ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第78話「なつよ、“雪月”が大ピンチ」【第13週】

あらすじ

昭和33年春、なつ(広瀬すず)が携わった新作の漫画映画「わんぱく牛若丸」の制作がついに終了。仲(井浦新)、露木(木下ほうか)、麻子(貫地谷しほり)ら、東洋動画のメンバーで打ち上げが行われる。そこで井戸原(小手伸也)から指名を受けたなつは、かつて農業高校で歌った曲を熱唱する。和やかな雰囲気で打ち上げが行われる中、陽平(犬飼貴丈)と顔をあわせたなつは、十勝にいる天陽(吉沢亮)のある話を聞かされる…。

78話ネタバレ

東洋動画スタジオ

作画課

昭和33年(1958)年 春

<昭和33年の春です。 『わんぱく牛若丸』の制作が 大詰めを迎えていました。>

麻子「まだなの? ここからの遅れは 仕上に迷惑かけるばかりだからね。 分かってる? 奥原さん。」

なつ「分かってます。 今 描いてます…。」

麻子「手 休めないで答えなさいよ。 急いでても 丁寧にやらないと やり直しが 一番時間を食うんだからね。」

茜「マコさん! マコさんが おとなしくしていた方が 仕事は はかどると思うんですけど!」

麻子「私だって言いたかないわよ! 立場上 しかたなく言ってんの。」

下山「まあ まあ まあ 敵対しないで みんなで乗り切ろう。」

麻子「下山さんも やって下さ~い。」

下山「は~い…。」

<なつにとって 初めてのアニメーターの仕事が もうすぐ終わろうとしています。>

仲「え~ なんとか 無事 美術と作画 仕上げまでの作業が 終わりました。 原画の枚数は1万5,112まい 動画は7万9,089枚になりました!」

(歓声)

仲「皆さん 本当にお疲れさまでした!」

一同「お疲れさまでした!」

仲「それでは 露木さん。」

露木「はい。」

仲「打ち上げは まだ先ですが 乾杯のご発声 お願いします。」

露木「うん。 いいですか? 『わんぱく牛若丸』の成功を祈って かんぱ~い!」

一同「かんぱ~い!」

(拍手)

下山「まあ まあ まあ まあ…。 え~ 改めまして 下山班 お疲れさまでした~!」

一同「お疲れさまでした~!」

下山「はあ… うん。」

なつ「下山さん お疲れさまでした。」

下山「うん。」

なつ「ありがとうございました。」

下山「なっちゃん どうだった? 初めての動画。」

なつ「必死に描いたとしか言えません。 やっぱり 練習で描くのとは 全然違いますね。 たくさん描くのが いかに難しいか そして 大事かということが よく分かりました。」

下山「それだけ分かれば大したもんだよ うん。」

茜「ねえ マコさん このお煮しめ マコさんが作ったんですか?」

麻子「そうよ。」

茜「へえ~ 意外です。 おいしいです!」

麻子「私を何だと思ってるの?」

堀内「料理なんかするんだ。」

麻子「するわよ。」

下山「結婚もするの?」

麻子「しちゃ悪いんですか?」

下山「いや…。」

なつ「そういう相手がいるんですか?」

麻子「今は いないわよ。 でも 親は たくさん見合い話 持ってくるけどね。」

茜「へえ~ 心配してるんですね。」

麻子「だから 私を何だと思ってんの! 奥原さん あなたの理想は何なの?」

なつ「えっ… 別に 私は そんなのいませんよ。 私も頂きます!」

茜「なっちゃん 分かりやすくごまかしたわね。」

なつ「んっ 本当においしい! あっ よかったら 私が持ってきたおでんも食べて下さいね。 特に ジャガイモがおすすめです!  北海道の。」

下山「えっ!」

麻子「あんたが作ったの?」

なつ「ジャガイモですか?」

麻子「おでんよ!」

なつ「ああ いや… ジャガイモの作り方だったら 分かるんですけど。」

麻子「変わってるわね。」

茜「さすが 農業高校出身。」

井戸原「よ~し 誰か歌え!」

(ざわつく声)

井戸原「誰も出てこないなら指名するぞ~。」

下山「見えないでしょ それ。」

仲「誰にしましょうか?」

露木「あっ よし… おい みんな聞いて 注目。 この中で 前足4本の馬描いたやつ どこだ? 出て~い! 出てこ~い!」

なつ「あっ…。」

下山「ここにいます!」

露木「お前か! よ~し お前から歌え! ここ。」

なつ「えっ… 歌は ちょっと…。」

仲「なっちゃん 何でもいいんだ 歌ってよ。」

なつ「えっ…。」

(拍手と歓声)

桃代「なっちゃん 頑張って!」

陽平「開拓精神 見してやれ!」

なつ「あ… 分かりました。 よし… 歌います!」

(拍手と歓声)

なつ♬『みのる稲穂に富士と鳩 愛と平和を表した 旗はみどりの風に鳴る 土にとりくむ若人の 意気と熱とばもりあげた エフ エフ ジェイ エフ エフ ジェイ われらの誇り エフ エフ ジェイ エフ エフ ジェイ われらの希望』

