あらすじ
前作「白蛇姫」のポスターを見ていたなつ(広瀬すず)は、自分がアニメーターとして頑張れば、ポスターに名前を載せることができることを知る。そして、生き別れの千遥がそれを見てくれれば連絡があるかもしれないと、咲太郎(岡田将生)と信哉(工藤阿須加)、亜矢美(山口智子)に伝える。日が変わり、下山(川島明)のもと「わんぱく牛若丸」のアニメーターチームが集まり、新たな作品つくりに向けて意見交換が行われる…。
70話ネタバレ
おでん屋・風車
玄関
信哉「なっちゃん!」
なつ「信さん。 誕生ケーキ ありがとう。」
信「いや… ちゃんと 会社に行ったって聞いて 安心したよ。」
なつ「うん… まだ時間大丈夫?」
信哉「うん もちろん。」
なつ「じゃあ ちょっと上がっていかない?」
信哉「いいよ。」
1階店舗
なつ「ただいま。」
茂木「なっちゃん なっちゃん!」
なつ「茂木社長!」
亜矢美「なっちゃんを待ってたのよ。 ね~。 女の子のいるお店にも行かないで。」
茂木「ちょっと ママ。 もう なっちゃんに嫌われるようなこと 言わないでよ。」
なつ「お久しぶりです 茂木社長。」
茂木「なっちゃん 川村屋のマダムに聞いたよ。 やっと アニメーターになれたんだってな。 おめでとう。」
なつ「まだまだ 見習いみたいなもんですけど ありがとうございます。」
茂木「これは 僕からのお祝いだ。 はい。」
なつ「えっ!」
茂木「わざわざ うちで取り寄せたんだから ハハ。 開けてごらん。」
なつ「これは?」
茂木「漫画映画の教科書だよ。 ディズニーのアニメーターが 書いたんだよ。」
なつ「え~ すごい! こんなのあるんですか。」
茂木「あるんだよ。」
なつ「全部 英語だ…。」
茂木「まだ翻訳されてないからね。 そこで もう一つのプレゼントが これだ。 はい。」
なつ「英語の辞書?」
茂木「うん。 頑張って 自分で訳すんだよ。 『白蛇姫』は なかなか色っぽくてよかったな。 ああいうのがさ 日本で作れるんだから もっと もっと勉強しなさい。」
なつ「ありがとうございます 茂木社長。 一生 大事にします。」
茂木「ハハハ いや… 古くなったら買い替えてよ。 そんな 一生大事にされちゃね ほら うちも商売上がったり…。」
亜矢美「てれ屋さん 余計なこと言わないの。」
なつ「茂木社長 ありがとうございます。 信さん 行こう。」
茂木「あれ 行っちゃうの?」
2階・なつの部屋
なつ「どうぞ。」
信哉「うん。 なっちゃん 僕にできることがあれば 何でも言ってくれ。 無駄かもしれないけど… もっと… もっと 千遥ちゃんの力に なれることがあればいいんだけどね。」
なつ「信さん… 千遥のことは 誰にも言わないで。 心配かけるから。」
信哉「分かった。」
なつ「北海道には 手紙を書いて知らせておく。 千遥が 今からでも 手紙を読んで 頼らないとも限らないしょ?」
信哉「なっちゃん…。」
なつ「暑いね…。 ねえ 信さん。」
信哉「うん?」
なつ「6歳の女の子が いくら つらいからといって 読めもしない手紙を持って 大人のいる家から逃げ出すなんてこと そんな勇気 よく持てたよね。 お兄ちゃんも 私も そういう千遥を信じてる。 私は 千遥の生きる力を信じてるから!」
信哉「うん。 そうだね。 僕も信じてる。」
なつ「ありがとう…。」
信哉「うん。」
1階店舗
亜矢美「今日のおでんは よ~く しみてるよ。 食べる?」
なつ「食べる。」
咲太郎「ただいま。」
3人「お帰り!」
咲太郎「何だよ 3人そろって…。 あ… なつ お前んとこ 新しい作品やるんだってな。」
なつ「うん そう…。」
咲太郎「うちの亀山蘭子が また その役の声をやることになったんだ。」
なつ「本当に!?」
