ドラマダイジェスト

【行列の女神~らーめん才遊記~】7話ネタバレ

2020年6月1日放送の【行列の女神~らーめん才遊記~】7話のネタバレです。

らーめん才遊記はテレビ東京で放送しているドラマです。

現在は(2020年6月現在)Paraviでも視聴可能です。

テレビまたはParaviが見れない方やこのドラマに興味のある方はこの記事をご覧になってください。

あらすじ

世界的な日本食イベントのラーメン部門責任者に抜擢され大忙しの芹沢(鈴木京香)のもとに、『麺房なかはら』店主の中原(石黒賢)がやって来る。

90年代に名を馳せたラーメン界の大スターだ。

しかし、名店と言われる本店と同じ味の新店舗に客が入らず、困っているという。話を聞いた芹沢はこの依頼をゆとり(黒島結菜)に任せるが、芹沢にはある思惑があって…。

さらに中原と芹沢、河上(杉本哲太)の意外な関係が明らかとなる。

7話ネタバレ

白坂「最近部長疲れてますね」

須田「疲れてるよなー、まあ一大イベントも近づいて来てるし」

白坂「凄い話しですよねー。世界に向けた日本食文化PR事業のラーメン部門責任者に芹沢社長が抜擢されるなんて」

須田「ま、お国の絡んでる仕事だし会議やら調整やら、とにかく七面倒くさい手続きが多いみたいだけどね」

須田「その分こっちに仕事のしわ寄せがくるのは仕方ないよ。河上部長もだけど、あっちはあってでキツそうだし」

白坂「確かに」

白坂「とりあえず部長はこのまま寝かしといてあげましょうか?」

須田「いいんじゃないか、今日は別に来客の予定もないし」

ゆとり「あー!なんで?!」

河上「どうしました?」

ゆとり「部長!これおかしくないですか!?」

白坂「ゆとりちゃん、起き抜けだから」

河上「これは、各店舗の売上表ですね、これが何か?」

ゆとり「淡口醤油らあめんですよ!月平均でたった300杯しか出てませんよ」

白坂「え?淡口ってそれぐらいしか出てなかったんでしたっけ?」

須田「まあ、内は1番の売れ線は濃口醤油らあめんだからな」

ゆとり「なっとくできません。私、この間初めて食べたんですけど、あまりの美味しさに感動しましたもん」

ゆとり「あの淡口醤油らあめんの味はワクワクとか、そういう次元を遥に超えていました。私が今まで食べてラーメン中で間違いなくナンバー1です。なのに、どうしてこんなに売り上げが悪いんですか?」

河上「どうしてと言われましてもね。そこがラーメンのもつ難しさとしか言いようがありま・・・」

調理室から覗いている夏川と目が合う河上

河上「ほら、今まさにそこにハマりこんで困ってる人も居ますよ」

物凄い目力で呼ばれるゆとり

ゆとり「ちょっと行ってきます」

白坂「いってらっしゃい」
須田「こえーよ、あの目」

白坂「かなり追い詰められてますから」

調理室にて

夏川「どう?」

ゆとり「この香り、スープにフォンドボーを使ってますね」

夏川「わかる?フレンチを応用して、子牛の骨と筋肉、香味野菜をオーブンで焼いた後煮込んだわけ」

ゆとり「フォーと上手く調和していて、うん美味しいです」

夏川「本当?」

ゆとり「でも、ちょっと上品にまとめすぎな感じがしますね、あとインパクトも弱いですし、オリジナリティも不足しています。具を平凡なチャーシューですけど、ローストビーフに変えて統一感を出してみてもいいかと、それから・・・」

