ドラマダイジェスト

夜ドラ「作りたい女と食べたい女」(第28回)

あらすじ

不動産屋での一件を相談した野本さん(比嘉愛未)は矢子さん(ともさかりえ)からLGBTフレンドリーの不動産会社を紹介してもらえることに。野本さんも春日さん(西野恵未)も、まわりの人たちが持つ結婚や離婚についての考えに触れ、あらためて自分たちの関係について思いをめぐらす…。

第28回ネタバレ

マンション

野本宅

野本「じゃあ こことここの内見 問い合わせてしてみようか。」

春日「そうですね。 野本さん。」

野本「うん。」

春日「今度また 不動産屋に行く時なんですが 担当の方に 私たちが つきあっていることを伝えるかどうか 決めませんか? 今日は急だったので 話せなかったんですが。」

野本「うん… 春日さんは どうしたいとかある?」

春日「できれば 正直に話した上で 家探しをしてもらえたら そのほうがいいなと思いました。 友達であることを装うのが ちょっと…。 どうしたらいいか よく分からなくて。 野本さんと私は 友達同士ではないじゃないですか。」

野本「それは そうだね。」

春日「野本さんは どう思いますか?」

野本「私は… どうかな。 少し不安も あるかも…。」

春日「そうですか。 その 不安というのは つきあっていることを伝えた時に 相手にどう思われるか 分からないということですか?」

野本「そう かな。」

春日「そうですよね。 そもそも 隠さなきゃいけないと思ったり 不安に感じたりすることが おかしいですよね。 私たちがつきあって 一緒に暮らすことになって それはすごく うれしいことなのに。」

野本「うん。 そうだね。 ほんとに そうだね。」

野本『矢子さん こんばんは。 相談したいことがあって』。

野本「え…! タコ焼き器?」

矢子『ユキさん、今度みんなでタコパしませんか?』

野本「タコパ…!」

矢子『タコ焼き焼きたいと思って、衝動買いしちゃって』

野本「ハハッ。」

通話

野本『そう! トーク画面 開いてたところだったから 思わず』。

矢子『ハハッ そっか。 タイミングよかったね』。

野本『ほんとに』。

矢子『でも 家探しは苦労するって 友達の同性カップルにも聞くよ』。

野本『ああ やっぱり。 そっか そうですよね』。

矢子『それで前にね 友達が LGBTフレンドリーの 不動産会社で家探したって言ってた』。

野本『えっ… そんな不動産屋さんあるの!?』

矢子『うん。 当事者が相談に乗ってくれるんだって。 場所どこだっけな…。 よかったら聞いてみようか?』

野本『あの ぜひ教えてほしい! すごい助かります』。

矢子『全然。 こういうことは助け合わないとさ』。

野本『ありがとう』。

矢子『まあ でも 同性パートナーと 住みたいってだけなのに? こういう不安を感じたり 労力割かなきゃいけない社会に 怒りしかわかないけどね 私は』。

野本『た… 確かに』。

矢子『じゃ とりあえず友達に聞いてみるね』。

野本『お願いします』。

矢子『オッケー』

野本『はい』。

@DESIGNPRO

三上「あ… ちょっと先 行ってもらって…。 お疲れさまです。」

一同「お疲れさまです。 これ 回ってきたんですけど 皆さん書けたら また 営業部に回してもらってもいいですか?」

野本「分かりました。」

三上「よろしくお願いします。」

野本「は~い。」

佐山「え~ それは何ですか?」

野本「あ 牧野さん 退職されるから その色紙です。」

佐山「えっ 牧野さん 退職しちゃうんですね。」

野本「パートナーの方の仕事の都合で 関西に行かれるみたいですよ。」

佐山「えっ そうなんですね~。 私の周り 最近 結婚ラッシュで 来週末も結婚式なんですよ。 出費がきついです。」

野本「重なると大変ですよね。」

佐山「はい。 え… 見たい。 ふ~ん…。 やっぱり 結婚って いいものなんですかね~。 何か 結婚したらゴールみたいな感じ あるじゃないですか。 空気として。 そんないいものなんですかね…。 安心するんですかね。」

野本「う~ん… どうなんですかね。」

佐山「私は結婚しなくてもいいなとか 思っちゃうんですけどね~。 私 これ先 書きますね。」

野本「あ はい。 お願いしま~す。」

佐山「はい。」

スーパー

店内

藤田「ああ 春日さん ご苦労さま。」

春日「お疲れさまです。」

藤田「あ~ 今日ここ いっぱいなんだよね。 いったん 倉庫に置いてもらおうかな。」

春日「分かりました。」

倉庫

藤田「春日さん 私ね 離婚するよ。」

春日「え… 話したんですか?」

藤田「うん。 話した。 そんなに すんなりは いかないと思うけど でも 何て言うか 開いちゃった。」

春日「開いた?」

藤田「そういう扉っていうか 道っていうか 穴っていうか。 とにかく開けちゃったから もう戻せない みたいな状態になってる。」

春日「それは 大丈夫なんですか?」

藤田「全然大丈夫じゃないよ。 夫の両親にも伝わっちゃってるからね。 でも だから 覚悟は決まったかな。」

春日「そうですか。」

藤田「春日さん いつになるか分からないけど 第二だか 第三だかの人生 始めるよ 私。」

春日「すごいです。 藤田さん。 応援してます。」

藤田「ありがとう。 はい。」

@DESIGNPRO

休憩室

(通知音)

