2020年6月8日放送の【行列の女神~らーめん才遊記~】最終話のネタバレです。
らーめん才遊記はテレビ東京で放送しているドラマです。
現在は(2020年6月現在)Paraviでも視聴可能です。
テレビまたはParaviが見れない方やこのドラマに興味のある方はこの記事をご覧になってください。
あらすじ
『清流房』全店舗の近くに、看板メニュー“濃口醤油らあめん”と同じ味を出すラーメン店が出現。しかも『清流房』より値段が安いため、ごっそり客を奪われてしまう。さらに不幸は続き、芹沢(鈴木京香)に「ジャパンフードサミット」ラーメン部門中止の連絡が。明らかにようこ(高畑淳子)の横やり。卑劣なやり方を批判するゆとり(黒島結菜)に、ようこは「ワクワクさせるラーメンを用意できたら撤回する」と言い出すが……。
最終話ネタバレ
今や 世界に誇る 大人気国民食 ラーメン。
そのラーメン業界をけん引する 1人の女性がいた。
そして そんな彼女の傍らで 目覚ましい成長を遂げた 1人の新入社員。
ラーメンの持つワクワクに魅了された 2人の師弟が たどり着く未来とは?
たかじのスタッフ「それでは ただ今より 濃口醤油らあめん たかじ オープンでございます。 よろしくお願いします。本日100円です。 本日のみ100円。」
清流企画
夏川「えっ!?池袋店もですか?」
白坂「えっ そっちもオープン記念 100円?」
須田「で 中野店の客の入りは?」
夏川「部長 やっぱり 池袋店のすぐそばにも濃口らあめん たかじって店が オープンしてます。」
河上「おそらく うちのすべての支店が 同じ状況でしょう。とにかく社長に報告しないと。」
ゆとり「私 行ってきます。」
清流房スタッフA「あぁ 汐見さん。」
ゆとり「社長は?」
清流房スタッフA「今 外に様子を見に。」
濃口らあめん たかじ
たかじのスタッフ「お願いします 100円でございます。 ありがとうございました。 よろしくお願いします。」
ゆとり「社長!」
芹沢「わかってる。 他の支店でも同じことがおこってるんでしょ。」
ゆとり「はい。でも どうして急に こんな…。」
数日後
河上「濃口醤油らあめん たかじのオープン以降 らあめん清流房は 本店 支店ともに売り上げが激減しています。」
芹沢「私のアンテナにも引っかかってこないくらいだったから敵は かなり用意周到に準備を進めてたみたいね。」
須田「オープン記念ラーメン100円で盛り上がるのは初日だけだと思ってたんですけどね。」
白坂「2日目以降はトッピング無料のクーポンを配ったり 大盛り無料サービスをしたりして客寄せしてるみたいです。」
夏川「それだけじゃないんです。今日 偵察に行ったら…。」
ゆとり「ええ 驚きました。」
回想
ゆとり「店名どおり濃口醤油がメインですね。」
夏川「ふざけてる。 明らかに清流房のパクリじゃないのよ。」
たかじスタッフ「濃口醤油らあめん 2丁 お待ちしました。」
夏川「ん? これ 味もうちの濃口醤油らあめんと そっくり。」
ゆとり「ええ。 違いは 鮎の煮干しの 風味がないことだけです」
回想終了
ゆとり「まさか あのレベルでうちの味を再現するなんて…。」
芹沢「そこは問題じゃない。値段が いくらだったの?」
ゆとり「あっ… たしか 700円でした!」
夏川「うちの濃口850円より150円も安いです。」
河上「となると たかじがやろうとしてることは明白です。これは カッコウ戦略ですね。」
ゆとり「カッコウ戦略?」
須田「カッコウって鳥には別のの鳥の巣に卵を産み付ける 托卵って習性があるんだよ。そのカッコウの卵が早くふ化して 本来の巣の持ち主の卵を追い出すと だまされた親鳥に巣立つまで面倒を見てもらえるんだよ。」
白坂「それを飲食店に置き換えた場合 例えば 焼肉店のすぐそばに雰囲気とか 味がよく似てる もっと安い価格設定の焼肉店が出店したら?」
ゆとり「お客さんを取られちゃいますね。」
