あらすじ
不動産屋を訪れる野本さん(比嘉愛未)と春日さん(西野恵未)。二人入居可という条件が、家族や建前上結婚を前提としたカップルに限定されていることが多いと知り、げんなりする。野本さんは実家から届いたあずきを調理。2人で同性同士のカップルである自分たちについての思いを話し合う。
第27回ネタバレ
ここさく不動産
野本「あ ここ ちょっといいかも。」
春日「あ そうですね。 でも 徒歩20分ですね。」
野本「あ~ そっか…。 わっ この一軒家 ひろ。」
春日「5LDK… 部屋が余りますね。」
野本「余っちゃうね~。」
金井「こんにちは~。 もし お時間ありましたら 中でご案内しましょうか?」
金井「家探しして どれくらいになりますか?」
野本「2週間くらいです… かね。 まだネットで探しているだけで 内見は行ってないんですけど。」
金井「そうなんですね。 ちなみに住まわれるのは…。」
春日「私たち 二人で住みます。」
金井「ああ なるほど なるほど。 いいですね! お二人は お友達… ですかね。」
野本「そう… ですね。」
金井「そうなんですね~。 いや 僕も学生の時 友達と一緒に住んでたんですけど いいですよね ルームシェア。 ハハハハ。 ちなみに どんなところで 探していたんですか?」
野本「あの 探していたところは…。」
金井「はい。」
野本「こういうところで…。」
金井「失礼します。」
野本「二人入居可能で 一応調べていたんですけど。」
金井「なるほど~。 うん。 ありがとうございます。 この場合のって二人って 家族 親族 それから カップルの方に 限定されることが多いんですね。 ですので お友達同士でとなると ルームシェア可能物件を探したほうが 入れる確率が高いんです。」
野本「じゃあ これ 今 探してるところ 全部 駄目なんですか。」
金井「あ いや 駄目ではないんですけど。 ただ ルームシェア可能で 出してるとこのほうが 確実ではありますね。」
野本「それだと 結構 物件の数は減りますよね?」
金井「実際 そうですね。」
春日「二人入居可能の条件は 家族や親族じゃなくても カップルは大丈夫なんですか。」
金井「そうですね。 ただ カップルにお貸しする場合って 建て前上 結婚を前提とした方を 対象にしているんですね。 あ… 真剣な交際ってところが重要で オーナーさんから よく聞かれるんですよ。 まあ とにかく お二人の場合 ルームシェア可能物件でお探しするのが いいかと思いますので こちらで何件か ご提案させて頂きましょうか?」
道中
野本「探してたところ 難しそうだね。」
春日「はい。 でも 現実ってこうなんだなって 思いました。」
野本「現実…。 あっ 今日このあと 仕事行くって 言ってたよね。 時間平気?」
春日「はい。 帰ってすぐ向かえば 大丈夫です。」
野本「そっか。」
春日「そんなかからないので 2~3時間で済むと思います。」
野本「うん。」
春日「帰ったら また話しませんか。」
野本「うん そうしよう。」
春日「はい。」
マンション
野本宅
野本「はあ…。」
回想
金井「建て前上 結婚を前提とした方を 対象にしているんですね。 真剣な交際ってところが重要で。」
回想終了
(通知音)
母『叔父さんのお米届いてる?』
野本「あ。」
野本『ごめん! 届いてる! ありがとう~』
母『あ、あと、さくらちゃんち、二人目生まれたってよ』
野本「へえ でしかない…。」
野本『そうなんだね!かわいいね』
野本「まずは ゆでこぼす…。」
野本「うん。 やわらかくなった。」
(通知音)
春日『仕事終わりました。 あと30~40分で帰れると思います。』
野本「うん おいしい。」
駐車場
春日「野本さん…。」
野本「おかえりなさい。」
春日「ここで待っていてくれたんですか?」
野本「今 出てきたとこだよ。」
春日「そうですか。」
野本「うん。 行こ。 何か 早く会いたいなと思って。」
春日「寒いのに ありがとうございます。 この距離ですけどね。」
野本「それは そうなんだけど。」
春日「うれしいです。」
野本宅
野本「どうぞ~。」
春日「甘い匂いがしますね。」
野本「あ… そう。 帰ってきてから あずき炊いてたんだ。」
春日「あずきですか?」
野本「うん。 お母さんがね お米と一緒に送ってきてくれて。」
春日「そうでしたか。 あんこって 手間がかかりそうですけど。」
野本「う~ん でも そうでもなかった。 もくもくと煮込んで アクを取っての繰り返しが 結構 リフレッシュになって。 ちょっと いろいろ考えて モヤモヤしちゃってたから。」
春日「あの いろいろ考えてというのは 昼間のことですよね。」
野本「うん。」
春日「私も運転しながら いろいろ考えていました。 今日の不動産屋の方も 悪気があるわけではないですし 私たちも つきあっていることを 伝えたわけではないですが でも 少し傷つきました。」
野本「そうだね。」
春日「あれでは 同性同士のカップルは 真剣なつきあいをしていない ということになってしまいますよね。」
野本「結婚を前提に できないからね。」
春日「はい。」
野本「私たちだって つきあったばかりだけど 真剣に交際してるよね。」
春日「しています。」
野本「うん。 今日 友達って言っちゃってごめんね。 不動産屋さんに聞かれて。 とっさに どうしようって。」
春日「いえ あの状況じゃ しかたないです。 周りに人もいましたし。」
野本「うん…。」
春日「同性婚ができないことや それに関する政治家の発言は ニュースで目にしてましたけど。 こういうところで 自分たちに影響するんですね。」
野本「本当だね。 はあ… 何か疲れたね。 今日。」
春日「はい 疲れました。」
野本「何もやってないんだけどねえ。 何にも進んでないし… はあ 何か落ち込む。」
春日「でも あんこ作りましたよね。」
野本「あ そうだ。 あんこは作った。 食べよっか? あんこ。」
春日「はい。」
野本「うん。 じゃあ…。 あ どうやって食べる? そのまま食べてもいいし アイスか パンもあるし。」
春日「野本さん もしかして あんバタートースト できますか。」
野本「それだ…。 やろうやろう!」
(トースターの音)
野本「焼けた!」
野本「これくらい? もっと?」
春日「たっぷりでお願いします。」
野本「オッケー。 たっぷりね~。」
野本「ん~ おいしい。 糖分が しみわたる…。」
春日「バターの塩味がいいですね。」
野本「あ あとでちょっと アイスとあんこの組み合わせも 食べたいな。」
春日「絶対おいしいですね。」
野本「うん。」
野本「この組み合わせも最高。」
春日「おいしいです。」
野本「ね~。」
野本「あ~ 満たされた~。」
春日「あんこって幸せな気持ちになりますね。」
野本「フフ 作ってよかった。 よし 何かこう やる気が出てきた。 実は さっきね ルームシェアOKのところ 調べ直してたんだ。 少し一緒に見ない?」
春日「はい。 ぜひ。」
野本「うん。」
春日「野本さん。」
野本「ん?」
春日「何か問題が解決したわけではないですが おいしいものって 何だか少し 前向きな気持ちにさせてくれますね。」
野本「そうだね。」
春日「というか 野本さんの作るものには そういう力があるような気がします。」
野本「なんてうれしいことを 言ってくれるの 春日さん…。」
春日「本当にそう思っているので。」
野本「うう… ありがとう…。」
春日「物件 見ましょうか。」
野本「あっ… そうだね。 ここなんだけど…。」