ドラマダイジェスト

夜ドラ「作りたい女と食べたい女」(第17回)

あらすじ

恋愛について矢子さん(ともさかりえ)と相談するようになった野本さん(比嘉愛未)。春日さん(西野恵未)は疎遠だった父からの強い口調の電話に意気消沈。その様子を野本さんは目撃するのだが、心配を口に出せない。思わず大量のドーナツ生地を作っていると、ベランダから春日さんと南雲さん(藤吉夏鈴)の声が聞こえてきて…。

第17回ネタバレ

@DESIGNPRO

yako『IDありがとうございます。 矢子可菜芽です。』

野本『連絡ありがとうございます。 野本ユキです。』

yako『ユ。さんは、ユキちゃんの ユだったんだね。』

野本『そうなんです! yakoさんも、下のお名前かと思っていたら、名字だったんですね』

yako『そうそう! 珍しいでしょ』

野本「ハハッ…。」

野本「これが 再来週末に いったん あげたいということでしたよね。」

佐山「ですね~。 ひ~ 結構 量ありますね~。」

野本「はい。」

佐山「てか 来週って バレンタインじゃないですか?」

野本「ん? ほんとだ。水曜ですね。」

佐山「約束してるんですか?」

野本「約束?」

佐山「春日さんと。」

野本「いや 特別 それはしてないですけど…。」

佐山「え~ チョコとか あげないんですか?」

野本「チョコ… 確かに。」

佐山「私が ここからここまでやって…。」

野本「あっ でも それって 告白みたいにとられないですか?」

佐山「え? あ~ まあ 従来の文化としては そうですね。」

野本「そうですよね…。」

佐山「え?」

野本「佐山さん 怖いんです そんなことするの。」

佐山「う~ん。」

野本「関係が変わるのが怖いんです。」

佐山「あ~。」

野本「このままでいたい気持ちと そうじゃない気持ちがあるんです。」

佐山「あ~ そう… まあ そうですよね~。 でも カジュアルに? その 日頃の感謝を込めてとかでも 全然いいんじゃないですか?」

野本「カジュアル?」

佐山「うん。 チョコだぞ みたいな。」

野本「いや 無理ですよ そんな…。」

佐山「そうですよね 無理ですよね。」

三上「すいません。」

佐山「はい。」

野本「あ はい。」

三上「あの ここなんですけど…。」

佐山「はい。」

三上「変更があって…。」

佐山「変更。」

三上「全体的に ポップアップの仕様を もっと増やしたいみたいで。」

佐山「そうですか 増やしましょう 増やしましょう。」

スーパー

春日「藤田さん お疲れさまです。」

藤田「春日さん お疲れさまです。 あっ ちょっとごめんね。 すいません。 あの シフトのことで相談したくて。」

店長「あ じゃあ 奥のほうで。」

マンション

駐車場

(着信)

春日「もしもし。」

父『あ~ 電話ぐらい出ろよ。 何度 電話したと思ってんだ。 お前さ もう帰ってこい。 母さん おばあちゃんの世話で大変なんだ。 お前も そっちで 大した仕事もしてないんだろ。 結婚もせずフラフラして。 もういいだろ。』

春日「用件はそれだけ?」

父『冷たいな。 どれだけ母さんが大変だと 思ってるんだ。 おばあちゃん 認知症も出てきてるし とにかく毎日 大変なんだよ。 彰は見舞いに来たぞ。』

春日「彰は手伝えないの? 近くに住んでるんだから。」

父『あいつには酷だろう。 働き盛りだし子供も生まれて大変なんだよ。 そんな時に介護なんて かわいそうだろう。 それに 彰は長男なんだから。』

春日「あなたは? お母さんにばっかりやらせて。 自分の親なんだから。」

父『お前は 家族を助けたいって 気持ちがないのか! どうしてお前は 昔からそうなんだよ! おばあちゃんや母さんが どれだけ お前の面倒を見てきたと思ってるんだ!』

エントランス

(ドアの音)

野本「あ 春日さん おかえりなさい。」

春日「野本さんも 今お帰りですか。」

野本「うん。」

エレベーター

野本「春日さん…。」

春日「野本さん…。」

野本「あ ごめん 何?」

春日「あ いえ 明日 駅前のスーパーで 鶏肉が安いみたいです。」

野本「あっ そうなんだ。」

春日「はい。 まとめ買いして冷凍しても いいかもしれないですね。」

野本「ほんとだね。 いいこと聞いた~。」

廊下

春日「では。」

野本「あ うん じゃあ。」

野本宅

タブレット『ドーナツって あの』。 『そう あの』。 『え~』。 『なんでも 今 若い人を中心に 再流行しているそうで こちらのお店も 開店から数時間で完売してしまうほど 大人気だそうです』。 『どんなドーナツなんだろう』。 『揚げたてで~す!』。 『わあ すご~い!』。 『出来たてのドーナツです』。 『おいしそう。 じゃあ 早速…』。

春日宅

ベランダ

(ノック)

南雲「こんばんは。」

春日「え どうしたんですか。」

南雲「あっ ずっとベランダに いらっしゃるなと。」

春日「あんまり乗り出すと 危ないですよ。」

南雲「あ はい。 寒くないですか?」

春日「寒いですね。」

南雲「そうですよね…。」

春日「南雲さんは ご家族と仲がいいんですか?」

南雲「え?」

春日「食材を送ってきてくれていたり…。」

南雲「う~ん 仲がいいというか 何というか 私のことが心配なんだと思います。」

春日「そうなんですか。」

南雲「会社辞めたことも知ってるから。 ちゃんと食べてるの? 大丈夫なの? って。 うちって 昔から たくさん食べるのが偉いし 食べてれば健康 みたいな教育の家だったんです。 だけど いつも親が期待するほど 食べられなかったから。 とにかく 私に食べてほしいんですよね。 それがむしろ 私には しんどくて。」

