あらすじ
妹の千遥に会うことがかなわなかったなつ(広瀬すず)は、久しぶりに天陽(吉沢亮)を訪ねる。4年ぶりの再会に喜ぶふたり。天陽の隣には、一生懸命に働く天陽の妻・靖枝(大原櫻子)の姿があった。天陽の両親・正治(戸次重幸)とタミ(小林綾子)もなつを出迎え、近況報告に花を咲かせる。その後、アトリエで天陽とふたりきりになったなつは、靖枝とのなれ初めについて天陽から聞かされるが…。
84話ネタバレ
柴田家
居間
なつ『どうか 皆さん お元気で。 さようなら。 千遥』。
庭
信哉「そっか…。 千遥ちゃん 写真も残したくなかったのか…。」
咲太郎「でも この写真があって 俺も なつも感謝してるよ。 本当に いい写真を残してくれた。 ありがとう 信。」
信哉「千遥ちゃんの幸せを 祈ることしかできないのかな 俺たちは。」
咲太郎「今までと同じだよ…。 だけど これからは 確信を持って祈ることができる。 それだけでも うれしいよ 俺は。」
信哉「そうだな。」
咲太郎「うん。」
信哉「なっちゃんは 牛舎にいるのか?」
咲太郎「ああ なつは出かけた。 昔の友達に会いに行くって言ってた。」
信哉「昔の友達…?」
山田家の畑
靖枝「陽ちゃん。」
天陽「おう。」
靖枝「はい。」
天陽「ありがとう。」
天陽「なっちゃん… なっちゃん! 帰ってきたんかい?」
なつ「うん… 久しぶり。」
天陽「本当 久しぶりだな… 何年ぶりだい?」
なつ「3年ぶり?」
天陽「そうか… もう そんなになるかい。」
なつ「天陽君 結婚おめでとう。」
天陽「うん ありがとう。 お~い やっちゃん! なっちゃんだ。 柴田牧場の。 東京で 兄貴と一緒に漫画映画を作ってる あのなっちゃん。」
靖枝「ああ! 初めまして。 靖枝です。」
なつ「初めまして。 あの 天陽君とは幼なじみで…。」
靖枝「あ… 祝電を頂いて ありがとうございました。」
なつ「あっ いえ… 仕事で 式には行けなくて すいませんでした。」
靖枝「陽ちゃん うちに 上がってもらったらいいべさ。」
天陽「そだな。 母さんも喜ぶし。」
なつ「あっ… ううん あの ちょっと寄っただけだから。」
靖枝「せっかくだし… ねえ。」
天陽「うん。」
山田家
居間
靖枝「ゆっくりして下さい。」
タミ「なっちゃん 相変わらず何もないけど 食べて。」
なつ「わあ… おばさんのそばがき 懐かしい…。」
正治「なっちゃん 牛乳… は もう さんざん飲んだか。」
なつ「ありがとうございます。」
天陽「今は 牛が2頭いるんだわ。」
正治「もっと数を増やしたいんだけどね。」
天陽「まだ サイロも建ててないし 牛小屋も広げないとな。」
正治「それは お前が絵に使ってるからだべ。」
靖枝「お義父さん したって それも大事だから。」
正治「分かってるけど…。」
(笑い声)
なつ「ありがとうございます…。 おいしい!」
タミ「なっちゃん 里帰りは初めてかい?」
なつ「うん… 実は 妹が来たんだわ。」
タミ「妹?」
天陽「もしかして 千遥ちゃんのことかい?」
なつ「そう。」
天陽「本当かい!」
正治「子どもの頃 別れたままだった妹さんか…。 えっ 柴田の家に来たんかい?」
なつ「そなの…。 妹は 今度 結婚するみたいで そんで 別れを言いに来てくれたんだわ。」
タミ「結婚するのかい? 妹さんは いくつになったのい?」
なつ「18です。」
タミ「そうかい… 早いもね 時間がたつのは。」
天陽「別れを言いに来たって どういうことだ?」
なつ「うん… 千遥は 今 ある人の養女として暮らしててね 昔のことは 結婚する相手の家には 知られたくないから もう二度と会うことはできないって。」
靖枝「そんな…。」
タミ「そういうことで 差別されることがあるって聞くからね…。」
正治「戦争の被害者なのにな 全く おかしな話だわ。」
天陽「でも 千遥ちゃんには会えたんかい?」
なつ「いや… 結局 すれ違いで 会うことはできなかったけど… 千遥の気持ちは受け止めれたし 私の気持ちも受け取ってもらえた。」
天陽「うん… そうか。」
なつ「そう思う。」
タミ「東京で なっちゃんは結婚するの?」
なつ「え? 何言ってんの おばさん。 そったらこと考えてもないわ。」
正治「そんな話はいいべや。」
なつ「今の仕事が面白くて そのことしか考えてないから。」
天陽「そんなに楽しいか? 漫画映画の仕事は。」
なつ「うん… あっ 今度 原画を任されることになってね。 まあ 短編だけど。 そんで すぐ東京に 戻らなくちゃなんないのさ。」
天陽「また しばらく会えなくなるんか。」