夏川「もういい、あんた結局全然美味しいって思ってないんじゃん」

ゆとり「いや別にそういうつもりじゃ・・・」

夏川「いいの、もう、自分でも分かってるの、これじゃダメだろうなって」

夏川「なにやってんだろ私、社長が忙しいからって新しい月替わりラーメン作るチャンスもらえたのにさ」

ゆとり「まだ時間はありますよ、そんなに焦らなくても」

夏川「そんな悠長なこと言ってらんないから、店に出す1週間前には社長のチェック受けて合格もらえる出来にしなきゃいけないんだから」

ゆとり「たしかにそうですけど」

夏川「ごめん、気ばっか焦っちゃってさ、ごめんね」

ゆとり「いえ。味見役くらいいつでも付き合いますよ。私は夏川先輩の味方ですから」

夏川「ありがとう」

ゆとり「まあでも確かにこれは芹沢社長のラーメンとは雲泥の差ですけど、きっとなんとかなりますって、社長のラーメンが凄すぎるんですよ。気楽にやりましょう、気楽に、ダメで元々、当たって砕けろ、死して屍拾うものなし・・・痛っ」

夏川「あんた結局、私が苦しんでんの見て楽しんでんだ?」

ゆとり「いや、違います」

夏川「あ?」

ゆとり「いやー痛い痛い痛い耳がもげる、耳がもげます」

調理室を出たところで芹沢が登場

芹沢「ただいま」

ゆとり「社長」

芹沢「おつかれ、夏川の調子どう?」

ゆとり「順調そのものです」

芹沢「全然ダメなのね。そろそろこれぐらいの試練、自分でなんとかしてほしいわね!」

芹沢「こっちもバタバタなんだから」

須田「異様に時間取られてません?フードサミットの仕事?」

芹沢「運営院長が体調不良で欠席続きでこの間から話しが全然進んでないのよ、そのくせ無駄に呼び出すし」

白坂「やることが役所って感じだな」

河上「運営院長は確か、日本料理教会の辻川さんでしたね。まあ確かにご高齢ですからね」

芹沢「全く面倒な仕事引き受けちゃったわよ」

そこに依頼が入る

中原「失礼、相談があって来たんだが」

中原は名店・麺房なかはらの店主でラーメン業界では有名とのこと

ラーメン博物館

ゆとり「夏川先輩なんでここに来てるんですか?」

夏川「あんた1人だと中原さんにどんな失礼があるか分かんないから、こうやって来てあげたの」

ゆとり「社長から担当任されたのは私なんですけど

回想

河上「ラーメン博物館?」

中原「内もそこに店を出したんだ。正直あまり気乗りはしなかったんだが、フロアの担当部長さんが内の常連客で断り切れなくてな、ところが・・・」

芹沢「客に入りはイマイチ、原因は不明、で内に相談にいらしたこ。こういうわけですね?」

中原「それなりの資金や人手もかけたし、このままじゃマズイ状況でな。恥を忍んでお宅にこうして頭を下げにきたというわけだ」

河上「本店は相変わらず繁盛されてるわけですよね?なのに出店した店が不入りである原因については、なにか心当たりは無いんですか?」

中原「何もない、何もかも本店と寸分変わらずやっている」

芹沢「お話しは分かりました。わが社としては出来る限りの助力をさせていただきます」

中原「頼むよ。ライバルである芹沢社長にこんなことを頼むのは癪なんだが、逆に言えば君ぐらいじゃないと同レベルで話しをすることも出来ないしな」

芹沢「光栄です」

中原「じゃあ明日、店で待っているよ」

芹沢「ライバルねー。相変わらず人を下に見てるのがよくわかる」

夏川「社長と中原さんって以前からお知り合いだったんですか?」

芹沢「よく知ってるわよ。お互いにまだ1人前になる前からね」

河上「依頼を受けるのは結構ですが、担当は誰が?」

芹沢「そうね。汐見でいいんじゃない?」

一同「え?」

ゆとり「本当ですか?」

夏川「マズイですよ。だってこの子、あの中原さんのこと全然知らないんですよ」

須田「僕に行かせてください!麺房なかはらのコンサルなんて良い勉強になりそうですから」

白坂「だったら俺が!」

芹沢「あなた達それぞれ仕事があるでしょ」

ゆとり「じゃあ、私で決まりということで」

河上「本当に大丈夫でしょうか?何しろプライドの高い人ですから」

芹沢「だから汐見に任せるのよ」

回想終了

新横浜ラーメン博物館

夏川「あんた、ちゃんと中原さんこと予習してきた?」

ゆとり「昨日あれから、須田さんに聞きましたよ1990年代におきたラーメンニューウェイヴがどうとか?」

夏川「うろ覚えじゃん、いい?ラーメンニューウェイヴってのは、それまでB級グルメ扱いだったラーメンの価値観ぶっ壊して洗練された高度な麺料理に進化させようって職人さん達が沢山現れた時期なの」

