ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第93話「なつよ、恋の季節が来た」【第16週】

あらすじ

日曜日、雪次郎(山田裕貴)の住む安アパートを訪ねたなつ(広瀬すず)と夕見子(福地桃子)は、3人で映画を見に行くことに。映画を鑑賞した帰り道、なつは久しぶりに川村屋に立ち寄る。川村屋では光子(比嘉愛未)が出迎え、なつは光子に咲太郎(岡田将生)の近況を報告。咲太郎が新しい会社を始めた背景に、なつの存在があると光子は3人に話す。すると突然、あることを相談したいと夕見子は光子に話を持ちかけ…。

93話ネタバレ

おでん屋・風車

1階店舗

回想

坂場「一緒に 作ってほしいんです。」

なつ「一緒に…。」

坂場「一生かけても あなたと作りたいんです。」

回想終了

なつ「あ はい!」

夕見子「え?」

なつ「夕見…。」

夕見子「どしたの?」

なつ「夕見こそ どしたの? 日曜日に。」

夕見子「えっ 日曜日って ここ休み?」

なつ「あれ 聞いてなかった? 亜矢美さんは 買い物に出かけたし お兄ちゃんは仕事だけど… 電話番は しなくていいと思うよ。」

夕見子「何だ… したら ジャズ喫茶にでも行ってみるか。 何?」

なつ「せかくだからさ 一緒に休み過ごそうよ 夕見。 ね。」

夕見子「えっ…。」

雪次郎宅

雪次郎「きれいだけど ちょっと きれいにするね。 それで 結局 ここに来たのかい?」

夕見子「不満なの?」

雪次郎「いや うれしいよ ハハ…。」

なつ「雪次郎君が どんな暮らししてるか 見てみたいって。」

雪次郎「いや 暮らしてるっていったって 芝居とアルバイトしか してねえからな。」

夕見子「へえ~。 したけど あの雪次郎が ここまで見事に親不孝するとはね。」

雪次郎「それは言わんでや。 親不孝なら 夕見子ちゃんの方だべさ。」

夕見子「ほらほらほら なまってる!」

雪次郎「あっ もうダメだ…。 もう この2人といると 自然に 標準語が分からなくなる。 分からなくなる…。」

なつ「ねえ 夕見 ちゃんと 家には電話してるの?」

夕見子「えっ? ああ そのうちする。」

なつ「ちゃんとするって言ったべさ。 ねえ このまま…。」

夕見子「そんな話するなら帰るよ。」

なつ「分かった…。」

夕見子「雪次郎は 誰かいないのかい? つきあってる人。」

雪次郎「いや… そんな余裕はねえから。」

夕見子「劇団に 好きな人とかいないの?」

雪次郎「えっ…。」

夕見子「えっ… あ いるんだ。 誰さ?」

雪次郎「いや 言ったって分かんねえべ。」

夕見子「まあ そだね。」

なつ「そんな人いるんだ?」

雪次郎「いや 勝手に憧れてるだけだ。」

なつ「何だ 蘭子さんか。」

雪次郎「何だって 何だ。」

なつ「えっ まさか 本気で好きなの?」

雪次郎「まさか! 俺が相手にされるわけねえべや。 役者として憧れてるだけだ。」

夕見子「女優か…。 なつは いないの? あっ いるんだ!」

なつ「何も言ってないべさ!」

夕見子「いるから言わないんだべ。」

雪次郎「えっ 誰 誰 誰 誰 誰…! 会社の人?」

夕見子「この前 みんなで踊った時にいた人かい?」

雪次郎「あっ…!」

夕見子「もしかして あの…。」

雪次郎「堀内さん!」 夕見子「イッキュウさん!

