ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第1話「ふるさとは安来」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】1話のネタバレです。

あらすじ

昭和14年、島根県の大塚の呉服屋の三女・7歳の飯田布美枝(菊池和澄)は、生来の引っ込み思案。厳格な父・源兵衛(大杉漣)、控えめな母・ミヤコ(古手川祐子)、優しい祖母・登志(野際陽子)、そして兄弟たちという大家族の中では目立たない存在だった。ところが、安来の商家に嫁いだ叔母・輝子(有森成実)が体調を崩したといううわさを聞き、布美枝は輝子に会いたい一心で、たったひとり遠く離れた安来の町まで走っていく。

1話ネタバレ

飯田家

飯田布美枝「いいご縁で ありますように。」

飯田源兵衛「ミヤコ ええか?」

飯田ミヤコ「はい。」

源兵衛「布美枝の横には わしが おるようにするけん。 お前は ちょっと 離れて座れ! 布美枝が大きく見えるけんな。」

ミヤコ「はい 分かりました。」

源兵衛「うん。 あっ! 厠は 磨いたかや?」

ミヤコ「はい。 今朝 早くに ちゃんと。」

源兵衛「もう一度 よく見ちょけよ。 家の格は そげなとこに 出えけんな。」

ミヤコ「はい! あら? しつけ糸…。」

源兵衛「何しちょ~? 早(はや)ことしぇ! 布美枝! 何 もたもたしちょ~だ! じき 見合い相手が来るだぞ~! 布美枝!」

布美枝「はい!」

飯田登志(とし)<この のっぽの娘が これから始まる物語の主人公 飯田布美枝です。 今日は 布美枝の見合いの日なのです>

昭和三六年六月一日

源兵衛「何を もたもたしちょ~だ! もう一遍 言っとくぞ。 お前は 台所で 抹茶をたてて ふすまの前で控えちょれ。」

布美枝「はい。」

源兵衛「よきところで わしが『ううっ』と せきばらいをする。 それを合図に 座敷に入って わしの横に座れ。」

ミヤコ「来られたようです。」

源兵衛「来たか~?!」

ミヤコ「はい。」

源兵衛「お見えにならしゃったぞ~! 用意は ええか?!」

ミヤコ「お父っさん!」

布美枝「どげしよう。 ドキドキしてきた!」

<これが 布美枝の父の源兵衛で こちらが 母にミヤコです>

玄関前

村井絹代「しげさん 気張っていかっしゃいよ!」

村井修平「まあまあ そう気張らんと 自然体でいったら よかろう。」

絹代「えんや 今日は しくじれません。 39にもなって 嫁がおらんでは 人生 お先真っ暗ですが! ふんっ!」

村井 茂「酒屋かあ。 う~ん えらいクラシックな家だなあ。 『座敷童』か『小豆はかり』でも 住み着いとりそうだ。」

仏間

<そして これが 私。 布美枝の祖母の登志と申します。 8年前に あの世に呼ばれたのですが 孫の行く末が 気がかりで こうして 見守っているのです>

布美枝「はあ… まだかな? あの人か…。」

<見合いの相手は 村井 茂。 職業は 漫画家。 ペンネームを 水木しげる と言いました>

昭和十四年 夏

<見合いの顛末は また後ほど お話するとして…。 昭和14年 布美枝が7歳の時から 物語を始める事と いたしましょう>

♬~(ラジオ体操)

指導員「ほい 参加賞。」

子供1「赤いあめ玉だわ。」

指導員「ほい 参加賞。」

子供2「だんだん。」

指導員「ほい 参加賞。」

布美枝「あれ… あめ玉?」

野村チヨ子「先生! フミちゃんは 皆勤賞だけん 賞品も キャラメルじゃないかね?」

指導員「チョット見してほしいんよ。 や お前 毎日来ちょったか! ちっとも気づかだったわ ハハハ! はい! 皆勤賞のキャラメル。」

布美枝「だんだん…。」

チヨ子「フミちゃん いっつも 忘れられてしまうな。」

布美枝「うん… なしてかなあ?」

チヨ子「おとなしすぎるけん おるか おらんか分からんもん。」

布美枝「そげかな…?」

チヨ子「そんなら明日 学校でな。」

布美枝「私 そげん目立たんかなあ…。」

(鐘の音)

<安来は 島根県の東の端にある 歴史のある町です。 中海に面した港から 6kmほど 内陸に入ったところに 布美枝のふるさと 大塚の町があります。 周りは一面の田畑。 奥出雲の 山並みの向こうに見えるのが 『出雲富士』とも呼ばれる『大山』です>

<この頃の我が家は 先代から続く 呉服店を営んでいました>

飯田家

3人「よいしょ! よいしょ! よいしょ! よいしょ!」

飯田ユキエ「お母さん おひつ。」

ミヤコ「ああ。 よっ! お願いね。」

ユキエ「はい!」

(3人の掛け声)

<父と母 娘が3人 息子が2人。 そして 祖母の私。 飯田家は 総勢8人の大家族です>

布美枝「お母さん 見てごしない。 今日 体操で これ もらったよ。」

ミヤコ「ああ そげかね。」

布美枝「おばば ほら。 皆勤賞だよ。」

登志「ああ よかったな。」

布美枝「ちっとも聞いちょらん!」

登志「ああ ちょっと 布美枝!」

布美枝「何?!」

登志「みそが切れちょ~わ。 みそ 取ってきてごせ。」

布美枝「え~。」

みそ部屋

布美枝「みそ樽 奥かなあ?」

(物音)

