あらすじ
麻子(貫地谷しほり)から理不尽な厳しい言葉をかけられたなつ(広瀬すず)。憤慨しながら帰宅して、亜矢美(山口智子)に報告する。すると、客として来ていた書店の社長である茂木(リリー・フランキー)から、麻子の言葉の裏にある、思いもよらない意図を聞かされる。作画課で拾った動画用紙を見つめるうちに、なつはあることをひらめき一心不乱に絵を描き出し…。
57話ネタバレ
東洋動画スタジオ
作画課
なつ「また お邪魔します。」
仲「おお 来たね。」
なつ「はい。」
仲「うん 遠慮せず見てってよ。」
下山「ゴミ箱から拾って 先輩の絵を どんどん模写して 自分なりに描いてみるといいよ。」
中庭
麻子「何なの? あなた。 そんな おしゃればっかり気ぃ遣って。 男 探しに来てるだけなら 目障りだから 私の前 うろちょろしないでちょうだい。」
なつ「はあ…。 何だべ 今の…。」
おでん屋・風車
1階店舗
なつ「ただいま!」
亜矢美「あっ お帰り。 あれ どうした?」
なつ「えっ?」
亜矢美「わっ 何か怒ってる? 怖いよ。 顔。」
なつ「私 怒ってますか? 怖い顔してますか? 私の顔って そんなに 何か見えますか?」
亜矢美「えっ? 何言ってんの?」
なつ「誤解されやすいんでしょうか…。 にじみ出てるなんて ありえない…。」
亜矢美「何かあったの?」
なつ「いえ なんも… すいません 大丈夫です。」
茂木「話は聞かせてもらったよ。 なっちゃん。 まあまあ 座んなさい 座んなさい ほら ほい ほい ほい…。 いいかい? 男が美人に接する時に 冷たく感じるのは 自分が どう思われているのかって 気にし過ぎるからなんだ。」
なつ「私の相手は男ではないし 私は美人でもありません。」
茂木「相手は女か…。 それじゃ おんなじことだな。 自分が 男から どう思われているか 君を通して 気になってるんだよ。 つまり 自分が誤解されたはいないか おびえているんだな。」
なつ「う~ん…。」
茂木「それと 君が美人じゃないなんて それこそが誤解だよ。」
亜矢美「社長 この子 口説いたら この店 出入り禁止!」
茂木「いや 口説いてないでしょう…。」
なつ「ありがとうございました。」
茂木「おいおい おい…。 大丈夫 かわいいぞ。」
2階なつの部屋
回想
麻子「もういい。 ここ 私がやる。」
回想終了
なつ「う~ん… この絵に 何が足りないんだろう…。」
なつ<許仙(しゅうせん)を追って やって来た白娘(ぱいにゃん)は 塔に隠れ 許仙を呼び寄せる。 そして 許仙は 塔に向かう。 しかし またしても 法海(ほっかい)が立ちはだかる。 白娘と法海は 魔術を使って激しく戦う。 その果てに 白娘は負けてしまう。 力尽きた白娘は 自分の体が 半分 蛇に戻りかけていることを知る>
なつ「これは その時 許仙とは もう会えないと思って泣くシーンだ…。」
回想
麻子「これは 戦いに敗れた白娘が 白蛇に戻ることを知って 許仙を思って泣くシーンでしょ? それを思って動かしてよ!」
回想終了
なつ<人は どうして泣くんだろう…>
回想
なつ「バカヤロー…。」
回想終了
なつ<何かを失って悲しいから。 何かを守ろうと必死になるから。 誰かを大事に思って 胸が張り裂けそうになるから>
咲太郎「なつ。 飯も食わないで 何やってんだ? これ 母ちゃんが持ってけってさ。」
なつ「えっ もう11時…。」
なつ「あっ… ごめんなさい。 ありがとう! 頂きます。 う~ん おいしい。」
咲太郎「うん? 仕事か?」
なつ「仕事じゃないんだ まだ…。」
咲太郎「そうか…。 まあ 頑張れ。」
なつ「お兄ちゃんは?」
咲太郎「ん?」
なつ「ううん 何でもない。」
咲太郎「俺だって頑張ってるよ。 劇団の公演は 来年だから それまでは いろいろ働かないとな。 マダムへの借金は 残念ながら 劇団の仕事だけじゃ返せないんだ。」
なつ「頑張ってるね。」
咲太郎「そんじゃ 母ちゃんの片づけでも 手伝ってくるか。」
なつ「あっ 私も」
咲太郎「いいから! お前は ほどほどにして 早く寝ろよ。」
なつ「ありがとう。」
咲太郎「おやすみ。」
なつ「おやすみなさい。」
翌朝