芹沢「つまり共存共栄は成り立たない。残された道はどちらか一方が その地域を去る。潰し合いよ。」
ゆとり「潰し合い… じゃあ早く何か対策を考えないと! 社長!」
河上「たかじですが中堅の商社が出資して麺獄グループが運営していますね。」
白坂「麺獄って たしか千葉と茨城を中心に展開してるラーメングループですよね?」
須田「流行のニーズに応えて確実に利益を出す 戦略を取ってるとこだな。」
夏川「でもなんで そのまた麺獄グループが らあめん清流房を狙い撃ちするようなやり方で進出してきたわけ?」
河上「それは…。」
芹沢「しばらくは様子見ね。」
須田「えっ?」
芹沢「対策を立てるのは相手の手札を見てから。」
ゆとり「でもそれじゃ対応が後手後手になるじゃないですか。」
そこに電話が鳴る
河上「はい 清流企画です。お世話になっております。あっ 少々 お待ちください。」
河上「社長 ジャパンフードサミットの運営員会からメールを送ったので確認してほしいと。」
芹沢「メール?」
芹沢「ラーメン部門 参加中止?」
夏川「中止? 中止って どういうことですか?」
芹沢「よりによって このタイミングで またやってくれた。あなたのお母さん。」
ゆとり「えっ?」
ゆとり「えっ!?」
須田「運営委員長 橋爪ようこ!?」
運営委員会 会場
ゆとり「卑怯者! 鬼ババァ! 意地悪大魔王!」
運営委員A「き…君は入ってきて早々何を言ってるんだね!?」
運営委員B「というか…誰!?」
橋爪「私の娘よ。」
2人「え~っ!?」
ゆとり「違います! 私の親は ラーメンです。」
芹沢「申し訳ありません!どうしてもと言うので 今日同行させた我が社の社員ですが社員教育以前に 人として 常識に著しく欠けてるものですから。」
ゆとり「私はな この人に ひと言 言ってやらないと気が済まないんですから?」
芹沢「もう話したでしょ。まぁ フードサミットの運営委員長に就任したからといって ここぞとばかりに毛嫌いしているラーメンを排除しようなんて 相当 子どもじみてますけどね 橋爪先生!」
橋爪「日本の食文化を世界に紹介するうえで より トラディショナルなものに テーマをあてたいというだけのこと。ラーメンのようなフェイクフードじゃなくてね!」
芹沢「フェイク?ラーメンは料理として偽物ということですか?」
ゆとり「なんですか!? それ!失礼すぎますよ。」
橋爪「ラーメンっていう食べ物の歴史をひも解けば そう呼ばれて当然だって達美ちゃんなら理解してるでしょ。そもそもラーメンが大衆料理として日本に普及したのは戦後になってから。」
橋爪「食べる側にとっても 作る側にとっても 安くて手っ取り早いからこそラーメンは人気を博した。その実情は日本伝統のそばやうどんが手打ちで作られてきたのに対して ほとんどが機械打ちの麺。」
橋爪「そして本来は焼き豚を意味する言葉なのに今や煮豚が主流となったチャーシュー。これも 醤油ダレのダシ素材にするための店側の都合でしょ。」
橋爪「フェイクにフェイクを重ねて作られてきたものには本物も真実も存在しない。日本の食文化の代表を担わせるような高尚なものには なりえないわよ。」
ゆとり「でも ラーメンは人気があるでしょ!」
橋爪「もちろうんよ。ラーメンはB級グルメの王様。だから それで満足しなさいって言ってるの。だいたい 達美ちゃんも今は自分のお店を守ることに専念した方がいいんじゃなくて?近くにオープンしたお店にお客とられて閑古鳥がないてるそうじゃないの。」
橋爪「たかだか 数百円の値段の差で そんな状況になるなんて…。ラーメンってものの底の浅さをよく表してると思うけど。じゃあ 正式決定が出たら改めて連絡しるわ。じゃあ お疲れさま。」
会議終了後
運営委員A「本当に 今日はありがとうございました。」
橋爪「ごめんなさい もう。」
運営委員A「いえいえ とんでもない。」
