ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第48話「なつよ、東京には気をつけろ」【第8週】

あらすじ

なつ(広瀬すず)が入社を希望している東洋動画の社長・大杉(角野卓造)と偶然すれ違った咲太郎(岡田将生)。思わず、なつの漫画映画への熱意を語り、「妹が試験を受けるので採用してほしい」と申し出てしまう。そのころなつは、久しぶりに再会した信哉(工藤亜須加)と一緒に、再び風車の亜矢美(山口智子)を訪ねていた。亜矢美から、咲太郎の東京での生い立ちについて聞かされたなつは、知られざる兄の行動に驚きを隠せず…。

48話ネタバレ

東洋撮影所

咲太郎「失礼ですが 東洋映画社長の大杉 満さんでは?」

大杉「そうだけど アータは?」

咲太郎「あっ 失礼しました! 私は 劇団赤い星座の奥原咲太郎です!」

おでん屋・風車

1階店舗

亜矢美「まあまあ 今日は 彼氏と ご一緒? 何かご用?」

<なつよ 一体 何をする気だ?>

なつ「こないだは 失礼しました。 せっかく 食事を ごちそうしようとしてくれたのに 急に帰ってしまって。」

亜矢美「謝りに来たの?」

なつ「はい…。 あっ あと… この人は佐々岡信哉さんです。 子どもの頃 私や兄と一緒に 街で暮らしてたんです。」

亜矢美「…って 信? って 信よね? 信?」

信哉「はい…。」

亜矢美「咲太郎と同い年の幼なじみ?」

信哉「はい… 早生まれなんで 学年は1つ上ですが。」

亜矢美「やだ~… もう信ちゃん もう早く言ってよ! ちょっと お座んなさいよ!」

藤田「座んな。」

亜矢美「座んなって言ってんだから ほら ほら ほら…。」

信哉「はい…。」

東洋撮影所

咲太郎「私は 劇団赤い星座の奥原咲太郎です!」

大杉「劇団赤い星座?」

「女優の亀山蘭子がいる劇団です。」

大杉「ああ… いつも 脇役で いい味を出してくれているね。」

咲太郎「ありがとうございます。 いつも お世話になっております。」

大杉「うん お世話さま。 それじゃ。」

咲太郎「あっ いや… ちょっと待って下さい! あの お願いがあるんです!」

「何だね 君は!」

大杉「いやいや いいよ…。 お願い? アータが 私に?」

咲太郎「お願いというより 挨拶です。 あっ いや… というより お願いです。」

大杉「何? 早くしてちょうだい。」

咲太郎「すいません。 あの そちらの新しく出来た 東洋動画という会社に 私の妹が入りたがってるんです。」

大杉「アータの妹が 漫画映画を?」

咲太郎「はい。 奥原なつといいます。 漫画映画に 命を懸けています。 どうぞ よろしくお願いいたします!」

大杉「命は懸けなくてもいいから。 試験を受けてもらわないとね。」

咲太郎「もちろん そのつもりです。 奥原なつは 孤児院から北海道に渡って 本当に 苦労したやつなんです。 奥原なつ 奥原なつです! どうか 鶴の一声 あっ いや… どうか 名前だけでも 憶えてやって下さい!」

大杉「アータの名は?」

咲太郎「奥原咲太郎です。」

大杉「奥原咲太郎君に 奥原なつさんね。 はい 分かった。」

咲太郎「ありがとうございます! それじゃあ?」

大杉「うん。 それじゃ。」

咲太郎「あっ…。 ありがとうございました! ここで会えるなんて 運が向いてきたぞ なつ…。 よし! よし よし よし よし よし…。 よし…!」

おでん屋・風車

亜矢美「孤児院から逃げ出して 新宿の街に流れ着いたあの子は 闇市で 靴磨きを始めてね。 だけど 勝手に始めたもんだから 周りの浮浪児たちから 袋だたきに遭ってね。 そこ たまたま 私が助けたっていうのかな。」

なつ「靴磨きをしてたんですか… 兄が?」

信哉「顔見知りのいない新宿で ほかに生きるすべが なかったんだろうな。」

亜矢美「しょうがないから 親分さんとこに連れてって。」

藤田「ラーメン食わしてやったら ボロボロ泣きだしてな フフフ…。」

回想

咲太郎「北海道に行きたいんだ… 妹を迎えに…。 北海道へは どうやったら行けますか?」

回想終了

なつ「お兄ちゃんが 北海道へ…?」

亜矢美「うん。 妹のためだと思って 行かせたのはいいけれど 一人になってみたら もう会いたくて会いたくて たまんなくなったって。」

信哉「同じこと考えてたんだな…。 なっちゃんと同じことをしてたんだよ。 あいつは。 帯広と新宿で。」

亜矢美「だから あなたを 捨てたってわけじゃないからね。 私が捨てさせたの。」

藤田「そりゃ違うだろ。 あんた また踊っただけだ。」

回想

(タップする靴音)

