ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第90話「なつよ、ワクワクが止まらない」【第15週】

あらすじ

仕事のことで落ち込み、風車で飲んだくれていた雪次郎(山田裕貴)のもとに、突然夕見子(福地桃子)が現れた。北海道で大学に通っているはずだ、と驚くなつ(広瀬すず)や雪次郎たち。上京の理由を訪ねるが、夕見子は質問をはぐらかしたまま、行き先も告げずに去ってしまう。一方東洋動画では、なつの携わる短編映画の絵コンテがようやく完成するが、下山(川島明)は、仲(井浦新)や井戸原(小手伸也)に思わぬ指摘をされて…。

90話ネタバレ

おでん屋・風車

2階なつの部屋

<短編映画のストーリーが出来上がり なつのキャラクター作りも 大詰めを迎えていました。>

なつ「あった… これだ。」

回想

弥市郎「自分の魂を 木の中に込めるんだ。」

回想終了

♬~(歌声)

なつ「ん?」

♬『意気と熱とがもりあげた』

1階店舗

雪次郎♬『エフ エフ ジェイ エフ エフ ジェイ われらの誇り』

亜矢美「どうした どうした どうした?」

咲太郎「ダメだ こいつ。 慰めたら 酔い潰れて。」

なつ「雪次郎君!」

咲太郎「おい なつ なんとかしてやってくれよ。」

なつ「何があったの?」

レミ子「役を降ろされたのよ それも主役に。」

雪次郎「いや~ 俺はもう 俺は… 帰るよ。 もう北海道 帰るよ。」

なつ「ちょっと 雪次郎君!」

雪次郎「何だよ…。」

なつ「お水 はい。」

雪次郎「いや 飲まない お水は。」

なつ「何でよ。」

亜矢美「いらっしゃい。」

夕見子「あっ やっぱり雪次郎か! この近くで見かけて ついてきたんだわ。」

なつ「夕見!」

咲太郎「あっ!」

亜矢美「えっ?」

夕見子「東京に着いた~!」

なつ「ええっ…。」

雪次郎「たった一つのセリフだったんですよ。 でも 7回言わしてもらってもダメで あの~ 最後まで 言わしてもらえなかったんですよね。 あの 普通にね しゃべってるつもりなんだけどね マイクの前に立つとね これ 緊張しちゃって なまりが出てしまうんですわ これが。」