夕見子「イッキュウさん?」

なつ「違う! そんな話するなら帰るよ! 違うから…。 今は 絵で つながっている人がいるだけで 十分だから。」

雪次郎「なっちゃん… それはダメだ。 もう天陽は諦めれや。 あいつは もう人の旦那だ。」

なつ「な~して そんなこと言うかな…。」

雪次郎「違うのか?」

夕見子「違うみたい。 傷口に 塩塗っただけ。」

雪次郎「あっ ごめん…。」

なつ「もう いいから。 これから どうする?」

雪次郎「えっ 夕見子ちゃんのことかい?」

なつ「今日のこと。」

夕見子「バカ。」

雪次郎「あっ 映画でも見に行くか!」

2人「映画?」

雪次郎「それしかねえべ 休みの日は! ハハ!」

映画館

<それから3人は 映画を見に行きました。>

雪次郎『君の瞳に住むために ここを出国するだけだ』。 『やっと手に入れた』。 『君の瞳に… 入国する』。

夕見子「雪次郎。」

雪次郎「ん?」

夕見子「あんた 何ブツブツ言ってたの? 気持ち悪い!」

雪次郎「吹き替えの練習だわ。 役者の唇に合わせて 字幕読むのさ。」

なつ「勉強のために 映画見てんだ。」

雪次郎「まあ 少しでも役に立てばと思って。」

なつ「努力してるんだね。」

雪次郎「うん。」

夕見子「迷惑だってば…。」

雪次郎「えっ そんなに聞こえてた?」

なつ「うん。」

川村屋

玄関

夕見子「あっ ここが川村屋?」

なつ「うん。 せっかくだから ここで食事しようって思って。」

ホール

野上「いらっしゃいませ。」

なつ「あっ 野上さん。 私の姉妹の夕見子です。」

野上「どちらですか?」

なつ「こちら。 こっちは雪次郎。」

野上「分かっております。 姉ですか? 妹ですか?」

なつ「あ… 同い年です。」

夕見子「双子です。」

野上「さようでしたか。 東京に遊びにいらしたんですか?」

夕見子「駆け落ちです。」

なつ「冗談です!」

野上「全く ついていけません。」

なつ「私も。」

雪次郎「野上さん ご無沙汰してます。」

野上「よく この敷居が またげましたね。」

雪次郎「えっ…。」

野上「冗談です。 どうぞ。」

佐知子「なっちゃん いらっしゃい。」

なつ「あっ 佐知子さん。 姉妹の夕見子です。」

佐知子「あっ 北海道の? ようこそ いらっしゃいませ。」

夕見子「どうも。」

野上「お席に ご案内して。」

佐知子「はい。 どうぞ。」

雪次郎「お久しぶりです。」

佐知子「咲ちゃんは元気?」

雪次郎「えっ?」

なつ「佐知子さん もしかして まだ…。」

佐知子「なっちゃん 私… 今度 結婚するのよ。」

なつ「えっ 結婚!?」

佐知子「シッ…。 とりあえず座って。」

雪次郎「あっ 座っちゃった…。 おめでとうございます。」

佐知子「ありがとう。 でも とうとう 咲ちゃんを待てなかったわ。」

なつ「いや お兄ちゃんも きっと喜ぶと思います。」

佐知子「マダムの紹介で お見合いをしたのよ。 いい人だし 生活が安定してるし。 咲ちゃんには悪いけど…。」

なつ「悪くないです。」

佐知子「咲ちゃんが悪いのよ。 私を放っておくから。」

なつ「私も そう思います。」

佐知子「ご注文は?」

なつ「あっ バターカリー 3つ。」

雪次郎「あっ 僕は…。」

なつ「今日は おごる。」

雪次郎「3つ。」

佐知子「かしこまりました。」

雪次郎「すごいな… ずっと待ってたんだね。 つきあってもないのに。」

なつ「でも よかった。」

夕見子「何が よかったのさ? 結局 女は 結婚して生活の安定を得るのが 一番だと思ってるの? なつも。」

なつ「夕見は その人と結婚したくないの?」

夕見子「結婚なんかしなくたって 一緒に生きる道があればいいでしょや。 その方が お互いに 変な甘えが生じなくていいの。」

なつ「どんな結婚するかは 自分や相手次第じゃないの?」

雪次郎「結婚できねえからじゃないのかい?」

夕見子「えっ?」

雪次郎「向こうには 親の決めた相手がいるって…。」

夕見子「そんな生き方を捨てたあの人だから いんじゃないの。 何も持たんで 一から生きようとしてる あの人とだから 結婚なんかしなくたって 一緒に生きることができると思ったのさ。」