回想終了

藤田「あいつは ここで生きる決心をしたんだ。」

亜矢美「それで 救われたのは 私の方だったんだよね。 生きてく希望なんて 何もなかったからね あのころは。 あなたのお兄さんを 長いこと 引き止めちゃった。 ごめんね…。」

なつ「あなたがいてくれて 本当に いかったと思います。 私にも 北海道に家族がいるんです。 亜矢美さんが 兄を支えてくれたことを 私が否定してしまったら 私は 北海道の家族も 否定してしまうことになるんです。」

なつ「だから あなたに失礼なことをしたなら 謝ります。 本当に すいませんでした。 それから お礼を言いたいです。 兄を助けてくれて 本当に ありがとうございました!」

亜矢美「ああ…。 ああ もう… やだ やだ ほら 頭上げてよ。 ねえ ねえ ほら 座って 座って ほら ほら…。 ねえ ねえ… あっ そうだ そうだ。 咲太郎に聞いたんだけどさ 何か 夢があるんだって?」

なつ「はい。 それも 北海道に行けたから 夢を持つこともできたんです。 ムーランルージュを 今でも夢みてる兄と おんなじです。」

亜矢美「じゃ いろんな苦労も したかいがあったんだね。」

なつ「はい。」

信哉「悲しみから生まれた希望は 人を強くします。 喜びから生まれた夢は 人を優しくします。」

亜矢美「この人… 詩人さん?」

なつ「いえ 放送記者です。」

川村屋

厨房

佐知子「なっちゃん これも お願いね。」

なつ「はい。」

<なつの東京での暮らしは こうして続きました。」

杉本「おい ここに また粉が落ちてる! お前が こぼしたんだろ?」

雪次郎「はい!」

杉本「床に 粉が落ちてたら 足滑らせて危ないと言ってるだろ。」

雪次郎「はい… すぐに掃除します。」

雪次郎「うわっ…!」

杉本「あっ さっき そこに 砂糖こぼしちゃったから ごめん そこも掃除しといて。 なあ 危ないだろ。」

雪次郎「はい…。」

<この新宿では みんなが 自分の生き方を 必死に探しているようでした。 そして なつは 6月の東洋動画の採用試験に向けて 絵の勉強も続けていました。>

ホール

なつ「どうでしょう?」

仲「この絵でも いけると思うよ。」

なつ「この絵でも?」

仲「うん。」

陽平「うん。」

仲「『白蛇姫』の制作が遅れてるんだ。 今は 一人でも多くの人材が必要だからね。」

なつ「本当ですか? 私は 仲さんから頂いたセル画を 大事にしています。 私のお守りです。」

仲「あっ… それは 責任 感じちゃうな。」

なつ「いや そういうつもりじゃないです。

陽平「責任 感じて下さいよ。 仲さんが なっちゃんに 希望を与えたんですから。 おかげで 僕の弟は寂しがってますよ。 天陽も 元気に 絵を描いてるみたいだ。」

なつ「はい。 私も負けません。」

陽平「うん。」

咲太郎「おお なつ!」

なつ「お兄ちゃん…。」

陽平「お兄さんなの?」

なつ「あっ はい。 こちら 東洋動画の仲 努さんと 山田洋平さん。 漫画映画を作ってる人で いろいろと教えてもらってんのさ。」

咲太郎「そうですか。 兄の奥原咲太郎です。」

佐知子「咲ちゃん 座ったら?」

なつ「あっ いえ…。」

咲太郎「おう さっちゃん コーヒーね。」

なつ「ちょっと!」

佐知子「なっちゃんも ゆっくりしてね。 休憩中でしょ。」

なつ「すいません… あの あんまり兄に構わないで下さい。」

咲太郎「それで どうですか? なつは ものになりそうですか?」

なつ「お兄ちゃん!」

仲「大丈夫ですよ。 やる気さえあれば。 まあ ただ もうからないし きつい仕事ですけどね。」

咲太郎「まあ 初めは 何でも そんなもんですよ。」

仲「軽い気持ちで 妹さんを誘ってしまった手前 僕も援護します。」

咲太郎「あんたが誘った? そりゃ 責任重大だよな…。 裏切ったら 海に浮かぶよ。」

なつ「ちょ… お兄ちゃん!」

咲太郎「いや ジョークだよ。 ショービジネスのジョーク。」

陽平「あっ さっき これを そこの本屋で買ってきたんだ。 仲さんが 面白い本だって言うから。」

なつ「えっ 何ですか?」

陽平「見てみて。」

なつ「すごい…。 馬の動きが よく分かる。」

陽平「それを なっちゃんに プレゼントするよ。」

なつ「えっ!」

仲「アニメーションのために 作られたものじゃないけど 動きの基礎を勉強するには いいと思うんだ。 うん。」

社員寮

厨房

<仕事や勉強を重ねながら なつの東京での日々は あっという間に過ぎていきました。>

<そして 2か月がたち アニメーターになる試験の日を 迎えました。 そこには 絵心ある若者たちが 全国から集まっていました。>

臨時採用試験会場

なつ「じいちゃん… 行くべ。」

<ああ なつよ その扉を押し開けよ。 来週に続けよ。>

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