あらすじ
なつ(広瀬すず)が東洋動画の試験に落ちた。納得いかない咲太郎(岡田将生)は、仲(井浦新)に直接その理由を聞きに行く。すると仲は、試験の採点をしたのは自分だが、落ちるとは思っていなかったと口にする。そのとき、咲太郎の脳裏に、以前東洋動画の大杉社長(角野卓造)に妹を頼むとじか談判したことが思い浮かんだ。後日、なつがなぜ落ちたのか探っていた仲が、なつを訪ねて川村屋に現れ、真相を語りだし…。
51話ネタバレ
東洋動画スタジオ
中庭
咲太郎「どうして なつは 落ちたんでしょうか?」
仲「えっ!?」
咲太郎「なつには 実力がなかったんでしょうか? どうなんでしょうか!」
仲「ちょ… ちょっと待って下さい。 なっちゃん 落ちたんですか?」
咲太郎「知らなかった?」
仲「はい… 何にも…。」
咲太郎「それは ちょっと無責任じゃないですか? なつに入れるっつったのは あんたなんでしょう!」
咲太郎「ああ…! ああ すいません! 大丈夫…。」
「仲さん…!」
咲太郎「ごめん ごめん… びっちょびちょじゃん… 誰か タオル持ってこいよ!」
喫茶店・リボン
咲太郎「すまなかった。 つい 力が入っちまって…。」
仲「いいですよ もう…。 座って下さい。」
咲太郎「ああ…。 あんたに 当たったって しょうがないのにな。 なつは やっぱり 実力が足りなかったんだろうな。」
仲「足りないのは確かだけど 実力がないとは思いませんでしたよ。 絵を採点したのは僕ですから。」
咲太郎「だったら やっぱり あんたが落としたんじゃねえか!」
仲「いや 待って下さい!」
咲太郎「なつは あんたの言葉を信じて 北海道から出てきたんじゃねえのかよ? これじゃ だまされたようなもんじゃねえか! なつを その気にさせといて 今度は 水をぶっかけんのかよ!」
仲「だから 僕は てっきり なっちゃんは 受かったもんだとばかり思ってたんです!」
咲太郎「えっ?」
仲「採点は 悪くなかったはずです。 そりゃ 経歴から言えば ほかの者に劣るかもしれないけど だから その分 入社したら 僕が 責任を持って育てようと 思ってたんだ! それなのに… それなのに…。」
咲太郎「あっ。 おなか すいてませんか?」
仲「大丈夫です…。 すいません 取り乱して。」
咲太郎「あ… いや…。 どうして… なんでしょうか…。」
仲「面接で 何かあったのかな?」
回想
大杉「アータの妹が 漫画映画を?」
咲太郎「はい。 奥原なつといいます。 孤児院から北海道に渡って 本当に 苦労したやつなんです。 奥原なつ 奥原なつです! どうか…。」
回想終了
咲太郎「俺が 勝手に 余計なこと言ったのか…。」
仲「ん? えっ?」
咲太郎「あ いや…。」
道中
咲太郎「孤児院にいようが どこにいようが そんなの関係ねえじゃねえかよ…。」
川村屋
ホール
野上「いらっしゃいませ。」
信哉「こんにちは 野上さん。」
野上「あっ 奥原さんですか?」
信哉「なっちゃんは まだ ここで 働いていますか?」
野上「ええ。 残念ながら。」
光子「いらっしゃい 佐々岡さん。」
信哉「マダム… なっちゃんは?」
おでん屋・風車
1階店舗
亜矢美「おっ 咲太郎。 あら 何やってんの? 昼間から。」
咲太郎「なつが落ちた。」
亜矢美「だからって 何で お前が やけ酒飲んでんの?」
咲太郎「俺は… バカだ。」
亜矢美「今頃 分かったか バカ。」
咲太郎「どうやったら なつの力になれるのか 分からない。 今まで さんざん ほっといて やっと会えたのに 住む場所さえ与えられないし 迷惑ばかりかけてるよな。 俺と会ったって あいつには 何一つ いいことなんかないよな 母ちゃん。」
亜矢美「だったら こんなことしてる場合じゃないだろ! お前が しょげてて どうやって 妹を励ますの?」
川村屋
ホール
なつ「すいません…。」
野上「どうぞ。」
信哉「悪いな 仕事中に。」
なつ「ううん 休憩もらったから。 そっちこそ 忙しいのに…。」
信哉「勤務明けなんだ これでも。 昨夜から寝てなくて…。」
なつ「今は どんな仕事してんの?」
信哉「今は サツ回りをしてる。」
なつ「サツ…?」
信哉「警察署を回って 事件を取材すること。 新人は そこで 多くのことを学ぶんだ。」
なつ「へえ~。 信さんは すごいよ。 私は… うん ダメだった。 そりゃ 信さんみたいに 努力もしてこなかったんだから 当たり前だけどね。」
信哉「何言ってんだよ。 なっちゃんが頑張って ここまで来たんじゃないか。 今 ここで生きてること全部 なっちゃんの努力だろ。」
なつ「ありがとう。 さすが記者さん いいこと言うわ。」
