ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第83話「なつよ、十勝さ戻って来い」【第14週】

あらすじ

千遥(清原果耶)に会いたい一心で十勝にやってきたなつ(広瀬すず)と咲太郎(岡田将生)。しかし、柴田家に着いたころには、すでに千遥の姿はなかった。泰樹(草刈正雄)にも、なぜ千遥がなつの到着を待たずに出て行ったのかその理由がわからない。そんななか、なつと咲太郎あてに千遥からの一通の手紙が届く。そこには、戦後、なつたちと離れて暮らした千遥の生い立ちや、なつに会わないまま帰った本当の理由が記されていた…。

83話ネタバレ

柴田家

詰め所

明美「千遥ちゃんから 手紙が来た!」

<千遥から手紙が届いたのは 千遥が消えて 2日後のことでした。>

砂良「消印は帯広ね。 帯広から出したんだ。」

咲太郎「帯広にいるのか?」

なつ「読むね。 『お姉ちゃん お兄ちゃん 急に帰ってしまってごめんなさい。 柴田牧場の皆さんにも 大変失礼なことをしました。 おわび申し上げます。 私は 子どもの頃 おばさんの家にいるのがつらくて 逃げ出しました。 線路を見つけて そこを たどっていけば お姉ちゃんや お兄ちゃんのいる 東京に行けると思ったのです。 どこかの駅で 一人の復員兵の人に助けられました。 今では 顔も思い出せないその人は 私を連れて 東京に行ってくれました』。」

千遥『そして 私を自分の娘だと言って 置屋に売ったのです。 私は 18歳になる今まで そこの女将さんを お母さんと呼んで 人並みに育つことが出来ました』。

回想

千遥「お稽古 お願いします。」

なほ子「はい 始めましょう。」

千遥『私は 今 奥原千遥ではありません。 女将さんは 私を 戦災孤児として届け出をして 自分の戸籍に 養女として迎えてくれたからです。 今でも独身の女将さんは 本当に 私のお母さんになってくれたのです。 私は 置屋の娘になりました』。

回想終了

なつ『そんな私に 最近 結婚してほしいという人が現れました。 とても立派な家柄の人で 私には とても不釣り合いな人です』。

明美「千遥ちゃん 結婚するの?」

砂良「そうみたいね。」

なつ「(すすり泣き)」

富士子「なつ… 何なら もう みんなに読んでくれなくて いいんだよ。」

なつ「大丈夫…。 『その時 お母さんから 兄の手紙を見せられました』。」

回想

千遥『どこかで無くしてたと 思っていましたが お母さんが 私の荷物から見つけて 預かってくれていたのです』。

なほ子「それは お前の兄さんからの手紙だろ?」

千遥「はい。 でも お母さん 私は この手紙に どんなことが書いてあったのか よく知らないんですよ。 あのころは 字が あまり読めなかったもので。」

なほ子「その手紙に お前の姉さんが住んでるっていう 北海道の住所が書いてあったんだよ。」

千遥「えっ?」

なほ子「そこは 親戚でもなく 戦死なすった お父さんの 友人のうちだそうだ。」

千遥「私の姉が そこに?」

なほ子「うん… で その北海道に お前のことを 連絡しようかどうか迷ったんだよ。 ただ… お前の姉さんが そこで どんな暮らしをしてるのか お前のこと聞いて どう思うのか どうなるのか… それで 2人とも 幸せになれるのかどうか… いくら考えても 答えが出なくてね そのうちに… お前を手放すのが 惜しくなってしまったのさ。」

なほ子「千遥… すまなかった! その手紙を 今まで隠してて 本当に申し訳なかった! このとおり 謝るよ。」

千遥「お母さん やめて下さい! お母さんが そんな 私に謝ることなんって 一つもないんだから…。」

なほ子「だけどね 千遥… この先 もし あの方と結婚するなら 昔の家族とは 縁を切らなくてはいけないよ。」

回想終了

なつ『昔の家族とは 縁を切らなくては ならないと言われました。 相手は 立派な家柄なので 私が浮浪児だったということを 先方の親に知られたら 破談になってしまうからです』。

回想

千遥「お母さん…。 私には もう 兄や姉の記憶はないんです。 あるのは ここに来てからのことばかりで 幸せな記憶ばかりです。 お母さんが望むことなら 私は 喜んで結婚します。」

なほ子「私の望みは お前が幸せになることだけなんだよ!」

千遥「大丈夫… 私は幸せです。 お母さんの娘になれて 本当に幸せです。」

なほ子「千遥…。」

千遥『私の幸せを願う お母さんのためにも 私は 結婚をしようと思いました』。

千遥『それでも 私は 最後に 北海道に行くことを お母さんに許してもらいました。』

回想終了

なつ『もし お姉ちゃんが 今 不幸でいたなら 私は 今の幸せを投げ出してでも 助けなければないと そう思いました。 だけど もし幸せでいてくれたら 私は お姉ちゃんと 永遠に… 別れなくてはいけないと そう決意しました』。

回想

富士子「あなたが千遥ちゃん? よく来た… よく来てくれたわ…。」

泰樹「ここはな なつのうちだ。 ということは 妹のあんたのうちでもあるんだ。 好きにしてればいい。」

泰樹「よし。 明日は早起きして 一緒に働くべ。」

剛男「何が よしですか?」

千遥「はい! 私にも教えて下さい。」

回想終了

千遥『その家で お姉ちゃんが どんなふうに暮らしていたか それを知るのに 時間はかかりませんでした。 それから お姉ちゃんとお兄ちゃんと 電話で話した時に 突然 昔のことを思い出したのです』。

回想

千遥『空襲のあと おばあさんに 芋を恵んでもらって お姉ちゃんと食べたこと。』

千遥『アメリカ軍人の靴磨きをして チョコレートをもらったこと。』

千遥『お兄ちゃんが 大勢の人を前に かっこよく踊っていたこと。」

千遥『信さんも一緒に みんな家族のように 池のほとりで たき火をして ザリガニを焼いたこと』。

千遥「お母さんに会いたい!」

なつ「大丈夫だってば!」

千遥『石蹴りをして転んで 泣きわめく私を お姉ちゃんが 力いっぱい抱きしめてくれたこと。』

千遥『私は 柴田牧場で お姉ちゃんの服を着て働いた時 何だか お姉ちゃんに 抱き締められて いるような気がしました。 ここで 私まで幸せを感じて そして お兄ちゃん お姉ちゃんに 会ってしまったら 別れられなくなると 怖くなったのです』。

千遥『だから 私は逃げ出したのです』。

回想終了

なつ『一生 会うことは もうありません。 会えません。 お兄ちゃんも 元気でいてくれて 本当によかった』。

なつ『私は 一生 自分の過去とは別れません。 柴田牧場で過ごした短い時間も 忘れることはありません。 どうか 皆さん お元気で。 お世話になりました。 さようなら。 ごめんなさい。 千遥』。

菊介「こったらことって あっかよ!」

悠吉「よっぽどの思いだべ…。」

千遥『追伸 私の記憶の中にある お兄ちゃんとお姉ちゃんを思い出して 絵を描きました。 感謝を込めて。 ありがとう』。

なつ「お兄ちゃん…。」

咲太郎「なつ…。 うまいな…。」

なつ「うまいね…。 上手だね 千遥…。」

子供部屋

<なつよ… 千遥を抱き締めてやれ。>

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