ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第91話「なつよ、恋の季節が来た」【第16週】

あらすじ

亜矢美(山口智子)が営むおでん屋・風車に、なつ(広瀬すず)や咲太郎(岡田将生)、坂場(中川大志)、雪次郎(山田裕貴)たちが集まる。その中心にいるのは、北海道から上京している夕見子(福地桃子)。相変わらず独自の視点で恋愛について語っているが、なつにはまったく理解ができない。その夜、なつは夕見子に、どうして東京に来たのか、今どんな人と一緒にいるのか聞き出そうとするが…。

91話ネタバレ

おでん屋・風車

2階なつの部屋

坂場「これは 君が作るべき作品です。」

玄関

カスミ♬『二人のこの夢は 純粋な歌に似て』

東洋動画スタジオ

会議室

なつ「兄のヘンゼルが 悪魔の塔に助けに行くんですよ。」

神地「面白くない!」

なつ「えっ?」

神地「僕は 捕まるなら 兄のヘンゼルだと思います。」

作画課

麻子「やっと やりたいことが 見えてきた気がする。」

おでん屋・風車

玄関

カスミ♬『通うみち 果てなき里の道よ 遥かなる愛し君』

東洋動画スタジオ

作画課

なつ「こういうの どうでしょう?」

<何だか なつたちの新しい時代が 始まったようだぞ。>

おでん屋・風車

玄関

一同「ヘイ!」

1階店舗

咲太郎「かんぱ~い!」

一同「かんぱ~い!」

咲太郎「なつ お前 いつから そんな飲めるようになったんだ?」

なつ「喉渇いてたの…。 夕見。」

夕見子「うん?」

なつ「今日は 私の部屋に泊まっていきなね。」

夕見子「大丈夫。 まだ帰れるしょや。 みんなだって帰るんでしょ。」

なつ「いいから 泊まってって!」

夕見子「うわっ…! もう酔っ払ってんの?」

なつ「酔ってないわ。」

咲太郎「そうしてやってよ 夕見子ちゃん なつが寂しがるから。」

夕見子「なつは 寂しがるんじゃなくて 心配したがるだけさ。」

なつ「どうゆうことよ? 本当に心配してんだからね。」

夕見子「北海道の家族をだべさ。」

なつ「えっ?」

夕見子「私のことより 北海道の家族のことが心配だから 私が望まないことも しようとするんだべさ。」

なつ「そんなこと…。」

麻子「何でも言い合える仲なのね。 本当の姉妹みたい。」

夕見子「私となつは 本物以上だも。 うそのない姉妹だもね なつ。」

なつ「だったら なして うそつくのさ。」

夕見子「何のこと?」

なつ「今 どこで誰といるか言わないべさ。」

夕見子「うそと隠し事は違うべさ。」

なつ「どこが違うの…。」

雪次郎「まあ まあ まあ いいべさ 今は。」

レミ子「ほら なまってる!」

雪次郎「あっ…。」

咲太郎「そうやって油断してるから お前は いざという時に出るんだ。」

雪次郎「すいません!」

咲太郎「おう。」

カスミ「ねえ 駆け落ちでしてきたの?」

なつ「えっ…。」

夕見子「世間一般の目から見たら そういうことになりますかね。」

なつ「はあ? 駆け落ち!?」

茜「えっ 相手も大学生?」

夕見子「はい。 同じ大学です。」

麻子「ご両親に反対でもされてるの?」

夕見子「そもそも 親には 何も言ってないので 反対も何もないです お互いに。」

麻子「だって 駆け落ちしたんでしょう?」

夕見子「だから それは 世間が そう見るかもしれない ってだけのことです。」

なつ「世間は関係ないでしょ 夕見のこと聞いてんの!」

坂場「人は 世間とは関係なく 生きられるものでしょうか?」

なつ「は? お願いです 今 ちょっと黙っててもらえますか。」

坂場「失礼。 続けて下さい。」

夕見子「世間と関係なくは生きられないから 駆け落ちしたんです。」

なつ「どうゆうこと?」

夕見子「このまま 北海道にいたらさ 親にも分かって 2人は どういう関係なんだとか 結婚する気はあるのか ないのか 認めるとか 認めないとか そうゆうことから 自由になるためだわ。」