亜矢美「はい こっちかな こっちかな?」
なつ「派手です。 おしゃれすぎます。 ダメです!」
亜矢美「どうして?」
なつ「おしゃれは… 誤解されますから。」
亜矢美「誤解? どんな?」
なつ「男の人の目を意識してるとか…。」
亜矢美「で 認めるの?」
なつ「えっ 認めません!」
亜矢美「じゃ どうすんの?」
なつ「いっちゃって下さい!」
東洋動画スタジオ
仕上課
なつ「ああ…! あっ あっ…。」
桃代「ん? ああ ちょっと 何やってんのよ。 もう拭かないで 乾くの待った方がいいよ。」
なつ「すいません…。」
桃代「手袋も取り替えてね。」
なつ「はい。」
桃代「しかし あなたの服の色も 日に日に増していくのね。」
なつ「はい。 負けませんから。」
桃代「何と戦ってんのよ?」
(チャイム)
桃代「なっちゃん お昼よ。 食べないの?」
なつ「これだけ やっちゃいます。 モモッチさん 気にせず 先に食べに行って下さい。」
桃代「別に 気にしないけど また食べ損なっちゃダメよ。」
なつ「できた。」
なつ「絵コンテ どうなってたっけ…?」
富子「奥原さん。」
なつ「はい!」
富子「お昼ごはんは食べないの?」
なつ「あ これから…。」
富子「勉強熱心なのはいいけど ちゃんと食べてないと また手元が狂うわよ。」
なつ「はい すいません。 急いで パン買ってきます。」
富子「服に 気を遣う時間はあるのに。」
なつ「あの 石井さん。」
富子「えっ?」
なつ「私の服装って ダメですか?」
富子「いいんじゃない? そういう変わった子がいても。」
なつ「かっ… 変ってるんですか これ!?」
富子「自分は変わってるって 主張したいんじゃないの? それ。 いいのよ 絵を描く人間なんて そういうの いっぱいいるんだから。」
なつ「パン買ってきます。」
富子「行ってらっしゃい。」
なつ「はい。 あっ… こんにちは。」
富子「マコちゃん どうしたの?」
麻子「トミさん 色見本 見せてもらえますか?」
富子「あっ ちょっと待ってて。」
中庭
なつ「下山さん。」
下山「あっ なっちゃん。 今から ごはん?」
なつ「はい。 隣いいですか?」
下山「どうぞ どうぞ。」
なつ「ハハハ… すごい。 似てるし面白い。」
下山「誰でも描けるよ これぐらい。」
なつ「頂きます。 あの~…。」
下山「あっ。 何?」
なつ「下山さんから見て 大沢さんって怖いですか?」
下山「大沢って… ああ うちのマコちゃん?」
なつ「はい。」
下山「怖くないよ ちっとも。 熱心なだけで。」
なつ「熱心… ですか。」
下山「うん。 彼女は とにかく優秀だからね。 美大を出て うちに入社して すぐ仲さんと井戸さんに認められて セカンドに抜てきされたんだ。 その能力を知らない人からしたら 怖く見えるのかもしれないけどね。 ほら 彼女に いつも怒られてる 堀内君っているじゃない?」
下山「まあ 彼も 芸大で 油絵を描いていた 秀才なんだけど マコちゃんの言わんとしてることが 分かってないんだよね。 マコちゃんは アニメーションにとって 一番大事なものを 最初から 感覚として分かってる人なんだ。」
なつ「それは 何ですか?」
下山「命を吹き込むことだよ。 あのね アニメーションっていうのは ラテン語で 魂を意味する アニマっていう言葉から来てるんだ。 動かないものに 魂を与えて動かす つまり 命を与えるっていうことなんだ。」
なつ「アニメーションって言葉が そういう意味だったんですね。」
下山「どう動かせば どう見えるのか どう感じてもらえるのか…。 本気で命を吹き込もうと思えば 悩まないアニメーターなんていないよ。」
なつ「だから 怒りもするんですね…。」
仕上課
富子「マコちゃん お待たせ。」
麻子「トミさん 何ですか? この動画。」
富子「えっ? さあ 知らないわ。」
麻子「彩色の机よね…。」
富子「さっきまで ここにいた 奥原って新人の机よ。 変わった服装してる子。」
麻子「ああ そういうことか…。 勝手に拾ったのね。」
富子「マコちゃん…?」
中庭
<なつよ 何か見られてるぞ。 そんな おいしそうに パンを食べてていいのか? なつよ…。>