咲太郎「ああ。 『白蛇姫』の評判がよかったからな。 ま とにかく また なつと一緒に仕事ができるな。」
なつ「うん…。 あっ… ねえ お兄ちゃん これだ!」
咲太郎「えっ?」
なつ「ここ… ここに名前載るっしょ! 必ず 私の名前を載せてみせる!」
咲太郎「うん…。」
なつ「ほら! そしたら どこかで これを千遥が見たら 映画のポスター見たら 私の居場所が分かるっしょ!?」
咲太郎「そうか… そうだな!」
信哉「それ いい考えだよ!」
亜矢美「だったら もっと もっと頑張らないとね 早く 名前が載るように。」
なつ「はい。」
亜矢美「私も頑張ったな ムーランルージュの看板に がんと 自分の名前を載せたくって。 ほら 食べな。」
なつ「亜矢美さん 私 頑張るから…。 絶対 頑張る。」
亜矢美「よし。」
咲太郎「頑張れよ なつ。」
亜矢美「お前だよ 頑張んのは。」
咲太郎「あ… うん。」
信哉「咲太郎。」
咲太郎「何だよ…。」
信哉「しっかりやれよ。」
咲太郎「頑張るか。」
2階・なつの部屋
なつ「ストレッチ アンド… スクオッシュ…? つぶす…。 顔の伸び縮み。 あ~ もう… もっと 英語の勉強しとけばいかったわ…。」
<なつは また 一心に夢を追い始めました。 その いつかを信じて…。>
柴田家
居間
なつ『母さん 千遥のことは 兄と相談して 改めて 警察に届けることにしました。 千遥は 必ずどこかで元気にしています。 母さん 心配しないで。 私は 千遥のためにも 一生懸命生きてます。 千遥にも 私の母さんみたいな人いることを 心から祈ります。 信じています。 母さんも 一緒に信じて下さい』。
富士子「なつ…。」
<そして 秋になり 『わんぱく牛若丸』の制作が始まりました。>
東洋動画スタジオ
作画課
下山「大体 片づいたかな? みんな。」
堀内「はい。」
下山「うん。 え~ これが うちのチームです。」
なつ「下山班… ですね。」
下山「まあ 僕が原画だから そう呼ばれることになる。 全体的な作画は 仲さんと井戸さんに 見てもらうわけだけど うちに来たカットは 責任を持って 僕たちで いいものにしよう。 ね。」
なつ「はい! 頑張りましょう!」
麻子「一番下っ端のあんたが 鼓舞して どうすんのよ。」
なつ「いや すいません… 自分に言っただけです。」
麻子「何か このチーム 私には 嫌みに感じるんですけど。」
なつ「どういう意味ですか?」
堀内「どういう意味?」
茜「あ… 私 足を引っ張らないように頑張ります。」
麻子「茜ちゃんは いいのよ。」
なつ「どういう意味ですか!?」
堀内「どういう意味?」
麻子「相性が悪いって意味でしょ 何で分かんないのよ!」
下山「いや まあ まあ まあ…。 仲よくやりましょう。 ね…。 よし 今日のランチ 僕がおごっちゃおう! アッハハハハ…。」
4人「ごちそうさまです!」
下山「そういう時だけ 気が合うのね…。」
喫茶店・リボン
下山「かんぱ~い!」
一同「かんぱ~い!」
堀内「頂きます。」
下山「それにしても あれだね 堀内君が辞めなくて 本当によかったよ。」
堀内「えっ?」
下山「てっきり『白蛇姫』で 辞めるもんだと思ってたからさ。」
麻子「私も辞めると思ったわ。」
下山「何か 芸大から来て辞めた人って 何人もいるからね。 アニメーターの仕事に失望してさ。」
なつ「失望しなかったんですか?」
堀内「どうして 失望しなくちゃいけないんだ?」
麻子「あまり 漫画映画は 好きじゃなかったでしょ?」
堀内「好きで入ったわけじゃないけど 今 辞めたら 僕が使えなかったことになるじゃないか。」
下山「いや そんなことないよ。」
堀内「で マコちゃんは 好きで入ったの?」
麻子「好きで入ったのよ。」
