ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第73話「なつよ、“雪月”が大ピンチ」【第13週】

あらすじ

光子(比嘉愛未)から、雪次郎(山田裕貴)が川村屋を辞めると聞いたなつ(広瀬すず)は、雪次郎をアパートから風車へとつれてくる。芝居の道に進む決意を固めた雪次郎を必死に説得するなつ。しかし、本人の意思が固いうえ、咲太郎(岡田将生)も本人の意思を尊重すべきとなつに伝える。なつが職場でため息をついていると、茜(渡辺麻友)がやってきて、坂場(中川大志)のことで悩んでいるのかと興味深そうに尋ねてきて…。

73話ネタバレ

川村屋

応接室

光子「雪次郎君が 急に ここを辞めるって言いだしたのよ。」

なつ「えっ!? 雪次郎君が?」

光子「お芝居をしたいからって。」

なつ「えっ?」

光子「劇団の試験を受けたんですって。」

野上「誰かのいる劇団ですよ。」

おでん屋・風車

1階店舗

<雪次郎君が 川村屋を辞めて 役者になると言いだしました。>

咲太郎「お~ 雪次郎! 今日はご苦労さん。」

雪次郎「どうも。」

亜矢美「雪次郎君 あんた 思い切ったことしたね。」

カスミ「よく決心した。」

レミ子「あんたには負けないからね。」

なつ「ちょっと待って! 雪次郎君を 役者にはできません。」

咲太郎「なつ… どうして?」

なつ「どうしても! いいの? 本当に家族を裏切って。 雪次郎君が言ったとおり 雪次郎君と私じゃ違うしょ。 雪次郎君が 川村屋 辞めたら 帯広の家族が どんなに悲しむか…。 たった一人の跡取りでないの!」

雪次郎「そったらこと分かってるから 決心したんでねえか! 親を裏切るって 決心したんだわ…。」

なつ「そんなのダメだわ! ねえ お兄ちゃん お願い。 お兄ちゃんからも 雪次郎君 止めて。 説得して!」

咲太郎「それは できない。」

なつ「何で!」

咲太郎「今の雪次郎の言葉を聞いて どうして止められるんだ。」

なつ「雪次郎君が 川村屋を辞めるって言ってんの!」

咲太郎「雪次郎が どう生きるかは 家族でもなく 雪次郎が決めることだろ。」

雪次郎「咲太郎さん…。」

亜矢美「本当に よ~く考えなさいよ。 せっかく ここまで修業してきたんだから。 それを無駄にして 後悔しないようにね。」

雪次郎「はい…。 なっちゃん 本当に心配かけてごめん。」

なつ「そりゃ心配するわ そんなの…。」

カスミ「でも まだ 劇団に受かったわけじゃないんでしょ?」

雪次郎「受からなくても 川村屋には戻らんつもりです。」

なつ「ねえ 雪次郎君…。」

雪次郎「なっちゃん ごめんって…。 俺は もう 川村屋を裏切ってしまったんだわ。 俺の魂は もう 演劇の中に行ってしまったんだわ!」

なつ「それなら 真っ先に 帯広の家族に相談するべきでしょ。」

雪次郎「それは まだ ちょっと…。」

なつ「ねえ そこ! そこ迷っちゃダメでしょや!」

川村屋

厨房

雪次郎「おはようございます。」

杉本「おっ おはよう。」

雪次郎「あの…。」

杉本「ん?」

雪次郎「あの 職長 すいません ここを 辞めさせて頂きたいんです。 昨日 マダムには話しました。 大変お世話になっておきながら 本当に申し訳ございません!」

「おはようございます。」

杉本「おい… おい ちょっと こっち来い。」

雪次郎「はい…。」

ホール

杉本「役者? お前 何考えてんだよ! そんなに修業がつらかったのか?」

雪次郎「いいえ そんなことはありません。 僕にとって 菓子職人になることも夢でした。 けど ほかの夢に挑戦するなら 今しかできねえと思ったんです。 挑戦したいんです!」

杉本「菓子職人なら いつでもなれると思ってないだろうな?」

雪次郎「そんなこと思ってません!」

杉本「だったら 現実から逃げるなよ! そんなつまらないことで 人生 棒に振ってどうすんだよ! とにかく 俺は認めない。」

雪次郎「だったら… 認めてくれなくていいです。」

杉本「雪次郎! 俺はな お前を お前のおやじさんから預かってんだよ!」

回想

雪之助「お世話になります。 どうか せがれを厳しくご指導下さい。」

回想終了

光子「おはよう。」

雪次郎「おはようございます。」

杉本「おはようございます マダム。」

光子「杉本さんも聞いたのね。」

杉本「はい。 しかし それを認めることができるのは 北海道にいる おやじさんだけだと 話してたところです。」

光子「そうね… まあ なるべく 私は 従業員の意志を 尊重したいと思ってるけど 雪次郎君は 今 雪之助さんの意志を受け継いで ここにいるんですものね…。 とにかく お父様に あなたから連絡して話してちょうだい。 分かった?」