運営委員A「あ… じゃあ 先生 我々は失礼させていただきます。」
橋爪「まだ なんか言うことあるわけ?」
ゆとり「ワクワクする。」
橋爪「はぁ?」
ゆとり「芹沢社長のラーメンは ワクワクするの。外国のお客さんが街に ラーメンを食べにいってもワクワクするラーメンと出会えるかどうかは わからない。」
ゆとり「だから サミットには芹沢社長のラーメンが絶対に必要なの!」
芹沢「汐見…。」
橋爪「なら それを証明してみせなさい。」
ゆとり「えっ?」
橋爪「私を ワクワクさせるラーメンを用意できるならラーメン部門の中止は撤回する。期日は10日後。それでどう?」
ゆとり「いいよ。オッケー。全然 余裕。」
橋爪「もし 私をワクワクさせられなかったら ゆとり… あなたは清流企画を辞めて うちに戻ってもらうわよ。それでいい?」
ゆとり「じゃあ 今のはなし!」w
芹沢「なしには しない。その話 受けて立ちます。」
ゆとり「社長!この人 意地悪大魔王なんですよ。」
芹沢「今の条件 私には これぽっちも リスクないもの。あなたを餌に チャンスが拾えるなら乗らない手はないでしょ。」
橋爪「あら… 負けを承知で戦うなんて 達美ちゃんらしくもない。」
芹沢「まさか!ラーメン嫌いをこじらせすぎて ねじ曲がった橋爪先生の根性をたたき直す品 ちゃんとご用意します。」
橋爪「あっ! 毒を盛って私を葬ろうだなんて思わないでね。ラーメン自体 私にとっては 毒になりかねないんだから。」
芹沢「おいしすぎて 驚きのあまり くだばっていただけたら 私にとって 万々歳です。」
ゆとり「意地悪大魔王が2人…。」
らあめん清流房
夏川「生醤油油鶏そば お待たせしました。」
安本「店員さん。」
夏川「はい。」
「このラーメン いまいちだよ。作り直してくれ。」
夏川「あの…。」
安本「これじゃ 醤油の風味が最大限に引き出されてない。丸鶏スープの温度を もう2℃上げて 生揚げ醤油と合わせるといいよ。」
安本「さぁ さぁ さぁ!」
夏川「社長!」
芹沢「来る頃だと思ってたわ。」
安本「お久しぶりです 芹沢社長。いや あの頃のように 達美さんと呼んだほうがいいのかな。」
ゆとり「えっ?」
清流企画
芹沢「どうぞ。」
安本「懐かしいな。フッ… 10年ぶりか。」
白坂「部長 あの人は?」
河上「安本高治。 麺獄グループの代表で濃口醤油らあめん たかじを仕切る人物です。」
須田「なんで そんな男がここに?」
安本「相変わらず ご活躍のようですね。ところで 元社員が遊びにきたんですからお茶くらい出してくれてもいいんじゃありませんかね。」
ゆとり「元社員?」
夏川「たかじの代表が うちの?」
芹沢「10年ぶりに絡んできたうえに今日は何しにきたの?」
安本「リサーチですよ。他の支店はともかく 下にある本店は月替わりラーメンで まだ客を呼べていますから。らあめん清流房を全店潰すための策を練っていかないと。」
河上「安本くん 君は…。」
安本「河上さんも そこにいる社員さんたちも身の振り方を考えといたほうがいい。後生大事の鮎の煮干しにこだわったのが君の敗因だよ。」
安本「達美さん。君が手がけている店も 仕事も すべて僕のターゲットだ。あのときの恨みは晴らさせてもらう。」
芹沢「とことんあきれた人ね あなたは。」
安本「じゃ 今日はこれで。」
その後
芹沢「お疲れ。」
一同「お疲れさまです。」
ゆとり「あの 社長。教えていただけませんか?社長と今日の安本さんの間に何があったのか。」
夏川「そうですよ。なんで元社員が あんな うちを目の敵にしてるんですか?」
河上「社長 みんなに話しても?」
芹沢「お願い。」
河上「あの安本高治は10年前 らあめん清流房品川店の店長だったんです。」
夏川「品川にも支店があったんですか?」
ゆとり「そういえば。」
回想
橋爪「前におたくのお店の支店 突然閉めちゃったことあったでしょ」
回想終了
