ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第5回「花子と呼んでくりょう!」【第1週】

あらすじ

高熱を出し、「辞世の歌」を詠んだはな(山田望叶)だったが、吉平(伊原剛志)が町の医者へ連れて行き、一命を取りとめる。はなは、生まれ変わったつもりで自分の好きな名前を付け直すことにしたと言い、「花子と呼んでくれ」と皆に言う。はなの才能を確信した吉平は、女学校へ進学させる相談のため、牧師(山崎一)を家へ呼ぶ。意外にも牧師からは反対を受けるが、ふじ(室井滋)は、はなの本当の気持ちに気づき始める。

5回ネタバレ

安東家

<『まだまだと おもひすごしおるうちに はや しのみちへ むかふものなり』。 幼いはなが詠んだ辞世の歌は はなや安東家の人々の運命を 大きく変える事になるのでした。>

道中

吉平「はな もう少しの辛抱じゃ。 頑張るだよ!」

はな「おとう…。」

吉平「はな 諦めちゃいけん! 人間 諦めたら おしめえだ。」

医師宅

吉平「先生! 先生! うちの娘が 高熱を出して 死にかけとるんじゃ! 先生!」

医師「さあ のんで。」

はな「苦い…。」

吉平「これ のみゃあ きっとよくなる。 ほら。」

医師「はい。」

安東家

(鶏の鳴き声)

居間

ふじ「はな。 おかゆが出来ただよ。」

はな「おかあ 白いお米じゃん!」

ふじ「うん。 ありがてえねえ。 吉太郎が 奉公に行ってくれたおかげじゃん。」

吉平「ほうか。 はな うんと食え。」

はな「ああ うめえなあ。」

ふじ「うめえか?」

吉平「うんと食べて 精つけろし。」

(戸が開く音)

朝市「こんちは。」

周造「ああ。」

朝市「はな 熱下がったずらか?」

周造「ああ。 顔 見してやれし。」

はな「あっ 朝市。」

朝市「元気になって よかったじゃん。 これ はなに。」

ふじ「はな どうしたでえ?」

吉平「はな。 恥ずかしがるこん ねえら。」

朝市「はな?」

はな「何べん入ったら分かるずらか。 はなじゃねえ。 おらの事は 花子と呼んでくりょう。」

かよ「お姉ちゃんが また おかしな事 言ってるじゃんけ。」

ふじ「ほうだねえ。」

吉平「ハハハ いい加減にしろし。 はなで花子でも どっちでもいいら。」

はな「おとう。 おらは 面白半分で 辞世の歌を詠んだんじゃねえ。」

吉平「ほれは 分かっとるが…。」

はな「おら あん時 本当に死ぬ覚悟しただよ。 一遍死んで 生まれ変わったも 同じだ。 おら 生まれ変わった この命を 大事にするだよ。 ふんだから やっぱし 自分の好きな名前を 自分で付け直す事にしただよ。 みんな おらの事は 花子と呼んでくれろ。 朝市 分かっただけ?」

