ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第79話「なつよ、十勝さ戻って来い」【第14週】

あらすじ

短編映画の制作が決まり、なつ(広瀬すず)と麻子(貫地谷しほり)は原画を任されることになった。演出部からは坂場(中川大志)が参加。早速3人は企画を考え始める。勝手になんでも決めていく坂場のやり方に、麻子は早くも不安を口にする。一方北海道・十勝では、富士子(松嶋菜々子)と砂良(北乃きい)が庭で話をしていた。そこにやってきた照男(清原翔)は、ふたりの背後に人の気配を感じ…。

79話ネタバレ

東洋動画スタジオ

昭和34年(1959)年5月

<昭和34年の5月です。 東洋動画入社から およそ3年。 なつは 2本の漫画映画で動画を描き 順調に その腕前も上げていました。>

下山「なっちゃん。」

なつ「はい。」

下山「マコちゃん。」

麻子「はい。」

下山「ちょっといい? 大事な話がるんだ。」

茜「大事な話って また喧嘩したの?」

なつ「してませんよ。」

堀内「喧嘩したんだよ。」

茜「えっ またですか?」

堀内「多分 そうだよ。」

柴田家

柴田牧場

<そのころ…。 北海道で 大きな出来事が 近づいていました。>

東洋動画スタジオ

会議室

なつ「短編映画ですか?」

仲「うん そう。 長編の仕事がない時に 若手の育成を兼ねて 大体 20分弱の短編映画を 作ることになったんだ。 そこで マコちゃんに 原画を任せたいと思ってる。」

麻子「私が 原画を?」

なつ「えっ マコさん おめでとうございます!」

下山「まあ 僕も『白蛇姫』のあと 短編映画で鍛えられたからね。」

麻子「是非やらせて下さい。」

なつ「えっ… 私は マコさんの下で 動画をやらせてもらえるんですか?」

仲「いや… なっちゃんにも 思い切って 原画をやらせたいと思ってるんだ。」

なつ「えっ?」

仲「どうだろう マコちゃん 一緒にやってもらえないかな? 女性のアニメーターで 最初に原画をやるのは 当然 マコちゃんだと思ってたんだけど 同時に なっちゃんの力も 試したくなったんだよ。 2人で 原画を描いてくれないか?」

麻子「私に断る理由はありません。 一緒にやれと言われるなら やるだけです。」

なつ「マコさん! ありがとうございます! よろしくお願いします!」

下山「まあまあ 監修っていうことで 一応 僕もつくから うん。」

なつ「はい。」

麻子「で 題材は 何をやるんですか?」

井戸原「それも 君たちが決めるんだ。 どうしたいのか 企画を出してくれ。」

麻子「企画を?」

なつ「私たちで…。」

仲「もう一人 演出部の方から つく人間もいるから 企画 構成 演出まで その人と3人で話し合って 進めてほしんだ。」

(ノック)

仲「ちょうど来たかな。」

井戸原「どうぞ。」

坂場「失礼します。」

なつ「あっ。」

井戸原「そこに座って。」

坂場「はい。」

麻子「カチンコ君。」

下山「マコちゃん その呼び方は もう古い。 やめてあげよう。 彼のことは イッキュウさんって呼んであげよう。」

なつ「イッキュウさん?」

下山「うん。 坂場一久でしょう? 一に久しいで。 イッキュウ。 どう?」

坂場「なぜ普通に呼ばれてはいけないんですか?」

下山「いや だって 普通だと 普通じゃない。」

なつ「じゃあ 下山さんのことは ゲザンさんって呼んだらどうでしょうか?」

下山「ゲザンさん…? 何か 人生下り坂って感じだからやめてよ。 普通でいいよ 僕は…。」

井戸原「急勾配。」

下山「急勾配してんじゃないですよ。」

仲「まあまあまあ とにかく そういう くだらない話からでもいいから 3人で話し合って 何か企画を考えてよ。」

3人「はい。」

中庭

なつ「どうしましょう?」

麻子「そうね… 何か 一から話を考えた方がいいのか 原作を立てた方がいいのか…。」

坂場「原作がある方がいいんじゃないですか? 時間もないですし。 今の僕たちに求められているのは 話を作る能力ではなくて 話を表現する能力だと思うんです。」

なつ「話の表現か… そですね! じゃ 何やります?」

麻子「だから それを これから考えるんでしょ。」

坂場「そうと決まれば ここで話し合っていても 無駄じゃありませんか? まずは 各自で やりたいものを見つけて それから話し合った方が早いです。 まずは 明日までに。 では 早速 失礼します。」

麻子「一人で決めちゃって…。 あの人と うまくやってく自信あるの?」

なつ「大丈夫ですよ。 マコさんとも やってきたじゃないですか。」

麻子「そうね… うん?」

なつ「とにかく考えましょう! 頑張りましょう!」

柴田家

柴田牧場

旧牛舎

悠吉「ん?」

菊介「どした?」

悠吉「あっ いや…。」

菊介「えっ?」

悠吉「ううん…。」

砂良「あっ お義母さん 薪割りなら私が。」

富士子「いいから あんたは。 あんた 間違えて 大事なおなかを割ったら大変しょ。」

砂良「間違えないってば…。 自分のおなかでもないみたいだけど。 ねっ はい…。」

照男「何してんだ? そったらこと俺が…。」

(物音)

