ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第54話「なつよ、夢をあきらめるな」【第9週】

あらすじ

東洋動画の試験に合格したなつ(広瀬すず)。川村屋のアパートを出て、亜矢美(山口智子)の家で、兄・咲太郎(岡田将生)とともに暮らすことにする。光子(比嘉愛未)と野上(近藤芳正)たちは、それぞれの言葉でなつを送り出す。引っ越しの日、なつは荷を解きながら、本当の家族との暮らしが始まることに不思議な感覚を覚える。その晩、咲太郎は風車の厨(ちゅう)房に立って、料理人だった父の得意料理をなつにふるまい始め…。

54話ネタバレ

おでん屋・風車

2階住居

咲太郎「こっちだ こっち。」

<なつは 咲太郎と一緒に 新しい生活を始めようとしていました。>

咲太郎「ここが 俺の部屋だ。 来たことあるな。」

なつ「うん。 ねえ もう一部屋あるんだよね?」

咲太郎「うん ある。 あるには ある。 ここだ。」

なつ「うわ~!」

咲太郎「3畳しかない。」

亜矢美「今 私の衣装部屋に なっちゃってんだけどね。」

なつ「なまら すごい… ちょっと見てもいいですか?」

亜矢美「いいよ。」

亜矢美「ここにあるもん どれでも 好きに着ていいからね。」

なつ「本当に いんですか?」

亜矢美「うん。 着てくれたら 服も喜ぶわ。」

咲太郎「よし じゃ この衣装 全部 あっちの部屋に移そう。」

なつ「何で?」

咲太郎「お前が あっちの部屋を使え。 俺は ここで十分だ。」

なつ「えっ いいよ 私が こっちで。」

咲太郎「いいから。 俺は どうせ 寝に帰るだけだ。」

なつ「本当にいいの?」

咲太郎「もちろんだよ。 なつと 一緒に暮らせるなら こんなに うれしいことはない。」

なつ「うん。 あっ そんで お部屋代はいくらですか?」

亜矢美「部屋代?」

咲太郎「いいよ 部屋代なんか。」

なつ「言って下さい。」

亜矢美「う~ん そうね… まあ タダって言いたいとこだけど…。 お給料って どれくらい もらえんの?」

なつ「5,000円。」

咲太郎「そんなに安いのか? 天下の東洋が。」

なつ「高卒の臨時採用だから。」

亜矢美「じゃあ このうちにあるもの 何でも使い放題 食べ放題 着放題ってことで 1 5! 1,500円でどうだ? 1か月。」

なつ「はい 分かりました。 よろしくお願いします。」

川村屋

応接室

光子「そう… お兄さんと一緒に 暮らすことに決めたのね。」

なつ「はい。 本当に お世話になりました。 兄も お礼に伺いたいと 言ってたのですが…。」

光子「いいわよ 来なくて。」

なつ「はい。 かえって ご迷惑かと…。 兄は すぐに 女の人に 誤解を与えますから。」

光子「ちょっと? あなた 何か誤解してない? 私と咲ちゃんは 何でもないんだからね。」

なつ「分かってます。 今は 何もなくて いかったと思います。」

光子「昔から!」

野上「ああ…。」

なつ「はい。」

光子「それより あなたが 人のために無理しちゃダメよ。 夢を追いかけるのは… 女が働くといういうことは それだけで 大変なことなんだから。 しっかり 自分を持って 自分を支えていきなさいね。」

なつ「はい。 分かりました。」

光子「まあ これからも 新宿にいるなら 寂しくないわよね 野上さん。」

野上「いや 私は 寂しいなどとは…。」

なつ「これからも ここに ちょくちょく来ますから。 来てもいいですか? 野上さん。」

野上「お客様で来られるなら どなたでも歓迎します。 ただし ほかのお客様に ご迷惑にならなければ。」

なつ「はい。」

野上「フフフ…。」

光子「いつでも いらっしゃい。」

なつ「はい。」

光子「頑張ってね。 おめでとう なっちゃん。」

なつ「ありがとうございました。」

(笑い声)