回想

テイク1

遊声『力ずくで 子どもを奪うことはないだろう』。

雪次郎『あんたは引っ込んでろよ!』。

スピーカー・藤井『直ってないじゃないか!』。

テイク2

雪次郎『あんたは引っ込んでろよ!』。

遊声「本当に頼むよ。」

テイク8

遊声『子どもを奪うことはあないだろう』。

遊声『あんたは引っ込んでろ! ゴロツキだろ? 痛い目に遭うぜ。 ハッ!』。 『ウッ!』。 『俺は デービスの父親だ』。

回想終了

夕見子「ハハハハ…! 何それ。」

なつ「ちょっと 夕見。」

雪次郎「俺はダメだ…。 蘭子さんにも言われてしまったんだわ。」

回想

雪次郎「すいませんでした。」

蘭子「一度 幕の開いたお芝居は やり直しがきかないのよ。 今のあなたには 舞台に立つ資格もないわね。」

回想終了

咲太郎「別に ダメじゃないって。 ディレクターの藤井さんも お前のやる気だけは買ってたよ。」

レミ子「そうよ。 私は うまくできたんだから それでトントンよ。」

咲太郎「やっぱり レミ子はいけるよ。 男の子になれる!」

レミ子「ハハハハ…。」

雪次郎「チクショー!」

夕見子「だったら帰れ 北海道に! 帰れ 雪月に!」

なつ「ちょっと やめなさいよ。 で 夕見は どうして東京来たの? いきなり来たら びっくりしるっしょ。」

夕見子「それは… ごめん。」

亜矢美「ねえ… お一人で いらっしゃった?」

夕見子「えっ…。」

なつ「一人?」

夕見子「別に 一人でないよ。」

なつ「誰と来たの?」

夕見子「友達。」

なつ「友達って…。 えっ まさか あの ドライブしてた男の人!?」

雪次郎「えっ 夕見子ちゃん… えっ 男の人いるんかい!?」

夕見子「あのね いくつだと思ってんの? 私が 誰と どこで 何をしようが それが男だろうが女だろうが 自由でしょや。」

なつ「どういうことよ! ねえ 母さんらは知ってるの? ここにいること。」

夕見子「別に 言う必要ないべ。」

なつ「夕見…。」

夕見子「言ったら もうここには来ないから。」

なつ「待ってや 夕見 一体どしたの!?」

夕見子「誰にも邪魔されず 東京にいたいだけ。」

なつ「大学は? 来年卒業でしょ?」

夕見子「なつ 今は 個人の将来を考えてる時ではないべさ。 この国の将来を考えないでどうするの!」

なつ「はあ? どうゆうことよ?」

咲太郎「学生運動か? 学生が そういう運動してるって劇団でも話題になってた。」

亜矢美「その運動のために 東京に来たの?」

夕見子「まあ… 私も 今やるべことを やろうと思ってます。 だから なつ うちには知らせんで。 過剰に心配するべ うちの人は。」

なつ「したけど…。」

夕見子「私が 時々電話して 無事は伝えるから。 もし あんたが そん時しゃべってたら もう二度と ここには来んからね。」

なつ「ええっ…。」

夕見子「雪次郎。」

雪次郎「あっ はい。」

夕見子「あんたもね!」

雪次郎「あ うん…。」

夕見子「それじゃ お邪魔しました。」

なつ「ちょっと どこさ行くの!?」

夕見子「友達が この近くで 東京にいる先輩と飲んでんだわ。 とりあえず その先輩のうちに 行くことになると思う。 したらね。」

なつ「ねえ ちょっと 夕見!」

雪次郎「夕見ちゃん… 夕見ちゃん 俺も 言った方がいいよね。」

なつ「いい! ちょっ すいません…。」

玄関

なつ「夕見!」

1階店舗

なつ「見失っちゃった…。 もう どうしよう…。」

亜矢美「でも また来るみたいな感じでね 言ってたけどね。」

なつ「したけど 北海道の家族には知らせないと…。」

亜矢美「でも… 今は あの子の信頼を なっちゃんが なくさないようにすることの方がね 大事かもしれないね。」

なつ「そうですけど…。 はあ… 私は どうしたらいいか…。」

雪次郎「夕見子ちゃんはね 僕の初恋だったんですよ。」

レミ子「それは 今 どうでもいいでしょ。」

雪次郎「夕見子ちゃんはね 男にね…。 恋に溺れるような人じゃないんですよって!」

レミ子「それは あんただったからでしょ。」

咲太郎「雪次郎 お前は大丈夫なのか?」

雪次郎「はい。 目が覚めましたね。」

咲太郎「よし… 母ちゃん おでん。」

<今は 夕見子ちゃんを ここで待つしかありませんでした。>

東洋動画スタジオ

<そして なつの仕事は 待ってはくれません。>

作画課

(ドアの開閉音)

麻子「こっちは 怪物のキャラクターがそろえば いつでも 作業入れるから。」

坂場「分かりました。」

麻子「奥原さん。」

なつ「はい?」

麻子「何 ぼんやりしてんの。 絵描けたの?」

なつ「あっ…。 これです。」

坂場「これが 最後に出てくる 木の怪物のイメージですか?」

なつ「はい。」

麻子「よく こんなもの思いついたわね。」

なつ「私の親戚が作ってる彫刻から イメージしたんですけど。」

麻子「あなたの周りには いろんな人がいるのね。」

なつ「はい… 本当に いろいろいます。」

なつ「何かあったの?」

なつ「あっ いえ…。」

麻子「これ 面白いじゃない。」

なつ「本当ですか? よかった…。」

麻子「イッキュウさん どう?」

坂場「うん いいですよ。 とにかく これで 絵コンテを最後まで作ります。」

なつ「はい。」

麻子「よろしく。」

<そして 数日がたち 短編映画の絵コンテが やっと出来上がりました。>

下山「うん…。」

麻子「面白いわよ これ。」

なつ「本当ですか?」

麻子「やっと やりたいことが 見えてきた気がする。」

なつ「よかった…。」

下山「よし やっと ここまで来たんだ 必ず完成させよう。 あっ 人手が足りないかもしれないけど マコちゃんとなっちゃんは どんどん原画を描いて ラフでもいいから 描き飛ばしてよ。」

