ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第66話「なつよ、アニメーターは君だ」【第11週】

あらすじ

なつ(広瀬すず)が試験に合格、ついに東洋動画のアニメーターとなった。作画課では仲(井浦新)や井戸原(小手伸也)が若手のアニメーターを集め、次回作「わんぱく牛若丸」のキャラクターの募集をすると発表。駆け出しのなつも挑戦することを決意する。帰宅後も、キャラクターを思い浮かべ描くなつ。そのとき、咲太郎(岡田将生)がなつの部屋にきて、信哉(工藤阿須加)がなつを訪ねてきていると声をかけてきた…。

66話ネタバレ

東洋動画スタジオ

作画課

麻子「ここが あなたの机。」

なつ「はい。」

<なつは 晴れて アニメーターになりました。>

会議室

<昭和32年の夏を迎えました。>

井戸原「次回作の長編映画は 『わんぱく牛若丸』に決定しました。」

仲「それで 今回は みんなから キャラクターを募集したいと思います。」

一同「え~…!」

仲「試しに これが 僕が描いた 牛若丸のキャラクター。 これも まだ決定ではない。 牛若丸でも もう 他のキャラクターでも 何でもいいから みんなに考えてもらいたいんだよ。」

仲「例えば 母親の常盤御前 敵の平 清盛 それに 武蔵坊弁慶 動物たちだって たくさん出てくる。 原画 動画 関係なく 無記名で キャラクターを募集して 検討会を開きたいと思ってる。」

井戸原「これが 今回の脚本だ。 登場人表も書いてある。」

仲「みんなの好きなキャラクターを選んで 自由に描いてみてよ。」

井戸原「期限は お盆休み明けまでとする。 みんな 奮って参加するように。」

一同「はい!」

仲「よし 以上!」

なつ「あっ マコさん マコさんも参加しますよね?」

麻子「するわよ。 どうして?」

なつ「あっ いえ… それじゃ 誰にも相談できないですね。 困りました。 いきなり キャラクターを 考えろと言われても…。」

麻子「あなた 期待されてると思ってるの?」

なつ「思ってません。」

麻子「なら 楽でいいじゃない。」

なつ「そうですね…。」

茜「ねえ なっちゃんも参加するでしょ?」

なつ「あ… しますよ。 せっかくですから。」

茜「それじゃ 相談できないわね。」

なつ「期待されてないんだから 楽にいきましょう 楽に。」

茜「あっ… そうね。」

なつ「あ すいません…! 今のは 自分に言ったんです。」

茜「あっ… すごいわね なっちゃん。 肝が据わってるのね。」

なつ「あっ いえ…。」

茜「フフ…。」

作画課

♬~(スピーカー『東洋行進曲』)

茜「あっ 来た!」

なつ「えっ?

スピーカー♬『世界に巻き起こす希望の息吹』

大杉「や~ 皆さん 漫画の皆さん ご苦労さん ハハ。 お楽に お楽に。」

一同「おはようございます!」

大杉「日本で 初めて挑んだ長編漫画映画 『白蛇姫』が この7月に公開され 大ヒットを記録しております。 おかげで この動画スタジオを立ち上げた 私の面目も立ちました。 株主に 首を切られずに済むところであります。 冗談ですから 笑ってもいいですよ。」

(笑い声)

大杉「これも ひとえに 漫画の皆さんの 努力のたまものと感謝します。 次回作『わんぱく牛若丸』も どうぞ 頑張って いい漫画映画にして下さい。」

山川「はい 分かりました。」

大杉「しかし アータ。」

山川「はい。」

大杉「ここは 若い女の子も たくさんいて いいね。」

山川「あっ はい…。」

大杉「皆さん お母さんは 昔 こんな漫画映画を作っていたんだと 自分のお子さんに誇れるような 立派な仕事をして下さい。 ハハハハ…。」

中庭

なつ「何ですかね あれ!」

茜「あれって?」

なつ「漫画の皆さんって 私らが漫画みたいじゃないですか。 それに お母さん 昔 こんな漫画映画を作ってたって 自分の子どもに誇れって何ですか? それって もう その時に アニメーターを 辞めてるってことじゃないですか!」

茜「違うの?」

なつ「いいんですか? それで 茜さんは。 もし結婚をしたり 子どもを産んだりしたら この仕事 辞めちゃうんですか? そんなの おかしいですよ。 せっかく努力して アニメーターになったんじゃないですか!」