布美枝「何の音?」

(天井からの音)

布美枝「何か おるかなあ…。」

(音 大きくなる)

布美枝「あ きゃっ!」

源兵衛「何を びくびくしちょ~だ!」

居間

源兵衛「布美枝は 2年生にも なって 弱虫で えけんのう。」

布美枝「だけん 変な音がして…。」

源兵衛「お前やち 夏休みの宿題は 済んどんのか? 明日から学校だけん よく確認せえよ。」

子供達「はい。」

布美枝「あのね さっき…。」

源兵衛「おい 飯 お代わり。」

ミヤコ「はい。」

飯田暁子「今日 裁縫に行ってくるわ。」

ユキエ「あ 私も。」

布美枝「みそ部屋の天井で…。」

飯田哲也「俺 山に行くけん。」

登志「あ 弁当は?」

哲也「いらん。」

源兵衛「弁当は持ってけ!」

哲也「いらん。」

源兵衛「お握りじゃけ持ってけ!」

登志「うん お握り作ってやる。」

布美枝「何か 音が…。」

飯田貴司「ああ~!」

(貴司の泣き声)

登志「早こと 拭くだが!」

布美枝「誰も聞いてくれん…。」

源兵衛「ピーピー泣くな もう!」

<大家族の中で 布美枝の小さな声は しばしば かき消されてしまうのでした>

魚屋

(自転車のベル)

留蔵『フミちゃん おはよう!」

布美枝「おはようさん! その お魚 安来の港で買ってきたかね?」

留蔵「そげだ。」

布美枝「輝子叔母ちゃんに会った? 元気だったかね?」

留蔵「濱乃屋のおかみさんか? 今朝は会わんだったな。 3日ばかし前は『体が えらい』 言ってらっしゃったけど。」

布美枝「叔母ちゃん 病気?」

留蔵「夏風邪かもしれんな。」

克江「あんた 早こと 魚 並べて。」

留蔵「おっ!」

布美枝「叔母ちゃん…。」

(回想)

宇野輝子「はい フミちゃんに! これ なめると 元気が出るけんね。」

<輝子叔母さんというのは 母の妹で 安来港の魚問屋に嫁いでいます。 内気な布美枝を 誰よりも かわいがってくれる 叔母さんの事が 布美枝は 大好きでした>

(回想終了)

布美枝「叔母ちゃん 大丈夫かな? なあ なあ 安来は どっち?」

留蔵「ここを まっすぐだが。」

布美枝「ずっと まっすぐ?」

留蔵「そげだ! 出雲富士を右に見てな。 だども 1里半もあるげな。 自転車で行くのも 遠くて 骨が折れ~わ! ハハハ! あれ? フミちゃん?」

道中

農夫「城ちゃん どこへ行かっしゃ~かね?」

布美枝「港の叔母ちゃんのとこ~。」

農夫「そげん急いで 転ぶなや!」

布美枝「うん!」

<叔母の住む 安来の港に向かって 布美枝は 遠い道のりを 走りだしていきました>

安来港

<港は魚市場に出入りする人達で 大層 賑わっていました>

(通りのざわめき)

(店員達の掛け声)

濱乃屋

店員「お嬢ちゃん お使いかね? そげなとこ おったら邪魔だぞ!」

布美枝「叔母ちゃん おらんかね?」

客「これ いくらかね?」

店員「はい 15銭になります。」

客「は~ もっと安くならんかねえ?」

店員「いや ならんわねえ…。」

布美枝「ああ 叔母ちゃん おった…。 よかった 元気にしちょ~。」

番頭「おかみさん ち~と 仕入れの事で。」

輝子「ああ。」

番頭「実は 浜の方で がいに取れて…。」

輝子「それは 帰って いけんねえ?」

番頭「へえ!」

布美枝「忙しそうだな…。」

店員「おい! 何をウロウロしちょ~だ? 親は どげしただ?」

布美枝「ああ…。」

回想

源兵衛「この だらずが! どこ行っちょった! どこ行っちょった! どこ行っちょった!」

<誰にも告げずに家を出てきた事を 布美枝は思い出しました>

回想終了

布美枝「いけん お父さんに叱られる…。 叔母ちゃん あれ? おらん…。 これ 叔母ちゃんに!」

店員「え? おっ?! おい! これ(キャラメル) どげす~だ?」

(汽車)

布美枝「あっ!」

「おい 危ねえぞ!」

(店員達の掛け声)

道中

<行きは 張り切って走った 6㎞の道が 帰りは ひどく 遠く感じられました>

(ヒグラシの鳴き声)

(鳥のはばたく音)

(奇妙な鳴き声)

(草履の足音)

布美枝「今 足音がしたが…。」

(布美枝の足音)

(つけてくる足音)

布美枝「誰か おるかねえ。 何か おる…。」

<誰も いない 田舎道 怪しい足音が 布美枝の後ろを ついてきたのです>

布美枝「いや~っ!」

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