河上「そう。 閉店の理由は彼が引き起こしたトラブルでした。当時 彼は30代。まったくの未経験で この業界に飛び込んできたようでしたが その味覚と調理センスは芹沢社長をも うならせるものでした。」
河上「品川店の店長を任され 店は大繁盛。社員としても料理人としても社長は 彼を高く評価していたんです。」
回想
安本「社長 この間 話した件なんですけど。鮎の煮干しを使うのをやめるか 使うとしても 量を減らしたほうが いいんじゃないかって話です。原価率を考えれば 他の安い煮干しに変えたほうが。」
芹沢「それはこの間 却下したでしょ。」
安本「えぇ 鮎の煮干しは高知の水産会社で委託生産してもらってる特注品だから 大量注文しないと値段が上がるし」
安本「そうなると 淡口醤油らあめんの値段にも影響が出るって。」
芹沢「それに注文を減らすと水産業者の作業工程が変わって 煮干し自体の質が落ちる可能性があるの。」
安本「なら 淡口醤油らあめんをメニューから外すのは?実際 濃口と淡口は売り上げ比率 9対1 くらいです。そもそも 濃口は鮎の繊細な風味を生かしきれてないんですから 利益を考えたら絶対そのほうが。」
芹沢「こだわりなのよ 私の。前に話したでしょ。私が淡口で勝負をかけたこと。そして それが うまくいかなかったこと。」
芹沢「今の濃口の欠点も人気のない淡口を出し続けるビジネスとしての いびつさもよくわかってる。でも 私はお金もうけのために ラーメン屋をやってるわけじゃないのよ」
回想終了
河上「社長の鮎の煮干しへのこだわりは 皆さんもすでにご存じですね。当時は 安本もその件については 納得したと思っていたのですがね。」
夏川「違ったんですか?」
河上「彼は こともあろうに品川店での鮎の煮干しの使用を勝手にやめてしまったんです。安価なカタクチに変え 在庫の鮎の煮干しは 他の業者に横流しまでしていました。」
白坂「横流し!?」
河上「有栖さんがうちに来て 品川店の味が変わってしまったと 教えてくれるまでは その裏切りに まったく気がつきませんでした。」
回想
有栖「鮎のの煮干しを売りにしておきながら 店舗によって使用をやめて利益をあげる。もし それが事実なら ラーメン評論家として見過ごせませんよ!」
河上「それは誤解ですよ 有栖さん。芹沢社長にかぎって そんな姑息な商売は絶対にしませんから。」
芹沢「有栖さん この件は少しの間 あなたの胸に収めておいて。私が必ず決着をつけるから。」
有栖「それは構いませんけど。いったい 何があったんです?」
河上「安本の仕業であることは明白でしたが 証拠がなかった。 そして…。」
スープをこぼすスタッフ
品川店スタッフ「最初っから作り直しっすね店長。鮎の煮干しのスープ。」
芹沢「白々しいごまかし方したって無駄よ。お客さんの中には 気づいてる人もいるんだから。」
安本「仮に 万が一 この店で鮎の煮干しを使ってなかったとして 何が問題なんです?」
芹沢「どういう意味?」
安本「店は相変わらずの大繁盛。文句をつけてくるのは ラオタだとか フリークの連中だけ。淡口醤油らあめんの件で達美さんも わかってるはずでしょ?」
安本「自分のこだわりなんて ほどんど客には伝わってないんだってね。 そろそろ お引き取りいただけませんかね?明日の営業用のスープ 1から作り直すぞ。」
品川店スタッフ「はい。」
芹沢「必要ないわ。」
安本「はぁ?」
芹沢「品川店は 今日限りで閉店。」
品川店スタッフ「そんな無茶な。」
芹沢「経営上の理由よ。たった今 そう決めたの。」
安本「出ていけって言うんですか?この僕に?」
回想終了
河上「安本は我が社を去り 品川店は閉店しました。社長としては 苦渋の決断だったんです。」
白坂「もしかして…。2人は恋人同士だったんじゃないですか?」
夏川「はぁ? アンタ何 ワケわかんないこと言ってんのよ!」
白坂「だって 社長のこと 達美さんって呼んでましたし社長の態度も。」