坂場「なるほど。」

夕見子「ね。」

坂場「分かりました。」

なつ「分からないで下さい! あの 私が ついていけなくなりますから。」

坂場「失礼。 続けて下さい。」

雪次郎「夕見子ちゃんは その男の人を 愛しているのかい?」

レミ子「棒読みになってるよ!」

夕見子「愛って何さ? 雪次郎。」

雪次郎「えっ 愛って… 何だべ?」

レミ子「そこで なまんのかい!」

夕見子「教えてあげる。 愛って 志よ。」

雪次郎「こころざし?」

夕見子「男の存在には 愛を持てないけど この志だったら 愛を持てる。」

雪次郎「うん…。」

麻子「じゃ その志が消えたら 愛も消えちゃうの?」

夕見子「そう! ただ そこに その人がいるだけで 好きなんてありえないしょ。」

茜「そうかしら… それが愛なんじゃないかしら。」

堀内「何だか すごく合理的な愛に 聞こえるような それじゃ… ねえ…。」

夕見子「愛の不合理さを認めるから 女は不幸になるんです! それは もう古い!」

なつ「はあ~… 私には分かんないわ! 新しくなったりとか 古くなったりとかしないから 愛なんじゃないの? ねえ 愛ってさ…。」

咲太郎「おい 大丈夫か?」

坂場「大丈夫? き… 君の愛って 何ですか?」

なつ「ごちゃごちゃ言うな! 気持ち悪…。」

カスミ「はあ~… 若いって すばらしいわね 亜矢美ちゃん。」

亜矢美「愛を語れるだけ すばらしいわ。」

カスミ♬『愛の言葉は 眠らせないでね 夢と同じように 消えやすいから 恋しくて通う道 果てなき里の道よ』

2階なつの部屋

(戸が開く音)

夕見子「気分は? 大丈夫?」

なつ「ねえ 夕見。」

夕見子「うん?」

なつ「私にも分かるように話してよ。」

夕見子「何をさ?」

なつ「どして 東京来たのか その人は どういう人なのか。」

夕見子「その人は 物書きを志してる。」

なつ「物書きって 小説とか?」

夕見子「小説に限らずよ。 ジャズが好きだから ジャズの評論とかも 大学の同人誌では書いてる。」

なつ「その人も 夕見のこと 本当に好きなの?」

夕見子「男に だまされてるとか そんな心配いらないからね。 なつも その人に会えば分かる。」

なつ「だったら会わせてよ その人に。」

夕見子「そのうちね…。 さあ もう寝よ。 布団一つ?」

なつ「うん。」

夕見子「ま いいか。 なつ…。」

なつ「うん?」

夕見子「迷惑かけて悪いね。」

なつ「迷惑なんて思うはずないしょ。」

夕見子「おやすみ。」

なつ「おやすみ…。」

1階居間

なつ「今日は どうすんのさ?」

夕見子「とりあえず 仕事を探さないと。」

なつ「こっちで探すの?」

夕見子「働かないと どこにいたって暮らせないしょ。」

咲太郎「大学には戻らないの?」

夕見子「うん… それは まだ決めてないけど そうなったら そうなったで 別に いいと思ってる。」

亜矢美「それは さすがに ご両親にも言わないとね。 お金 ずっと出してもらってんでしょ?」

夕見子「そりゃ 自分で決めたら言いますよ。 ごちそうさまでした。」

亜矢美「あっ いいよ いいよ… やるから。」

夕見子「あっ すいません お邪魔しました。」

なつ「えっ もう帰るの?」

夕見子「さすがに 向こうも心配してると思うから。」

亜矢美「ねえ とりあえずでいいんだったらさ うちで働かない?」

夕見子「ん?」

なつ「えっ?」

亜矢美「そんな大層なお給料とか 出してあげられないんだけど そのかわり 好きな時間に 自由に来てくれればいいから。 昼間でもいいし。 今 ここは 咲太郎のプロダクションの 事務所にもなってるし… ね。」