ゆとり「社長!」

ゆとり「社長社長」

夏川「中原さんは内の社長と並ぶ大スターの1人で名古屋コーチンを使った丸鶏ラーメンで一世を風靡したわけ」

麺房なかはら

ゆとり「そんな方のお店がこの状態って不味くないですか?」

夏川「マズイ。だから私達が来たんでしょ」

ゆとり「いや、私が来たんです。先輩は勝手のついてきただけでしょ」

店内へ

中原「君達は昨日の」

夏川「清流企画の夏川です。お世話になります」

ゆとり「この人はただの付き添いなので、担当は私です」

中原「担当?君が?」

早々にクレームをつける中原

中原「どういうつもりだ芹沢社長?内の店の件、あんたが担当してくれるんじゃなかったのか?」

芹沢「そんなことは一言も?」

中原「あんな小娘2人寄越してふざけないでくれ」

芹沢「キャンセルなさいますか?」

中原「もういい、あんたなんぞに頼った俺がバカだったよ」

店内

中原「清流企画への依頼は取り消しだ」

ゆとり「ちょっと待ってください、今来たばかりなのにどうしてですか?」

中原「どうしてもこうしてもないよ。お前達をここに寄越したのは昔のことを根に持っている芹沢の嫌がらせだろ」

夏川「昔のこと?中原さんと内の芹沢の間に何が?」

中原「なんだよ、聞いてねーのか?俺とお宅の社長はな昔同じ店で修業した間柄なんだ、ついでに河上もな」

ゆとり「修業仲間?社長と部長と中原さんが?」

中原「今はもう閉店した勝和軒ってラーメン屋だよ。先輩だった俺が散々いびったのを今も恨んでるんだろうよ」

ゆとり「いびった?」

中原「河上はとにかく不器用だったし、芹沢に至っては女だぞ!俺はなラーメンの世界にチャラチャラした女が入ってくんのが断固反対って考えなんでな」

夏川「なんですかそれ?私もラーメン職人を目指す女の1人なんですけど?」

中原「勝手に目指しゃいいだろ?内では女の店員は雇わねーし女の職人なんぞ認めるつもりもない!これはな、俺の信念なんだ」

夏川「最悪!ずっと憧れてた中原さんがこんな人だったなんて、汐見、もう帰ろう」

ゆとり「え?スイマセン内の先輩が失礼なことを」

中原「君もさっさと帰れ、商売の邪魔だ」

ゆとり「せめて、客としてラーメンを食べていってもいいですか?」

店員「どうぞ」

ゆとり「いただきます」

ゆとり「美味しい、丸のまま煮込んだ名古屋コーチンの出汁に内モンゴル産の岩塩を使ってますね。鶏のうま味がじんわり染み込んでくるような、凄く繊細で優しい味です!こんなに美味しいのに、どうしてお客さん来ないんですかね?」

