ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第49話「なつよ、夢をあきらめるな」【第9週】

あらすじ

アニメーターを目指して東京にやってきたなつ(広瀬すず)は、東洋動画の入社試験を受けることに。受験当日、受験人数の多さに圧倒されるなつ。絵の試験に続き、面接に臨むと、かつて帯広の映画館で見た大杉社長(角野卓造)の姿が。なつは自身の境遇について語り、大杉社長は奥原なつの名前に、なにかを思い出す。試験後、川村屋に戻ったなつは、光子(比嘉愛未)から手ごたえを聞かれるが…。

49話ネタバレ

川村屋

厨房

<昭和31年4月 なつは上京しました。 新宿の川村屋で働きながら 絵の勉強を続けていました。 アニメーターになる夢をかなえるため 日々 時間を 大切に過ごしてきたのです。>

東洋動画スタジオ

昭和31(1956)年6月

<そして いよいよ なつは 東洋動画の入社試験に向かいました。>

なつ「じいちゃん… 行くべ。」

柴田家

詰め所

泰樹「やれ… なつ。」

東洋動画スタジオ

「では ご説明します。 馬が 柵に向かって走っています。」

なつ「馬…。」

「その絵の続き 馬が 見事に 柵を飛び越えて走り去るまでを 6枚の絵で表現して下さい。 制限時間は3時間です。 それでは 始めて下さい。」

回想

なつ「うわ~ 面白い! まるで 馬が暴れてるみたい。 ねっ ほら!」

回想終了

山田家

馬小屋

回想・天陽「なっちゃん… 俺にとっての広い世界は ベニヤ板だ。 そこが 俺のキャンバスだ。 なっちゃんも 自分のキャンバスだけに向かえばいい。 そしたら どこにいたって 俺と なっちゃんは 何もない 広いキャンバスの中で つながっていられる。 頑張れ! 頑張ってこ なっちゃん。」

東洋動画スタジオ

(ノック)

