ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第72話「なつよ、千遥のためにつくれ」【第12週】

あらすじ

坂場(中川大志)からの言葉に、不安になるなつ(広瀬すず)。友人の桃代(伊原六花)を誘って川村屋を訪れると、奥のテーブルで熱心に本を読む坂場の姿があった。なるべく近寄りたくないなつだったが、桃代に強引に引っ張られ、坂場と同じテーブルにつくことに。嫌がるなつをおもしろがる桃代は、さらにけしかけ、なつが坂場に聞きたかったことを聞かせる。その時、光子(比嘉愛未)が、やって来て…。

72話ネタバレ

東洋動画スタジオ

中庭

なつ「今年の新入社員で 演出助手の坂場って人 知ってる?」

桃代「ああ 東大出身の?」

なつ「東大?」

回想

坂場「アニメーションにしか できない表現…。」

なつ「子どもが見て ワクワク ドキドキするような。」

坂場「子どもが見るものだから リアリティーは無視してもいい ということですか?」

回想終了

桃代「哲学を専攻してたって。」

なつ「哲学?」

回想

坂場「どうしてですか?」

なつ「はっ?」

坂場「どうして こういう動きになるんですか?」

なつ「えっ…。」

坂場「坂場一久です。」

なつ「何を言ってるんですか?」

回想終了

なつ「ねえ モモッチ。」

桃代「うん?」」

なつ「ひよどり何とかの… さか落としって 知ってる?」

桃代「何? それ。」

<と なつが 何だか分からないことで悩んでいた そのころ。>

赤い星座

雪次郎「21番 小畑雪次郎です。 よろしくお願いします!」

咲太郎「それじゃ ピアノの音を聴いて イメージしたことを 自由に 体を使って表現して下さい。 お願いします。」

♬~(ピアノ)

雪次郎「あ え い う え お あ お か け き く け こ か こ…。」

<ここにも どこに向かっているのか 分からないやつが 一人いました。>

雪次郎「ペチカ! 俺は お前を 川下のやつらには 絶対に渡したくはない! こうなったら… 川下のやつらと 戦をするぞ! ううっ…。」

雪次郎「ペチカ ペチカ… ペチカ! 俺は 何てことをしてしまったんだ…。 自分のことばかりを考えたばっかりに…。 許してくれ… 許してくれ…。 許してくれ~!」

<雪次郎の乱が ひそかに始まっていました。>

川村屋

桃代「えっ ここ? 川村屋でしょ?」

なつ「そう。」

桃代「なっちゃんが むしゃくしゃしてるから 遊びに つきあってあげようとしたのに 川村屋?」

なつ「いいじゃん。 ここで モモッチと バターカリー食べたかったの。 行こう。」

(ドアが開く音)

野上「いらっしゃいませ。」

なつ「こんばんは。」

野上「何だ。」

なつ「何だって… お客ですけど 一応。 今日は 友達も一緒です。」

野上「さようでございましたか。 また派手な恰好して。 目がチカチカします。」

なつ「あっ!」

佐知子「なっちゃん いらっしゃい!」

なつ「佐知子さん こんばんは。 2人です。 会社の友達の桃代さんと。」

佐知子「こんばんは。」

桃代「こんばんは。」

野上「お席に ご案内して。」

佐知子「はい。 どうぞ こちらへ。」

野上「あっ! なっちゃん あれ… あれじゃない?」

なつ「あっ あれ…。」

佐知子「どうしたの?」

なつ「佐知子さん あの人 よく来るんですか? あの人。」

佐知子「さあ… 知り合い?」

なつ「いや… おんなじ会社の人です。」

佐知子「じゃ 同じ席にする?」

なつ「いえ いえ いえ いえ…。」

桃代「そうしましょうよ。」

なつ「は? えっ ちょっと!」

桃代「こんばんは。」

なつ「こんばんは。」

坂場「ああ どうも。」

佐知子「こちらのお客様も ご一緒でいいですか?」

なつ「あっ… いえ…。」

桃代「いいですか?」

坂場「どうぞ。」

桃代「どうも。 私は 仕上課にいる森田桃代です。」

なつ「モモッチ…。 すいません 失礼します。」

佐知子「ご注文は?」

なつ「バターカリー2つ。」

佐知子「かしこまりました。」

桃代「なっちゃんが あなたに 何か聞きたいことがあるそうです。」

なつ「えっ…。」

桃代「モヤモヤしてること 聞いちゃいなさいよ この際。」

坂場「何ですか?」

なつ「あっ いや 別に…。 どうして ここにいるんですか?」

坂場「どうして? 新宿に 本を買いに来たからです。」

桃代「わあ こんなに…。」

坂場「すぐに読みたくて この店に入りました。」

なつ「あっ… ここ 前に 私が働いてたお店なんです。」

坂場「そうですか。 それで?」

なつ「それで?」

坂場「僕が ここにいつことと あなたが この店で働いてたことは 単なる偶然じゃないんですか?」

なつ「偶然だと思います…。」

坂場「だったら どうして ここにいるのかと 驚くようなことじゃない。 それだけのことですよね?」

なつ「それだけのことです。 すいません。 もう いいです。」

桃代「なっちゃん…。」

なつ「こういう人なの。」

桃代「なるほどね…。 カリーパンですか? バターカリーは食べないんですか?」

坂場「なぜ?」

桃代「なぜって…。 いや 何でもありません。」

坂場「ここの名物ですからね。 しかし ちょっと値段が高すぎる。 カリーパンでも ぜいたくです。」

なつ「分かってるんじゃないですか。」

桃代「面白い…。」

坂場「あなたたちのバターカリーを 見学させてもらいます。」

桃代「あっ 私の半分 食べて下さい。」

坂場「結構です。 パンで十分です。 あっ!」

なつ「あっ ちょっ ちょっ… あの これ。」

坂場「すみません…。 あっ…。」

なつ「本当に ぶきっちょなんですね。」

坂場「はい…。 不器用が いいと思ったことはありません。 だから 僕には あなた方のように 絵は描けません。 絵を描けるということは 本当に すばらしいことだと思います。」

