ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第81話「なつよ、十勝さ戻って来い」【第14週】

あらすじ

なつ(広瀬すず)と咲太郎(岡田将生)の妹・千遥が、突然柴田家に姿を現した。その日の晩ごはん、富士子(松嶋菜々子)は、なつの好物で千遥をもてなす。富士子や泰樹(草刈正雄)、剛男(藤木直人)たちのやり取りを見ていた千遥は、ふいに自分の境遇を語りだす。それを聞いた泰樹は、千遥に翌朝早起きしていっしょに働こうと提案する。千遥は泰樹の申し入れにうれしそうにうなずき、そして…。

81話ネタバレ

おでん屋・風車

1階店舗

なつ「ねえ 千遥… お願いだから そこで待ってて。 今すぐ行くから…。 どうしても 千遥に会いたい…。」

千遥『分かりました…。 私も… 会いたいです。』

<なつは 13年ぶりに 妹 千遥の声を聞きました。>

なつ「千遥…。」

咲太郎「じゃあ 母ちゃん 行ってくる。」

亜矢美「うん。 帯広の信さんとは つながった?」

咲太郎「さっき つながった。 話したよ。」

なつ「明日の朝 会いに行ってくるって。」

亜矢美「はい お弁当。 あんたたちもね 急いで… ていうか まあ ほどほどにね まず 気を付けて 行ってらっしゃい。」

なつ「行ってきます。」

亜矢美「うん。 行ってらっしゃい」

<なつと咲太郎は その日の夜行で 北海道に向かいました。>

柴田家

居間

一同「頂きます。」

富士子「千遥ちゃんの好きなもん 分かんないから なつの好きなもんばっかり 作ってしまったわ・・・。 口に合うか分かんないけど 食べてみて。」

千遥「ありがとうございます。 頂きます。 頂きます。 おいしい…。 とても おいしいです。」

富士子「ハッ… よかった。」

泰樹「それで いつ なつたちは こっちに着くんだ?」

照男「今夜の夜行に乗るんだべ?」

富士子「そう言ってた。」

照男「上野から青森まで 半日以上かかるからな… 明日の午前中に 青森に着いたとして…。」

砂良「それから 青函連絡船に乗って 5時間ぐらいかかるからね。 明日の夕方までには 函館に着くってとこかな。」

剛男「帯広までは 半日以上かかるから 着くのは あさっての明け方んなるな どんだけ早くても。」

富士子「ごめんね 千遥ちゃん。 そんぐらいは かかってしまうわ。」

泰樹「千遥は 待つと言ってんだ。 そったら心配することねえべや。 なあ?」

剛男「お義父さん 千遥と呼ぶのは 少し早すぎませんか? 随分なれなれしく感じますけど。」

泰樹「なつは なつ 千遥は 千遥だべ。 家族が いちいち ちゃんとか さん付けて呼べるか。」

砂良「私は 半年間 砂良さんでした…。」

泰樹「ああ… そりゃ すまんかったな。」

剛男「僕は いまだに 剛男と呼ばれたことがありませんよ。 いつも 『あれ』とか『おい』で。」

泰樹「おい… 何言ってんだ。」

剛男「ほら…。」

(笑い声)

富士子「千遥ちゃん こういうじいちゃんだから 気にしないでね。 偉そうにしてるからって 偉いと思う必要ないからね。」

千遥「いえ… すごいですね。」

富士子「ん? 何が?」

千遥「姉は… こんなに恵まれて育ったんですね。」

富士子「千遥ちゃん…。」

剛男「千遥ちゃんは… 自分のお父さんのことは覚えてないの?」

千遥「父や母のことは 全く…。 顔も思い出せないくらいで…。」

剛男「そうか… 僕は 君のお父さんと 戦地で 一緒に戦って どっちが 先に亡くなっても 残された家族に手紙を届けようって 約束したんだ。 だから 僕は 復員して すぐ 咲太郎君と なつを捜して会いに行った。 残念ながら その時 千遥ちゃん もう いなかったけど。」

千遥「はい。 そのことは 兄が 親戚のおばさんに出した手紙に 書いてありました。」

富士子「千遥ちゃんは 6歳の時に その手紙を持って おばさんの家を出たんでしょ?」

千遥「はい。」

富士子「それからは 随分 苦労したんでしょうね…。」

千遥「家出をして すぐ 私は ある人に拾われて… 東京の置屋に預けられました。」

剛男「置屋!?」

明美「おきやって?」

千遥「芸者さんのいるところ。」

明美「えっ! 千遥ちゃんは芸者さんなんかい?」

富士子「明美。」

千遥「私は まだ半人前で… お酌って呼ばれる見習いみたいなもの。 私は 運がよかったんです。 そこで みんなから お母さんと呼ばれている女将さんが とてもいい人で… 頼もしくて いいお姐さんたちにも囲まれて 私は 何不自由なく 食べるものにも困らず 今まで育ててもらいました。」