なつ「失礼します。 奥原なつです。 よろしくお願いします。」

山川「どうぞ お掛け下さい。」

なつ「はい。 失礼します。」

大杉「アータ ご両親は ご健在かね?」

なつ「はい。 本当の両親は 戦争で亡くしました。 だけど 9つから 私を育ててくれた両親は 北海道にいます。」

山川「いわゆる 君は 戦災孤児だということですか?」

なつ「はい…。」

山川「それじゃあ 東京には 身寄りがないんですか?」

なつ「兄がおります。 9つの時から 別々で暮らしていた兄が 今は 近くにいてくれます。」

大杉「兄? 奥原…? 奥原なつさんね…。」

なつ「はい…。」

山川「農業高校を出てるようだけど 絵の勉強は どこかでされたんですか?」

なつ「いえ… 絵のうまい友達から 教わったぐらいです。」

山川「農業高校の友達ですか?」

なつ「いえ… その人は 一人で 土を耕し 牛飼いをしながら 自分の絵を描いています。 道は違っても 私の目標とする人です。」

大杉「アータの絵は 実に面白いね。 こんなに高く跳ぶ馬を 初めて見たよ。」

なつ「ありがとうございます。 社長の宣伝も すごい面白かったです! あっ あの 帯広の映画館で見ました。 あんなの 初めて見ました。」

大杉「あんなの?」

なつ「あ… いや…。 すいません つい余計なことを…。」

大杉「結構ですよ。」

なつ「あっ… ありがとうございます。」

大杉「もう結構です。」

なつ「はい。 失礼します。 あっ 失礼しました。」

なつ「(ため息)」

川村屋

ホール

野上「いらっしゃいませ…。」

なつ「ただいま戻りました。」

野上「何ですか お店の方から。」

なつ「すいません 報告だけ。 終わりました。」

野上「人生が終わったみたいですね。」

なつ「えっ どうして そう思うんですか?」

光子「終わったの?」

なつ「いえ まだ 終わったと 決まったわけじゃありません!」

光子「えっ?」

なつ「あっ… 試験は終わりました。 ありがとうございました。」

光子「受かりそうなの?」

なつ「さあ 分かんないです。 とにかく すごい人数なんです。」

光子「それは 大きな会社だもの。 漫画映画を知らなくても 東洋を知らない人は いないものね。」

野上「そこに 絵を描くだけで入れるんなら 怠け者が殺到しますでしょう。」

なつ「野上さん 一度 漫画映画を見て下さい。 怠け者には 絶対作れませんから。」

野上「結構です。」

なつ「あっ 嫌な言い方…。」

野上「は?」

厨房

雪次郎「お願いします。」

なつ「はい。」

雪次郎「どうだった?」

なつ「何が?」

雪次郎「試験。 受けたんだべさ?」

なつ「受けた。」

雪次郎「そんで?」

なつ「結果は まだ。」

雪次郎「ううん 手応え。」

なつ「絵は ちゃんと描けたと思う。 ただ 面接が…。」

雪次郎「面接か…。」

なつ「緊張したからね。」

雪次郎「ああ 分かる。」

なつ「何 しゃべったんだか…。」

雪次郎「FFJは歌わんかったべ?」

なつ「歌わねえさ そんなもん。」

雪次郎「そんなら大丈夫だ。」

なつ「けど… 大きな会社が 戦災孤児だった私を 採ってくれるかどうか…。」

雪次郎「んなこと関係ねえべよ! そったらこと あっか? もし んなことあったら 柴田のじいさんも おじさんも おばさんも 怒るべや。 怒りに震えるべさ。」

なつ「ごめん。 余計なこと言った。」

雪次郎「ま 余計なことは考えんな。」

東洋動画スタジオ

会議室

仲「井戸原さん。」

井戸原「うん?」

仲「ちょっと これ見て下さい。」

井戸原「ん 何だよ? えっ? お~ いいんじゃないの。 絵は この中じゃ 下手な方だけど 馬が 一番 キャラクターになってる。 何より面白い。」

仲「そうでしょ? 何か いいんですよね この子。 まあ まだ 絵は未熟ですけどね。」

おでん屋・風車

なつ「こんばんは。」

亜矢美「あ~ おばんでござんす。」

なつ「茂木社長。 こちらにも いらしてるんですか?」

茂木「おう。」

亜矢美「社長はね 新宿だったら どこだって出没なさるから。」

茂木「川村屋じゃ お酒が出ないんでね。」

なつ「もう閉まってますし。 川村屋には 昼間にいらして下さい。」

茂木「バターカリーと マダムが 恋しくなったら行きますよ。」

なつ「バターカリーなら 待ってると思います。」

茂木「お 随分 新宿に なじんできたな なっちゃん。」

なつ「そですか? まだ 何もしてません。 時間だけが あっという間に過ぎています。 私は その時間に 取り残されているだけのような気もします。」

茂木「ほら 新宿に来ると みんな そうやって詩人になるんだよ。」

なつ「今のがですか?」

茂木「ああ。」

亜矢美「詩人になるか 死人になるかだね ここじゃ。」

「アッハハ…。」

「そのとおり ハハハ…。」

なつ「あの お兄ちゃんは?」

亜矢美「ううん あいつはね 詩人だか 死人なんだか分かんない。」

なつ「あっ いや いますか?」

亜矢美「あっ まだだから 座って待ってなさい。」

茂木「はい 座んな 座んな。 ほら来た。」

なつ「お兄ちゃん!」

咲太郎「おう なつ! 何だ ここにいたのか。 今 お前んところ 行ったんだぞ。」

なつ「えっ?」

咲太郎「東洋の試験 今日だったろ? どうだった? 受かったのか?」

なつ「いや 結果は まだ。」

亜矢美「そんな すぎに出ないだろうよ。」

咲太郎「んだよ もったいぶりやがって。 役者を見るより 絵の方が早いだろ。」

亜矢美「そういう問題じゃないの。 一流の会社さんなんだから。」

なつ「でも 陽平さんから もらった本が 役に立ったの。 あっ 社長の書店で買った 外国の本なんです。」

茂木「おお そうかい。」

なつ「動物の動きが 連続写真で よく分かるもので そしたら 本当に動物の動きが 試験に出たんです。」

咲太郎「何だよ 初めに答えを 教えてもらったようなもんじゃないか。」

なつ「違うって! 写真を見たって そのまま描けばいいわけじゃ ないんだから。 実際の馬を いくら見てたって 動画を描くのは 難しいの。 基礎を勉強しといて いかったってこと。」

茂木「うちの書店も お役に立ててよかった。」

咲太郎「じゃ 自信があるんだな?」

なつ「ん~…。 うん。 ある!」

茂木「おや!」

なつ「いや 大丈夫だと思う。 精いっぱい やったから。」

咲太郎「よし。」

亜矢美「じゃあ 乾杯しましょうか。」

咲太郎「おっ いいね!」

なつ「飲めませんけど… ありがとうございます。」

茂木「よ~く頑張った…。」

<なつは 咲太郎に会って 少しだけ 気持ちが軽くなったような気がしました。」

一同「かんぱ~い!」

川村屋

厨房

佐知子「洗い物 お願いします。」

なつ「はい。」

<それからのひとつき どんなに忙しくても なつには とても長く感じられました。>

社員寮

<そして それは届いたのです。>

<なつよ… 無念。>

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