらしいよ。」
咲太郎「いや そんなことはないだろう! 去年の夏に会った時は 幸せだった言ってたよ。 一緒にいた おばさんだって…。」
亜矢美「バカ! お前が そう言わせてたんだろうが。 かわいそうにねえ… 小さい時から 牧場で さんざん こき使われて もう 朝から晩まで 牛の乳搾りだ…。 あっ… 手が しばれるわとか言ってると 乳も搾れねえで 学校なんか行くんでねえ。 ピシピシピシ~ッて…。」
咲太郎「ひでえ…。 それじゃ 孤児院より ひでえじゃねえか!」
亜矢美「で やっと大人になって お前に会いに来たわけだ。」
咲太郎「どこにいるんだ? なつは。」
亜矢美「川村屋。 誰かの借金を返すために 皿洗いをしてるらしいよ。」
咲太郎「えっ…。」
亜矢美「どうしたもんかねえ… このまんまじゃねえ 人間のクズだわな!」
咲太郎「分かってるよ! チクショー…。 許せねえ…。 北海道め…。 許さねえ!」
川村屋
ホール
<その日の閉店後 なつは 店の片づけを手伝っていました。>
(戸が開く音)
なつ「あっ すいません 今日…。」
咲太郎「なつ! 遅くなって悪かったな。」
なつ「お兄ちゃん!」
咲太郎「なつ お前を迎えに来たんだ。」
なつ「どういうこと?」
佐知子「咲ちゃん!」
咲太郎「お~ さっちゃん! 元気か?」
佐知子「うん。 久しぶり…。 咲ちゃんも元気そうで よかった。」
咲太郎「ああ 俺は元気だよ。」
なつ「すいません 佐知子さん ちょっと いいですか?」
咲太郎「ごめん さっちゃん。 また今度。 妹が すねてるから。」
なつ「すねてないけど!」
咲太郎「あっ 妹のことは知ってるよね?」
佐知子「もちろん。 一緒の部屋にいるから。」
咲太郎「そうなんだ?」
佐知子「心配しないでね。 なっちゃんのことは 自分の妹だと思って大事にするから。」
なつ「あの ちょっと…。」
咲太郎「優しいだろ さっちゃんは。」
なつ「ちょっと待ってよ お兄ちゃん! それより 今 どこで何してんのさ?」
咲太郎「今は とにかく急いで お前を迎えに来たんだよ。」
なつ「えっ?」
光子「どういうことなの?」
咲太郎「あ マダム…。」
光子「お久しぶりね。」
咲太郎「マダム 俺の借金と妹は 何の関係もないだろ!」
光子「どういう意味かしら?」
なつ「お兄ちゃん…。」
光子「妹を働かせるなんて 川村屋のマダムも 随分あこぎなまね するもんですね。」
光子「はあ?」
咲太郎「これを!」
光子「何?」
咲太郎「返済金です。 また1万円だけですけど…。 これからは 必ず 毎月返しに来ますよ。 そのかわり 妹は解放してもらいます。」
なつ「ねえ ちょっと待って。」
光子「妹が ここにいると知って 慌てて返しに来たわけ? 相変わらずね。」
咲太郎「妹は連れていきます。」
光子「どうぞ。」
なつ「えっ ちょっ… お兄ちゃん!」
雪次郎「なっちゃん お兄ちゃんって…。」
咲太郎「誰だ? こいつは。」
なつ「あっ 雪次郎君。 北海道から一緒に来た 私の友達。」
咲太郎「北海道?」
雪次郎「小畑雪次郎です! なっちゃんのお兄さんですか?」
咲太郎「何だ? お前。」
雪次郎「えっ?」
咲太郎「何で なつを追っかけてきたんだ!?」
雪次郎「いや 追いかけてきたわけでは…。」
なつ「お兄ちゃん やめてよ! 何を さっきから勘違いしてんのさ!」
咲太郎「なつ とにかく ここを出よう! お兄ちゃんと 一緒に行こう。」
なつ「えっ?」
咲太郎「いいですね? マダム。」
光子「だから お好きにどうぞ。 別に なつさんを ここに 縛りつけてるわけではありませんからね。」
野上「それどころか 保護してるようなものですよ。」
咲太郎「行こう なつ!」