富士子「ああ…。 本当? 本当かい? 本当に 千遥ちゃんは 幸せに暮らしてたんかい?」

千遥「はい… とても幸せです。」

剛男「(泣き声)」

富士子「何さ 泣くことないしょや。」

剛男「いや… それを知ったら なつや咲太郎君だけじゃなく 亡くなられた奥原さんやお母さんも どんなに ほっとするか。」

<ありがとう 柴田君。 でも 私と家内は知っていました。 ずっと 見守っていますから。>

千遥「でも… 幸せでは 私は 姉に かないそうにありません。」

泰樹「よし。 明日は早起きして 一緒に働くべ。」

剛男「いや… 何が よしですか? 何言ってるんですか。」

千遥「はい! 私にも教えて下さい。」

剛男「えっ?」

泰樹「うん。」

子供部屋

明美「これ。」

千遥「これが 私のお姉ちゃん?」

明美「そう。 覚えてる?」

千遥「こんな人だったんだ…。 明美ちゃんに似てるね。」

明美「えっ そんなわけないしょ。」

千遥「あるわよ。 人は 一緒に暮らしてる人に 似てくるものだって。」

明美「ふ~ん… だったら うれしいけど。 千遥ちゃんにも似てるよ。」

千遥「あの 漫画映画を作ってるって…。」

富士子「ああ それが なつの夢だったの。 なつが帰ってきたら 直接聞いてみて。 何をしてるかは なつが 自分で話した方が きっと伝わると思うわ。」

夫婦の部屋

富士子「あの子 本当に きちんと しつけられてるわ…。 洋服も姿勢も行儀もきれいだし… きっと ちゃんとした置屋で そんな悪いところじゃないでしょ。」

剛男「もし このまま ここにいたいと言ったらどうする?」

富士子「なつも いないのに?」

剛男「あの子は幸せだと言ったけど… つらいことが ないはずないけどな…。」

富士子「芸者のこと よく知ってるの?」

剛男「えっ? いや… 本物は見たことない…。」

富士子「うそでしょ。」

剛男「本当だって。」

富士子「うそ。」

剛男「本当。」

富士子「こっち見ろ。」

剛男「わっ! いや 本当…。」

詰め所

富士子「おはよう。」

千遥「おはようございます。」

悠吉「お~! 何か懐かしいべ。」

菊介「なっちゃんが帰ってきたみたいだ。」

泰樹「おはよう。」

千遥「おはようございます。」

富士子「あんまり こき使わんでよ。 後で なつに怒られっからね。」

泰樹「分かってるよ。」

悠吉「牛は大丈夫かい? 怖くないかい?」

千遥「大丈夫です。 かわいいです。」

悠吉「そうかい? なっちゃんも 初めから めんこがってたもんだ。」

照男「でも 油断してっと蹴られっからな。」

菊介「大丈夫だ。 なっちゃんの時みたいに この菊介のおっちゃんが 全ての危険から守ってやっから。」

砂良「それが一番怖いべさ。」

菊介「ちょっと 砂良ちゃん…。」

(笑い声)

泰樹「千遥 搾乳やってみっか。」

千遥「はい。」

旧牛舎

照男「後ろ足 気ぃ付けてな。」

回想

泰樹「数を数えるように 上から指を折るようにして搾れ。」

なつ「指を…。」

回想終了

泰樹「数を数えるように 上から指を折るようにして搾るんだ。」

千遥「あっ…!」

泰樹「ハハハハ… できた!」

(笑い声)

泰樹「うまい うまい… うん それでいい!」

詰め所

泰樹「大したもんじゃ。」

千遥「ありがとうございます。」

(シャッター音)

信哉「あっ ごめん 驚かした?」

千遥「何ですか?」

剛男「千遥ちゃん この人 誰だか分からんかい?」

信哉「分からないようね…。 信哉だ。 佐々岡信哉。 昔は 信とか… なっちゃんと千遥ちゃんには 信さんって呼ばれてた。」

千遥「信さん?」

信哉「そう… 覚えてる?」

千遥「少しだけ… 何となくですけど…。」

信哉「よかった… 何となくでも 覚えててくれて うれしいよ。」

剛男「信さんは 帯広の放送局に勤めてるんだ。」

信哉「去年 東京から赴任してね。 東京では なっちゃんと咲太郎とも会ったんだよ。 それで 昨日 連絡もらったんだ。 本当に あの千遥ちゃんに会えたんだな…。」

千遥「その写真は どうするんですか?」

信哉「あっ… これ? どうもしないよ。 ただ 何となく撮りたくなっただけ…。」

千遥「誰にも見せないで下さい。」

信哉「えっ?」

剛男「どうして? 千遥ちゃん。」

千遥「どうしても… 写真が嫌いなんです。」

信哉「分かった… ごめん 勝手に撮って。」

千遥「いえ… すみません。 こちらこそ 変なこと言って…。 すいません…。」

<その翌朝。>

雪月

(ノック)

雪之助「なっちゃん。」

なつ「おじさん 朝早くに すいません。 今 着きました。」

<なつよ やっと来たか。>

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