ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第61話「なつよ、アニメーターは君だ」【第11週】

あらすじ

昭和32年春。東洋動画仕上課で働くなつ(広瀬すず)たちは、ついに数万枚におよぶセル画を仕上げて映画「白蛇姫」を完成させた。残業の日々から開放されたなつが「風車」に帰ってくると、新婚旅行で東京を訪れていた照男(清原翔)と砂良(北乃きい)の姿があった。二人の結婚の経緯や、懐かしい十勝での話で盛り上がっていると、そこへ咲太郎(岡田将生)も帰宅する。いよいよ、なつの二人の兄が顔を合わせることに。

61話ネタバレ

東洋動画スタジオ

<はい 昭和32年の春になりました。 『白蛇姫の』の仕上げ作業は 追い込みに入っています。>

仕上課

富子「小川さん ここ 目が色抜けしてる。 まだ そこやってるの?」

<なつが 仕上課に入って5か月。 初めて関わった この作品は 遅れに遅れていた作画の作業が やっと全部終わり あとは 仕上を間に合わせるのみ。 なつたちは 残業の日々が続きました。>

富子「何? あなたも あくびが出るの? あなたの場合は 仕事が遅いから出るんじゃないの!」

なつ「えっ… すいません!」

桃代「あくびを 注意されたんじゃないのよ。 仕事が遅いって言われたのよ。」

なつ「分かってるって そんなこと。」

<それから お気付きでしょうか… なつが 桃代さんに タメ口になっているのと 桃代さんのファッションが 何となく なつに近づいていることに。>

下山「さあ 僕たちも手伝いますよ! 何でも言って下さ~い!」

「仲さん…!」

<作画を終えたアニメーターたちも 仕上を手伝いに来ました。>

桃代「ガールフレンドを見つけるのが 目的なのよ。」

なつ「えっ そなの?」

桃代「うん…。」

なつ「あっ 仲さんまで!」

桃代「仲さんは 人気があるもの。 みんな 仲さんみたいになりたいのよ。 動画の人は。」

なつ「本当だ…。 でも 何で 私らには 寄ってこないんだろう?」

桃代「変わってるって 思われてるからじゃないの。」

なつ「ああ…。」

富子「みんな 締め切り すぐだから 急いで! お願いします!」

一同「はい。」

富子「袖の中 色抜けしてた。 やり直し!」

「ごめんなさい…。」

<なつの道は まだまだ これから。 始まったばかりです。>

<そして どんな仕事にも 終わりはやって来ます。>

富子「はい… オッケーです。」

山根「皆さん お疲れさまでした! 動画総枚数 6万5,298枚 全てのトレース 彩色が終わりました! 本当に ご苦労さまでした!」

(拍手と歓声)

なつ「6万5,000…! 1本の映画に…。」

<このあとは セル画と背景を 合わせて撮影し 編集され セリフの声や音楽と重ね合わせ ようやく 漫画映画は完成するのです。>

おでん屋・風車

1階店舗

なつ「ただいま!」

亜矢美「あっ お帰りなさい。」

照男「お帰り!」

砂良「お帰んなさい!」

なつ「もう来てたの?」

照男「今 着いたとこだ。

なつ「照男兄ちゃん 砂良さん 結婚おめでとう! 私は 本当にうれしい!」

砂良「ありがとう。」

なつ「ありがとうは こっちさ。 こんな照男兄ちゃんなんかと 結婚してくれて ありがとね 砂良さん。」

照男「おかしいべや その喜び方は。」

なつ「えっ? ハハ…。 結婚式行けなくて ごめんね。 仕事が 一番忙しい時で。」

照男「いいんだ。 畑仕事が忙しくなる前にって 式を急いだ俺が悪いんだ。」

なつ「次の冬まで待てなかったの?」

照男「う~ん 待てなかったな。 お前も言ってたべ 善は急げって。」

なつ「そんなこと言ったっけ?」

照男「うん。」

なつ「逃げられるって思っただけっしょ?」

照男「うるさい!」

(笑い声)