野上「何?」

光子「泣いてる?」

野上「泣いてない…。」

厨房

佐知子「なっちゃん お願いします。」

なつ「はい。」

<なつは 上京して半年間 川村屋で働きました。 川村屋の仲間とも これでお別れです。>

なつ「皆さん 今日で最後です。 短い間でしたが 本当にお世話になりました。 ありがとうございました!」

(拍手)

杉本「なっちゃん ご苦労さん。 よく働いた。 どこ行っても その調子で頑張れ!」

なつ「ありがとうございます。」

(拍手)

「頑張れ!」

「頑張れ なっちゃん!」

「なっちゃん 頑張れ!」

社員寮

佐知子「本当に 行っちゃうのね。 寂しくなるわ。」

なつ「お店に行けば また いつでも 佐知子さんに会えますから。」

咲太郎「そうだよ。 いつでも会えるよ さっちゃん。」

なつ「いつでも そういうこと言うのやめて。」

佐知子「いつでも待ってるからね 咲ちゃん。」

咲太郎「ああ。」

なつ「その鈍感な返事もやめて!」

雪次郎「あっ なっちゃん 咲太郎さん 引っ越しなら手伝うべ。 せっかく 今日休みだし。」

なつ「大丈夫。 そんな荷物ないから。」

咲太郎「あ そうだ 今夜 なつの就職祝やろうと思うんだ。 さっちゃんも 雪次郎も来い。 俺が おいしいもん作ってやるからな。」

なつ「えっ お兄ちゃん 料理できんの?」

咲太郎「何でも できちゃうんだよな 兄ちゃんは。」

雪次郎「それで 何者でもないのが不思議ですよね。」

なつ「あ~ うん…。」

咲太郎「えっ…。」

雪次郎「えっ?」

おでん屋・風車

2階なつの部屋

咲太郎「なつ。」

なつ「うん?」

咲太郎「この箱 どうする?」

なつ「あ~ それは 押し入れにお願い。」

咲太郎「おう。 よし…。」

1階店舗

なつ「天ぷら? 天ぷら作れるの?」

咲太郎「天ぷらじゃない。 天丼だ。」

なつ「ああ… 昔 料理人だった お父さんが作ってくれた 天丼が食べたいって言ってたもんね。」

咲太郎「その味が忘れられなくて どこの店で 天丼食べてもダメで こうなったら 自分で作った方が 早いんじゃないかと思ってな。」

佐知子「すっごい楽しみ!」

咲太郎「天ぷらというのは 結局 衣で決まるんだ。 いいネタを生かすも殺すも 衣なんだ。 粉は かき混ぜちゃダメだ。 こうやって 優しく溶くんだよ。」

雪次郎「修業したみたいですね。」

咲太郎「雪次郎 人生は 何事も修業だ。」

雪次郎「なるほど。」

なつ「料理人 目指せばいいじゃん お兄ちゃん。 昔 お父さんの店を 立て直すんだって言ってたんでしょ?」

亜矢美「そうなの?」

なつ「そうなんです 子どもの頃に。」

咲太郎「それが いつの間にか ムーランルージュの立て直しに 変っちゃったんだな 母ちゃんと出会って。」

亜矢美「私のせいにしないでよ。」

(戸が開く音)

信哉「こんばんは。」

咲太郎「おう 信!」

亜矢美「お~ いらっしゃい。」

なつ「信さん!」

信哉「なっちゃん。」

なつ「ん?」

信哉「就職おめでとう!」

なつ「え~! 忙しいのに ありがとう。 お花もらうなんて 初めてだわ。」

雪次郎「あっ こっち どうぞ。」

なつ「え~…。」

咲太郎「よし。 これで 昔の家族もそろったな。」

なつ「千遥がいないけど…。」

咲太郎「千遥のことは言うな。」

信哉「そういえば 親戚の移転先は探さないのか?」

咲太郎「探してどうするんだ。 幸せを壊すのか?」

(戸が開く音)