なつ「あの どうして アニメーションを選んだんですか?」

坂場「どうして?」

なつ「映画が好きなら 普通の映画だってあるし 絵を描かないのに どうして 漫画映画を作ろうって思ったんですか?」

坂場「思ったんです。 アニメーションは 子どもに夢を与えるだけのものではなく 大人にも 夢を与えるものだと思ったからです。」

なつ「大人の夢… ですか?」

坂場「フランスのアニメーションで アンデルセンの童話を原作にして 戦争を描いたものがありました。」

なつ「戦争を?」

坂場「ナチスドイツを思わせる独裁的な力から 人々が解放されて自由になる話を 子どもが見ても ワクワク ドキドキするような アニメーションの語り口を使って 描いたんです。]

坂場「そんなことのできる表現方法は ほかにないと思いました。 しかし 残念ながら そういう可能性が アニメーションにあるとは まだ世の中には思われていないようです。」

なつ「それじゃ… アニメーションにしかできない表現って 何ですか? 坂場さんは 何だと思いますか?」

坂場「アニメーションにしかできない表現? そうですね 自分の考えしか言えませんが…。」

なつ「はい。」

坂場「それは…。」

光子「なっちゃん。」

なつ「えっ? マダム…。」

光子「ごめんなさいね お話し中に。」

なつ「どしたんですか?」

光子「ちょっと。 ちょっと来て…。」

なつ「ちょっと ごめんなさい…。」

応接室

なつ「どうしたんですか?」

光子「さっきまで ここで話してたんだけど…。 雪次郎君が 急に ここを辞めるって言いだしたのよ。」

なつ「えっ!? 雪次郎君が どうして?」

光子「何でも お芝居をしたいからって。」

なつ「えっ?」

光子「劇団の試験を受けたんですって。」

なつ「劇団?」

野上「誰かのいる劇団ですよ。」

なつ「えっ… お兄ちゃんのですか?」

野上「その誰かに唆されたんじゃないですか。」

なつ「そんな…。」

光子「そうは思えないけど きっかけには なったかもしれないわね。 止められそうにないのよ 私では。」

社員寮

なつ「雪次郎君…。 雪次郎君!」

雪次郎「なっちゃん どしたの?」

なつ「どしたのじゃないっしょ! 今 話聞いたわ。」

雪次郎「咲太郎さんからか。」

なつ「えっ…。 ちょっと… お邪魔します。 えっ… ねえ ちょっと どういうこと? お兄ちゃんのせいなの?」

雪次郎「違う! 咲太郎さんに言われたわけでねえ。」

なつ「じゃ どして!? 本当に劇団に入って 役者になんの?」

雪次郎「劇団に受かればね。」

なつ「えっ… まだ受かってないの?」

雪次郎「今日受けたから 結果は まだ出てねえ。」

なつ「えっ ちょっと… 待って…。 受かってもないのに 何で ここを辞めるなんて言ったの?」

雪次郎「なっちゃんだって同じだべ。」

なつ「何が?」

雪次郎「受かる前に 酪農をやめたんでねえか。」

なつ「だって それは…。」

雪次郎「決心するって そういうことだ。 俺は決心したんだ。」

なつ「帯広のおじさんと おばさん とよばあちゃんには 何て言ったの?」

雪次郎「それは まだ これからだ。」

なつ「なして! ねえ そこが一番大事だべさ! ここ辞める前に言うべきでしょや!」

雪次郎「そこは なっちゃんとは違うんだわ。」

なつ「何が違うの?」

雪次郎「なっちゃんには きょうだいがいたべさ。 俺の場合は なっちゃん… 本当に裏切ることになってしまうんだわ。 したけど 親の期待を裏切っても 俺は…。」

なつ「ダメ! それは 絶対ダメ!」

雪次郎「えっ?」

なつ「行こう!」

雪次郎「嫌だ!」

なつ「いいから お願い!」

おでん屋・風車

1階店舗

なつ「早く行くよ。」

雪次郎「ん…。」

なつ「ただいま。」

亜矢美「あ お帰り。」

カスミ「お帰り。」

なつ「お兄ちゃん ちょっと話があるんだけど…。」

咲太郎「何だ?」

なつ「入って。」

咲太郎「お~ 雪次郎! 今日はご苦労さん。」

雪次郎「どうも。」

なつ「お兄ちゃん…。」

亜矢美「雪次郎君 あんた 思い切ったことしたね。」

カスミ「よく決心した。」

レミ子「あんたには負けないからね。」

なつ「ちょっと待って! 雪次郎君を 役者にはできません。」

咲太郎「なつ… どうして?」

なつ「どうしても!」

<ああ なつよ 君の悩みは尽きないけれど 今の私に言えることは… 来週に続けよ。>

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