光子「連れてって 今度は あなたが 妹を不幸にするの? あなたは 今のなつさんの何を知ってるの? 何をしてあげられるというの? あなたは 今 何をしてるのですか?」
咲太郎「新劇の劇団の制作部にいます。」
光子「それで なつさんを幸せにできるの? なつさんの生活の保証できるの?」
野上「マダムに 借金も返しながら。」
咲太郎「だけど…。」
光子「これから この先 どうやって 妹と生きてゆくつもりなんですか?」
なつ「いいんです! マダムは 兄の何を知ってるんですか! すいません…。」
雪次郎「なっちゃん…。」
光子「そうね… 私は 何も知らないわね。」
野上「なんてことを…。」
なつ「すいません あの… 少しだけ 兄と話をさせて下さい。」
光子「お好きに どうぞ。」
野上「戻ってこなくていいですよ。」
なつ「すいません…。」
咲太郎「行こう なつ。」
なつ「お兄ちゃん ちょっと待って! どこ行くの?」
咲太郎「俺の家だ… もう心配ないよ。」
なつ「何がさ? 何なのよ もう! やっと会えたのに…。 何なの? マダムに あんなこと言って…。 何て言うか… 話に ついてけないべさ!」
咲太郎「お前… すっかり 北海道に染まったな。」
なつ「言葉は しょうがないしょ。」
咲太郎「言葉だけじゃねえ…。 何か… 苦労が 顔に にじみ出てる。」
なつ「聞きようによっては 失礼だからね それ。」
咲太郎「悪かった。 すまん このとおりだ。」
なつ「ねえ やめてよ… お兄ちゃんが謝ることなんてないから。」
咲太郎「俺のせいで 皿洗いなんかさせて…。」
なつ「だから… さっきから勘違いしてるみたいだけど 何も お兄ちゃんのためじゃないから!」
咲太郎「分かった。 とりあえず行こう。 話は そこでだ。」
おでん屋・風車
1階店舗
なつ「お兄ちゃんの家って どこ?」
咲太郎「もう そこだ。 なつ… なつに会わせたい人がいるんだ。」
なつ「誰?」
咲太郎「話は会ってから。」
なつ「そこは…。」
(戸が開く音)
咲太郎「連れてきたよ。」
亜矢美「あっ いらっしゃい。 おばんでござんす。」
なつ「ここは 歌手の煙カスミさんと…。」
亜矢美「咲太郎 お店閉めちゃおっか。 うん うん…。」
咲太郎「えっ いいのか?」
亜矢美「いいの いいの いいの… 早く…。」
咲太郎「分かった。」
亜矢美「なつさん おなか すいてらっしゃるでしょ? ね。 咲太郎 咲太郎! 今日はさ 奥の座敷で 3人で ごはん食べましょうよ。」
咲太郎「ああ いいね そうするか。 なつ 奥行こう。」
なつ「待ってよ お兄ちゃん…。 いい加減にしてや!」
咲太郎「どうした? なつ。」
なつ「こんな大人の人まで…。」
咲太郎「えっ?」
なつ「ここで 一緒に暮らしてるってこと?」
咲太郎「まあ そういうことだ…。」
なつ「ねえ 言うよ! 私 言っちゃうからね!」
咲太郎「うん 何でも言ってくれ。」
なつ「この人のために言うよ!」
亜矢美「ん 何?」
なつ「去年の夏休み 浅草で会った踊り子の人は お兄ちゃんに よろしくって言ってたよ! また いつでも遊びにおいでって! 朝まで 一緒にいたんでしょ!?」
咲太郎「ああ マリーのことか?」
なつ「それから 煙カスミさんと 一緒にいた人も…。」
亜矢美「あっ 土間レミ子ちゃんね。 付き人の。」
なつ「そうです。 その人が お兄ちゃんに返してだって!」
咲太郎「何を?」
なつ「心の操! 真心だって!」
咲太郎「何だ? それ。」
なつ「知らんわ そったらこと! それから 佐知子さんは…。」
咲太郎「あ~ 待て! 分かった! 言いたいことは分かった。 違うよ。 それは勘違いだ。」
なつ「いや 勘違いさせてんのは お兄ちゃんでしょ!」
