ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第99話「なつよ、テレビ漫画の幕開けだ」【第17週】

あらすじ

主役抜てきへのやっかみから、劇団員たちに呼び出されたと思った雪次郎(山田裕貴)だが、実は新しい劇団の旗揚げの誘いだった。蘭子(鈴木杏樹)を裏切ることはできないと断る雪次郎だが、稽古中に蘭子の口からとある事実を告げられる。一方、新作「百獣の王子サム」の制作に携わるためにテレビ班に移ったなつ(広瀬すず)と茜(渡辺麻友)たち。だが、映画とは違い、簡略化された原画の数々を目の当たりにし、戸惑いを隠せず…。

99話ネタバレ

劇団赤い星座

稽古場

虻田「我々と一緒に 新しい劇団を創らないか! 小畑雪次郎!」

雪次郎「蘭子さんと共演することが 亀山蘭子という女優と 共演することが夢で そのために ここにいます。 だから 今は 辞めるわけにはいきません。」

雪次郎宅

なつ「それで?」

雪次郎「分かってもらえたよ。」

なつ「そう… なら いかったでない。」

レミ子「だったら 雪次郎は 夢をかなえたんだね?」

雪次郎「ああ…。」

なつ「レミさんは このまま 劇団に残るんですか?」

レミ子「私は 何があっても 雪次郎と蘭子さんの味方だから。 『かもめ』では セリフもない小間使いの役でもね。 トレープレフ 頑張れよ。」

なつ「うん そうだわ。 こうなったら 心を決めて 頑張るしかないっしょ。 雪次郎君 頑張って! 楽しみにしてるから。」

雪次郎「うん 分かった。 ありがとう なっちゃんも レミちゃんも。」

なつ「私も頑張るわ。 今度 テレビを作るんだけど。」

雪次郎「テレビ?」

なつ「そう。 テレビで アニメーションやるの。」

レミ子「『鉄腕アトム』みたいな?」

なつ「そう! 見てるんですか?」

レミ子「当たり前よ。 いつ 声で呼ばれるか分からないもん。 というより呼ばれたい! なっちゃんのにも呼んでよ!」

なつ「いや まあ… まだ そこまでは 何も決まってませんから。」

雪次郎「なっちゃんも テレビをやるのかい。」

なつ「そう。 でも 映画と違って テレビの作り方 よく分かってないんだわ。 だから頑張る。」

雪次郎「頑張れよ なっちゃん。」

なつ「頑張るよ。」

雪次郎「じゃ 飲むか 景気付けに。」

レミ子「おっ いいね。」

3人「頑張る 乾杯!」

劇団赤い星座

稽古場

雪次郎『本物の天才か!』。

<残った劇団員で 稽古が始まりました。>

雪次郎『あんた方の誰よりも上なんだ!』。

蘭子『デカダン!』。

<演目は チェーホフの『かもめ』。 雪次郎君と蘭子さんは 親子を演じます。>

蘭子「ちょ… ちょっと待って! ちょっと止めてちょうだい。」

福島「はい ちょっと止めようか。」

蘭子「あなたね 無駄な動きが多いのよ。」

雪次郎「はい すいません…。」

蘭子「自分を見せようとせずに ちゃんと トレープレフが ここにいるっていうことを演じなさい。」

雪次郎「はい 分かりました!」

東洋動画スタジオ

作画課

<一方 テレビ漫画『百獣の王子サム』は  絵コンテも出来上がり 作画作業が始まりました。 なつは サムが駆け抜けるカットの原画を 描いています。>

猿渡「あ… そこは そんなに 丁寧に描かなくていいんだよ。」

なつ「えっ? 普通に描いてるだけですけど。」

猿渡「速く走り去るんでしょ? ちょっといい? そういう時は…。 これで いいんだよ。」

なつ「えっ これで?」

茜「あの それって 動画は どうやって描けばいいんですか?」

猿渡「この流線だけ動かせばいいの。 3枚くらい使って フレームアウトさせれば サッと走り去ったように見えるでしょ。」

2人「ええ~っ!」

劇団赤い星座

稽古場

雪次郎『断じて認めないぞ! あんたも あいつも!』。

蘭子『デカダン! 私のかわいい子 堪忍しておくれ。 不幸せな私を許しておくれ』。

雪次郎『僕の気持ちが お母さんにも分かってもらえたらな! 僕は もう書く気がしない…。 希望も みんな…』。

蘭子「ダメ! 全く ダメ!」

雪次郎「はい… もう一回お願いします!」

蘭子「もういいわ 少し休みましょう。」

雪次郎「すいません…。」

蘭子「あなた 覚えてる?」

雪次郎「えっ? あなたが 初めて 私の芝居を見に来てくれた時のこと。」

雪次郎「はい… もちろんです。 『人形の家』でした。」

蘭子「あの時 あなたが 私に言ったこと。」

雪次郎「えっ…。」

蘭子「私の芝居に アマチュア精神を感じると言ったのよ。」

雪次郎「あっ…。」

蘭子「それは どうして?」

雪次郎「あ… それは 高校の時 演劇部の顧問だった倉田先生に よく言われていたからです。 アマチュア精神を 忘れたような芝居をするなって。」

雪次郎「役者として うまくやろうとするな かっこつけるな 普通の人間として しゃべれてって…。 本物の役者こそ まさに そういうもんだと思ったからです。 蘭子さんを見て。」

