ドラマダイジェスト

夜ドラ「作りたい女と食べたい女」(第6回)

あらすじ

野本さん(比嘉愛未)は、実家から届いた郷土料理の“はらこ飯”を春日さん(西野恵未)と一緒に食べることに。楽しそうに地元の話をする野本さんを見て、春日さんは「野本さんが本当は帰省したかったのではないか」と心配になる。2人は、それぞれの「作ること(料理をすること)」「食べること」についての思いを語り始め…。

第6回ネタバレ

スーパー

母☎「今年は年末どうするの? 帰ってくるの?」

マンション

野本宅

野本「春日さんはご予定あるんでしょうか クリスマス。 あ あるとは思うんですけど…。」

春日「ないです。」

野本「え?」

春日宅

春日「いただきます。」

野本宅

野本「あっ いいな これ。」

(チャイム)

野本「は~い。 よいしょ。」

配達員「こんにちは お荷物です。」

野本「ご苦労さまです。 何だっけ? あ~ はらこ飯! 立派なつだ~。」

母『年末のこと連絡してね』。

野本『はらこ飯届いた! ありがとう~いいやつだね! あと年末のことだけど 今年はやっぱり帰りません。』

野本「よし!」

(通知)

母『ちょっと奮発しちゃった。 年末忙しいの?』

野本『仕事は例年通りだけど 今年はいいかなって 前に話した春日さんと過ごすつもり』

母『その子は帰らなくもていいの?』

回想

春日「私は 帰りませんね。 …というか こっち出てきてから 10年くらい ずっと帰ってないが 正しいです。」

回想終了

野本『春日さんも帰らないんだって。 だから大丈夫』

母『わかった。 でもユキも遊んでないで、そろそろいい人見つけないとね』

野本「あっ 春日さん こんにちは。 今 大丈夫ですか?」

春日☎『はい。』

野本「突然なんですけど はらこ飯 食べませんか?」

スーパー

春日「はらこ飯… ですか?」

マンション

野本宅

野本「はい シャケの炊き込みごはんの上に イクラのっけて食べるんですよ。 今日 実家から届きまして。」

スーパー

春日「なるほど。」

マンション

野本宅

野本「あっ でも今日は約束してないから…。 あっ すいません。 また後で お裾分け持っていきますね。」

春日☎『いえ 食べにいきたいです。 野本さんさえ よければ。』

野本「本当!? あ~ よかった。 じゃあ 何時頃 来れそう?」

スーパー

春日「今 スーパーで買い出ししているので 6時には伺います。」

マンション

野本宅

野本「うん 分かった。 じゃあ待ってます。 はい。

野本「じゃ~ん。」

春日「美しいですね。」

野本「ね~。」

春日「高価なものを頂いてしまうので 代わりに お酒買ってきました。」

野本「あ~ 悪いね。 ありがとう。 ごはん もうちょっとで炊ける頃だから 待ってて下さいね。 春日さん 何飲む?」

春日「私は これを。」

野本「オッケー。」

春日「はらこ飯って 宮城県の郷土料理なんですね。 知らなかったので さっき調べました。」

野本「そうなんです! この時期にしか食べられない 贅沢なごはんなんですよ~。 ありがとうございま~す。 じゃあ こっち。 開けていいですか?」

春日「どうぞ。」

野本「仙台にはね おいしいもの たくさんあるから 春日さんにも食べてほしいな。 三角揚げっていう 分厚いお揚げとか知ってます? あとね 笹かまも有名で いろんな味があって。 帰省する時は いつも買って帰るんですけど あっ じゃあ いただきます。」

春日「野本さん 本当は 帰省したかったんじゃないですか?」

野本「え?」

春日「もし 私に気を遣ったなら…。」

野本「あっ 違うよ。 …本当に帰らないでいいと思ったの。 最近ちょっと 親の圧力すごくて。 結婚とか 相手いないのかとか そういうのの。 春日さんとごはんを食べたかったのも 本当だよ!」

