ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第98話「なつよ、テレビ漫画の幕開けだ」【第17週】

あらすじ

なつ(広瀬すず)や茜(渡辺麻友)とともにテレビ班に行くように命じられた坂場(中川大志)は、仲(井浦新)や井戸原(小手伸也)たちに、東洋動画のテレビアニメに対する姿勢を問うが納得いく回答が得られない。なつに、もう漫画映画の世界には戻れないとこぼす坂場。そのころ、劇団「赤い星座」の稽古場では次回作の主役が発表され、雪次郎(山田裕貴)が抜てきされる。しかし納得いかない若手劇団員たちは雪次郎を呼び出し…

98話ネタバレ

東洋動画スタジオ

作画課

なつ「夢? それは もちろん すてきな漫画映画を作ることです。」

下山♬『空をこえて ララ』

会議室

仲「テレビ用のアニメーション テレビ漫画を制作する テレビ班を作ることになったんだ。 なっちゃんは 原画として 茜ちゃんは 動画として そのテレビ班に行ってもらいたい。」

なつ「もう映画には関われないんですか?」

<昭和38年 日本でも 本格的な連続テレビ漫画が誕生しました。 フルアニメーションの映画と違い 30分のアニメを 毎週作り出すために 止まった画を使ったり 動く部分を減らすなど さまざまな手法が生まれていました。>

坂場「仲さんは あれをアニメーションだと 認めていますか?」

仲「えっ?」

坂場「僕は 少なくとも 東洋動画らしい アニメーションの作り方だとは思えません。 仲さんは どう思っていますか?」

仲「もちろん あれは フルアニメーションではないと思っているよ。」

坂場「それを 形だけ東洋動画がまねして 慣れてしまったら 日本のアニメーションは もう そこから 後戻りが できなくなるんじゃないでしょうか?」

井戸原「大げさだな 相変わらず 君は。」

坂場「そうでしょうか?」

露木「いや 坂場君の言ってることは まんざら 大げさなことじゃないかもしれないよ。 そういう時代が来るということは 大いに考えられる。 まあ もう私の時代じゃなくなった ということだけは 確かだけどね ハハハハハ…。」

仲「もし そうだとしても やる価値はあると 僕は思ってるよ。」

なつ「仲さんは そう思いますか?」

仲「アニメーションを見る 子どもたちにとっては フルアニメーションかどうかなんて 全く関係ないことだろ? 面白いか 面白くないか それだけの違いだからね。 坂場君は そう思わないか?」

坂場「分かりました。」

仲「それに フルアニメーションのよさは これからも 長編映画で 我々が守っていくつもりだよ。」

井戸原「そう。 だから 君は 安心して テレビに専念してくれたまえ。」

作画課

下山「あっ… どうだった?」

なつ「やっぱり テレビの話でした。」

茜「うちでも テレビ班を作るそうです。 私となっちゃんは そこに異動することになりました。」

下山「優秀な なっちゃんと茜ちゃんを とられちゃうわけだ。」

なつ「イッキュウさんも 演出で入るんです。」

下山「そうか… やっと助手から抜け出せるんだな。 しかし 演出家デビューは テレビになったか。」

茜「それで また 仲さんに かみついたりして…。」

下山「かみついた?」

なつ「いや かみついたとまでは…。」

茜「仲さんは あれをアニメーションだと 認められますかって。」

堀内「それは また グサッと かみついたな。」

神地「さすが イッキュウさんだ! よく 分かってる。」

なつ「けしかけるようなこと言わないでよ。」

神地「これは テレビ班だけの問題じゃない。 我々 アニメーター全体にとっての 死活問題です。 劇場映画そのものが テレビの台頭によって傾き始めてる今 我々が 心血を注いできた漫画映画 きめこやかな動きと リアリティーを追求する フルアニメーションの世界そのものが 存亡の危機にさらされてるんですよ これは!」

