あらすじ
帯広から柴田牧場に帰ってきたなつ(粟野咲莉)は泰樹(草刈正雄)の許しを得て学校に通うことになった。登校初日の休み時間、転校生に興味津々の同級生たちに囲まれると、東京で浮浪児だったことをからかわれてしまう。そのとき、教室でひとり絵を描いていた山田天陽(荒井雄斗)がなつをかばう。放課後、お礼を言おうと天陽に近づいたなつは、まるで生きているかのように躍動する、ノートに描かれた馬の絵に目を奪われる。
5話ネタバレ
柴田家
子供部屋
夕見子「これ あげる。 おやすみ。」
なつ「ありがとう。」
牛舎
なつ「おはようございます!」
悠吉「おっ 元気だな。」
菊介「おはよう。」
剛男「おはよう。」
泰樹「おはよう なつ。」
なつ「はい おはようございます!」
泰樹「なつ 搾乳終わったら 今日は 学校へ行け。」
なつ「えっ…はい。」
剛男「なっちゃん いかったな。」
泰樹「分かったら さっさと働け!」
2人「はい!」
居間
なつ「はあ。」
富士子「はい これ 弁当ね。」
なつ「ありがとうございます。」
富士子「勉強道具も ちゃ~んと そろえといたから。」
なつ「すみません。」
剛男「学校 俺も一緒に行くから。」
富士子「大丈夫かい?」
剛男「大丈夫だよ。 挨拶ぐらいできるわ。」
富士子「じゃあ もう一つ弁当ね。」
剛男「弁当の時間まではいないよ。」
富士子「あっ そっか。」
夕見子「行くなら もう時間だよ 父さん。」
剛男「すぐに着替えてくる。」
玄関
剛男「行ってきます。」
3人「行ってきま~す。」
富士子「行ってらっしゃ~い。」
夏「行ってきま~す!」
悠吉「気ぃ付けてな~!」
菊介「頑張れよ!」
照男「あっ 手振った。」
剛男「うん。」
夕見子「仲いくなったの?」
なつ「はい。」
夕見子「あのさ もう分かったから。 無理に働かなくてもいいから。」
なつ「別に無理してないよ。 夕見子ちゃんも 一緒にやならい? 牛の乳搾り 面白いよ。」
夕見子「絶対に やだ! 何で牛乳なんか 搾らなきゃなんないのさ。」
剛男「夕見子は 牛乳が嫌いなんだ。 戦争から戻っても まだ直ってなかったな。」
夕見子「一生 飲まんから。」
なつ「あんなに牛がいるのに もったいない。」
夕見子「牛なんか臭いだけだし 私にとっては な~んも役にも立たない。」
なつ「えっ あんなに かわいいのに…。」
照男「(ため息)」
剛男「どうした 樽尾? ため息なんかついて。」
照男「俺は まだ 搾乳教わってないのに…。」
剛男「ああ… いつでも教えてやるよ。」
小学校
「おはよう。」
「おはようございます。」
剛男「今日から もう一人 よろしくお願いします。」
校長「それで その子は 柴田さんの養子になさるおつもりですか?」
剛男「いえ あの子には 実のきょうだいがいるんです。 いずれ また 一緒に暮らしたいと思ってるようです。 なので 籍は入れず 名前も 奥原なつのまま うちの子として育てたいと思ってます。」
花村「ご立派ですわ。 なかなか できることじゃありませんもの。」
剛男「いえ… 本当に それがいいかどうかは あの子次第です。」
なつ「奥原なつです。 よろしくお願いします。」
花村「奥原なつさんは 東京から来て 今は 柴田夕見子さんの家に 家族として暮らしています。 みんな 仲よくして下さいね。」
一同「は~い。」
花村「では 夕見子さんの隣に座って。」
なつ「はい。」
花村「はい それでは 皆さん 国語の教科書を開いて下さい。 この前の授業の続きです。 6ページを開きましょう。 広げましたか? 6ページですよ。」
夕見子「はい。」
なつ「ありがとう。」
夕見子「いちいち いいって。」
大作「東京って お前の家も 空襲で焼けたのか?」
なつ「えっ?」
実幸「天陽君と おんなじじゃないのか?」
大作「それで疎開してきたんだろう?」
なつ「違う。」
夕見子「山田君は疎開じゃないしょ。 開拓に来たんでしょ。」
大作「でも うちの親は疎開者だって言ってるぞ。」
なつ「私も 空襲で 家が焼けたのは同じです。 それで 親を亡くして 孤児院にいました。」
さち「孤児院?」
実幸「東京で?」
なつ「はい。 その前は… 浮浪児でした。」
大作「ふろうじ?」
実幸「家がなくて 外で暮らしてる子どもだべ。 東京には そういう子どもが 街に たくさんいるんだって。 野良犬みたいに暮らしてて バイ菌とか 怖~い病気 いっぱい持ってるって。」
一同「ええっ!」
夕見子「ちょっと いいかげんなこと言わないよ!」