河上「昔の話です。」
味惑コーポレーション
難波「麺獄グループさんの月替わりラーメンの開発を うちに?」
安本「えぇ ぜひお願いしたいと思いまして。」
福花「麺獄グループさんで自社開発されないんですか?」
安本「効率を考えたまでのことです。それから うちに出資してくれてる企業は ジャパンフードサミット2020の協賛スポンサーでもありましてね。」
難波「たしか 芹沢社長がラーメン部門の統括ですよね?」
安本「それも今 暗礁に乗り上げています。ラーメン部門自体 なくなる可能性が高いようで。うちなら その空いた枠に味惑さんをご紹介することが可能です。御社は ラーメン以外の料理事業も展開しておられますから。」
福花「それは 確かのに魅力的なお話ですが。どうだ 難波?」
難波「ずいぶん こだわっておられますね。清流企画さんに。」
安本「打倒 芹沢達美のタッグを組むというのは悪い話じゃないでしょう?」
何処かの公道
難波「天下の公道で何しけた顔して突っ立っとんねん。」
ゆとり「難波さん。 あっ 間違えた。」
難波「なんや 違ったって。」
ゆとり「この間のコンペで私にボロ負けした難波さん。どうして この人と一緒にいるんですか?」
難波「わざわざ言い直してくれて ありがとう。」
ゆとり「痛い 痛い 痛い! いった~!」
難波「私がどこで 誰とおろうが私の勝手や。まぁ さっき清流房の様子も見てきて閑古鳥鳴いとったのは最高に笑えたけどな。」
ゆとり「悪趣味…。この安本って人のせいで うちは大変なんですから。」
安本「ずいぶんな言い草だね。誰かが栄えれば 誰かが衰えるのが商売の宿命だ。清流企画のコンサルで行列を作った店にすぐそばに潰れた店だって あったかもしれないだろ?」
ゆとり「それは…。」
安本「今度は清流房にその順番が回ってきたというだけの話さ。あとは こちらの味惑コーポレーションさんと手を組んでトドメをさせば終わりだよ。」
ゆとり「難波さん まさかたかじの依頼を?」
難波「安本代表 うちは まだ正式に依頼をお引き受けするとは決めたわけではないので第三者に口外されては困ります。」
安本「失礼」
ゆとり「どうしてですか?どうして そこまで芹沢社長を目の敵にするんですか。」
安本「気に食わないからだよ。利益を追求をしようとせず 理想にしがみついて あげく パートナーだった僕を あっさり切り捨てた。」
安本「その判断が間違いだったって思い知らせてやるのさ。今さら鮎に煮干しをやめたとしても 値下げ勝負なら資本力のあるバックがついてる うちにはかなわない。」
ゆとり「あなたには 芹沢社長が鮎の煮干しを使ったラーメンにかけてきた情熱が理解できないんですか?」
安本「うまいラーメンだよ。ただ それだけさ。」
難波「なんや いろいろ こじらせとる男やな。」
清流企画
夏川「待ってたわよ汐見。」
ゆとり「夏川先輩 他のみんなは?」
夏川「社長と部長は 各支店の見回り。それより さっさとこっち来て。悔しいけど アンタが 一番頼りになるんだから。」
芹沢と河上
河上「このままでは全店閉店ということに なりかねません。基本的な味はうちのほうが勝ってるんです。一時的にでも 値下げをして客足を取り戻したほうが。」
芹沢「私が考えてる対抗策 そっちじゃないわよ 河上さん。ただ 踏ん切りがつかなくてね。」
河上「それは… まさか例の?」
芹沢「賭けの要素も強いでしょ?私だって 怖いのよ。あの時から いいものなら売れるなんてナイーブな考え方 捨てたのよ。だから余計に 自分の作ったラーメン また お客様に受け入れてもらえなくなるんじゃって思うと どうしようもなくね。」
河上「社長…。」
清流企画 調理室
ゆとり「あっ 社長。」
芹沢「何してるの あなたたち。」
夏川「たかじに対抗するための方法を考えてたんです。うちの看板 濃口醤油らあめんを改良できないかって。」
河上「濃口の改良? それは…。」
