ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第52話「なつよ、夢をあきらめるな」【第9週】

あらすじ

亜矢美(山口智子)の店・風車を訪れたなつ(広瀬すず)。そこに信哉(工藤阿須加)が飛び込んできて、咲太郎(岡田将生)が警察に捕まったと話す。信哉は慌てるなつに、事情はわからないが大事には至らず、すでに警察を出ていると言う。心配するなつたちは、新宿の歌舞伎町でサンドイッチマンをしているという咲太郎を探しに行く。当の咲太郎は開口一番、「東洋動画に入らなくってよかった」となつに言いだし…。

52話ネタバレ

川村屋

ホール

仲「君のお兄さんが 東洋の大杉社長に会ったらしいんだよ。」

回想

咲太郎「孤児院から 北海道に渡って 本当に 苦労したやつなんです。 奥原なつ 奥原なつです!」

回想終了

信哉「バカだな 咲太郎は…。 余計なことしなけりゃ なっちゃんが入れたかもしれないのに…。」

社員寮

なつ「お兄ちゃん…。」

おでん屋・風車

1階店舗

信哉「こんばんは… あっ なっちゃん いたの?」

なつ「信さん。」

亜矢美「いいとこ来た。 一緒に飲みましょうよ。」

信哉「あっ いや… あの 実は さっき 咲太郎が 警察に捕まって…。」

亜矢美「えっ?」

なつ「どういうこと!? お兄ちゃん 何をしたの!?」

信哉「なっちゃん 落ち着いて。 別に 悪いことをしたわけじゃないんだ。」

なつ「悪いことしてないのに 警察に捕まるって どういうこと?」

信哉「いや あの… 捕まったっていうか 取り調べを受けたっていうか…。 サンドイッチマンをやってたんだ。 それで 人だかりが出来て 交通の妨げになったみたいで…。 許可を取ってなかったらしい。 でも まあ 警察を出てるから ここに戻ってきてると 思ったんですけど…。」

亜矢美「で どこで? その サンドイッチしてたって…。」

信哉「歌舞伎町みたいです。」

なつ「歌舞伎町?」

キャバレー・スウィートホーム

咲太郎「買って下さい 私の真心。 売って下さい あなたの恥じらい。」

(タップする靴音)

咲太郎「こよい花開く 夢のひととき。 踊る阿呆に 見る阿呆。 同じ阿呆なら 朝まで踊って下さい いとしいあの子と。」

(タップする靴音)

咲太郎「さあ 夢のスウィートホームへ帰りましょう!」

レミ子「煙カスミが出演してま~す!」

カスミ♬『ロイド眼鏡に燕尾服 泣いたら燕が笑うだろう 涙出た時ゃ空を見る サンドイッチマン サンドイッチマン 俺らは街のお道化者 呆け笑顔で今日も行く』

信哉「なっちゃん…。」

なつ「お兄ちゃん…。」

咲太郎「おう 何だ? なつ。 こんなとこに来んな お前。」

なつ「何してんの?」

「この子 店の子?」

咲太郎「違うよ この野郎! この子に触んな!」

「何だ 客に向かって その口は!」

レミ子「あんたは まだ 客じゃないでしょうが!」

信哉「すいません! すいません すいません…。 すいません…。」

「チッ!」

咲太郎「信が なつを連れてきたのか!」

信哉「すまん…。」

レミ子「ちょっと 仕事の邪魔しないでよ!」

なつ「お兄ちゃん!」

咲太郎「おい なつ ちょっと来い! 一体 何なんだ?」

なつ「分かんない…。 お兄ちゃんが 何やってんのか 私には全然分かんない。」

咲太郎「何 言ってんだよ。 何も悪いことはしてないよ。 なつ お前がつらいのは分かるけど もう忘れろ。 あんな会社 入らなくてよかったよ。」

なつ「えっ?」

信哉「おい 咲太郎。」

咲太郎「お兄ちゃんは 本気で そう思ってるよ。 俺たち 孤児院にいたような人間は いつまでたっても 差別を受けることがあるんだよ。」

信哉「咲太郎 お前 自分が何したのか分かってんのか!」

なつ「いいから 信さん。 お兄ちゃんは 今 何やってんのさ?」

咲太郎「だから 見てのとおり サンドイッチマンだよ。 鶴田浩二の歌が はやってから 人気があるんだよ。」

なつ「それが お兄ちゃんのやりたいこと? 全然分かんないよ。」

咲太郎「何が分からないんだ? マダムに 借金を返すために 働いてるんだろ。 お前に 少しでも 肩身の狭い思いを させないために働いてるんだ。」

なつ「私のためなの? だったら やめてよ! 私… タップダンス踊ってる お兄ちゃん見て 何だか 悲しくなったよ。 だって お兄ちゃん 昔と ちっとも やってる変わってないんだもん…。 焼け跡で進駐軍に向かって踊ってる時と やってること おんなじじゃない! 昔は楽しかったけど… 今は悲しかった。」

レミ子「ちょっと待ちなさいよ! あんたは 北海道で生きるために 牛の乳搾りしてたんでしょう? こっちだってね 生きるために 人前で踊ってんのよ! バカにしないでよ!」

