ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第60話「なつよ、絵に命を与えよ」【第10週】

あらすじ

アニメーターになるための試験を受けたなつ(広瀬すず)。試験の夜、仲(井浦新)や井戸原(小手伸也)、露木(木下ほうか)らが集まり、受験者の描いた絵を採点する。しかし、なかなか決めきれない。日が変わり、ようやく決断した仲と井戸原はなつを呼び出し、結果を伝える。そのころ十勝では、天陽(吉沢亮)が、森の奥深くの小屋へと向かっていた。それは、弥市郎(中原丈雄)の娘・砂良(北乃きい)の家で…。

60話ネタバレ

東洋動画スタジオ

試験会場

<昭和31年の暮れ 仕上課にいる なつは 特別に アニメーターになるための試験を 受けさせてもらえることになりました。>

なつ「あ~… 下手くそ…。」

井戸原「は~い 時間です。 そこまで。」

仲「みんな ご苦労さん。 今日は そのまま帰っていいですよ。」

茜「あなたって すごいのね よくこんなに描けたわ。」

なつ「あ… 全然ダメでした。」

茜「えっ? 私は 三村 茜です。どうぞ よろしく。」

なつ「奥原なつです。」

所長室

井戸原「じゃ 次は 問題の奥原なつさん。」

山川「おお すごいね これは。」

仲「描いた枚数は 断トツの1番です。 15枚以上どころか 30枚も描いてます。 しかし ラフの状態のものがほとんで クリーンナップしたものに限れば 13枚です。」

井戸原「このゆがんだ線を クリーンナップと呼べるならな。」

仲「そういう基礎を 彼女は学んでないんですよ。 全部 我々が描いたものを見ての 独学なんです。」

露木「いや それじゃ ほとんど勘じゃないかよ。」

仲「そうなんです。 そこなんですよ 露木さん。 その勘が 彼女には備わってるってことなんですよ。」

おでん屋・風車

2階住居

<なつは その晩 悔しそうに いつまでも 絵の清書を練習していました。 そして 翌日。>

東洋動画スタジオ

会議室

仲「結論から言うと 不合格でした。」

なつ「分かりました。」

仲「悔しそうじゃないんだね?」

なつ「悔しいです。 とっても…。 けど それは 自分のせいですから。」

井戸原「うん… どうして 動画を こんなに描いたんだい? 15枚でいいところを 30枚も描いたのはどうして?」

なつ「見たら イメージが湧いてきて どうしても描きたくなったんです。 でも ダメです。 自分が描きたいものに 自分の手が追いついていかないんです。 それが もどかしくて…。 自分が下手なんだって よく分かりました。 それが悔しくて…。 今の自分には おいしい牛乳は まだ搾れないんだって よく分かりました。」

井戸原「えっ… うん? えっ 何で牛乳なの?」

なつ「あ… 乳牛を育てることなら ちょっとは自信があるので。」

井戸原「乳牛…?」

なつ「すいません 何でもないです。」

仲「動画の勉強は続ける?」

なつ「もちろんです! それは 続けさせて下さい。 お願いします。」

仲「分かった。 それじゃ もう行っていいよ。」

なつ「はい。 今回は ありがとうございました。:

井戸原「お疲れさん。」

井戸原「参ったね…。 イメージに 手が追いつかないか…。 あれで もう 我々と同じことで悩んでるんだからね。」

仲「あの子も 一生悩むんでしょうね…。」

井戸原「うん…。」

阿川家

砂良「あら いらっしゃい。」

天陽「こんにちは。」

弥市郎「よう 天陽! お前の絵 展覧会で 賞取ったんだってな。」

天陽「あ… まあ。 初めて そういうところに出品したんで 素人の絵が 珍しかったんじゃないですかね。」

砂良「なっちゃんも喜んだでしょう。 なっちゃんには知らせたの?」

天陽「あっ うちの牛乳 飲んで。」

砂良「持ってきてくれたの?」

天陽「うん。」

砂良「ありがとう。」

(戸をたたく音)

