ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第67話「なつよ、千遥のためにつくれ」【第12週】

あらすじ

なつ(広瀬すず)と咲太郎(岡田将生)は、12年前に生き別れになった妹・千遥がいるはずの住所を訪ねる。その住所には、一軒の木造アパートがあった。不意にそのアパートから出てきた若い女性の姿に二人は息をのむ。「千遥」と声をかけるなつ。そして、なつと咲太郎はその女性の部屋に通され、ある話を聞かされる。その言葉に衝撃を受けたなつはその部屋を飛び出してしまう。

67話ネタバレ

東洋動画スタジオ

会議室

井戸原「君に アニメーターとしての可能性が あることだけは 誰もが認めざるをえない。」

仲「合格だ。」

作画課

麻子「じゃ 頑張んなさいよ」

下山「ようこそ 動画の世界へ!」

<なつは 晴れて アニメーターになりました。>

おでん屋・風車

1階店舗

なつ「信さん! 見つかったの?」

信哉「うん。」

咲太郎「よし… 8月15日 会いに行こう。」

<なつと咲太郎は 12年前に別れた妹 千遥を訪ねました。>

栄春荘

昭和32(1957)年8月15日

なつ「千遥?」

咲太郎「千遥か?」

なつ「千遥なの?」

幸子「違います。」

咲太郎「えっ…。」

幸子「私は… 違います。」

咲太郎「私はってことは… それじゃ 千遥は…?」

幸一「あの… あなた方は?」

なつ「千遥の家族です。 姉と兄です。 千遥に会いに来たんです…。」

(鈴の音)

幸子「どうぞ。」

咲太郎「すみません いきなり来て。 としおばさんは いつ亡くなったんですか?」

幸一「はい… 2年前に病気で…。 これは 下の娘の幸子です。」

咲太郎「幸ちゃんか…。 幸ちゃんは 確か 千遥の2つ上だったよね?」

幸子「今 19です。」

なつ「千遥が 本当にお世話になって…。 そんで 千遥は 今 どこにいますか?」

幸一「申し訳ない… 千遥ちゃんは いないんです。」

咲太郎「いないって どういうことですか?」

幸一「いないんです…。 許して下さい…。」

なつ「どういうことですか?」

咲太郎「千遥… 死んだということですか?」

幸一「いえ それが… 家出をしたんです…。」

なつ「家出?」

咲太郎「いつですか!」

幸一「私が復員して しばらくしてから… 21年の夏でした。 警察にも届けたんですが 手がかりはなくて…。」

なつ「そんな… そんな前に…。」

咲太郎「それなら どうして教えてくれなかったんですか!?」

幸一「私は すぐ 千遥ちゃんのいた 孤児院に行ったんです。 そしたら そこには もう 誰もいませんでした。」

咲太郎「手紙は? 俺の出した手紙があったはずです。 その手紙には ここにいる なつの住んでた 北海道の住所が書かれていたはずです。」

幸一「その手紙は 千遥ちゃんが持って出たようです。」

咲太郎「千遥が?」

幸一「はい。 だから… いずれは あなた方に会えるだろうと 私たちは いちるの望みを抱いてたんですが…。」

なつ「千遥は… 私らに会いたくなって 家出したんですよね? 私や兄に会いたくて…。」

幸子「うちの母から 逃げたんだと思います。」

なつ「えっ?」

幸一「幸子。」

なつ「逃げたって…。」

咲太郎「どうして?」

幸子「母が… 千遥ちゃんに きつく当たっていたからだと思います。 千遥ちゃんにばかり きつい仕事を言いつけて… 食べ物も 私や兄や姉よりも 少なく与えて… それで 我慢しきれなくたって 千遥ちゃんは逃げ出したんだと思います。」

咲太郎「おばさんが? おばさんは そんな人じゃなかった…。 俺は よく覚えてます。 母にとって おばさんは 唯一の姉妹みたいな人で… 本当は 俺たち家族全員で 疎開しようとしてたくらいなんです。」

幸一「あのころの家内は 本当の家内ではなくなっていました。 私が こんな体になって復員して… 幸子の上にも 3人の子どもがいて 食べ物もなくて 働き手もいなくて…。」

咲太郎「だから… 千遥を いじめたんですか?」

なつ「千遥は… ずっと苦しんでたんですか…。」

幸子「千遥ちゃんは ずっと笑っていました。」

なつ「えっ?」

幸子「だから 私も平気なのかと思って…。 千遥ちゃんは 嫌なことがあっても 作り笑いばかり浮かべてて それで 母は 余計に イライラしてたみたいで… バカにしてるのかって どなって…。 ごめんなさい… 私たちのせいなんです…。」

幸一「本当に申し訳ない…。」

咲太郎「なつ…。」

回想

千遥「サンキュー。」

回想終了

<なんて つらい日だ…。 私は もう そちらには帰れない。 千遥が 今 どうしているのか 2人に 何も話してやれない。 この日は なつたち きょうだいにとっても 特別な日だったのです。>

おでん屋・風車

1階店舗

信哉「乾杯。」

亜矢美「お祝いしとこ…。」

(戸が開く音)

亜矢美「お帰り。」

信哉「お帰り。 どうだった?」

咲太郎「千遥は 子どもの頃に 家出をしたらしい。」

亜矢美「えっ…。」

信哉「子どもの頃に?」

咲太郎「大丈夫だよ なつ。 警察に届けたと言ってるし… もし 千遥の身に 何か悪いことが起きたんなら そういう知らせが とっくにあったはずだよ。 な 信 そう思うだろ?」

信哉「ああ…。」

亜矢美「そう… そうね その方が可能性として高いわね。 そういう知らせがないってことは きっと どこかで無事に生きてるってことだわ。」

なつ「道で暮らす子も 亡くなる子も 街で まだ たくさんいた頃だよ…。」

咲太郎「それでも 千遥は… どこかで生きてるよ!」

なつ「そんな奇跡 信じろって言うの? お兄ちゃんの手紙だって 持ってってるんでしょ? それなのに どして連絡がないの! 千遥は 6歳だったんだよ…。 どうやって 一人で生きていくのさ?」

咲太郎「一人じゃないかもしれないだろ。 俺やお前も 一人じゃなかった。 だから生きられた。 俺たちが生きられたのだって奇跡だろう。」

なつ「私は… 何も知らないまま 今まで生きてた…。 千遥の悲しみや絶望を知らないまま… 幸せに…。 千遥を見捨てたのに…。」

咲太郎「なつ!」

信哉「なっちゃん…。」

亜矢美「そんなふうに考えちゃダメ。」

なつ「お兄ちゃん… 奇跡なんてないんだわ。」

2階なつの部屋

富士子『なつ 二十歳の誕生日 おめでとう。 東京へ行って 1年半だね。 仕事には 少し慣れたかかい? なつのことだから きっと 夢中で頑張ってるんだろうね。 二十歳の記念に 万年筆を贈ります。 父さんと選びました。 たまには 手紙書いてね。 みんな喜びます。 母より』。

なつ「千遥…。 ごめんね…。」

<なつよ 二十歳の誕生日 おめでとう。 どうか その夢が その道が いつまでも続きますように…。>

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