雪次郎「はい… 分かりました。」

光子「一人で決める前に 頼みましたよ。」

東洋動画スタジオ

作画課

<一方 なつは 長編映画『わんぱく牛若丸』の作画作業 真っただ中にいるはずでしたが…。>

茜「なっちゃん 坂場さんのことで悩んでるの?」

なつ「さかば?」

茜「あっ ほら この間の 理屈っぽい演出助手の人。」

なつ「あ… 違いますよ。 ちょっと 別のこと考えてました。」

茜「別のこと?」

なつ「ちょっと 困った友人がいるんです。」

下山「なっちゃん。 これ 頼む。」

なつ「あ… これは この間の馬ですか?」

下山「うん。 僕が 原画を描き直してみたんだよ。 この絵を動かしてみてよ。」

麻子「あのカチンコ君… 坂場っていう人が直しを要求してきた 馬と牛若丸の動き。」

なつ「あれか…。」

回想

坂場「いや あおの… そこが分からないんです。 どうして こういう動きになるんですか? 牛若丸が 前のめりになるのは 性格描写として 分かることにしましょう。 けど 馬はどうですか? 馬は怖がりませんか?」

回想終了

下山「それが 僕なりの答えだ。」

なつ「答え…。」

麻子「いい? あの理屈をこね回すカチンコ君を ギャフンと言わせる動画を 描いてちょうだい。」

なつ「はい 分かりました!」

<新人アニメーターのなつは 少年 牛若丸が 馬で崖を駆け下りる 短いシーンの動画に チャレンジすることになりました。>

(笑い声)

なつ「面白い! 今度は 馬が抵抗して 牛若丸が 馬と戦ってる。」

茜「さすが アクションの下山さん 見事な修正。」

なつ「そうですよね。 牛若丸も馬も 生き生きしてる。」

彫る地「動画 頑張れよよ。」

茜「頑張ってよ なっちゃん!」

なつ「はい! よ~し!」

<しかし それは そう簡単なことではありませんでした。>

階段

なつ「あっ…。」

坂場「何か落としたんですか?」

なつ「あっ いや… 馬の気持ちと 体重移動を研究してたんです。」

坂場「ご苦労さまです。」

なつ「あっ あのカットを 今 描き直してるとこなんです。 牛若丸が 馬で崖を駆け下りる あの鵯越の逆落としを 思わせるカットです!」

坂場「そうですか。」

なつ「それから… 昨日は すいませんでした。」

坂場「その すいませんというのは 何を指して言ってるんですか?」

なつ「川村屋で 話の途中で いなくなってしまったことです。」

坂場「ああ… それは構いません。 偶然 会っただけですから 偶然 また いなくなることもあるでしょう。」

なつ「モモッチと一緒に バターカリー食べたんですか?」

坂場「いえ 私は すぐに帰りました。 それじゃ。」

なつ「あっ いえ あの… ちょっと待って下さい! 昨日の続き 教えて下さい。」

坂場「続きというのは?」

なつ「話の続きです。 アニメーションにしか できない表現とは何か 坂場さんの考えを聞こうとしてました。 聞かせて下さい。」

坂場「それは…。 やはり あなたが 自分で考えて下さい。」

なつ「えっ?」

坂場「それを いつか 私に教えて下さい。 それが きっと アニメーターに対する敬意だと思います。 あなたが 本当のアニメーターならば。 失礼します。」

作画課

なつ「やなやつ やなやつ やなやつ…! あなたが 本当のアニメーターならば…。 あ~ もう… くっそ~!」

茜「今度は何?」

なつ「ハハハ…。」

茜「気合いが入ってるだけか。」

なつ「はい!」

茜「ああ…。」

<結局 その日は 満足な動画を描くことは できませんでした。 ああ~! はあ…。>

川村屋

ホール

なつ「それじゃ 雪次郎君は まだ ここで働いてるんですか?」

光子「ええ。 辞めるにしたって お父様の許しは必要でしょ。 雪次郎君にとっても。」

なつ「もちろんです。 私も そう思います。」

おでん屋・風車

1階店舗

咲太郎「それじゃ 親の許しがなきゃ 川村屋も辞められないのか?」

なつ「そうみたい。」

咲太郎「雪次郎は 二十歳を過ぎた大人だぞ。」

なつ「大人だから きちんと 自分の人生を考えるべきでしょ。」

亜矢美「確かに 役者を目指すよりは このまま 菓子職人を目指した方が 現実的だからね。」

なつ「そうよ。」

咲太郎「そりゃ 演劇やって 食えてるやつは ほとんどいないよ。 けど それで不幸だと思ってるやつも ほとんどいないよ。 不幸なら やる必要は全くないんだからな。 漫画映画を作ってるお前だって 似たようなもんじゃないのか?」

なつ「そんなことは分かってるよ。」

咲太郎「じゃ 何で雪次郎には反対するんだ?」

なつ「私は 雪次郎君にも 雪次郎君の家族にも 幸せになってもらいたいから 心配してんの!」

咲太郎「人の幸せなんて 他人に決められるもんか!」

なつ「だったら お兄ちゃんにだって 決められないでしょ!」

咲太郎「まあ 確かにそうだな…。」

亜矢美「他人が これ以上 余計なことを しない方がいいってことかもね。」

<なつよ お前だって 雪次郎君が 自由に自分を表現できること… それを願っているよな 誰よりも。>

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