蘭子「私も言われたのよ。 最初に お芝居を教えてくれた大先輩に。 新劇で 一番大事なものは アマチュア精神だって。 こんなふうに その人は いつまでも 私につきあって 徹底的に教えてくれたの。」

雪次郎「男の先輩ですか?」

蘭子「もう… 死んだけどね。 戦争が激しくなって 私は疎開したけど その人は 移動演劇隊に入って… 昭和20年8月6日に 広島にいて…。」

雪次郎「蘭子さんは その人のことを…。」

蘭子「あの人と同じ言葉を言ったあなたには あの人の分も生きて 演じてほしいのよ。 頑張ってほしいの これからも。」

雪次郎「分かりました。」

蘭子「それじゃ もう一回やりましょう。」

雪次郎「はい。」

東洋動画スタジオ

作画課

坂場「サムは動かず 顔も固まったまま 潤んだ涙だけが動くのか…。」

猿渡「動かすのは 涙だけでいいってことね。」

なつ「動かすところは動かして 動かさないところも個性として考える そうやって キャラクターを 作っていくしかないと思うけど。」

坂場「なるほど…。 単純な動きでも 登場人物の気持ちは 伝わるもんなのかもしれないな…。」

茜「そりゃ 止まった絵の漫画だって 気持ちは伝わるんだもの。」

なつ「そうですよね。」

坂場「いや… 形式じゃなく 意識の問題だよ。」

なつ「意識?」

坂場「登場人物の個性に合わせて 動きに メリハリをつけてゆく意識を持てば 省略された動きでも 生き生きと 見せることはできるということです。 ほら 日本人の感覚にある 歌舞伎の演技のように! 形式は違っても そうやって 東條人物を演じるという能力こそが うちのアニメーターが培ってきた 強みじゃないでしょうか。」

なつ「強み?」

坂場「君の力です。 動きは抑えても アニメーターの感情を 抑えることはないんですよ。 表現として妥協することはないんです。 くさらずに やって下さい。」

なつ「私は 全然 くさってませんけど…。 でも… 分かりました!」

猿渡「まあ そうやって こだわると 残業が続くだけなんだけどね。」

荒井「ほ~い… うどん作ったから食うてや!」

茜「わあ 荒井さん 最高! 行こう 行こう!」

<なつが前進すれば 雪次郎君も また…。>

劇団赤い星座

稽古場

蘭子『意気地なし! 不幸せな私を許しておくれ』。

雪次郎『僕の気持ちが お母さんにも分かってもらえたらな!』。

雪次郎『人生は 僕にとって 耐え難いものになった。 苦しみがあるだけだ。 若さが急に摘み取られて 90年も生きてきたような気がする』。

雪次郎『僕は 君の名を呼んだり 君の歩いた地面に接吻したりしている。 どこを見ても 君の顔が見える。 僕の生涯で 一番楽しかった時代を 照らしてくれた あの優しい笑顔』。

東洋動画スタジオ

作画課

なつ「さあ 来やがれ! 来やがれ…。」

<こうして 時を重ね 雪次郎君の舞台が 初日を迎えました。>

赤い星座

ホール

なつ「休みの日に わざわざ すいませんね。」

坂場「あなたのためではありません。 亀山蘭子の芝居は見逃せないでしょう。」

茜「雪次郎君の晴れ舞台も見逃せないわよね。」

なつ「はい。」

光子「こんにちは。」

咲太郎「おっ あんたも来たのか。」

亜矢美「こんにちは。 お久しぶりです。」

光子「ご無沙汰しております。」

咲太郎「忙しいのに よく来てくれましたね。」

光子「そりゃ 北海道のご家族に代わって 私には 見届ける責任がありますからね。」

咲太郎「雪次郎にとっては 新宿の母だからな。」

光子「母じゃないわよ。」

咲太郎「母みたいなもんでしょう。」

光子「母は そちらの方でしょう。」

亜矢美「いや 私は友達。」

咲太郎「俺は社長。」

光子「私は…。」

なつ「マダム! マダム!」

光子「あっ…。」

<なつよ 雪次郎君の成長を見届けよ。>

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