なつ「うん。 で… でも ほら もう寂しくないっしょ。 牛も 2頭に増えたし…。」
(笑い声)
馬小屋
なつ「うわ! これが 展覧会で入賞した作品?」
天陽「うん。 こっちが最初ので こっちが去年の。」
なつ「あっ 私も 馬の絵を描いたんだわ 東京で。」
天陽「あっ 見たよ 映画。 帯広で あのディズニー見た映画館で… 『牛若丸』。」
なつ「本当… わざわざ ありがとう。」
天陽「まあ 別に見なくても なっちゃんが 楽しんで描いてるなら それでいいんだけどね 俺は。」
なつ「ハハッ…。」
なつ「昔の友達は ありがたいね。 いつまでも応援してくれて。」
天陽「あっ 十勝農業高校の演劇部で一緒だった 居村良子さんと 門倉 努がいるべ?」
なつ「うん よっちゃんと番長?」
天陽「うん。 あの2人が 今 青年団で演劇やってんだわ。」
なつ「へえ~ 本当?」
天陽「その舞台美術を また頼まれて 俺が 背景を描いたんだ。」
なつ「天陽君もやってんの?」
天陽「うん。 その舞台を 妻も手伝ってたんだわ。」
なつ「あ…。」
天陽「それで仲よくなって 気付いたら 好きになってた。」
なつ「そう。」
天陽「うん…。」
なつ「いかったね。 いい人が見つかって。」
天陽「まあ 結婚して喜んだのは 俺より 母さんや父さんだったけどね。」
なつ「ふ~ん。」
天陽「俺も いかったと思ってる。 やっぱり 開拓農家の娘だし ここでのつらいことも 一緒に楽しめるから。」
なつ「そう…。」
天陽「うん。」
靖枝「コーヒーいれましたよ。」
天陽「おお ありがとう。」
なつ「ありがとうございます!」
靖枝「いえ… どうぞ。」
なつ「頂きます。」
靖枝「熱いかもしれないけど。 はい 陽ちゃんも。」
天陽「ああ ありがとう。」
なつ「頂きます。 おいしい…。」
靖枝「いかった! ハハハ…。」
山田家の畑
天陽「したらな。」
なつ「うん。」
靖枝「また来て下さい。」
なつ「お邪魔しました。」
柴田家
詰め所
なつ「じいちゃん ただいま。」
泰樹「おお お帰り。」
なつ「私も手伝う。」
泰樹「いや… いいから。 天陽に 会うてきたんか?」
なつ「うん…。」
泰樹「そうか。」
なつ「いいお嫁さんだった。」
泰樹「うん。」
なつ「千遥の結婚も あんなふうになるといいな…。」
泰樹「うん。」
なつ「やっぱり手伝う。 じいちゃん…。」
泰樹「うん?」
なつ「もし 私が ここに残って 酪農を続けてたら じいちゃんは うれしかった?」
泰樹「そったらこと考えんな。 そったらこと考えるなつには なってほしくない。」
なつ「けど じいちゃん… 私だって 寂しいんだわ…。 じいちゃん… 寂しくて… 寂しくて たまんないんだわ…。 じいちゃん…。」
泰樹「なつ…。」
なつ「ん?」
泰樹「わしだって寂しい…。 お前が おらんようになって ずっと寂しい…。 寂しくて たまらん…。」
なつ「じいちゃん…。」
泰樹「人間は 一人で生きようと思えば 寂しいのは当たり前じゃ。 それでも 一人で生きなきゃならん時が来る。 誰といたってもだ。 家族といたって 一人で生きなきゃならんもんだ。 だから支え合う。 離れていたって 支え合える。 わしとお前は 支え合ってるべ?」
なつ「うん…。」
泰樹「千遥と会えんで寂しいのは わしも同じじゃ。」
なつ「ありがとう。」
泰樹「天陽は どうだっていい…。」
なつ「ハハ…。 そんなこと言わずに 天陽君もお願いします。」
泰樹「そうか ハハ…。」
居間
剛男「念のため 帯広にある旅館を 当たってみたんだけど 千遥ちゃんの名前はなかったな。」
咲太郎「そうですか… すいません。」
なつ「父さん ありがとう。」
咲太郎「いろいろと ありがとうございました。 明日 東京に戻ります。」
剛男「もう帰っちゃうの?」
咲太郎「はい。 なつも仕事が忙しいようなので。 実は 私も…。」
剛男「なつも帰っちゃうんかい?」
なつ「ごめん。 すぐ取りかかんなくちゃなんない 新しい仕事が出来て。」
咲太郎「あっ 実は 私も 今…。」
剛男「何だかな… 残念だな…。 いや なつだけでも ちょっとは ゆっくりできるかと思ったのに!」
富士子「しかたないしょ 仕事なんだから。」
(戸が開く音)
夕見子「ただいま。」
なつ「うん? この声は…。」
夕見子「ただいま。」
なつ「夕見!」
剛男「おお!」
夕見子「何さ この家は。 女は働いて飯を作り 男は座って飯を待つ。 相変わらず 遅れてますもね。」
<去る者がいれば 来る者もいる。 なつよ寂しさを乗り越えて…。>
なつ「夕見子 お帰り!」
<来週に続けよ。>