下山「誰に演説してんのよ。 組合じゃないんだから。」

茜「イッキュウさんと 全く同じこと言ってるわ…。」

中庭

なつ「イッキュウさん どうしたんですか?」

坂場「僕は もう… 漫画映画を作れないだろうな。」

なつ「どうしてですか?」

坂場「露木さんのあとに 次々と若手が 演出に抜てきされてるのに 僕には お呼びがかからない。 僕たちの作った短編映画だって いまだに お蔵入りしたまま 長編映画の付録として 劇場に かけられることもないだろ。 僕に対する上層部の評価が低い証拠だ…。 というより 僕が嫌われてるからですよ…。」

なつ「仲さんは 短編映画を 褒めてくれたじゃないですか。」

坂場「あの人は… 本音を見せないからな。 あの人が描く絵と同じように 誰にでも いい顔していたんでしょう。」

なつ「何を すねてるんですか! あなたらしくない…。」

坂場「君のことも それに 巻き込んでしまったかもしれないんです。」

なつ「えっ?」

坂場「それが悔しくて…。 1本くらいは 君と 長編漫画映画に挑戦してみたかった…。 この会社にいても その可能性は もうないだろうな…。」

なつ「そんなこと まだ分かりませんよ!」

露木「そう まだ分かりませんよ。 君をテレビの演出にしたのは 私だよ。」

なつ「えっ 露木さん…。」

坂場「露木さんが?」

露木「うん。 君は 全く新しい環境で 演出家になった方が 伸び伸びできるんじゃないかなって そう思ったんだから。 だから テレビに行っても くさるな。」

なつ「そうですよ。 テレビで また 頑張ればいいじゃないですか!」

露木「そりゃ 君は 多くのアニメーターからは嫌われてるよ。」

なつ「えっ?」

露木「そりゃ あれだけ理屈で攻めたら もともと感性で動く 芸術家肌のアニメーターたちから そっぽを向かれたって これは しかたないことだ。 それに労働組合の幹部なんかやってるから 会社からだって煙たがられてる。 君の味方は ほぼいない。 もうゼロだな…。」

なつ「あの… くさるなって言ってるんですよね?」

露木「そう だから くさるな。 くさったら負けだ。 人に嫌われる勇気を持つことも 演出家にとっては大事な資質なんだ。 君は 生まれながらにして その資質ってもんが備わってる。」