中原「知らん!食べたらさっさと帰れ!」

外に出たゆとり

通行人A「ここにする?他の店混んでるし」

通行人B「この丸鶏ラーメンって何味なの?」

ゆとり「塩味です。凄く美味しいですよ」

通行人B「塩味」

通行人A「この丸鶏ラーメン極みって丸鶏ラーメンより高いけど、なんか特別なんですか?」

ゆとり「ちょっとそこまでは?」

通行人B「やっぱ、違う所にしない?少しでも並んでも美味しいラーメン食べたいし」

通行人A「そうだね、そうしよっか」

考えながらラーメン博物館を歩くゆとり

各店舗の外観を見ると・・・

ゆとり「わかった!」

再び麺房なかはらへ

ゆとり「中原さん、分かりましたよ。お店がガラガラの原因」

中原「なんだよ、いきなり?」

ゆとり「簡単なことでした。こんなのすぐに解決ですよ」

三日後

ゆとり「よし、大成功!」

中原「能書きを貼っただけで、ここまで効果てきめんとはな!」

ゆとりこの間までのお品書きだと、お客さんは味のイメージがつきませんでしたから」

中原「内の本店は常連客やネットで下調べして来る客がほとんどだから、品書きや能書きでクドクド説明する必要がなかったからな」

ゆとり「私がそこに気づけたのも、中原さんのお店のことをよく知らなかったからですね」

中原「芹沢が君を寄越したのはそういうアマチュア的な目線で店を観察させるためだったというわけか、いや本当に感謝している」

ゆとり「いえ、それが仕事なので」

清流企画

ゆとり「中原さん大喜びでしたよ。ここからは味の勝負だから一気に巻き返せるハズだって」

芹沢「そんなこと言ってたの中原さん」

ゆとり「ええ、凄く気合入ってました。芹沢社長にも改めてお礼に伺うからって」

芹沢「ダメね。何も分かってない。汐見、あそこの丸鶏ラーメン食べたんでしょ?ワクワクした?」

ゆとり「ワクワク?そういえば、しませんでしたね。でも凄く完成された味だと思いました」

芹沢「ちょうどいい機会だわ汐見、その表現はバカっぽいけど間違ってはいない。ラーメンの本質は確かにワクワクよ!じゃあ、そのワクワクの正体は一体なんだと思う?」

ゆとり「ワクワクの正体ですか?」

芹沢「麺房なかはらへはもう一度様子を見に行きなさい、あの店の問題がわかれば答えは見えてくる、まだ終わってないんだからね!」

ゆとり「まだ終わってない?」

調理室

ゆとり「夏川先輩、どうですか調子は?」

夏川「ダメ、また1から作り直す」

ゆとり「そうですか」

河上「夏川さん、少し厨房をお借りしてもよろしいですか?」

夏川「スイマセン、ずっと居座っちゃって」

河上「いやいやいいんです。今日は皆さん残業になりそうですし、たまには私が夕食をふるまおうかと思いまして、良かったらお2人も食べて見てください」

夕食タイム

一同「いただきます」

ゆとり「面白う味、これアンチョビを使ってますね」

夏川「スープは味噌ととんこつですか?」

河上「アンチョビの微塵切りとおろししょうがを炒めて臭みを消して、香ばしさを引き出してから、とんこつスープを注いで、みそだれで溶いてます。最後の仕上げにエキストラバージンオリーブオイルをかけ回しております」

河上「このラーメンは昔、私が月替わりラーメンとして考案したものの社長にダメ出しされた品です」

白坂「え?これで?」

ゆとり「どうしてですか?凄い完成度でしたよ?」

河上「その理由を教えてあげましょう」

調理室

ゆとり「バターもう焦げ気味ですけど?」

夏川「あれ?この短時間だと」

河上「さあ完成です。これを食べてみてください」

一同「いただきます」

ゆとり「凄い!凄くワクワクします!

須田「さっきより美味い!アンチョビの臭みが残ってるのに」

白坂「こっちと比べるとさっきのラーメンの方がインパクト弱いですよね。凄く味が賑やかというか」

ゆとり「そうです、アンチョビとバターと味噌ととんこつがどんぶりの中でお祭り騒ぎしてるみたい」

夏川「これってつまり、わざと臭みを残したってことですか?」

河上「これが私の考えたアイディアに対して芹沢社長がダメ出しとして作ってっくれたラーメンです」

須田「考えてみれば、とんこつはわざとアク取りをせずに臭みを残したりするしな」

白坂「煮干しの頭や腸を取らずにわざと苦みを生かすこともありますし」

河上「そうですね。でも味の話しだけではないですよ。濃厚さを目指すためにペーストのようなドロドロなスープを使ったり、ボリューム系では食べきれないほどの量を盛ったり、人によっては、もしかしたら抵抗を感じるかもしれない、そういうスリリングな側面が多くの人を病みつきにする、それがラーメンの持つ魅力でしょう」