芹沢「鮎の煮干しをやめて 価格競争しようって話?」
ゆとり「いえ 鮎の煮干しの旨味と風味を最大限に高めて たかじには真似できないラーメンを作ろうって話です。」
白坂「社長の職人としてのこだわりを無視するようなこと 俺たちがするわけないじゃないですか。」
須田「そうですよ まあ理想は鮎の要素は高めつつ 煮干しの使用率を減らして 原価率を下げられる方向ですけど。」
夏川「うちにケンカ売ったこと 逆恨みのパクリ野郎に後悔させてやりましょう 社長。」
ゆとり「それから…これも。」
河上「汐見さん…。」
芹沢「何これ。」
ゆとり「今の危機を乗りきったら 私 会社を辞めて母のところへ戻ります。私が 跡を継ぐ代わりにフードサミットのラーメン部門は絶対になくさないように頼みますから。」
芹沢「あなたね…。」
ゆとり「別に料理教室の校長の席に収まってもラーメンとお別れするわけじゃないですし。それよりも私は世界中の人たちに芹沢社長のラーメンを食べてもらいたいんです。」
芹沢「バカバカしい。あなたたちの やってること 考えてること 何もかも無駄よ 無駄。」
ゆとり「無駄って…。」
芹沢「汐見 私に橋爪ようこをワクワクさせるラーメン 作れないとでも思ってるの?自分を犠牲にして私を助けようだなんて100万年早いのよ。」
ゆとり「でも 相手は意地悪大魔王ですよ。それに今の状況じゃ…。」
芹沢「あなたたちも そうよ。鮎の煮干しの風味を最大限まで高めた 濃口醤油らあめん。 私が今まで 考えてこなかったわけがないでしょ!」
夏川「えっ? それじゃ…。」
白坂「もうレシピができてるってことですか?」
須田「だったら なんで今まで…。」
芹沢「説明は あと。とにかく あなたたちのおかげで 吹っ切れたから それだけは礼を言っておくわ。」
河上「社長 では…・」
芹沢「勝負は 1週間後。その日から… 反撃に転じるわよ!」
味惑コーポレーション
難波「社長 らあめん清流房が臨時休業に入ったらしいです。」
福花「たかじに 追い込まれてるってことか?」
難波「こちらが例の調査報告書です。」
福花「なるほどな。」
難波「清流企画を潰すのは やっぱり うちの役目ですね。」
橋爪クッキングスクール
橋爪「もしもし。」
ゆとり「お母さん? 約束してたワクワクさせるラーメン。準備ができたから 明日食べにきて。」
橋爪「へ~っ お店が臨時休業に入ったって聞いたから いよいよ追い込まれたかと思ったけど。」
ゆとり「芹沢社長が作った すごいラーメンだよ。これを食べたら きっとお母さんも ラーメンが好きになる。」
ゆとり「私 これからも ずっとラーメン業界で…。清流企画で働いていくから。」
清流房のページを確認する橋爪
橋爪「新メニュー濃口醤油らあめん・解」
濃口醤油らあめん たかじ
安本「ここにきて 値上げだと?」
下平「ええ。ラオタやフリークもネットで騒ぎだして 濃口醤油らあめん・解 とんでもない勢いでバズってます。」
安本「なんなんだ?その『解』っていうのは。」
下平「7年前 清流房がデパートの創作ラーメンフェアに参加したときに大好評だったラーメンらしいです。」
安本「大好評?」
下平「はい。フェアの開催が 3日間だったため 食べられなかったフリークも多く 伝説のラーメンになってたようで。」
安本「芹沢…。こんな隠し球を用意してたなんて。」
下平「でも 1000円ですよ?いくら うまくたって この辺に立地で その値段は…。」
1週間後
レポーター「わぁ…すごい行列ですね。ご覧ください。この季節はずれの雪の中この大行列!伝説のラーメン 濃口醤油らあめん・解 を食べようと 恐ろしい勢いでお客さんが押し寄せています。」
安本「まさか ここまでとは…。」
下平「逆に うちの店はガラガラです。他の支店でも全部。」
安本「クソッ…。」
有栖「うわ~っ… これは休憩になるまでは入れませんね。」
安本「アンタは?」
