あらすじ
富士子(松嶋菜々子)からの電話で、なつ(広瀬すず)の妹、千遥が十勝の柴田家に来ていると言われたなつ。千遥が富士子に伝えた言葉になつは激しく動揺する。千遥に会いたいなつは、すぐにでも十勝に帰ろうと、会社に許可をもらい早退。知らせを聞いた咲太郎(岡田将生)も、すぐに風車へ。妹の消息がわかったことに安堵(ど)する。そのころ十勝では、千遥が柴田家の面々に対し、なつたちが来る前に帰ると告げていた…。
80話ネタバレ
東洋動画スタジオ
受付
なつ「もしもし。」
富士子「もしもし なつ?」
なつ「母さん! どしたの? 会社になんて… 何かあった?」
富士子『落ち着いて聞いてね。 今 千遥ちゃんが うちに来てるんだわ。』
なつ「えっ…!? 本当に… 千遥が来てるの?」
富士子『千遥ちゃんには ないしょで なつに電話してんだわ。』
なつ「どういうこと?」
富士子『なつには 来たことを 知らせなくてもいいって言うんだけど そういうわけにもいかないっしょ。』
なつ「どうして!? 千遥は 私に 会いたくないって言ってんの?」
富士子『そんなわけはないと思うんだけど…。 だって ここまで来たんだから…。 とにかく 何か事情があるんだわ…。』
なつ「すぐ行く! そっちに すぐ行くから!」
富士子『千遥ちゃんのことは できるだけ引き止めておくけど…。』
なつ「母さん…。」
富士子『えっ?』
なつ「そんで 母さんから見て 千遥は 今 どんなふうに見えてるの?」
富士子『とてもすてきな いいお嬢さんに見える。』
なつ「本当? 本当に?」
富士子『うん… 千遥ちゃんも 東京にいたらしいの。 本当のことは 何も分かんないけど 私には とても幸せそうな いいお嬢さんに見えた。』
なつ「本当かい…。」
富士子『なつ 帰れるなら 急いで帰ってきな。』
なつ「うん ありがとう…。 母さん 千遥をお願い!」
富士子『分かった。』
玉井「奥原さん 何かあったんですか?」
なつ「あ… すいません。 あの… また ここから 電話かけてもいいですか?」
玉井「いいですよ。」
なつ「すいません。」
おでん屋・風車
1階店舗
(電話の呼び鈴)
亜矢美「うっさいな 本当 人が寝て… ずうずうしい! (せきばらい) はい 風車でございます。」
なつ『亜矢美さん! 千遥が… 見つかった!』
亜矢美「うん? ん?」
東洋動画スタジオ
作画課
なつ「下山さん!」
下山「どうしたの? 血相変えて…。」
なつ「すみませんが お休みを頂きたいんです。」
下山「休み?」
なつ「すみません マコさん。 しばらく 北海道に帰りたいんです。」
麻子「北海道?」
下山「何かあった?」
なつ「妹が… 来たんです。」
下山「分かった。 いいよ。」
麻子「えっ?」
なつ「えっ?」
下山「妹さんが来たんだろ? ほら いつか話してくれた…。」
なつ「はい… 実は そなんです。」
下山「よかったじゃないか! ほら 早く行ってやりなさい。」
なつ「でも…。」
麻子「何か よく分かんないけど 短編のことなら どこにいたって考えられるでしょ。」
なつ「はい… すいません!」
おでん屋・風車
1階店舗
亜矢美「あっ お帰り!」
なつ「お兄ちゃんは?」
亜矢美「うん… 連絡ついた。 すぐ帰るって。」
なつ「そですか…。」
亜矢美「とにかく よかったね!」
咲太郎「なつ!」
亜矢美「来た 来た!」
なつ「お兄ちゃん!」
咲太郎「千遥は! それで 千遥は まだ その北海道の家にいるのか?」
なつ「うん…。」
柴田家
旧牛舎
泰樹「なつも ああやって ここで生きてたんじゃ。」
照男「なつは 乳搾りが得意でな 昔から。 俺より うまかったんだ。」
泰樹「千遥もやってみるか? うん?」
千遥「いや…。」
泰樹「あ~ その恰好じゃ無理だな。 ハハハ…。」
台所
千遥「あの… 突然お邪魔して すみませんでした。 そろそろ失礼します。」
富士子「えっ! ちょっと待って! どこ帰るの?」
明美「もう帰っちゃうの!?」
千遥「ごめんなさい…。」
剛男「ただいま!」
富士子「あっ…。」
明美「父さん!」
剛男「あんたが千遥ちゃんかい?」