茜「へえ~ 意外。」
麻子「どういう意味で? 私には ディズニーの世界 似合わないって言いたいわけ? 『白雪姫』に感動しちゃ悪いの?」
なつ「『白雪姫』だったんですか? きっかけは。」
麻子「そうよ。」
茜「それなのに あんな怖い常盤御前に なっちゃったんですか。」
麻子「ちょっと。」
下山「まあ でも やっぱり 描く人に似ちゃうんだよね 絵って。」
なつ「茜さんは 好きで入ったんですか?」
茜「私は 何となく…。 短大の頃は いろんな所を放浪しながら のんびり絵を描くのが好きだったのよ。」
堀内「う~ん 山下 清か。」
茜「フフフ… それで 漫画映画の仕事って 面白そうだなと思って。 まあ 絵を描いて もうかるのかと思ったら 全く そんなことなかったけど。」
なつ「そこは同意します。」
麻子「下山さんは 拳銃を撃ちたくて 警察官になったんですよね?」
なつ「えっ!」
下山「バ~ン…。 まあ それで アクションばっかり 描かされるようになっちゃってさ。 女が苦手だとか言われて。 あっ そうだ 僕の下にいる限り あんまり 常盤御前 回ってこないと思うよ。 残念だけど。」
なつ「え~ そなんですか?」
下山「そんなに 露骨にがっかりしいないでよ。」
なつ「描いてみたいです。 亀山蘭子さんが 声をやるんですよね。」
下山「うん。」
茜「奥原さんは 聞くまでもなく 好きの塊だね。」
なつ「はい… 今の私にできるほは これしかありませんから。」
麻子「できる?」
なつ「あっ いや… できるようになるしかありませんから!」
麻子「よろしい。」
(笑い声)
茜「あ… 常盤御前のライブアクションには 参加できるんですか?」
下山「それは もちろんだよ。 動画のみんなは 自由参加だからね。」
なつ「ライブアクションか…。」
ライブアクション
露木「よ~い スタート!」
<ライブアクションとは 俳優が 実際に演じたものを撮影し それを アニメーションの資料にすることです。 ディズニー映画でも行われていて 東洋動画も この作品で 本格的に取り入れようとしていました。>
露木「よ~い スタート! はい オッケー カット。」
坂場「亀山蘭子さんが入ります!」
一同「おはようございます。」
蘭子「おはようございます。」
一同「おはようございます。」
蘭子「おはようございます。」
露木「よろしくお願いいたします。」
蘭子「よろしくお願いいたします。」
露木「亀山さん。」
蘭子「はい。」
露木「これからやるシーンはですね 鞍馬山の寺に預けられていた牛若丸が 自分が 源氏の子であるという身分を知って 平家のとりことなってる母の常盤に こっそり会いに来るシーンです。」
蘭子「はい。」
露木「常盤としては 牛若丸を 我が子として認めてやりたいが 認めると 周りの平家の武士に 殺されてしまう。 そこで 心を鬼にして このとおり 突っぱねるんです。 よろしいですね?」
蘭子「はい。」
露木「はい。」
蘭子「あの~ 声は 普通にしゃべっていいのね?」
露木「もちろんです。 構いませんとも。 亀山蘭子の芝居を この作品では取り入れたいんです。」
蘭子「分かりました。」
露木「よろしくお願いいたします。」
「はい それでは お願いしま~す。」
露木「いいね? はい。 よ~い スタート!」
(かすれたカチンコの音)
カメラマン「ちょっと待った! ふぉい てめえ ちゃんとカチンコぐらい たたけよ!」
坂場「すみません…。」
露木「悪いね。 うちの助手 こういうの慣れてない…。」
カメラマン「カチンコの音で 芝居が決まるんだからよ!」
露木「よし もう一回いこう。」
坂場「もう一度やらせて下さい。」
<なつよ この不器用な青年は 一体 何者だろう? なぜか 私も気になります。>