有栖「お久しぶりです 安本さん。よかったら ご一緒しませんか? 伝説の醤油らあめん・解を食べに。」
清流房
芹沢「汐見 上がるわよ。」
ゆとり「はい。」
ゆとり「濃口醤油らあめん・解 お待たせしました。」
有栖「じゃ いただきます!」
橋爪「いただきます。」
有栖「これは… うわさに たがわずというか 聞きしに勝るというか…。」
亮二「アハハ… 全部 食べちゃったよ ようこさん。 ハハハハ…。」
有栖「このラーメン 今までの 濃口醤油らあめんと違って 濃縮された鮎の風味と旨味が 強烈に打ち出されている。」
安本「まさか…ダシだけではなく醤油ダレにも鮎を?」
芹沢「そのとおり。骨を抜いた鮎の身と 腹ワタ丸ごとすり潰してから醤油とみりんで煮て 1週間寝かせた鮎醤油ダレ。」
ゆとり「この1週間は醤油ダレの熟成期間だったんです。」
橋爪「工夫は それだけじゃないわ。香味油は…蓼油ね。これは 鮎の塩焼きに添えられる 蓼酢からの着想。」
橋爪「すべてを鮎まわりでまとめながら 鮎の煮干しダシの複雑さ 鮎ダレの濃厚さ 蓼油の鮮烈さを緻密に構成して 一本調子にならない 立体的な味わいを生み出してる。」
有栖「味もさることながら 盛り上げ方も見事です。フリークたちが抱いていた 伝説のラーメンのイメージを利用して ネットで反響を呼び 更に1000円の壁を突破させる 大胆なイメージ戦略を取るとは…。」
安本「イメージ戦略? 1000円の値上げが?」
河上「値上げは 高級感の演出です。高いからには それだけの値打ちがある。そういう期待感を抱かせるために」
夏川「もちろん ラーメンなんかに1000円は高いっていう声も 根強くありますけどね。」
芹沢「ラーメンは フェイクから生まれた B級グルメ。橋爪先生がおっしゃったことは 決して 間違いではありません。それでも これだけの味を 生み出すことができるんです。」
芹沢「汐見… あなた この間 ラーメンのワクワクの正体はアンバランスだって言ってたけど…。」
ゆとり「はい。でも それは 答えに1つにでしかないと社長に言われました。」
芹沢「当たり前でしょう。アンバランスであることを目的にしたラーメンなんて あるわけないんだから。」
ゆとり「えっ?」
芹沢「アンバランスは あくまで結果。じゃあ その結果を生み出す原動力は何? 自分の個性をもっとラーメンに出したい…。もっとおいしい… もっと新しいラーメンを生み出したいっていう職人の想いでしょ?」
ゆとり「ラーメンのワクワクの正体は…。」
橋爪「フェイクから真実を生み出そうとする 探究心と情熱…。そういうことかしらね。」
ゆとり「お母さん…。」
橋爪「ワクワクするラーメンだったわ 達美ちゃん。フードサミットのラーメン部門も… よろしくね。」
芹沢「ありがとうございます。」
亮二「ゆとり やったな!」
有栖「じゃあ 僕も…。 あっ! やっぱり あと1杯… あと3杯だけ おかわりを。」
河上「だめですよ。 このあとの営業に差し支えますから。」
有栖「明日も来ます。」
安本「ラーメンへの情熱か… 気に食わないな まったく。 確かに すごいラーメンだ。 それは認めるよ。だからって 商売の決着が ついたわけじゃない。」
安本「世の中には 味より 安さがいちばんって客も たくさんいるんだからね。」
清流房女性スタッフ「社長!事務所のほうに 味惑コーポレーションの方がいらっしゃってるんですが…。」
安本「フッ…。ほ~ら うちの救世主のご登場だ。」
清流企画の事務所
難波「先日の麺獄グループさんのご依頼 我が社といたしましては 謹んで お断りさせていただくことに決定いたしました。」
安本「断る? いったい どうして!?」
難波「そりゃ 金を取りっぱぐれると困りますから。清流企画さんも もう きっちり調べあげてるんと違います?」
白坂「確かに… 少し調べたら すぐにわかりましたよ。麺獄グループの実情は。」