ゆとり「抵抗を感じるくらいスリリングな側面」

河上「そろそろ仕事に戻らないと」

夏川の考案した月替わりラーメンを試食する芹沢

河上のヒントを基に作ってみたが、芹沢から中途半端にとっ散らかっているとダメ出しされてしまう

芹沢「あと1日だけあげるわ、もう1度1から作り直し、それで無理ならこの仕事からあなたを下す」

夏川「スイマセンいい年して会社で泣いたりして、でも悔しくて私には社長や汐見みたいなセンスがありませんから、やっぱり無理なんでしょうか?私みたいな人間が芹沢社長のようなラーメン職人を目指すなんて?」

芹沢「夏川、あなた確かに汐見みたいな天才型じゃないわ、凡人よ。人一倍努力してセオリーを踏まえる。でもそこから少しでもはみ出そうとすると途端にダメになるわ。でもね、凡人には凡人の戦い方ってものがあるでしょ?」

夏川「え?」

芹沢「職人にとっての1番の敗北はセンスがないことなんかじゃない歩みを止めてしまうことよ」

麺房なかはら

ゆとり「お客さん、この状態で横ばいですか?」

中原「客も味には満足してくれてるハズなんだよ。なのになかなか他の店ほどの入りにはならなくてな・・・」

店を出て考えるゆとり、そこへ有栖登場

有栖「ゆとりちゃん!」

ゆとり「有栖さん、取材ですか?」

有栖「時間が空いたから、今日はプライベートの食べ歩き、端から店を一回りして、今から締めの麺房なかはらに行くところだよ」

ゆとり「真面目の話し、実際何杯食べられるんですか?」

有栖「だってあそこは昔から、スルって食べられるから」

何かに気づくゆとり

ゆとり「ん?あ!」

客A「美味かったな、ここ」

客B「でも、まだちょっと余裕ない?」

客A「あるある、もう1軒くらい行っとくか」

ゆとり「やっぱりそうだ」

そこに電話が鳴る

中華料理夏川食堂

ゆとり「夏川先輩、汐見です!居るんでしょ?死して屍拾うものなしですよ先輩。死して屍拾うものなし。死して屍拾うものなし」

夏川「うるさい」

ゆとり「やっぱり、会社で社長にダメ出しされて、泣きべぞかきながら居なくなったって聞いて、心配してたんですから。夏川先輩見た目の割にメンタル弱いから見た目の割に」

夏川「なんで2回言うのよ?」

ゆとり「思ったより元気そうで良かった」

夏川は自分の原点見つめ直すために店に来たとのこと

ゆとり「このラーメン薬味に三つ葉がのってるんですね」

夏川「そういえば、そうだね。内はずっと三つ葉だったから、これが普通だと思ってたけど」

ゆとり「いいアクセントになってたんじゃないんですか?ネギに比べて微妙な癖の強さがありますし」

夏川「癖の強さ・・・」

ゆとり「痛っ!え?なんですか?いきなり?」

夏川「ムカつく、結局あんたに絶妙なパス出された気がする」

ゆとり「何?なに、いー」

夏川「でもいいわ、シュートは自分で決めれば良いんだし、おしっ!」

ゆとり「え?ちょっと良くわからないんですけど?」

清流企画

中原「そこの汐見さんから客が不入りな理由は聞いた。内の店は量が少ないってな、本人は言うだけ言ってさっさと帰ってしまったが」

ゆとり「すいません」

中原「問題はそこじゃない、芹沢社長は内の問題点に気づいていたって話しらしいんだが?」

芹沢「ええ!麺房なかはらの1番の問題点は食事満足度の低さ。それは最初から気づいてました」

中原「最初から?」

芹沢「1990年代のラーメンニューウェイヴの頃、そのころ増え始めた女性客を意識して、あっさり上品、ボリューム控えめを売りにされてた。そのころと同じ感覚でやっていれば当たり前の結果です」