砂良「あっ はい ちょっと待って。 あ… ちょっと ごめんね。」

菊介「こんちは!」

弥市郎「おお どうした?」

菊介「どうも。 いや~ しばれるね。」

砂良「菊介さん?」

菊介「おう…。 そうだ。 柴田牧場の菊介さんだ。 今日 うちのバター届けに来たんだわ。 ほい これ。 うめえぞ。」

砂良「何でバターを?」

菊介「うちの照男君が作ったんだわ。 あんたに食べさせたくて。 あれ 天陽君でねえの。 何で おめえが ここにいんだ?」

天陽「何でって…。」

菊介「おめえ まさか 砂良さんのことが好きなんでねえべな?」

砂良「ちょっと 何言ってんの? 菊介さん。」

菊介「砂良さんは うちの照男君が 先に好きなったんだからな。 おめえも それ分かってるべ?」

天陽「分かりません。」

菊介「分かんねえか? はあ~ 分かんねえから 牛乳持ってきたのか? 牛乳は 真っ白でも おめえの腹 真っ黒だ。 なっちゃんがいなくなったら 砂良ちゃんか? 大したもんだな。」

天陽「なっちゃんは関係ないしょ!」

菊介「それに比べて 照男の腹は真っ白だ! 真っ白い心で 砂良さんのことを いつも思ってる。 その気持ちには 一点の曇りもない。 十勝晴れだわ。 照男は いつも 心に砂良ちゃんを 強く思ってんのさ!」

天陽「砂良さんには 何も伝わってねえべ!」

菊介「そうなんかい? 砂良ちゃん。」

砂良「いえ…。」

菊介「照男の気持ちは分かってるべ? 砂良ちゃん。」

砂良「そんなこと言われても…。」

天陽「砂良さんは そんなバカな男を 相手にするもんか!」

菊介「バカは バカなりに考えたんだ!」

(戸をたたく音)

砂良「ちょ… ちょっと待って! 待ってって…。 何なの? 今日は。」

(悲鳴)

菊介「熊だ~!」

照男「ちょっと待った! 俺です! 俺!」

砂良「照男さん!」

照男「すいません!」

天陽「すいません。」

菊介「すいません。」

弥市郎「どういうつもりだ? お前ら。」

照男「砂良ちゃん…。 好きです。 結婚して下さい!」

天陽「お願いします!」

菊介「お願いします!」

照男「牛飼いの家に… 酪農家の嫁に来て下さい。 食べることだけは 一生困らせない。 おいしい人生を約束します! どうか 俺と一緒に生きて下さい!」

弥市郎「どうする? 撃つか?」

砂良「撃たなくていい。 撃つ時は 自分で撃つから。 嫁入り道具には それ頂戴。」

弥市郎「分かった。」

砂良「本当に ここまでバカだと思わなかったわ。 ハハ…。」

菊介「ハハハハ… やったな!」

天陽<砂良さんは バカな芝居に つきあってくれたのかな? 照男さんの思いを しっかりと受け取ってくれました>

照男「ラブレター熊ですよ。」

弥市郎「あ?」

菊介「いや よく 訳 分かんねえこと言うんだ こいつ。」

(笑い声)

なつ<天陽君 元気ですか? 照男兄ちゃんと砂良さんのこと 心から うれしいです。 バカなことを考えた 菊介さんと天陽君にも 心から ありがとうと言いたいです>

おでん屋・風車

1階店舗

なつ<お正月は 新宿の花園神社に 初詣をしました。 天陽君のことも祈っておきました>

亜矢美「なっちゃん おせち食べよう。」

咲太郎「なつ 早く来い。」

なつ「は~い。」

東洋動画スタジオ

仕上課

なつ<今は 毎日 仕上の仕事 彩色に打ち込んでいます。 それも まだまだ未熟です>

富子「奥原さん これ 色パカがあった。」

なつ「色バカ?」

富子「ここ一枚だけ 腕の色が違うと 一瞬 色がパカッと変わっちゃうでしょ。」

なつ「ああ!」

桃代「それを 色パカっていうのよ。」

なつ「バカじゃなくて パカか。」

富子「すぐ塗り直して!」

なつ「あ… はい!」

なつ<当分 北海道には帰れません。 帰りません。 じいちゃんちゃ天陽君 家族や 私を応援して見送ってくれたみんなに 送り出してよかったと 胸を張って 今の自分を感じてもらえるまでは>

なつ<私は ここで おいしい牛乳を搾れるように 自分を育てていきたいと思っています>

山田家

馬小屋

なつ<十勝に帰りたい… みんなに会いたい… だけど 今は 振り返りません。 私は ここで生きていきます>

東洋動画スタジオ

仕上課

語り<なつよ 力をつけよ。 来週に続けよ。>

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