富士子「農協に勤めてる私の夫。 さっき知らせたの。」
剛男「よく来たな… よく来てくれた…。 ありがとう!」
明美「ねえ もう帰っちゃうんだって!」
おでん屋・風車
1階店舗
なつ「千遥は 私に会いたくないと言ってるみたい。」
咲太郎「どうして?」
なつ「分かんない。」
咲太郎「会いに来たのに 会いたくないって どういうことだ?」
亜矢美「電話してみる? こっちから。 いるんでしょ? まだ。」
なつ「えっ…。」
咲太郎「そうだ! とりあえず電話してみろよ!」
なつ「お兄ちゃん… 私 何だか怖いわ。」
咲太郎「何言ってんだよ! それなら 俺がするよ 番号教えろ。」
亜矢美「会いたくないって言ってんのはさ 向こうも怖がってるからじゃないの?」
柴田家
台所
千遥「今日は… 許して下さい。 すいません…。 こちらから また連絡しますから 姉には…。」
(電話の呼び鈴)
富士子「なつかもしれない。」
千遥「えっ…。」
富士子「ごめんね。 知らせないわけにいかなかったの。 なつも 本当に喜んでて 今すぐ 飛んでくるって言ってたわ。」
泰樹「はい。」
おでん屋・風車
1階店舗
『お出になりました。 どうぞ』。
泰樹『なつか?』
なつ「うん。 じいちゃん… 千遥は 今 そこにいるの?」
泰樹『うん… 今 代わる。』
千遥『もしもし…。』
なつ「千遥? 千遥なの? 千遥… お姉ちゃんだよ。」
千遥「お姉ちゃん?」
回想
なつ「千遥。」
千遥「お姉ちゃん。」
回想終了
なつ「千遥… 千遥 ごめんね…。 よかった…。」
千遥『ご心配おかけして すみませんでした。』
なつ「何言ってんの? 千遥…。」
咲太郎「千遥! 俺だ… 兄ちゃんだぞ!」
回想
咲太郎「千遥。」
回想終了
千遥『お兄ちゃん』
咲太郎「そうだ 咲太郎だ! お前の兄ちゃんだよ! 悪かった… お前を あの家に預けて… 本当に 兄ちゃんが悪かった…。 すまなかった…。 今から すぐ そっちに行くから! すぐ行くからな 待っててくれ! 絶対に もう お前を放さないからな! 分かった…。」
咲太郎「えっ…。」
なつ「えっ?」
亜矢美「ん?」
なつ「どしたの?」
咲太郎「切れた。」
なつ「ちょっ… もしもし? もしもし?」
咲太郎「何でだ?」
亜矢美「あ~… バカ バカ バカ!」
柴田家
居間
富士子「大丈夫? 何かあったの?」
千遥「いえ… 大丈夫です…。 すみません…。 私 昔のことは… 姉や兄と一緒にいた頃のことは あまり よく覚えていないんです。 ところどころ はっきり覚えているんですけど… それが いつの記憶で どういう時のことだったのか 細かいことは 思い出せないことが多くて…。」
富士子「無理もないわ…。 5歳までだったんでしょ? 咲太郎さんや なつと一緒にいたのは…。」
剛男「忘れてしまいたいような つらいことも多かったろうしな。」
千遥「でも 今… 電話で 声を聞いたら… その途端に 私の姉だと分かりました…。 兄の声だと分かりました…。 そのことに 何だか驚いてしまって… 何て言えばいいのか 分からなくなって…。」
富士子「そう… そだったの。」
泰樹「相手の顔が見えん電話は わしも好かん。」
富士子「好き嫌いは どうでもいいでしょや。」
剛男「けど 向こうは心配してるんでないかい? 急に 電話が切られてしまって…。」
明美「そだね。 私だって びっくりしたも。」
千遥「すいません… こちらから もう一度 電話をかけてもいいでしょうか?」
おでん屋・風車
1階店舗
なつ「はい。」
『筆界同音問別4141番からです。 お待ちください』。
なつ「はい!」
『どうぞ』。
なつ「もしもし! 千遥ちゃん?」
千遥『先ほどは すみませんでした…。 お姉ちゃん?』
なつ「千遥… 声が すっかり大人になったね…。 あ… それは お互いか…。 ねえ 千遥… お願いだから そこで待ってて。 今すぐ行くから…。 どうしても 千遥に会いたい…。」
千遥『分かりました…。 私も… 会いたいです。』
<なつよ その瞬間に はっきりと 家族の時がつながった。>
なつ「千遥…。」