麻子「はい。」

なつ「分かりました。」

下山「で 茜ちゃんと堀内君は それをクリーンナップして どんどん動画を描き進めてね。」

茜「はい。」

堀内「分かりました。」

神地「あの… 僕も 原画を描いちゃいけないでしょうか?」

下山「おっ… どうしよう?」

坂場「絵コンテも手伝ってもらったし 私は構いませんが。」

下山「マコちゃんとなっちゃんは どうかな?」

麻子「できるものなら やってみれば?」

なつ「はい… 私も みんながよければ。」

下山「うん。 茜ちゃんと堀内君は構わない?」

堀内「いや…。」

茜「別に いいですよ。 動画も 手を抜かずに覚えられるなら。 ねえ?」

堀内「うん…。」

下山「うん じゃ… やってみる?」

神地「はい 分かりました!」

下山「よし じゃ 作業開始!」

一同「はい!」

<なつたちの足並みも ようやく そろったようです。>

おでん屋・風車

玄関

なつ「ここです。 本当に ここでいいんですか?」

坂場「もちろん。」

なつ「ちょっと のぞいてみます。」

1階店舗

なつ「ただいま。」

夕見子「あっ お帰り なつ。」

なつ「夕見! どこいたの! 何してたのさ!」

雪次郎「まあ… 落ち着いて なっちゃん。」

カスミ「この子 しっかりしてるわよ。」

なつ「カスミさんにも 何か話したんですか?」

カスミ「うん…。」

亜矢美「あっ あれ なっちゃん 今日 お客さん?」

なつ「あっ…。 どうぞ。 会社の人。」

亜矢美「うん いらっしゃい…。」

坂場「こんばんは。」

亜矢美「あっ…。 あっ 続々と… いらっしゃい いらっしゃい。 あっ まだまだ… はい いらっしゃい。 みんなで… はい いらっしゃい いらっしゃい いらっしゃい いらっしゃい いらっしゃ~い いらっしゃい…。」

なつ「今日は 決起集会しようって思って。」

亜矢美「決起集会? じゃ もう座れないけど とりあえず 決起の乾杯?」

東洋動画スタジオ

会議室

井戸原「何だい これは…。 ハチャメチャだな… どこが『ヘンゼルとグレーテル』なの。」

仲「ハチャメチャだけど 何か 新しいものを感じますよ。」

井戸原「もしかして これって… 社会風刺じゃないか?」

下山「えっ いやいや… そんなことはないと思うんですけども イッキュウさん… いや 坂場君には どうも そういう象徴とか隠喩とかが 好きな部分はありますね。」

井戸原「坂場君だけ?」

下山「あっ… なっちゃんも 多少 彼の影響を受けちゃってるような…。」

仲「なっちゃんが…?」

おでん屋・風車

1階店舗

なつ「乾杯!」

一同「かんぱ~い!」

夕見子「初めまして…。」

(拍手)

夕見子「カスミさん 何か歌って下さい!」

カスミ「えっ?」

なつ「ちょっと プロの歌手に失礼でしょ 夕見!」

夕見子「決起集会には 歌がなければならないっしょ! どうか 我々の情熱を 鼓舞するような歌を!」

カスミ「分かった! 歌おう!」

(歓声)

カスミ「若者たちよ 立ち上がれ!」

夕見子「よし 雪次郎 踊ろう!」

雪次郎「えっ… じゃ 皆さんも踊りましょう!ね!」

堀内「なっちゃん なっちゃん! なっちゃんも 茜ちゃんも…!」

玄関

夕見子「なつも踊るべ。」

♬『朝空の大地が 夏の陽射しに燃ゆる 向日葵を揺らして 時を惜しんで歩く 恋しくて通う道 果てなき里の道よ 二人のこの夢は 純粋な歌に似て どーんと晴れやかに 咲いては散りゆくとて 恋しくて通う道 果てなき里の道よ』

<ああ なつよ… 笑え。 踊れ。 狂おしいほど 青春を楽しめ。>

一同「ヘイ!」

<平和を楽しめよ。 来週に続けよ。>

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