佐山「はあ…。」

回想

佐山「結婚したらゴールみたいな感じ あるじゃないですか。 私は結婚しなくてもいいなとか 思っちゃうんですけどね~。 そんないいものなんですかね…。」

回想終了

執務室

佐山「野本さん。」

野本「はい。」

佐山「途中まで一緒に帰ってもいいですか?」

野本「あ はい。」

道中

佐山「そうなんですね。 家探し。 お二人で住むから大変 ってこともありますよね。」

野本「あ うん。 そうですね。」

佐山「私が全然知らないような苦労とか… そりゃ ありますよね。」

野本「え?」

佐山「あ いえ… さっき結婚の話 したあとに はっとして。 私 結婚できなくてもいいなとか 結婚したらゴールなのかなとか 自分が結婚できる立場だから 言えることだったなって。」

野本「ああ…。」

佐山「あの 野本さんのことを 全然何も考えないで 口にしてしまって。 すいませんでした。」

野本「あ ううん。 うん… でも そうだね。 話してくれてありがとう。 本当のこと言うと 少しさみしい気持ちにはなってました。」

佐山「本当に ごめんなさい。」

野本「あ いや そうじゃなくて。 あの 結婚が できる立場とか できない立場があると こういうふうに 佐山さんは そっか 結婚できるんだよなとか 私は できないんだなとか 考えてしまうのが。」

佐山「はい。」

野本「結婚したくないとか したいとか そういう話を 当たり前に 同じ立場で 佐山さんとできないんだなって。 それは ちょっと さみしいなって。 あと 最近 家探しのことで いろいろあったのもあって。 そういう気持ちにはなってました。」

佐山「何か むかついてきますね。」

野本「え?」

佐山「何で日本はできないんですかね。 同性婚。 はあ… おかしいですよね。」

野本「そうですね…。 行きましょう。」

佐山「すいません。」

野本「でも 佐山さんが結婚とか気にしてるって 少し意外な感じがしました。 気にならないかと思った。」

佐山「いや… 自分でもそういう人間だと思ってたんですけどね。 意外とやっぱり 真に受けちゃって。」

野本「社会の圧的な…?」

佐山「う~ん そうです。 20代のうちに結婚しなきゃ終わりみたいな。 ばかみたいだけど。」

野本「そっか。」

佐山「あと 去年 姉に子どもが生まれたんですけど そしたら次は 私 みたいな 親からの圧力もあったりして。 ほんとは そういうのもあって アプリも始めたんだと思います。」

野本「そうだったんですね。」

佐山「はい。」

野本「うん… でも 分かる。 私も親からの圧 全然あるし。」

佐山「ほんとですか?」

野本「うん。 いい人いないの? とか。 ちょっと 人と出かけるって言うと えっ どんな人? とか。 まあ 親も安心したいんだと 思うんですけど。」

佐山「めちゃくちゃ分かります。」

野本「私は今は 親が期待していたのとは 違う道を進んでるだろうから。 女性とつきあってることも 言ってはないんですけど。 でも そういう圧って いろんなところからありますよね。」

佐山「そうなんですよ。 あ~ もう何なんですかね。 こういうふうに生きるのが正解とか ないはずなのに 何でこんな… 圧力に押しつぶされそうになりながら 生きなきゃいけないんですかね。」

野本「そうですね。」

マンション

野本宅

野本「ごちそうさまでした。」

春日「ごちそうさまでした。」

野本「はあ~ おなかいっぱい。」

春日「片づけ 私やります。」

野本「ううん 一緒にやろう。」

春日「はい。」

(通知音)

野本「ちょっとごめんね。 矢子さんだ。 あっ。 ねえ 不動産屋さんの情報 送られてきたよ。」

春日「助かりますね。」

野本「ね~。 一緒に見よ。」

春日「はい。」

野本「これだって。」

春日「当事者が運営 プライバシーへの配慮。 既に安心感がありますね。」

野本「うん ほんとだね。 へえ…。 あ これ。 『正直に話せる安心感』って。 いいね。」

春日「そうですね。」

野本「ねえ 春日さん この間 友達みたいに装うの よく分からないって言ってたでしょ?」

春日「はい。」

野本「あれ すごく素直で そのとおりだなって思ったんだ。 春日さんが そう言ってくれなかったら 何となく 居心地の悪さとか 圧力みたいなものを感じながら そのまま進めちゃってたかもって思って。 だから 言ってくれてありがとね。」

春日「あの 今日 職場でたまに会う方が 離婚をすることになるかもしれないと 話してくれたんです。」

野本「え… あ うん。」

春日「その方は とても前向きなように 見たんですけど 実際のところは すごく大変なんだろうなと思います。」

野本「離婚って… 大変だよね きっと。」

春日「はい。 私たちとは また 全然 状況は違うんですけど 自分の正直な気持ちを 大事にして生きるのは すごく 難しいことですよね。」

野本「うん。 本当にそう思う。 だから 矢子さんみたいに 相談に乗ってくれる人がいるのは 心強いね。」

春日「はい ありがたいですね。」

野本「うん。 じゃあ 早速 この不動産屋さんに 問い合わせしちゃおうか?」

春日「しちゃいましょう。」

野本「うん。」

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