咲太郎「あ… うん。 電話番でも やってくれたら助かるよ。」

夕見子「本当に いいんですか?」

亜矢美「うん。」

夕見子「したら 仕事が見つかるまででも いいですか?」

亜矢美「もちろん。」

夕見子「そしたら よろしくお願いします。」

亜矢美「ああ… お願いします。」

夕見子「とりあえず また来ます。」

亜矢美「うん うん…。 待ってるね。」

夕見子「ありがとうございました。」

なつ「亜矢美さん お兄ちゃん 本当にいいの?」

亜矢美「顔を見れれば ちょっとは安心できるでしょ?」

なつ「それで…。」

(戸が開く音)

亜矢美「は~い 気を付けて…。」

なつ「ありがとうございます。」

東洋動画スタジオ

作画課

<『ヘンゼルとグレーテル』は 作画作業が始まっていました。>

神地「あの なっちゃん。」

なつ「えっ?」

神地「これ 原画を描いてみたんですけど 見てもらえますか? あの マコさんも よかったら。」

麻子「もちろん いいわよ。」

なつ「分かった。」

麻子「よく描けてるように見えるけど。」

なつ「はい…。 でも どうでしょう。 これで…。」

茜「すごい…。 裏から見ても デッサンに狂いがないわね。」

神地「それぐらいは常識でしょう。」

堀内「奥原の初めの頃とは大違いだな。」

なつ「はい…。 わざわざ言います? それ。」

堀内「すまん。」

麻子「これで いいと思う。 じゃ これ 自分で動画も描いてみる?」

神地「はい! あっ 茜ちゃん 描いたら見てくれる?」

茜「あ… うん もちろん。」

神地「ありがとう。 じゃ… ありがとうございました。」

茜「ちょっと なれなれしいけど 文句言えないわね あれじゃ。」

なつ「いきなり ちゃん付けですか…。」

麻子「神地航也… 神っちと呼んであげましょう。」

会議室

井戸原「いくら 勉強のための短編だからってね いつか 劇場公開されることを前提に 作ってもらわなければ困るよ。」

坂場「分かってます。」

井戸原「じゃ この物語に 社会風刺の意図は 入ってないって言うんだね?」

坂場「もちろん そのために作ってるわけじゃありません。」

井戸原「魔女の上に わざわざ 悪魔を出して 悪魔と魔女… これは アメリカと日本の関係を 表してるんじゃないだろうね。」

坂場「見る側が どう受け止めるかは 自由じゃないでしょうか?」

仲「もちろん 自由なんだけど 純粋に 子どもが楽しめるものに してほしいだけなんだよ。」

坂場「その考え方は もう古いんじゃないでしょうか。」

仲「古い?」

下山「おい イッキュウさん…。」

坂場「漫画映画は 子どもが見るものだと 決めつける考え方です。」

作画課

麻子「ねえ 奥原さん。」

なつ「はい?」

麻子「あの子は どうした?」

なつ「あの子? あっ 夕見のことですか? とりあえず 風車で働くことになりました。」

麻子「あの子の考え方 私は間違ってないと思うわよ。」

なつ「うん?」

麻子「女にとっては 結婚も志でしょう。 するか しないかも含めて 女は 何をい一番に考えるかで 生き方が決まってしまうんだから。」

なつ「仕事か結婚 どっちかを 選ばなくちゃならないんですか?」

麻子「どんな選び方をしても 人から責められることはないってことよ。」

おでん屋・風車

1階店舗

亜矢美「お帰り。」

夕見子「お帰り。」

亜矢美「結構 降ってんね。」

なつ「夕見… ただいま。」

亜矢美「はい。」

なつ「ありがとう。」

夕見子「なつ 会わせてやったよ。」

なつ「ん? えっ…!」

<なつよ じいちゃんが ここに来るわけないだろう。 けど 夕見子ちゃん そういう人が好きだったのね…。>

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