なつ「柴田牧場は変わりない? みんな元気?」

照男「向こうは 何も変わらん。」

なつ「そう…。」

柴田家

居間

砂良「どうぞ よろしくお願いします。」

悠吉「やったな 照男君! おやっさん これで柴田牧場は安泰だべさ。」

泰樹「うん…。」

明美「あ~ 私も見たかったな ラブレター熊。」

菊介「よし 菊介さんが 今度 明美ちゃんの熊になってやるべ。」

明美「菊介さんのシャケは 別にいらん。」

菊介「何でよ…。」

(笑い声)

剛男「弥市郎さんも 反対してないんかい? 砂良さんは 弥市郎さんの仕事には欠かせないべさ?」

砂良「私が 勝手に 彫刻を手伝ってただけですから。 父は ずっと 私の好きなように生きろと 言っていました。 彫刻は続けたいんですが… 時々 父を手伝いに行ってもいですか?」

富士子「それは もちろん。」

剛男「うちに来たって 好きに生きてくれるのが一番だ。 照男を選んでくれたことが 何より うれしいんだから。」

(笑い声)

詰め所

泰樹「砂良さん。」

砂良「はい。」

泰樹「なつに会ったら… このバターは 砂良さんと 3人で作ったもんだと言って 渡してやってくれるかい?」

砂良「3人で?」

泰樹「なつの夢を 砂良さんが受け継いでくれたら 何より あいつが ほっとするべ。」

おでん屋・風車

1階店舗

なつ「3人で…。 あ~ 懐かしい…。」

亜矢美「ん? ん? う~ん うん…。」

照男「それから これは 天陽からだ。」

なつ「えっ?」

照男「なつのお兄さんにも 食べてもらいたいって。」

亜矢美「テンヨー君っていうのは? ん?」

砂良「あ… なっちゃんの恋人です。」

亜矢美「恋人?」

なつ「いや… そんなんじゃないですってば!」

亜矢美「分かりやすい てれ方。」

なつ「いや… あの 天陽君は 私の 何て言うか… 目標とする人です。」

亜矢美「目標ってのは結婚かい?」

なつ「違います。 仕事が目標。」

亜矢美「え~…。」

なつ「あれ? それも違うか…。」

砂良「話を変えようか?」

なつ「砂良さんのせいでしょや!」

亜矢美「テンヨー君っていうの。」

なつ「いや 違います。」

砂良「そらから うちの父さんから。」

なつ「えっ 弥市郎さんからも!?」

砂良「うん。 ジャン!」

なつ「出た~! 木彫りの熊!」

亜矢美「熊ちゃん…。 こういう顔してる…。 おっ 出た こっちも!」

なつ「あっ。」

亜矢美「お帰り。」

砂良「お帰んなさい。」

咲太郎「ただいま…。」

なつ「お兄ちゃん 北海道の照男兄ちゃん。 今日來るって言ってたしょ。」

咲太郎「おう! いらっしゃい。」

照男「初めまして。 あの… 照男です。 なつが いつも お世話になってます。」

咲太郎「あっ 咲太郎です。 こちらこそ なつが お世話になってます。」

亜矢美「お二人さん いい挨拶だ。」

咲太郎「何言ってんだ しょうがねえだろ。」

照男「しょうがねえべさ。」

亜矢美「まあ ゆっくりしてってよ。 みんなで おでん食べましょうよ。」

咲太郎「うん うまいな これ!」

なつ「でしょ!」

亜矢美「すごい おいしい。」

砂良「おでんも おいしいです。」

亜矢美「そう…。 たんと食べてね。 売るほどあるんだからさ。」

咲太郎「さあさあ お兄さん 飲んで飲んで! はい。」

照男「お兄さんも飲んで下さい。」

咲太郎「いやいや つがして下さいよ。 いいから いいから。 ね。」

照男「いいですか?」

咲太郎「はいはい…。」

砂良「お兄さんは 劇団やってるんですか?」

咲太郎「はい そうです。 あれです。」

砂良「ん? あっ…。」

咲太郎「今 稽古中で もうじき公演が始まります。」

照男「『人形の家』ですか。」

