あらすじ
なつ(広瀬すず)たちの短編映画に、声を吹き込む作業が進められている。声優には咲太郎(岡田将生)の事務所から蘭子(鈴木杏樹)らが担当し、ついに作品が完成する。仕事を終え、つかの間の休息として、東洋動画のメンバーでハイキングに行くことに。制作中は何度もぶつかった麻子(貫地谷しほり)や坂場(中川大志)も、一緒になってバレーボールをして笑い合う。そんな中、麻子はメンバーにある思いを打ち明ける。
96話ネタバレ
東洋動画スタジオ
録音スタジオ
<なつたちの短編映画が ようやく完成に向かい 声を吹き込むアフレコの時を迎えました。>
坂場「それじゃ よろしくお願いします。」
魔女『私が お前たちを食べるって? そんなことはしないさ グレーテル。 これから お前たちを 森のお城に連れていくんだよ』。
グレーテル『お城に?』。
魔女『そう。 お城には 森の王がいて この森の平和なのは その王様がいてくれるからなんだよ。 ありがたいことに ヘンゼルは その王様のために働けるんだ。 よかったね』。
グレーテル『嫌! そんなことは 絶対にさせないわ!』。
魔女『いいから さっさと ヘンゼルを連れておいで!』。
魔女『ヒェ~! 何そするんだい おやめ! おやめって!』。
グレーテル『さあ こっちよ!』。
ヘンゼル『うん!』。
グレーテル『ヘンゼル 今よ!』。
ヘンゼル『グレーテル 逃げよう!』。
魔女『そうはさせないよ!』。
ヘンゼル『うわ~!』。
グレーテル『ヘンゼル!』。
ヘンゼル『グレーテル!』。
(うなり声)
悪魔『ハハハハ さあ食え! 腹を満たせ! 闇のオオカミたちよ!』。
グレーテル『うっ… うっ…』。
魔女『おや!』
グレーテル『うっ… ああ~! うっ… うっ…』。
魔女『全く なんて子だい! あの子は 何があっても 最後まで諦めない気か』。
グレーテル『うっ… えい! ヘンゼル!』。
ヘンゼル『グレーテル!』。
(オオカミのうなり声)
魔女『えっ… えい! さあ おゆき!』。
悪魔『魔女め 裏切ったな!』。
ヘンゼル グレーテル『はあ はあ はあ はあ…』。
(鳴き声)
グレーテル『あっ!』。
ヘンゼル『大丈夫か!?』。
グレーテル『うん』。
ヘンゼル『行こう!』。
グレーテル『うん!』。
ヘンゼル グレーテル『はあ はあ はあ はあ…』。
(鳴き声)
ヘンゼル グレーテル『はあ はあ はあ はあ…』。
グレーテル『ありがとう』。
坂場「大丈夫ですね…。 はい オッケーです。」
一同「お疲れさまでした!」
雪次郎「お疲れさまでした。」
蘭子「ありがとう。 どうだった?」
雪次郎「まるで 魔女に 蘭子さんが乗り移ってるみたいでした。」
蘭子「そう。 私の演じた魔女は とても いいキャラクターね。 気持ちが 自然と入ったのよ。 絵も チャーミングだし とても好きだわ。」
雪次郎「はい。」
麻子「ありがとうございます。」
雪次郎「あっ…。」
麻子「あっ すいません…。」
なつ「魔女は ほとんど このマコさんが考えて描いたんです。」
麻子「本名は麻子です。 大沢麻子と申します。」
蘭子「そう… 魔女には 大沢麻子さんの魂が込められていたのね。」
麻子「はい…。」
階段
なつ「イッキュウさん。 仲さん 何か言ってましたか?」
坂場「いや 何も。」
なつ「きっと 大丈夫ですよね!」
坂場「あなたは大丈夫ですか?」
なつ「えっ?」
坂場「これで満足してますか?」
なつ「してません。 もっと イッキュウさんと作りたいです。」
坂場「それなら 私と同じです。」
森
<短編映画を作り終えて なつたちは しばしの休息を味わいました。>
堀内「はいはいはい イッキュウさん ああ…! ちょっと まあ… ドンマイ ドンマイ! ドンマイ!」
坂場「やっぱり 僕は抜けます。」
下山「大丈夫だって。」
麻子「ダメよ! できるまで 何度でもやるの!」
坂場「無理です!」
麻子「あんたね 人には さんざん 何度も描かせといて 自分は 簡単に諦めるわけ!?
茜「いや そんな真剣に怒らなくても…。」
麻子「何でも 真剣にやらないと 見につかないわよ。」
なつ「とにかく 頑張りましょう!」
「はい!」
下山「マコちゃん!」
「はい!」
「あ~!」
「イッキュウさん!」
なつ「はい!」
桃代「ナイス~!]