亜矢美「おっ カスミねえさん。」

カスミ「お店 お休み?」

亜矢美「今日はね なつさんの就職祝。」

カスミ「あら 就職? 川村屋 辞めちゃったの?」

なつ「はい。」

亜矢美「漫画映画を作る会社にね。 夢をかなえたのよ。 で 今日から ここで 一緒に暮らすの。」

カスミ「ここで?」

なつ「はい。」

カスミ「そう… そうしたんだ… おめでとう。」

なつ「あっ ありがとうございます。」

レミ子「カスミねえさん 私たち 呼ばれてませんよね!」

カスミ「うん そうね…。 仕事の前に 腹ごしらえしようと思ったんだけど…。」

亜矢美「あ… いいわよねね? 咲太郎 ねっ…。」

咲太郎「もちろんだよ。 レミ子 水くさいこと言うな。」

レミ子「どっちが水くさいのよ。」

咲太郎「カスミねえさん 俺の天丼 食べてって下さい。」

カスミ「それじゃ お言葉に甘えようかしら。」

亜矢美 なつ「どうぞ~!」

一同「頂きま~す。」

なつ「うん!」

カスミ「うん!」

信哉「うん うまい! こんなうまい天丼 初めて食った!」

咲太郎「信… そんな喜ぶなよ。 お前も苦労したからな。」

なつ「信さんは 苦労が報われてるの。 今は放送記者なんだから。」

信哉「まだ修業中だよ。」

なつ「お兄ちゃんも 報われる修業をしないとね。」

咲太郎「はい 分かった 分かった。」

雪次郎「咲太郎さんは 役者やダンサーを目指さないんですか?」

咲太郎「ん?」

亜矢美「私もね どうせ やるなら ちゃんと勉強しろって言ってんだけど 裏方ばっかり やりたがんのよね この子。」

カスミ「昔から そうだったわよね 咲坊は。」

咲太郎「何か好きなんだよな 裏の仕事って。 表に立つ いい役者や いい芝居が見られると それで満足しちゃうんだ。」

なつ「へえ…。」

信哉「咲太郎らしいといえば 咲太郎らしいけど。」

なつ「おんなじかも。」

咲太郎「えっ?」

信哉「何が おんなじなの?」

なつ「私も そういう仕事がしたい…。」

信哉「うん。 本来 仕事って そういうもんだよ きっと。 人目に触れない人たちの活躍で 物事の大半は作られてるんだ。」

雪次郎「俺も裏方だな 今は…。」

佐知子「今は?」

咲太郎「何でもいい。 自分を生かす仕事を見つけた者は 幸せだ。」

なつ「うん。」

咲太郎「ハハハ…。」

雪次郎「おいしい。」

咲太郎「おいしいか。 いっぱい食ってくれ。」

2階なつの部屋

亜矢美「攻めの赤に… あっ… このレモンちゃんで 爽やかさん。 フフフ…。 はい。 で 一番上留めると 何か かわいいよ。 ほら かわいいよ。」

なつ「えっ…。」

亜矢美「どうだ。」

なつ「いいです… すてきです!」

亜矢美「初日だからね ほどほどに 派手ぐらいでいいんじゃないの。」

なつ「亜矢美さん これから よろしくお願いします。」

亜矢美「あっ… どうしたの? 何か こちょばいよ こちょばい…。 何か うれしいけど フフ… よろしくお願いします。 はい 行ってらっしゃい!」

なつ「はい 行ってきます!」

亜矢美「はい。 あっ じゃあ 私 靴の色 見てくるね…。」

なつ「あっ ありがとうございます。」

咲太郎の部屋

咲太郎「(いびき)」

なつ「行ってきます お兄ちゃん。」

東洋動画スタジオ

<なつよ 新しい日々が始まる。 思う存分 自分の絵に 命を吹き込めよ。 来週に続けよ。>

モバイルバージョンを終了