須田「ブームに飛びついて一時的に繁盛はしても すぐ 苦しくなって また 新しいブームに飛びつくの繰り返し。」
難波「そういうわけで 打倒 芹沢達美は いずれ 我が社のほうで 成し遂げますんで…。」
安本「待ってくれ! あと少しで 清流房は潰せるんだ!おたくが 手を貸してさえすれば きっと…。」
芹沢「無理よ。自分の力で新しい味を創造できない あなたに うちを潰すなんて 絶対にね。」
河上「オリジナリティの欠如 それが敗因でしょう。君は確かに味覚も 調理センスも優れていた。」
河上「しかし それは すでに存在するラーメンを模倣したり改良する才能です。1から新しい味を 作りだす才能ではなかった。」
夏川「だから 濃口醤油の味も うちと そっくりにして 月替わりラーメンも味惑に頼ろうとしたんでしょ。」
ゆとり「でも 濃口醤油らあめん・解はたかじでは再現不可能です。コストの面でも 調理技術の面でも。」
ゆとり「安本さん あなたは 嫉妬してたんじゃないですか。自分が持ってない 芹沢社長ののオリジナリティと情熱に。」
安本「ああ そうだよ。だから 僕は芹沢達美を否定したかった。君のこだわりを否定して 勝ちたいと思ってた。だから あのときも 今回も…。」
芹沢「知ってたわ そんなこと。だから 私は あなたに再起を図る道を残したの。あなたが 自分の才能と短所に向き合ったまま ラーメン作りを続けてほしいと思ったから。」
安本「いいさ 月替わりなんて必要ない。うちのラーメンは 700円。1000円のラーメンとはすみ分けができるんだ。勝負は まだついてない!」
芹沢「勝負は もうついてるの。このあと カタクチイワシを使った 濃厚煮干し麺 700円を投入して残りの客も根こそぎ取り返す予定だから。」
安本「えっ?」
芹沢「10年前のあなたの提案やっと実現させてあげられるわ。あなたが作るより安く ずっとおいしくね。」
安本「ちょ… 達美さん いくらなんでも それは…。」
芹沢「あいにくだけど 別れた男にかける情けはあっても 敵に回った男にかける情けなんて 持ち合わせてないのよ。 私は。」
難波「怖っ。」
ゆとり「怖いです。」
夏川「味方でよかった。」
その後
河上「濃口醤油らあめん たかじは 全店舗が撤退しました。本店 支店ともに 売り上げも戻ってきましたよ。」
夏川「よっしゃ~!ざまあみろだわ!大勝利よ 大勝利!」
白坂「終わってみたらあっけなかったっすね。」
須田「出資してた会社から切られたのがトドメだったらしい。うちに絡まず 別の場所に開店してたら もう少し長続きしてたかもしれないのにな。」
ゆとり「社長 勝負に勝ったのに うれしそうじゃないですね。」
芹沢「あなたたちが はしゃぎすぎ。今回 勝てたからって 次回勝てる保証はないのよ。」
芹沢「今日行列ができてても 明日は 閑古鳥が鳴いてるかもしれない。それはどのお店も同じ。潰れて消えていく店は明日の自分たちの姿かもしれない。みんな 肝に銘じておいて。」
一同「はい!」
芹沢「フードサミットの会場設営の下見に行くから あなたも ついてきなさい 汐見。」
ゆとり「行きます! いってきます!」
夏川「いってらっしゃい。」
道中
ゆとり「社長 私 1つ 思いついたことがあるんです。」
芹沢「なに?」
ゆとり「フードサミットが開催される3週間はラーメンは全部日替わりで提供しませんか?アイディアは もう山のようにあるんです。」
ゆとり「もちろん 仕込みとか 材料費とか 現実的な面でクリアしなきゃいけないことも あるんですけど でも それが うまくいったら 」
ゆとり「今度は 清流房の新しい支店で365日 毎日 日替わりで ラーメンを出すんです!難しいですかね やっぱり?」
芹沢「汐見 それ…。ワクワクるすわね。」
ゆとり「はい! ワクワクします!」
芹沢「詳しく話詰めましょう ラーメン屋で。」
ゆとり「はい!」
ゆとり「ラーメン ラブ!」
お疲れ様です。