(拍手と歓声)

桃代「よくやった…。 誰も知らない歌を よく歌いきった…。」

井戸原「よ~し じゃあ 次は誰だ~…。」

♬『雨が降ろうが ヤリが降ろうが 朝から晩まで おみこしかついで ワッショイ ワッショイ ワッショイ ワッショイ 景気をつけろ 塩まいておくれ ワッショイ ワッショイ ワッショイ ワッショイ ソーレ ソレソレ お祭りだ』

なつ「陽平さん お疲れさまです。」

陽平「あっ なっちゃん お疲れさま。」

なつ「あっ。」

陽平「あっ ありがとう。 なっちゃん 天陽には手紙書いてるの?」

なつ「いや 最近は忙しくて…。 でも やっと落ち着いたんで また書きます。」

陽平「あっ いや…。」

なつ「えっ?」

陽平「そうか 聞いてないのか…。」

なつ「何をですか?」

陽平「こんな時に言うのはなんだけど…。 天陽は 今年の冬に結婚するんだ。」

なつ「えっ…。 結婚…?」

回想

天陽「なっちゃん!」

回想終了

なつ「おめでとうございます! したら 天陽君に お祝いの手紙書きますね。」

陽平「なっちゃん…。」

なつ「何だ そんなら そうと 手紙で知らせてくれたらいいのに。 水くさいわ 天陽君。 ハハハハ…。」

陽平「てれくさいんだろ あいつは きっと…。」

なつ「ふ~ん ハハハ…。 いいぞ モモッチ~!」

おでん屋・風車

1階店舗

(戸が開く音)

信哉「もう終わりか…。」

なつ「うん… でも どうぞ。」

信哉「亜矢美さんは?」

なつ「今 お風呂。 お兄ちゃん まだ。 何か飲む?」

信哉「いや いいんだ…。 ちょっと 報告することがあって。」

なつ「うん…。 どうしたの?」

信哉「うん。 実は… 今度 転勤するんだ。」

なつ「転勤?」

信哉「うん。 その勤務先が 帯広支局に決まったんだ。」

なつ「えっ! 帯広に行くの? 信さんが?」

信哉「うん。 偶然だけどね。 そういうことになったんだ。」

なつ「へえ~! 今度は逆になるんだ 私と信さんが。」

信哉「向こうに行ったら 2年か3年は戻ってこれないと思う。」

なつ「そうなんだ…。」

信哉「うん。」

なつ「すごい偶然だね。」

信哉「うん すごい偶然だよね。」

なつ「うん。」

信哉「うん。」

映画館

牛若丸『うりゃ~!』。」

(いななき)

<そして 迎えた 『わんぱく牛若丸』の公開初日。>

(いななき)

(笑い声)

<子どもが楽しめる漫画映画として評判を呼び 大ヒットを記録しました。」

『いいぞ いいぞ! 行け! それ~!』。

東洋動画スタジオ

階段

坂場「考えてますか?」

なつ「えっ?」

坂場「アニメーションにしかできない表現は 見つかりましたか?」

なつ「そんな… そう簡単には見つかりませんよ。」

坂場「そうですか… あの馬の足は偶然でしたか。」

なつ「だったら そっちから言って下さいよ。 前に言いかけたじゃないですか! 最後まで言って下さい。」

坂場「僕の考えでいいんですか?」

なつ「それが聞きたかったです ずっと。」

坂場「それは… ありえないことも 本当のように描くことです。 違う言い方をするならば ありえないことのように見せて 本当を描くことです。」

なつ「ありえないことのように見せて 本当を描くこと?」

坂場「そう思います。」

なつ「うん そうか…。 ありえないことも 本当のように描くこと。 ありえないことのように見せて 本当を描くこと。 どんなに ありえないことも 本当らしく見せる動きがある。 大きなうそから 真実を描き出す… それをできるのは アニメーションしかない!」

坂場「ふに落ちましたか?」

なつ「はい 落ちました!」

おでん屋・風車

1階店舗

昭和34年(1959)年5月

<そして それから また一年。 なつは 動画の仕事を続けました。 だけど まだ ポスターや映画に なつの名前が出ることはなく その一年で 変わったことと言えば これでした。>

(電話の呼び鈴)

なつ「はい もしもし 風車です。」

『北海道音問別4141番からです。 お待ち下さい』。

なつ「はい…。」

<電話によって 十勝と新宿がつながったのです。>

富士子『もしもし なつ?』

なつ「母さん? おはよう。」

富士子『おはよう なつ。』

一同『おはよう!』

富士子『聞こえた?』

なつ「うん。」

富士子『今年はどうなの? なつ 帰ってこれんのかい?』

なつ「あ…。」

菊介『帰ってこい!』

明美『帰ってきて!』

剛男『なつ 帰ってこい!』

照男『帰ってこい なつ!』

なつ「そだね… よし 今年は帰る!」

(拍手と歓声)

一同『なっちゃん! なっちゃん! なっちゃん! なっちゃん!』

富士子「楽しみにしてるよ。」

<ああ なつよ 目まぐるしく変わりゆく月日の中で 来週に続けよ。>

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