なつ「イッキュウさん お握り食べませんか?」
坂場「ありがとうございます。 それじゃ 僕のパンをあげましょう。」
なつ「ありがとうございます。」
桃代「あっ… お握りは落とさないで下さいね。」
なつ「モモッチ!」
桃代「フフフ… 冗談でしょ。」
なつ「冗談が通じるような相手じゃないでしょ。」
桃代「そっか。」
坂場「通じますよ。 僕だって 冗談は大好きです。」
なつ「えっ そうでした?」
麻子「なっちゃんこそ 冗談と真面目の境目がない人だもんね。」
なつ「マコさん!」
麻子「何よ 文句ある?」
なつ「今 なっちゃんって呼んでくれました?」
麻子「えっ?」
なつ「マコさんに 初めて なっちゃんって呼んでもらいました!」
麻子「初めて? そうだった?」
なつ「何か うれしい!」
麻子「泣くことないでしょう!」
(笑い声)
下山「よかった よかった。 今度の短編で みんなの気持ちが ぐっと近づいたってことだ。 ね。」
神地「あっ 茜ちゃん ちょっと それ頂戴。」
茜「あっ ちょっと…! あんたは 最初から近すぎなの。」
堀内「ずうずうしいんだよ。」
神地「分かりましたよ。」
茜「あげないとは言ってないでしょ。」
神地「えっ!」
茜「はい。」
神地「あっ… 頂きます!」
なつ「ここに 作画をする前に来たかったですね。」
下山「その余裕があればね。」
なつ「ハハハ…。」
坂場「今度作る時には 必ず こういうことをやりましょう。」
なつ「はい。」
なつ「マコさん どうしたんですか? 何か 見つけました?」
麻子「見つけた。」
なつ「えっ 何を?」
麻子「私… 結婚するの。 やっと 白馬に乗った王子様を見つけました!」
茜「マコさん ちょっと よく分かんないんですけど…。」
麻子「学生の時に つきあってた人がいて 彼は 一人前の建築家を目指してて 今度 イタリアに行くことになって…。 それで プロポーズされて 別れるべきか悩んだんだけど この作品やって やっと ふんぎりがつきました。」
なつ「えっ それは… アニメーターを辞めるってことですか?」
麻子「そうよ。」
なつ「それはないですよ マコさん!」
麻子「だから 私は この作品を 絶対に成功させたかったの。 成功させて 私には これしかないって そう自分に思えたら 彼と別れることも 決心がつくかなと思ってた…。 けど 実際は反対だった…。 仕事に満足したから 結婚してもいいと思えたの。」
なつ「マコさん…。」
麻子「この先 私が もっと何かを作るためには ここで立ち止まることも 大事なのかなって思えたの。 なっちゃんやイッキュウさんと比べると 私には 何か足りないような気がして。 それが悔しくてね。」
なつ「そんなことないです! マコさんのようには 私は まだ描けません。」
麻子「楽しめないのよ。 あなたのようには まだ。 それが どうしてなのか… 才能なのか 迷いなのか ここで一旦 立ち止まって 考えてみたくなったの。」
坂場「あなたは いいアニメーターです。 少なくとも 日本には あなたのようなアニメーターは まだ そういないと思います。」
麻子「ありがとう…。 そうやって冷静に言われると かえって うれしい。」
なつ「マコさん 必ず また戻ってきて下さい!」
麻子「また戻ってきたくなるような 羨ましくなるような もっとすごい漫画映画を これから作ってよね なっちゃん。」
なつ「分かりました。」
神地「俺も頑張ります!」
茜「あなたは いいの。」
神地「何で?」
茜「あなたが言うと ちょっと嫌みに感じちゃうの。」
神地「嫌み?」
麻子「でも みんな 勘違いしないでよね。 私は もっと幸せになるんだから。 安月給のアニメーター暮らしとは おさらばできるんだから。」
桃代「羨ましい!」
なつ「モモッチ…。」
麻子「でしょ。」
桃代「はい…。」
堀内「下山さん 何描いてるんですか?」
下山「マコちゃんとみんなの この幸せな瞬間を描いてんだ。 忘れないように。」
桃代「じゃ みんなで集まって 描いてもらいましょう。」
<木漏れ日の降り注ぐ平和な森で なつは 新たな誓いを立てました。 自分は 一生 アニメーターを続けていたいと。>
下山「笑顔で 笑顔で。」
<ああ なつよ これからも 好きな仲間と 思いのままに生きよ。 こら! まだまだ終わらせるなよ。 来週に続けよ。>