なつ「それは励ましですよね?」

露木「もちろん。 新しい環境で 自分を磨くチャンスだと思って頑張れ。」

坂場「はい 分かりました…。」

露木「あほんだら お前 声ちっちゃいねん。 自分も 関西出身やったらな 根性見せたらんかい。」

なつ「えっ 関西出身だったんですか?」

坂場「中学までは 神戸にいたんです。」

露木「そうやで。 え~っと あきちゃん? あっ ふゆちゃん? あっ… はるちゃん?」

なつ「残ってるのです。」

露木「あっ なっちゃん…。 坂場のことを頼むな。 内助の功で しっかり支えてやってくれ。」

なつ「はい 分かりました。 えっ 今 何て言いました?」

露木「えっ? めちゃくちゃ うわさになってるよ。」

なつ「えっ?」

露木「ハハ… じゃ お疲れ。」

なつ「うわさって何ですか? えっ… ねえ うわさって何だろう?」

坂場「さ… さあ…。」

なつ「さあって どうするの? そんなうわさ。」

坂場「う… うわさなんて 気にしなくてもいいでしょう…。」

<2人の関係は 周りが思うようには 近づいていないようです。>

坂場「では。」

なつ「そうですか…。」

<数日後 新しい部屋に テレビ班の作画室が置かれました。>

作画課

荒井「商売道具やろが 大事にせんか ボケ! それ こっちや!」

「あっ…。」

なつ「何ですか あれは!」

猿渡「新しく来た制作進行だよ。 人手が足りないから 京都の映画撮影所から読んだらしい。」

荒井「おい おい おい おい… そこの3人 何 ぼ~っと立っとんねん。 手ぇ出さんかい ボケ!」

3人「はい!」

茜「私 無理かも…。」

<そして そのころ 雪次郎君にも 人生の転機が訪れようとしていました。>

劇団赤い星座

稽古場

福島「それじゃ 今から 次回公演の『かもめ』の配役を発表します。 アルカージナ 亀山蘭子。」

蘭子「はい。」

福島「トレープレフ 小畑雪次郎。 小畑雪次郎!」

雪次郎「はい!」

虻田「ちょっと待って下さい。 その配役に 異議を申し立てます。」

福島「異議?」

虻田「小畑雪次郎が なぜ 主役に選ばれたか その理由を説明して下さい。」

福島「何だ? 君たちは…。」

「我々は この配役が 一人の俳優の 私情によって決められていることに 問題を提議します!」

福島「それは 全く事実無根だよ 君。」

虻田「我々の意見も聞き入れ 新たに 劇団の総意として 演目と配役を選ばれることを 要求します。 それができなければ 我々は この公演に 一切 協力することはできません。」

蘭子「しかたないわね。 できないという人に 無理に参加してもらうことはないわよ。」

おでん屋・風車

1階店舗

なつ「雪次郎君が主役に?」

レミ子「それに 若手の劇団員のほとんどが異議を唱えて 公演をボイコットするって 言い出したのよ。 そしたら 蘭子さんも それを認めちゃって…。」

咲太郎「雪次郎との関係を認めたのか?」

レミ子「そうじゃないけど… そう思われたと思う。」

咲太郎「はあ~ やっぱり うわさは本当だったか!」

劇団赤い星座

稽古場

雪次郎「そんなうわさは 事実じゃありません! 蘭子さんに失礼です!」

「自分の実力だけで 大きな役をつかんだと思ってるのか?」

「たとえ 恋愛関係になくとも 君が亀山蘭子から えこひいきを受けてるのは事実だ。」

雪次郎「じゃ 俺に どうしろって言うんだよ!」

虻田「我々は 君の力を買ってる。 いや…我々こそが 君の実力を認めてるんだ。」

「そうだ!」

「そうよ!」

虻田「我々と一緒に 新しい劇団を創らないか?」

「一緒にやろう。」

「小畑。」

「雪次郎。」

「雪次郎君。」

「小畑君。」

虻田「新しい演劇を創らないか 小畑雪次郎!」

回想

蘭子「そのことを考えると この身を引き裂きたくなるのです!」

(拍手)

回想終了

雪次郎「蘭子さんと共演することが 亀山蘭子という女優と 共演することが夢で そのために ここにいます。 だから 今は 辞めるわけにはいきません。」

虻田「亀山蘭子が 君の夢か? それなら その夢を追いかける方が 今の君には楽だもんな。 悪いけど 俺たちは先に行かせてもらおう。」

おでん屋・風車

1階店舗

なつ「とにかく 雪次郎君の気持ちは 純粋に芝居だけに向かってることは 確かなの。」

亜矢美「だとしたら 余計に苦しい立場だね。」

なつ「えっ…。」

松井「やっかみだよ やっかみ。 しかし 劇団ってところは 昔とちっとも変わらねえな 亜矢美ちゃん。」

亜矢美「フフ まあね…。」

松井「亜矢美ちゃんも 売れ始めた頃は さんざん 周りの踊子に いじめられたもんな。 客と恋愛なんかするなとかさ。」

なつ「えっ 何ですか? それ。」

亜矢美「いや もう 忘れちゃったって…。 あ~ もう そんな大昔の話やめてよ 松ちゃん。」

松井「しかし それに比べると 雪次郎の方は 名優と若手の恋か…。 演劇界では よくある おとぎ話みてえなもんだな。」

島貫「おっ 亀山蘭子に 竜宮城に連れてってもらうのか。」

松井「アハハハハ…!」

なつ「そんな失礼なこと言わないで下さい!」

<なつよ むきになるのは 恋のうわさに 君もイライラしているからか?>

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