なつ「病気で死んだ子は いっぱいいました。」
一同「ええっ!」
夕見子「あんたまで言わないでよ!」
なつ「私は 夕見子ちゃんのお父さんに 助けられました。 赤の他人なのに 助けてくれたんです。 それで 北海道に来たんです。」
さち「夕見子ちゃんのお父さん 偉いね。」
大作「だけど こいつが病気だったら どうすんだよ!」
夕見子「ちょっと!」
大作「病気じゃないって 証拠見せろよ。」
なつ「証拠?」
大作「野良犬が病気かどうかなんて ちょっと見ただけじゃ 分かんねえだろ。」
なつ「フフフフ…。」
夕見子「ちょっと 何で笑うのさ!」
天陽「病気だったら とっくに その子は死んでるよ。 東京から北海道までって どれぐらい離れてると思ってんだ。」
大作「そっか…。」
柴田家
畑
剛男「ただいま。」
富士子「お帰り。 どうだった?」
剛男「大丈夫だよ あの子は賢いから すぐに慣れるよ。」
富士子「あとは 私らが 本当に あの子の親になれるかどうかだね。」
剛男「そだな。」
小学校
(ベル)
なつ「うわ~ うまい! さっきは ありがとう。」
天陽「あっ 別に。」
なつ「それ あなたんちの馬?」
天陽「うん 死んじゃったけどね。」
なつ「死んじゃったの?」
天陽「買ったけど もう死ぬ年だったんだ。 だまされたんだ。」
なつ「でも 生きてるみたい。」
天陽「絵では生きているようにしなくちゃ。 思い出すことにならないだろ。 大好きだったんだ この馬…。」
なつ「フフフ。」
柴田家
牧場
夕見子「ねえ 何で怒らないの?」
なつ「怒る?」
夕見子「嫌なこと言われたら 怒ればいいじゃない。 遠慮したって 誰も あんたのこと いい子なんて思わないよ。」
なつ「別に… いい子じゃないよ 私は。」
夕見子「ほら そういうとこ。 もっと言い返せばいいじゃない。」
なつ「言い返してるでしょ?」
夕見子「言い返してないよ。」
なつ「何て言えばいいの?」
夕見子「そんなことは 自分で考えなよ。」
なつ「難しいなあ…。」
夕見子「あんたは野良犬? 病気なんか持ってないでしょ?」
なつ「分からない。」
夕見子「えっ 分からないの?」
なつ「孤児院のお医者さんは 大丈夫だって。」
夕見子「そしたら大丈夫さ。 したら もっと怒りなよ。」
なつ「浮浪児だったのは 本当だし…。」
夕見子「それは あんたのせいじゃないしょや。」
なつ「怒らないでよ。」
夕見子「あんたが怒んないからさ。」
玄関
正治「では これ…。」
なつ「あっ!」
富士子「お帰んなさい。 どうしたの?」
なつ「あの…。」
正治「それじゃ。」
富士子「ご苦労さま。」
なつ「手紙… 来てませんか?」
富士子「なっちゃんに?」
なつ「はい。」
富士子「うん… 来てないわ。」
夕見子「ただいま。 どうしたの?」
富士子「お帰んなさい。 なっちゃん 学校どうだった?」
なつ「すいません!」
正治「何?」
なつ「すみません あの… 手紙は どうやって出したらいいんですか?」
正治「手紙? 君が出したいの?」
なつ「はい。」
正治「どこに出すの?」
なつ「東京の家族です。 どうやって出したら いいですか?」
正治「それなら おじさんが出してあげるよ。 明日でいいかな? 受け取りに来るよ。」
なつ「いくらですか?」
正治「えっ…。」
富士子「なっちゃん 手紙待ってたの?」
なつ「すみません。」
富士子「謝らなくていいの。 もしかして 東京にいるお兄さんからかい?」
なつ「はい。」
富士子「なっちゃんの方からは 手紙出さないの?」
なつ「あの… おばさん お願いします。 手紙を出す10銭 貸してもらえませんか?」
富士子「何さ それ! そんなことは いいから。 なっちゃん。 なっちゃんは 今 この家で暮らしてるけど なっちゃんは なっちゃんでしょ! 東京にいるお兄さんだって 親戚の家にいる妹さんだって なっちゃんにとっては 大事な家族でしょ。」
富士子「そういう気持ちを 隠す必要はないの。 そういうなっちゃんを おじさんもおばさんも ここで育てたいの。 分かる? なっちゃんは 自分の思ってることを 素直に言えばいいのよ。 いくらでも 手紙を出しなさい。 書きなさい。 謝らないで。 お金のことなんて気にしないで。」
なつ「はい ありがとうございます。」
子供部屋
<なつは 久しぶりに 亡くなったの父の手紙を開けました。 そこには 一枚の懐かしい家族の絵がありました。>
なつ「お兄ちゃん どうして手紙をくれないの?」
<なつよ 本当の家族が恋しくなったのか…。>