有栖「中原さんの本店はオフィスが近くにありますし、ランチだとか飲んだ後の締めの1杯としてなら、あのくらいのボリュームで丁度いいと思うんですけど」

中原「分かっていたのに、どうして黙ってたんだ?」

芹沢「答えは簡単です。中原さんは私をライバルだとおっしゃった、ですから私はライバルに相応しいコンサルティングを提供させていただいたんです。汐見はお役に立ちましたでしょう?」

芹沢「店頭のアピール不足、食事満足度の低さ、彼女が気づいたんですから」

中原「そういうことか、芹沢達美のライバルを名乗るなら、それぐらい自分で気付って言いたかったわけか、全く情けない話しだ」

ゆとり「でも、問題点には気づいたわけで、これから改善策を考えていけば・・・」

中原「いや、内はラーメン博物館から撤退する。内のラーメンはスープと麺とボリュームも含めて全て俺が完璧に計算し尽くしたものだ。今更量を増やすなんて、付け焼刃をしても意味なんてないだろうしな」

ゆとり「そんな・・・」

中原「今回のことは良い勉強になったよ。だが俺は自分のこだわりを捨てる気にはならない」

河上「中原さん、あなたが本気でそう思ってるなら、私はあなたを軽蔑する」

中原「なに?」

河上「あなたは何も分かってない。私が、芹沢社長がどんな気持ちであなたを見てきたかを」

調理室に居る夏川に話しかける芹沢

芹沢「夏川、準備は出来てる?」

夏川「はい」

芹沢「自信はあるののね?」

頷く夏川

芹沢「今から内の社員が考案したラーメンの試食があるんです。中原さんも一緒に如何ですか?」

中原「は?なんで俺が?」

河上「食べて行ってください中原さん」

試食

ゆとり「いただきます」

有栖「三つ葉か、昔のラーメン屋ではよく薬味に使われていましたね」

中原「これはフォンドボーをベースにした醤油味のスープだな」

ゆとり「前より牛骨と牛筋の量も増えてこってりとしたコクもましています。それなのに全然くどさも感じない」

河上「三つ葉の効果ですね。清涼感とほのかな苦みをもった大量の三つ葉が麺を啜る度に絡みついてくる」

ゆとり「スープと三つ葉の個性がぶつかりあって、もの凄くワクワクする味に仕上がってますよ先輩!」

夏川「実家のラーメンが三つ葉を使っていたので、それを参考にしました」

芹沢「合格。たった1日でよく高められたわね」

夏川「凡人には凡人の戦い方がある。社長にそういってもらえたおかげです。私は凡人ですから、空からひらめきが降って来たりはしません。だから、とことん地べたにこだわることにしました」

夏川「自分の中に蓄積されてきた体験や記憶、積み上げてきた努力や試行錯誤、そういうものを足場にして考えて、悩んで、動いて、職人として高見を目指します。社長のおっしゃる通り職人としての一番の敗北は歩みを止めてしまうことですから」

中原「敗北は歩みを止めてしまうこと・・・」

河上「中原さん、あなたはラーメンニューウェイヴの旗手として、ずっとこの業界のスターの道を歩んできた。今回のことがあるまで、ずっと無自覚で居ることが出来た。私はそんなあなたはとても幸せな人だと思う」

中原「幸せ?俺がか?」

河上「私は出した店を3年で潰した男ですよ。それに芹沢社長も」

芹沢「中原さんが名古屋コーチンの丸鶏ラーメンで注目を集めていたころ私はアユの煮干しを使った薄口醤油らあめんで勝負をかけていました。でも、その勝負に勝つことができなかった」

ゆとり「え!?」

芹沢「スープが薄くてコクもパンチもないマズイラーメン。それが私の淡口醤油らあめんに下された評価だった。ある日、ヤケになってラードをぶち込んだラーメンを客に出したら、客はそれを美味いと大絶賛した」

ゆとり「ラードって、そんなもの入れちゃったら」

芹沢「アユの繊細な風味なんか消し飛ぶわよ!でも、客は大喜び。ラードからニンニクを揚げたヘッドに変えて、それから店は大盛況。濃口醤油らあめんはらあめん清流房の、芹沢達美の代名詞になった」