野本「私がしたいようにしてるだけだから 全然 気を遣ってなんかないです。」

春日「そうですか…。」

野本「逆に つきあってもらってるは 私の方で…。 春日さんこそ 気を遣ってないですか? 私が ただ作りたいものを 作ってるだけで…。」

春日「野本さん。」

野本「ん?」

春日「初めてお会いした頃 野本さんに 『食べてほしい』って言ってもらって 私 本当にうれしかったんです。 私の実家 田舎で 父や弟だけ おかずが一品多くて 不出来なものや小さいものは 母や私の分とか そういう家だったんです…。」

春日「十分 食べさせてもらえなかったんですよね。 …それが 私の帰らない理由です。」

(ごはんの炊ける音)

春日「あっ ごはん炊けましたね。」

野本「あっ いいの! ちょっと蒸らした方がいいから。 それより話の続きを… あ! でも 話したくなかったら 無理しないでね…。」

春日「いえ 聞いてほしいです。 その… うちは 保守的な家庭で 幼い時は それでも 何とも思ってなかったんですけど…。 成長するとともに気付き始めました。 だんだん食事に差をつけられることや 父が弟に分けたものを私がねだると 叱られること。」

春日「弟は遊んでるのに 私だけ 台所の手伝いをさせられること…。 それから 家族の中に どうして序列があるんだろうと 疑問に思うようになりました。 私は いつも おなかをすかせていて ある晩 眠れずに ベッドから抜け出したんです。」

回想

(物音)

父「何だ まだ起きてたのか。 早く寝ろよ。」

回想終了

春日「母の料理だって いつもおいしかったのに その時食べたトーストは 本当においしくて…。 どうして おいしいものを こんなみじめな気持ちで 食べなければならないのか おいしい食べ物は 世の中にたくさんあるのに 私は この場所で食べ続けるのか…。」

春日「そう思いました。 それで 父を なんとか説き伏せて 県外の大学へ行って 地元で就職しろと言われても戻らず こっちで就職して 今に至ります。 一回も実家へは帰ってないです。 家を出てからは とにかく これまでの分を取り返すように 食べていたと思います。」

野本「今も…。 今も そうなんですか?」

春日「いえ 野本さんと出会って 『食べたい』を受け入れてもらえてからは ずいぶん前より楽です。」

野本「そっか…。 話してくれて ありがとう…。 ごめん… 私が泣くことじゃないのに…。 (泣き声)」

春日「どうぞ。」

野本「あっ すいません。 (泣き声) 私… 作った料理を 春日さんに食べてもらいながら… 押しつけになってないかなって ずっと思ってたんです。」

春日「なってないですよ。」

野本「うん。 私もね 春日さんにね…。」

春日「はい。

野本「ただ『作りたい』を受け入れてもらえて うれしかった。」

春日「そうですか。」

野本「これまで 自分の好きなことやってるだけなのに 『家庭的でいいね』とか 『いい奥さんになるね』とか 全部 家とか男のためみたいに言われて… すごく嫌だったから。」

春日「そうだったんですね…。」

野本「私は 春日さんに出会えて 本当によかったんです。」

春日「それは 私も…。」

(おなかの鳴る音)

(笑い声)

野本「おなか減ったね。 ごはん食べよっか。」

春日「はい。」

野本「わ~ きれいに炊けてますよ。」

春日「本当ですね。」

野本「あっ そうだ! 急いで おみそ汁も作りましょう。」

春日「はい。 私 ごはん混ぜましょうか?」

野本「お願いします。」

春日「何ですか それ?」

野本「前に実家から送られてきた仙台麩です。 こうやって おみそ汁に入れても おいしいんですよ。」

春日「はい。」

野本「はい。 う~ん いいにおい。」

春日「では お願いします。」

野本「はい。」

2人「おお~!」

野本「は~い。 あっ もうちょっとかけます?」

春日「お願いします。」

野本「は~い! お~。」

2人「いただきます。」

野本「おいしいね。」

春日「おいしいです。」

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