麻子「辞めろって 言わせなきゃいいんじゃないの?」

なつ「え? マコさん…。」

麻子「会社から 辞めないでくれって 引き止められるようなアニメーターに なればいいんじゃない だったら。 まだ何もできないのに 文句ばっかり言ってないで。」

なつ「はい! そうですよね…。」

麻子「期待してないけど。」

なつ「はい…。 失礼しました!」

茜「あんなふうになりたいの?」

なつ「あんなふうって…。」

おでん屋・風車

2階なつの部屋

なつ「う~ん 誰にしようかな…。」

<なつは 今 幸せでした。>

なつ「う~ん…。」

<仕事に悩めば悩むほど それを実感するようでした。>

<なつの鉛筆は 何を描いても 今は なつの夢を表現するかのような そんな時でした。>

咲太郎「なつ。」

なつ「うん?」

咲太郎「下に信哉が来てるよ。」

なつ「えっ?」

1階店舗

なつ「信さん! 見つかったの?」

信哉「うん。」

なつ「本当に?」

信哉「同じ千葉にいたよ。 千葉の船橋って所だ。」

なつ「ふなばし?」

咲太郎「まあ 座ろう なつ。」

なつ「うん。」

信哉「川谷としさんって人が なっちゃんたちの親戚なんだよね?」

なつ「うん。 お義母さんのいとこ。 一番仲がよかった人だって。」

信哉「その としさんと結婚した 川谷幸一さんっていう人の行方を 追った方がいいと思ったんだ。 それで 幸一さんを知っていそうな人を 片っ端から探して訪ねていった。」

信哉「それで やっと その知り合いのうちの一人が 今の幸一さんから 来た年賀状を 持ってたんだ。 それで 船橋の住所が分かったんだよ。」

なつ「うん…。」

信哉「幸一さんはね 戦争に行って 足をけがしたらしい。 それで 農業ができなくなって 引っ越ししたらしいんだ。」

咲太郎「それで 千遥は 今も一緒にいるんだよな?」

信哉「分からない。 その住所までは見に行ったんだ。 それで それらしい女の子は見かけたけど 声はかけなかった。」

なつ「千遥かどうか 分からなかったの?」

信哉「僕の記憶では分からなかった… ごめん。」

亜矢美「しょうがないよ 5歳の時に ねえ 会ったっきりでしょ?」

なつ「ねえ お兄ちゃん 会いに行こう!」

咲太郎「うん…。」

なつ「会うのがダメなら 見るだけ。 とにかく 千遥が無事なことを確認したい。」

咲太郎「そうだな…。 よし すぐに行こう。」

なつ「うん。」

信哉「これが 船橋の住所だよ。」

なつ「ありがとう。」

亜矢美「ちょっと待った。 今 すぐ行こうって言ったね?」

咲太郎「うん。」

亜矢美「いつ行く気? 今からすぐ? それとも明日?」

信哉「向こうが 家にいそうな時の方が いいんじゃないか?」

咲太郎「だったら やっぱり休日か。」

なつ「お盆…。 ねえ お盆にしよう!」

咲太郎「お盆?」

なつ「8月15日…。 15日に会いに行こう。」

咲太郎「そうか…。」

信哉「8月15日… それはいいね。」

なつ「その日なら 千遥も きっと 私たちのことを 思い出してくれるかもしれない。 そでしょ?」

信哉「覚えていればな。」

なつ「覚えてるよ! 千遥だって忘れるはずない。 あんなにつらい思いしてきたんだから… その日々を忘れるはずない。」

信哉「だけど… つらいことばっかりじゃ なかったはずだよ。 楽しいことも いっぱいあった。」

なつ「うん…。」

回想

咲太郎「お~ 来た 来た 来た!」

信哉「おっ 頑張れ 頑張れ 頑張れ…!」

なつ「鯉 久しぶりだね!」

信哉「うわっ 久しぶりだ!」

回想終了

咲太郎「よし… 8月15日 会いに行こう。」

なつ「うん!」

2階なつの部屋

<8月15日 今年も その日はやって来ました。>

なつ「亜矢美さ~ん! ねえ 亜矢美さんってば 早く!」

亜矢美「は~い は~い は~い はいはい。 お呼びでござんすか?」

なつ「どうしましょう? どれを着ていけばいいと思いますか?」

亜矢美「いつもの感じでいいんじゃないの。」

なつ「だって あんまり変な恰好してたら 妹に警戒されませんか?」

亜矢美「警戒? 何を?」

なつ「知りませんけど…。」

亜矢美「じゃあ… これだろう。 はい。」

なつ「えっ これですか?」

亜矢美「うん。」

なつ「何だか 遊んでるように見えませんか?」

亜矢美「え~ そう? じゃ… これはいいんじゃない?」

なつ「これですか? 何だか バカっぽく見えませんか?」

亜矢美「バカっぽいんだ… あ~ これ 全部私の服だから。」

なつ「あっ… ごめんなさい あくまで 妹の視点から考えるとです。」

栄春荘

「早く行こうぜ。」

「ちょっと待って。」

咲太郎「ここだ。 どうする?」

なつ「どうするって… ここまで来たら 行くしか…。」

(ドアが開く音)

なつ「千遥?」

<ああ なつよ 慌てず 気を落ち着けて 来週に続けよ。>

モバイルバージョンを終了