咲太郎「おっ 見に来る? 結婚の話だよ。」

照男「いえ… すぐ帰っちゃうんで。」

咲太郎「牛の家に?」

照男「は…。」

咲太郎「乾杯。」

照男「乾杯。」

咲太郎「おめでとう。」

照男「ありがとうございます。」

亜矢美「何か 座高が おんなじようだね…。」

2階なつの部屋

砂良「うわ~ すごい洋服!」

なつ「これ 全部 亜矢美さんの。」

砂良「へえ?。」

なつ「私も 貸してもらってんのさ。」

照男「頑張ってんな。 これが アニメーターの仕事か?」

なつ「いや 違う。 私は まだ アニメーターにはなってない。 なれるかどうかも まだ…。 全然ダメなの 下手くそで。」

砂良「だから 頑張ってるんでしょ?」

なつ「うん そうだけど…。」

砂良「お義母さんには 何て言う?」

なつ「お母さん?」

砂良「柴田さんお義母さん。」

なつ「母さんには 私は大丈夫って伝えて。 好きな仕事を頑張って 必ず夢をかなえてみせるって。」

砂良「分かった。」

なつ「うん。」

照男「亜矢美さんとも うまくいってるみたいだしな。」

なつ「うん うまくというか… すごく助けられてる。 人に助けてもらってばっかだわ 私は。」

砂良「家族が増えていくみたいで いいじゃない。」

なつ「でも… 大事な家族に まだ一人 会えてないんだわ。」

照男「妹か?」

砂良「あ… 千遥ちゃんだっけ?」

なつ「うん。 5歳の時に預けた先の親戚が どっかに引っ越しちゃってて。」

砂良「捜せないの?」

なつ「お兄ちゃんが 昔のことは とっくに忘れて 今は 幸せに暮らしてるだろうから 邪魔するなって。」

1階店舗

咲太郎「すまなかったな 気を遣わせて。」

亜矢美「いい兄貴になったね 咲太郎。」

咲太郎「よせよ…。」

亜矢美「あら あら ちょっと飲みましょうか? また ね…。」

照男「お邪魔しました。」

亜矢美「あら もうお帰り?」

照男「これからも なつを どうか よろしくお願いします。」

亜矢美「大丈夫 こっちにも ほら 兄貴がついてるから。」

照男「お兄さん。 お兄さんも どうか 北海道に来て下さい。 いつでも待ってますから。」

咲太郎「ありがとう… 幸せにな。」

照男「はい。」

砂良「ありがとうございます。 ごちそうさまでした。」

亜矢美「いえいえ…。」

照男「ありがとうございました。」

亜矢美「また来て下さいね。 お気を付けてね。 さようなら!」

砂良「さようなら。」

亜矢美「お幸せに!」

咲太郎「またね~!」

砂良「ありがとうございます。」

咲太郎「何やってんだ 母ちゃん。」

亜矢美「ハハハ…。」

なつ「照男兄ちゃん これ 荷物になるけど みんなに持ってって。」

照男「お土産か?」

なつ「新宿のデパートで買った手袋。 みんなに渡して。」

砂良「あっ かわいい!」

なつ「照男兄ちゃんと砂良さんのもあるから。」

照男「ありがとう。」

砂良「ありがとう。」

なつ「砂良さん 幸せになってね。 絶対 幸せになってね。」

照男「心配すんな それは。 俺がついてんだ。」

なつ「頼むぞ 照男兄ちゃん。」

照男「任せとけって。」

なつ「ハハハ…。」

砂良「これからは 私も待ってるからね なっちゃん。 家族と一緒に。」

なつ「うん ありがとう。」

照男「じゃあな。」

なつ「うん。」

砂良「じゃあね。」

砂良「あっ きれいなお月さん。」

2階なつの部屋

<なつは 久しぶりに 北海道の風を吸い込んだ気がしました。>

なつ「よし 頑張ろう。」

<その夜も なつは 遅くまで アニメーターになる練習を続けました。 なつよ みんな 家族の幸せを祈っているぞ。>

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