芹沢「私は理想と現実の間で戦っています。そして、それは今も変わってません。嘗て100点満点だった丸鶏ラーメンを今も100点満点だと信じてしがみついてる、あなたは私のライバルなんかじゃないラーメン職人としては寧ろここに居る夏川や汐見よりも劣っています」

中原「俺はもう、そこの彼女のように若くない、だから・・・3日だ。3日後に内の店に来い。そしたらお前達が驚くような美味いラーメン作って食わせてやる」

3日後

中原「さあ食べてみてくれスープと麺は今まだ通り、乗せる具を変更した」

ゆとり「この具は鶏の軟骨焼きに砂肝焼き、生海月それに煮卵と長ネギですね」

有栖「軟骨に砂肝とは珍しいな。だがそれほどボリュームアップはしていないようですが?」

河上「とにかく頂いてみましょう」

実食

夏川「美味しい、麺とスープはもちろんですけど、この具はコリコリした食感で」

河上「いいアクセントになっていて従来の丸鶏ラーメンよりメリハリが効いている気がします」

完食

夏川「なんで?」

有栖「おかしいな?僕が満腹間を感じてくるなんて」

芹沢「その答えは噛み応え、咀嚼回数の違いよ」

ゆとり「咀嚼回数?」

夏川「そういえば、ダイエットしてた時に本で読んだことある。噛む回数を増やした方が満腹感が得やすいって」

芹沢「食べ物をよく噛むとヒスタミンという物質が分泌される。ヒスタミンには満腹中枢を刺激する作用があるの」

有栖「なるほど、だからボリュームを変えなくても、これだけの満足感が得られるわけか」

河上「具を変えることで味の向上と食事満足度の両方をクリアするとは流石です、中原さん」

中原「この3日間、死に物狂いだったよ。だがそれで思い出した。初めて自分の店を持った時のことを、それと勝和軒で修業してた時の気持ちもな。」

中原「だからラーメン職人として、こんな小娘に負けてたまるか」

芹沢「中原さん、私あなたが嫌いでした」

中原「知ってるよ。修行時代散々いびったからな」

芹沢「いいえ、ライバルとして、あなたが時代遅れになっていることを感じて、そういう気持ちも薄れてたのに最近は、今日からまた、改めて嫌いになりそうです」

中原「光栄なこった」

芹沢「ごちそうさまでした」

帰り道

ゆとり「社長」

芹沢「なに?」

ゆとり「さっきのラーメン凄く美味しいですけど、あの食感の強さは万人受けをしないですよね?」

芹沢「そうね」

ゆとり「ワクワクの正体って、そういうことなんでしょうか?」

夏川「どういうこと?」

ゆとり「河上部長も言ってましたよね」

回想

河上「人によっては、もしかしたら抵抗を感じるかもしれない、そういうスリリングな側面が多くの人を病みつきにする、それがラーメンの持つ魅力でしょう」

回想終了

ゆとり「部長の作ったアンチョビラーメンの臭みも、夏川先輩の作ったフォンドボーと三つ葉のラーメンの癖の強さも今日の丸鶏ラーメンの歯ごたえも、その個性がワクワクを生む魅力になっていました。つまり」

芹沢「つまり?」

ゆとり「料理は普通バランスを整えるものですけどラーメンはその逆アンバランスであることがワクワクの正体なんじゃないかって」

夏川「アンバランス」

芹沢「夏川も覚えているでしょ?汐見が内の入社面接に来た時、実践したことよ」

芹沢「あの時汐見は肉だし珍湯麵にベーコンと玉ねぎ炒めを加えてバランスを崩したことで味を高めた」

夏川「じゃあ、あんた最初から答えが分かってたってこと?」

ゆとり「まあ、なんとなく」

芹沢「言語化出来なきゃ意味ないじゃない。ワクワクなんて感覚的過ぎるから、分かってないのと同じよ」

ゆとり「じゃあ、やっぱりそれが答えなんですか?」

芹沢「間違ってはいない。でも、答えの1つでしかない」

ゆとり「え?」

芹沢「そんなとこで止まってるようじゃ、まだまだ未熟!やり直し!」

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