照男「何だ? 誰かいんのか? そこに。」

砂良「えっ 誰?」

富士子「どしたの?」

照男「何か いるべ?」

富士子「えっ…。」

照男「誰だ?」

千遥「あっ あの… すみません。」

照男「はい…。 どしたの?」

砂良「誰?」

照男「知らんけど…。」

千遥「お姉ちゃん?」

砂良「えっ 何て?」

千遥「あっ いえ… 何でもありません。 道に迷っただけなんです。」

照男「道に迷った?」

千遥「お邪魔しました。 ごめんなさい。」

富士子「待って! あなた もしかして… 千遥ちゃん? やっぱり? そなの? 千遥ちゃんなのね?」

照男「それって…。」

砂良「まさか… なっちゃんの?」

千遥「なっちゃん?」

砂良「そう? あなた なっちゃんの妹?」

富士子「奥原なつっていう人 捜しに来たんでないんかい?」

砂良「だから さっき 私のこと お姉ちゃんと…。 ごめんね。 私は なっちゃんじゃないんだわ。」

富士子「私らは なつが北海道に来て 9つからの家族だけど ここは 今でも 奥原なつの家で間違いないの。 ここを探して来てくれたんでしょ? ずっと あなたを待ってたんだわ…。 本当なのね? 本当に あなたが千遥ちゃん?」

富士子「よく来た… よく来てくれた…。」

詰め所

照男「じいちゃん!」

泰樹「ん?」

照男「来た…。」

泰樹「何が来たんだ?」

照男「なつが ずっと捜してた妹だ… 実の妹だ。」

泰樹「何だって?」

居間

富士子「おいしい?」

千遥「はい… おいしいです。」

明美「あ~ いかった 牛乳が飲めて! 同じ妹として ほっとしたわ。」

富士子「なつも その牛乳が大好きだったの。 なつは その牛乳を 子どもの頃から 自分で搾ってきたんだわ。」

明美「じいちゃんに 牛飼い教わってね。」

砂良「農業高校まで出たんだよ。」

千遥「それで 今は 東京にいるんですか?」

富士子「そなの… 東京で 今 漫画映画作ってんだわ。」

千遥「漫画映画?」

富士子「うん。 千遥ちゃんは どこから来たの?」

千遥「東京です。」

砂良「それじゃ 今は 2人とも 東京にいるってこと?」

富士子「東京の どこ?」

(戸の開閉音)

富士子「父さん。 なつのじいちゃん。 千遥ちゃんよ。」

千遥「お邪魔しています。」

泰樹「そうか… よう来たな。 いや 本当 よう来た。 おい なつに知らせたか?」

富士子「まだ…。」

泰樹「何してんだ すぐ知らせてやらんか。」

富士子「そだね… 電話があるもね。 あっ この時間は なつは まだ…。」

千遥「待って下さい。」

富士子「えっ?」

千遥「姉には どうか… 知らせないで下さい。」

富士子「なして?」

千遥「すみません… それはいいんです。」

富士子「いいって…。」

千遥「姉が無事だと分かったら… 私は それでいいんです。」

富士子「あっ ちょっと待って…。」

千遥「姉には 会いたくないんです。」

富士子「えっ…。」

千遥「すみません… 許して下さい…。 このままで…。」

富士子「したけど… ここが分かったのは どうしてなの? 子どもの頃 お兄さんの咲太郎さんから あなたのいた親戚の家に来た手紙を あなたが持っていたからでないの?」

千遥「そうです。」

富士子「なつは 最近 そのこと知ってね とっても 心を痛めていたんだわ。 そんで ずっと いつか あなたが 会いに来てくれるんじゃないかって 待ってたの…。 その千遥ちゃんが やっと なつに会いに来てくれたんでないの?」

泰樹「まあ… まあ そうやって言うもんでねえ。 しゃべりたくないことだってある。」

富士子「父さん…。」

泰樹「何も聞かんでええ…。 ここに来てくれただけで十分だ。 ここはな なつのうちだ。 ということは 妹のあんたのうちでもあるんだ。 好きにしてればいい。」

東洋動画スタジオ

作画課

(ドアが開く音)

玉井「奥原さん 電話ですよ。」

なつ「電話?」

玉井「あなたの家族ですか? 北海道の柴田さんから。」

なつ「えっ 本当ですか!? すいません!」

受付

なつ「すいません…。 もしもし。」

富士子『もしもし なつ?』

なつ「母さん! どしたの? 会社になんて…。 何かあった?」

富士子『なつ… 落ち着いて聞いてね。 今 千遥ちゃんが うちに来てるんだわ。』

なつ「えっ…!?」

柴田家

詰め所

悠吉「おっ どした? こんな時間に大勢で。」

菊介「おい どこの子だ?」

東洋動画スタジオ
受付

富士子『千遥ちゃんから ここを探して来てくれたみたい。』

なつ「本当? 本当に… 千遥が来てるの?」

<なつよ 千遥は 今 あの懐かしき人々に囲まれているよ。>

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