なつ「したら 結婚って何なのさ…。」

光子「いらっしゃい。」

なつ「あっ マダム。」

雪次郎「マダム ご無沙汰してます。」

光子「元気にしてた?」

雪次郎「はい。」

光子「帯広のご家族に ちゃんと連絡しないとダメよ。」

雪次郎「はい。 ちゃんとしてます。」

なつ「マダム 北海道から来た 姉妹の夕見子です。」

光子「ああ あの北海道大学に 通ってらっしゃる?」

夕見子「はい。 なつが いつもお世話になってます。」

光子「あなたが 大学に合格された時には 新聞にも載ったそうね。 ご家族にとって あなたは期待の星ね。」

なつ「マダム 佐知子さんが結婚するって さっき聞きました。」

光子「ああ そうなの。 あなたのお兄さんも心配してたからね。」

なつ「お兄ちゃんが?」

光子「さっちゃんを幸せにしてやってくれって ずっと言われてたのよ。 まあ 言われなくたって 私だって考えてましたけどね。」

なつ「そうなんですか…。」

光子「咲ちゃん 新しい会社を始めたんだった?」

なつ「はい。」

雪次郎「外国映画の吹き替えなんかをやったりする 声の会社です。」

光子「相変わらず 危なっかしいところはあるけど 咲ちゃんも ようやく 自分のために動き出したってところね。 なっちゃんの開拓精神が 咲ちゃんの心も強くしたのよ。」

なつ「いえ 私は何も…。」

光子「夕見子さん どうぞ 東京で ゆっくりしていってね。」

夕見子「はい。 事によると ずっと新宿にいるかもしれません。」

光子「えっ?」

雪次郎「えっ?」

なつ「ちょっ… 何言ってんのさ。」

夕見子「私にも 開拓精神があるんです! マダム ご相談があるんですが…。」

なつ「夕見?」

おでん屋・風車

1階店舗

亜矢美「ジャズ喫茶?」

なつ「はい。」

咲太郎「新宿で ジャズ喫茶を開きたいっていうのか?」

なつ「それで マダムに相談し始めちゃって どうしようかと思った。」

咲太郎「マダムは 駆け落ちだって知ってるのか?」

なつ「ううん。 大学を卒業してからだと思ってる。 本気なら いつでも力になってくれるって。」

咲太郎「誰にでも 力になるって言うんだよ あいつは。」

なつ「お兄ちゃん! あいつって そんなこと言ったら罰が当たるでしょ!」

亜矢美「物書きの彼を支えようっていうわけか… 相当 入れ込んでるね。」

回想

夕見子「私と この人も同志なんだわ。 男に だまされてるとか そんな心配いらないからね。」

回想終了

なつ「このまま ほっといて いいんでしょうか?」

亜矢美「う~ん… 難しいところだね。 なっちゃんが あの子の友達っていうんなら もう 今は ほっとけ ほっとけって 言うところだけどさ… ね。 家族じゃな…。 でも なっちゃんが一人で悩むことでは もう… ないんでないかい?」

なつ「うん…。」

(呼び出し音)

柴田家

居間

(電話の呼び鈴)

なつ『もしもし 母さん?』

富士子「なつ! どしたの こんな時間に… 何かあったの?」

なつ『うん 母さん… 夕見が… 夕見子が…。』

富士子「夕見子が…。」

なつ『もし 私がしゃべったら もう ここにも来ないって! したから もし 夕見から連絡があっても 聞かなかったことにしといて。』

富士子「あ… 分かった。 よく知らせてくれたわね なつ。」

なつ『ねえ どうしよう 母さん…。』

富士子「とにかく なつがいてくれて いかったわ…。 こっちのことは大丈夫だから あの子のそばに いてやってちょうだい。」

なつ「そりゃ もちろん…。 私に できることがあれば 何でもするけど…。」

富士子『どうするか考えてみるわ。 また連絡するね。』

なつ「いや…。 そっちからは まずいわ! また こっちからする。」

富士子『分かった… じゃ お願いね。 したらね…。』

剛男「どしたんだ?」

富士子「あっ びっくりした…。」

泰樹「誰からだ?」

富士子「えっ? ああ… なつから。」

泰樹「なつが どした?」

剛男「何かあったのかい!?」

富士子「ううん… 何も。」

剛男「何もって… こったら時間にかけてきて。」

富士子「何もないの。 何か 眠れなくなったみたいで…。」

剛男「何か お願いって言ってたでないか。」

富士子「いや… あっ お願いだから寝てちょうだいって。」

富士子「もう切れてるわ。」

泰樹「分かってる…。」

おでん屋・風車

1階店舗

(電話が一瞬鳴る音)

<なつよ… 大丈夫だ。 みんなと つながってるから。>

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