朝市「うん。」

吉平「やっぱし この子は ただもんじゃねえ。 天才か… いや ひょっとしたら 神童かもしれん。」

周造「はな! 病み上がりずら 無理すんじゃねえぞ!」

はな「花子は 平気だ!」

周造「何で はなじゃなくて 花子が そんなにいいだか じぃやんには さっぱり分からん。 どういでだ?」

はな「ほりゃあさ 花子と呼ばれた方が 自分の事を ありがたく思えるじゃんけ。」

周造「う~ん そうさな~…。」

はな「おじぃやんも 自分の事 周造じゃなくて 周右衛門とか周左衛門だと 思ってみろし。」

周造「周左衛門? わしが?」

はな「ほの方が ずっと気持ちいいだよ。 自分の事 ありがたく思えるだよ。」

周造「ほうかな…。」

はな「おら 思う。 人も物も 名前が大事だ。 名前が変われば 見える景色も変わるだよ。 自分が花子だと思うと…。 ほ~ら 風の匂いまで違うじゃん。」

周造「フフフフフフ はなは 本当に面白えボコだ。 じぃやんは はなといると退屈しん。」

はな「ふんじゃあ ずっと おじぃやんのそばにいるさ。 ほれと はなじゃなくて花子だ!」

安東家

ふじ「はなが また何か?」

リン「はなちゃんが病気になって 寝込む前の夜だけんど 朝市が夜中の教会に忍び込んで 捕まっただよ!」

ふじ「えっ?」

リン「何でも 図書室で本が読みたかっただと。 朝市を誘ったのは ひょっとしたら はなちゃんじゃねえかと 思っただよ。」

回想

ふじ「はな! どうしたでえ? ずぶぬれじゃん!」

はな「本の部屋さ行って… おらだけ 逃げちまって…。」

回想終了

はな「おかあ ただいま。 おばさん こんちは。」

リン「こんちは。」

ふじ「はな。 おまん 隠してるこん あるら。」

はな「えっ?」

ふじ「ずぶぬれになって 帰ってきた時のこんだよ。」

はな「おら…。」

吉平「さあ 牧師様 どうぞ! どうぞ。」

森「こんにちは。 やあ はなちゃん。」

回想

森「お前は 友達を置いて 逃げた ひきょう者だ!」

<はなは パニックに陥っていました。 こらから みんなの前で 牧師様に お仕置きされるのでしょうか。>

森「へえ… これ 本当に君が? 7歳の女の子が これを詠んだとは…。」

吉平「やっぱし 牧師様も ほう思うでしょ? 私は これを見て 心に決めたです。 この子は 神童じゃ。 一日も早く こんな田舎じゃなくて 東京の女学校に行くべきじゃと!」

ふじ「あんた…。」

吉平「うちのもんたちは みんな 学問の大事さが これっぽっちも分かっとらんのです。 学のある牧師様から みんなを説得してほしんじゃ。 どうか お願えします!」

はな「おとう! ほの事は もういいって。」

吉平「いいから はなは 黙ってろし。」

森「本気ですか? お父さんは 本気で 修和女学校の寄宿舎に お嬢さんを入れたいと。」

吉平「はい。 本気です。」

森「そうですか…。」

吉平「お願えします。 娘の将来が懸かってるだ。」

森「では はっきり言わせてもらいます。 私は 反対です。」

吉平「てっ! 反対?」

森「あの女学校に お嬢さんを入れるのは いくら何でも無理がある。」

吉平「無理?」

森「あそこの生徒は 華族や富豪のお嬢様ばかりです。 いくら はなさんが優秀で 学費免除の給費生として 入学できたとしても 華やかなお友達と うまくやっていけるでしょうか。 生まれも育ちもあまりにも かけ離れている。 お嬢さんが つらい思いを するのではないでしょうか。」

吉平「ほんな… 牧師様 おっしゃったじゃねえですか! 神様の前では 金持ちも貧乏人もねえ。 みんな平等だって。」

森「そうです。 しかし また 金持ちと貧乏人が いるのも 厳然たる事実です。」

リン「この際だから こぴっと婿に言ってやれし。」

周造「そうさな。 わしの目の黒いうちは はなを東京の女学校へなんか 絶対に行かせん!」

リン「よしよし! よく言ったじゃんけ!」

武「小作のはなが 華族の女学校なんか 行ける訳ねえら。」

周造「わしゃ もう寝る。」

ふじ「おやすみなって。」

はな「おやすみなって。」

周造「ああ おやすみ。」

はな「おかあ。 おら ずっと黙ってて ごめんなさい。 嘘ついて ごめんなさい。 おら 奉公行く日の前の晩 朝市と教会行っただよ。 教会の人に見つかって 朝市は 捕まって おらは 逃げて帰ってきたけんど 罰が当たったさ。 明日 牧師さんに謝ってくる。」

ふじ「こぴっと謝ってくるだよ。 はな。 ほかにも 嘘ついてねえけ?」

はな「えっ?」

ふじ「おまん 本当は 本が いっちょ好きだよね。 女学校行って 好きな本を いっぺえ読みてえじゃねえだけ?」

はな「本なんか嫌えだし 華族のお嬢様の行く女学校なんか ちっとも行きたくねえ。」

ふじ「本当け? おかあは 字ぃ読めんから ここに何が書えてあるだか さっぱり分からん。 ふんだけんど はなが これを読むと 幸せでいっぱいの気持ちに なる事だきゃあ分かるだよ。 おまんの顔が キラキラするだ。」

回想

はな「てっ! 本じゃん! 本物の本じゃんけ! おら 初めて本に触った。 夢みてえじゃん!」

はな「『ち… い… さ… か…』。

回想終了

ふじ「ごはんを腹いっぺえ 食べてる時よりか キラキラするだから 分かるだよ。 はな。 何で ずっと本に触らんでえ? そんな はなよりも キラキラしてる はなの方が いいに決まってるじゃんね。」

はな「おかあ… おら…。」

ふじ「言ってみろし。 遠慮しんで。」

はな「嫌えになろうと思ったけんど やっぱし うまくいかねえ。 好きなもんは 好きだ。 本が うんとこさ好きだ。 ほれと いつか 教会の本の部屋みてえな うちに住んで 片っ端から 本を読んでみてえさ! 思いっきし 本 読みてえ!」

かよ「うん? うん…。」

2人「し~っ。」

<嫌いになろうとしたのに 余計 大好きになってしまった。 はなにとって 本は まるで 初恋の人みたいですね。 ごきげんよう。 さようなら。>

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