なつ「バカになんかしてません。 お兄ちゃんのやりたいことが 分からないと言ったんです。」

咲太郎「だから… 俺は ムーランルージュを 復活させたいんだって言ったろう。」

なつ「それだって 亜矢美さんのためでしょ!」

咲太郎「お前に 何が分かるんだ?」

なつ「分るよ! ムーランルージュを復活させるために 人にだまされて お金を借りて その肩代わりを マダムにさせたんでしょ? ねえ それじゃ 人に迷惑かけてるだけじゃない!」

なつ「お兄ちゃんが 自分のために 真面目に働いてるなら 何してもいいの…。 もう人のために 頑張らなくていいんだから! もっと 自分のために頑張ってよ! もう人のことは ほっといてよ!」

咲太郎「なつ…。」

警察「おい そこで何してるんだ?」

信哉「あっ いえ 大丈夫です…。」

警察「えっ?」

信哉「大丈夫ですから…。」

警察「女の子泣かせて 何やってんだ! おい… おい ちょっと来い!」

川村屋

応接室

なつ「ゆうべは すいませんでした。」

光子「警察から連絡があった時は 本当に驚いたわ。」

なつ「すいません…。」

光子「まあ 座って。 お兄さんと 何があったの?」

なつ「私には 兄のことが よく分からないんです。」

光子「分からない? それは しかたないわよ。 ずっと離れていたんだし…。」

なつ「いつも 人のことばかり考えてて 兄自身は ちゃんと生きていないみたいな気がしてて…。 それは 私のせいでもあるんです…。 私が 東京に来たせいで 兄は ますます 昔のまま 自分のために 生きられなくなって いるのかもしれません…。」

光子「咲ちゃんは 自分のことより 人のために生きるのが好きなのよ。 そういう人もいるのよ。 私の亡くなった祖母はね ムーランルージュのことは あんまり好きではなかったけど 咲ちゃんのことだけは なぜか気に入って かわいがってたのよ。」

なつ「先代のマダムがですか?」

光子「それで ムーランルージュが潰れた時 咲ちゃんを この川村屋に雇おうとしたの。」

なつ「えっ?」

光子「咲ちゃん すっごく喜んだんだけど 結局 それを断ったわ。」

なつ「断ったんですか…。」

光子「岸川亜矢美さんって ダンサーのことを 母親みたいに思ってるでしょう?」

なつ「はい。」

光子「その人の居場所を作ってやることが 今の自分の夢だからって。 だから 何としても ムーランルージュを復活させたいんだ。 そのために 自分のやれることは 何でもやるってね。」

なつ「その話は 兄からも聞きました。」

光子「つまり そういうやつなのよ 咲ちゃんは。バカなところがあるけど 人を思う気持ちは 単純すぎるぐらい まっすぐなの。 その咲ちゃんが ずっと 心の中で 本当は 何を求めているのか…。 その答えが あなたなんじゃないかしら。」

(ドアを開く音)

野上「マダム… あの マダムにお会いしたいと…。」

亜矢美「失礼いたします。」

光子「あら… お久しぶりです。」

なつ「亜矢美さん。」

亜矢美「マダム ゆうべは 咲太郎が 大変お世話になりました。」

光子「いいえ 私は何も。」

亜矢美「どうぞ これを お納め下さい。」

光子「何でしょう? これは。」

亜矢美「咲太郎が お借りしておりました お金です。 1万円だけですが。」

光子「あなたから受け取る筋合いは ございませんよ。」

亜矢美「いや どうぞ…。 今は これで精いっぱいです。」

光子「受け取れません。」

亜矢美「お受け取り下さい! 咲太郎の借金は 私の借金。」

光子「これは 私の責任ですから!」

亜矢美「いえ いえ いえ…。」

光子「いくら マダムが… 咲太郎に 恋をされていたからといっても 咲太郎のしたことは 許されることじゃありません。」

光子「ちょ… ちょっと待って下さい! 何か勘違いしてるようですけども…。」

亜矢美「いいんです! 誰だって 恋をしちゃったら もう しょうがない。」

光子「してませんから!」

亜矢美「恋でしょ… 何てったって 恋! うん! でなかったら マダムのような方が 咲太郎の保証人になって下さるなんて ううん 不自然…。」

光子「してない!」

亜矢美「なつさん あなたに 聞きたいことがあったんだ。」

なつ「はい…。」

光子「してませんから!」

亜矢美「分かってます 大丈夫。 なつさん あなた 戦死されたお父様の 手紙を持ってらっしゃる?」

なつ「はい…。」

亜矢美「その手紙の仲に 家族の絵が描いてあった って聞いたんだけど。」

なつ「はい。 絵がありました。」

亜矢美「うん。 咲太郎は その絵を思い出しながら 自分でも 家族の絵を描いて 私に見せてくれたの。 はい。」

なつ「えっ…。 これ お兄ちゃんが描いたんですか?」

亜矢美「あいつは 自分で絵を描いて 自分の心の支えにしてきたんだわ。 咲太郎が あなたに どんだけ迷惑をかけてるか…。 だけど あいつは 今でも そうやって 一生懸命 生きてんだよね。 それだけは 分かってあげて。」

なつ「そっくりです…。 お父さんの絵に この絵 そっくりです…。」

川村屋

社員寮

<なつよ… 咲太郎を どうか許してやってくれ。>

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