信哉「からかうなよ。」
なつ「ハハハ…。」
信哉「それで 夢は諦めるの?」
なつ「それが… 諦めたくないの。 バカだけど なんとかして アニメーターになれる ほかの道を探してみようって思ってる。」
信哉「そうか… じゃ 俺も その道を探すかな。」
なつ「ありがとう。」
野上「いらっしゃいませ。」
仲「あの… 奥原なつさん いますか?」
野上「あちらでございますが。」
仲「あっ…。」
なつ「仲さん 陽平さん…。」
仲「今回は 申し訳なかった…。」
なつ「あっ いいえ…。」
陽平「ちょっと いいかな?」
なつ「はい。」
陽平「あの…。」
信哉「あ… 気にしなくて大丈夫です。 あの… 僕は なっちゃんの 東京の幼なじみです。」
陽平「僕は 北海道の幼なじみです…。」
なつ「あっ どうぞ。」
佐知子「ごゆっくり。」
仲「正直 君の絵は悪くなかったよ。」
なつ「えっ?」
仲「それで 何で 君が落ちたのか ちょっと調べてみたんだけど…。」
回想
山川「奥原なつ?」
仲「この絵を描いた子ですよ。 私の評価を どうして無視したんですか? なぜ落としたのか 理由を聞かせて下さい。」
山川「ああ この子は 社長の判断で落としたんだ。」
仲「えっ?」
陽平「大杉社長が?」
回想終了
陽平「なっちゃん… つかぬことを聞くけど 君のお兄さんは 何かの党に属してる?」
なつ「えっ?」
陽平「政治的な党に。」
信哉「咲太郎がですか?」
なつ「どういうことですか?」
仲「どうやら 君のお兄さんが 東洋の大杉社長に会ったらしいんだよ。」
なつ「お兄ちゃんが?」
回想
大杉「あの子は ダメだ。 はじいて。」
「そうですか? この絵の動きは なかなか面白いと思いますが…。」
大杉「以前 あの子のお兄さんに 挨拶をされてね。」
「は?」
大杉「アータ あの子の兄は 新劇をやってるんだよ。 赤い星座だよ。 あそこは 戦前から プロレタリア演劇の 流れをくむ劇団じゃないか。 しかも あんな愚連隊だか 太陽族だか分からないような 不良の兄がいる子を 入れるわけにはいかないよ アータ。」
回想終了
なつ「そんなことないはずです! 兄が そんな…。」
信哉「そうです。 あいつが そんな深いとこまで考えて 新劇をやってるとは思えません。」
陽平「だけど 社長には誤解されたんだよ。」
仲「誤解とはいえ… いや もう 本当に腹が立ったよ。」
陽平「結局 社長の鶴の一声で落ちたらしい。」
信哉「バカだな 咲太郎は…。 余計なことしなけりゃ なっちゃんが入れたかもしれないのに…。」
仲「なっちゃん 今回の結果を 覆すことはできないんだけど 9月に また 仕上(しあげ)の試験があるんだよ。」
なつ「しあげ?」
仲「うん。 セル画に色を塗ったり トレースしたり アニメーターの勉強にもなる。 まずは 中に入ることが大切だからね。」
陽平「仕上には 高卒の女子も多いから 今回より 間口は広いと思う。」
仲「お兄さんへの誤解も解くから どう それに挑戦してみない?」
信哉「なっちゃん…。」
なつ「します! 仲さん 陽平さん ありがとうございます!」
川村屋
社員寮
なつ『拝啓 母さん 父さん じいちゃん みんな 元気ですか? 東洋動画の試験は不合格でした。 知らせるのが遅くなって ごめんなさい。 自分が 何をしたらいいのか 分からなくて 考えているうちに 時が過ぎてしまいました』。
なつ『 9月に 仕上という 映画に 色をつける仕事の募集が あることを 陽平さんたちから教えて頂きました。 その試験に挑戦したいと思います。 私は やっぱり 漫画映画を作ることを 諦めたくありません。 こんな私ですが 皆さん 応援よろしくお願いします』。
なつ「お兄ちゃん…。」
おでん屋・風車
1階店舗
亜矢美「はい いらっしゃ… あっ いらっしゃい。」
なつ「あの お兄ちゃんは?」
亜矢美「うん まだかな。 あっ 客も帰っちゃったから 2人で 一緒に飲まない?」
なつ「えっ? 飲めません。」
亜矢美「最初は み~んな そうなの。」
なつ「えっ…。」
亜矢美「初めはね 飲むっていうよりも 飲まれてね だんだん強くなってくのよ。 人生の失敗と おんなじかな。」
なつ「まだ未成年ですから…。」
亜矢美「あら そうだっけ?」
なつ「はい。」
亜矢美「えっ あと どれくらい…。」
信哉「こんばんは… あっ なっちゃん いたの?」
なつ「信さん。」
亜矢美「いいとこ来た。 一緒に飲みましょうよ。」
信哉「あっ いや… あの 実は さっき 咲太郎が 警察に捕まって…。」
亜矢美「えっ?」
なつ「どういうこと!?」
<またもや 何をやってるんだ 咲太郎…。>