咲太郎「あ~ まあ 落ち着け! 落ち着けって…。」
亜矢美「ねえ もうバカでしょ 咲太郎ね。 困っちゃうわよね アッハハハ…。」
なつ「何で そんな落ち着いてるんですか?」
亜矢美「あっ… あっ まさか えっ… 妬くとか? うん? うん?」
咲太郎「バカ この人は違うよ。 この人は 俺の母ちゃんだ。」
なつ「えっ?」
咲太郎「まあ 母ちゃんみたいなもんっていうか 岸川亜矢美って 元ムーランルージュの踊り子だ。 今から ゆっくり話すよ。」
なつ「あっ…。」
回想
藤田「咲太郎は 戦後のマーケットで うろうろしてるところを助けたんだ。」
なつ「それは ありがとうございました。」
藤田「助けたのは俺じゃねえ。 戦前から ムーランで踊ってた 岸川亜矢美っていう踊り子だ。」
回想終了
1階居間
亜矢美「あっ ああっ あ~っちっち…!」
なつ「あなたが そだったんですか…。」
亜矢美「あっ まあね…。」
咲太郎「そうか… 藤正親分や 角筈屋書店の社長から聞いてたか。」
なつ「でも それなら どして 歌手の煙カスミさんは あなたのことを隠してたんですか?」
亜矢美「えっ?」
なつ「去年 東京に お兄ちゃんを捜しに来た時も そだったし この間も あなたのことを 私に隠してましたよね?」
亜矢美「あ… それは 私に 気を遣ってくれたんじゃないの? うん…。」
なつ「どうしてですか?」
亜矢美「う~ん…。 あれ どうしてかしら? アハハハハ…。」
咲太郎「なつ そんなことは どうだっていいだろう 会えたんだから。 それより なつ ここで お前も 一緒に暮らさないか?」
なつ「えっ?」
咲太郎「なつさえ よければ ここに住んでいいんだよ。」
なつ「私も一緒に?」
亜矢美「もし よければなんだけど…。 狭いんだけどさ 上に2部屋あるから。」
咲太郎「生活の面倒は 俺が見るよ。 なんとかする。 俺に任せろ。」
亜矢美「バカ! お前の そのなんとかってのが 一番信用できないの。 だから こうなってんでしょ。」
咲太郎「いや なんとかするしかないだろう!」
亜矢美「どうやって?」
咲太郎「だから… なつのために働くよ。」
亜矢美「食べていけんのか? 新劇で。」
咲太郎「ほかの仕事も探すよ。」
亜矢美「私が なんとかします。」
咲太郎「そのなんとかだって 当てにならないだろ。 やっと この店を借りて生活してるくせに。」
亜矢美「とにかくさ ここに いてもらってさ んで 食べていければいいんでしょう?」
咲太郎「食べさせられんのかよ?」
亜矢美「あっ おでん 毎日食べれんじゃない ねえ。 あっ 何だったら ここで働いてもらってもいいわよ。」
咲太郎「客も ろくに来ない こんな所で 働いて どうするんだよ。」
亜矢美「こんな かわいい子 来てくれた お客さん いっぱい来ちゃうわ。」
咲太郎「おい 俺の妹を 商売に使おうってのかよ。」
亜矢美「ちょっと手伝ってもらうだけでしょ。 あっ その方がね ここに いやすいわよ。 ねえ?」
なつ「嫌です…。 やめて下さい…。」
咲太郎「えっ?」
なつ「2人して 私をバカにしないで下さい。」
亜矢美「バカになんかしてないから。」
咲太郎「何言ってんだよ?」
なつ「私は もう 一人で生きられます。 ここは 私とは 何の関係もないとこですから。 帰ります。」
玄関
咲太郎「えっ…? ちょっ… おい なつ… なつ! おい なつ! なつ! なつ… 待てよ! どうしたんだ? なつ。」
なつ「お兄ちゃんは 私と千遥を捨てたんでしょ。 それで楽しかったんでしょ? ずっと…。 死ぬほど心配してたのに… 私と千遥のことは とっくに忘れて… もう関係なかったんでしょ!」
咲太郎「なつ…。」