春日「そうですか。 私は逆でしたね。」

南雲「え?」

春日「うちは 弟が長男だからって 何かと優先されていて 弟より おかずを減らされたり 私にとって 十分に食べさせてもらえなかったので。」

南雲「そうなんですか。」

野本宅

野本「はあ… 久々にやってしまった。」

野本『春日さん 夜分にすみません ドーナツって好きですか?(削除)』

野本「明日持っていくかあ。」

春日『おいしかったです。』

南雲『すごいですね。』

春日『野本さんは 東北のご出身なんですが 仙台のおみそを使って』

ベランダ

春日「焼きおにぎりを作ったんです。」

南雲「おみその焼きおにぎりですか?」

春日「はい。」

南雲「おいしそうですね。」

春日「初めて食べました。」

野本「こんばんは。」

春日「あ。」

南雲「あ こんばんは。」

野本「あ…。」

野本宅

野本「すいませんでした。 知らなかったとはいえ 食事に誘ったりして… そういうことだったんですね。」

南雲「いえいえ でも 誘ってもらえるの うれしいんです。」

野本「それなら よかったですが。」

南雲「それにしても こんな時間から作るんですね。」

野本「え。」

南雲「こんなにたくさん…。」

野本「あっ あの… 考え事してたりすると 衝動的に 料理を大量に作ってしまう癖があって…。」

南雲「大量に…。」

野本「そ… そうです。 何か こうやって言うと やばいやつ みたいですね。」

南雲「いやいや やばくはないですけど すごいなって。」

春日「すごいんですよ 野本さんは。」

南雲「あっ ドーナツって どうやって形を作るんですか?」

野本「えっと やり方は いろいろあるんですけど 今日は 手でこねこね 作ってみようと思います。」

野本「まず 4当分に切ります。」

野本「指で 穴を開けて…。 こんな感じ。」

南雲「ドーナツだ。」

野本「こんな感じで どんどん 作っていきましょう。」

2人「はい。」

野本「そして 2本の指で クルクル クルクル…。 そうそうそう。」

春日「これくらいですか?」

野本「あ… もうちょっと 穴は大きくしたほうがいいかも。 膨らむからね。」

春日「はい。」

南雲「どうですか?」

野本「あ~ もうちょっとかな。」

南雲「もうちょっと。」

野本「できました~!」

南雲「すごい!」

野本「山盛りのドーナツって 絵本みたい。 あ 写真撮らなきゃ。 写真 写真。」

(シャッター音)

野本「いいですか。」

野本「ありがとう。」

(シャッター音)

野本「うん いい感じ。」

春日「南雲さん 飲み物なら大丈夫ですか? 何か飲まれますか?」

野本「あ 牛乳はあるから ミルクティーとか作れます。」

南雲「あ じゃあ はい。 いただきます。」

野本「ん~ うん 甘みちょうどいい。」

春日「おいしいです。」

野本「ねえ。」

南雲「ミルクティー おいしいです。」

野本「ほんと? よかった。 あっ。 南雲さん ドーナツ あとで持って帰りませんか? おうちでなら食べられますか?」

南雲「あ はい 1人なら。 いいんですか?」

野本「もちろんです。 明日の朝ごはんとかに。」

南雲「ありがとうございます。 何だか こういうこと すごく久しぶりです。 食べ物を囲んで 人と話すっていうことが。」

野本「そっか。」

春日「もし答えられたらでいいのですが 南雲さんは いつから人と食事をするのが 苦手というか 難しくなったんですか?」

南雲「小学生くらいからですかね。 ネットで知らべたら 会食恐怖症というのがあるみたいで。」

野本「会食恐怖症?」

南雲「小学校の時の居残り給食とかが原因で なる人が多いらしくて。」

野本「ああ 居残り給食って 私たちの頃もあったよね。 次の授業まで 給食下げてもらえない子がいて かわいそうだったことある 怖い先生で。」

南雲「そうです。 それから 誰かと一緒に ごはんに行く時には 食べられなかったら どうしようとか 残しちゃったら どうしようとか いろいろ 不安が止まらなくなるんです。」

春日「それは つらいですね。」

野本「あの 会食恐怖症というのは 私 知らなかったんですけど 病院とかにかかってるんですか?」

南雲「あ… 病院とかは行ってなくて。」

野本「そうですか。」

南雲「病院に行って よくなるなら 一度行ってみるのもいいかも しれないなとは思ってるんですけど。 ふだん なかなか人にも言えなくて 人間関係 うまくいかなくなっちゃうことも 多かったんです。 でも こうやって 飲み物だけでもいいって 食べないでも大丈夫って 言ってもらえるのは すごく心が楽なんだなって気付けました。 今は食べられないですけど 明日 楽しみに食べます。」

野本「よかったです。 あ 春日さんも持っていって下さいね。」

春日「ありがとうございます。」

野本「はい。 ちなみに 何個持っていきますか?」

春日「4… 5個。」

野本「おっ!」

春日「6個。」

野本「6個! アハハッ 結構いきますね。」

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