ドラマダイジェスト

月曜ドラマシリーズ 「ちゅらさん2」4話「それぞれの出立(んじたち)」

あの恵里が、おばあが、ゴーヤーマンが、お茶の間に戻ってくる!好評を博した連続テレビ小説「ちゅらさん」の続編!

4話ネタバレ

月曜ドラマシリーズ 「ちゅらさん2」4話ネタバレ

さてさて 訪問看護という仕事に 出会ってしまった 恵理は 島の人達のためにも もっと もっと 勉強しようと

東京に出てくることになりました。

そして 恵達も 東京で もう一度 音楽を始めることに。

さあ 『ちゅらさん2』が始まるよ

一風館
サロン

奈々子「…聞いて 聞いて。『ゆがふ』の店長さんね 布団とか ベッドより いすに座って 寝るのが 好きなんだって…。」

真理亜「うぅ~っ…。」

恵理「「あぁ 真理亜さん おはようございます!」

一同「おはようございます!」

真理亜「なんか このアパート… 人口密度が高いんだけど…。」

恵理達「すみません。」

真理亜「いいんだけどさぁ。」

容子「あんたも文句 言う割りには 絶対 食事には おりてくるもんねえ。」

奈々子「そういえば そうですよね 真理亜さん 居なかったことない。」

真理亜「うるさいわね。 こんなに うるさくされたらね 仕事になんか ならないわよ。」

柴田「真理亜さん 実は ここでの食事 かなり 楽しみにしてるんです。 私 知っています。」

真理亜「何よ それ?」

柴田「管理人さんに『明日の朝食は 何ですか?』って 聞いてらっしゃいましたよね。 私 目撃してしまいました。」

恵理「え… そうなんですか?」

奈々子「なんか かわいい…。」

和也「僕と一緒さ!」

文也「そうだねぇ。」

容子「でかした 柴田君。」

柴田「ありがとうございます。」

テーブルをたたく真理亜

真理亜「うるさいわねえ! 私はね 部屋で 独りで 仕事してるからね 食べるだけが 楽しみなのよ。 悪いの?」

一同「寂しい…。」

いやいや『一風館』は にぎやかだねえ。 毎日が 楽しさおうさぁ

真理亜「ほっといてよ!」

それに 比べ…

古波蔵家

恵文「はぁ~ あ~…。 寂しいねえ…。 何かね…。」

ハナ「情けないねえ。」

勝子「だからねえ しっかりしなさい 文ちゃん!」

恵文「そんな事 言われてもさぁ…。 なんか こう… 仕事をしようという 意欲が わかないねえ。」

勝子「仕事をしよう という意欲なんて 一度も 見たことないんですけどね。」

恵文「う~ん…。 はぁ~ もう 寂しいなあ…。」

ハナ「そろそろ 来るよ。」

恵文「ん?」

島袋「おはようございます! 島袋です。 朝ご飯 いただきにきました!」

(一同笑い)

島袋「あれっ? どうしたんですか?」

恵文「いや いや…。 座って食べなさい。」

島袋「ありがとうございます。」

勝子「島袋君 悪いねえ。 また 恵尚が迷惑かけて…。 お金は ちゃんと返すからね。」

島袋「いや 何おっしゃってるんですか。 私は 古波蔵家の息子のつもりで いるんですから…。」

ハナ「そうね? じゃ いいね?」

島袋「いや『じゃ いいね』って おばぁ。 それと これとは 別だよね。」

ハナ「冗談さぁ…。」

まぁ 沖縄は 沖縄で 相変わらず 何とか やっておりますです。 さてさて 東京組の 新生活でありますが…

北栄総合病院

奈々子「村田さん 川越さん 紺野さんの3軒。 自転車で回ります。 ちょっときついけど その分 時間のロスが少なくて 少しでも 長く 患者さんと居られるから…。」

恵理「はい。 私 自転車 得意です。」

奈々子「道順も 大丈夫?」

恵理「はい!」

恵理は 念願かなって 訪問看護科で 働き始めました。 まだ 見習いさんかねえ…。 でも 楽しそうな いい顔してるねぇ 恵理!

文也君も 仕事と勉強のスタート。 大変だねえ。 でもうれしいさ おばぁは…。 チバリヨ 文也君!

恵達は たくさんの音楽に触れて 勘を取り戻すために 音楽スタジオで 働くところから 始めました。 恵達らしいねえ。

そして 祥子ちゃんも 元の職場に 復帰いたしました。 古波蔵家は この病院には お世話になってるねえ

北栄総合病院

ガラスのぶつかる遥

文也「ちょ…ちょっと! 大丈夫?」

遥「ハッハハハ…。」

文也「どうしたの?」

遥「あ いや 別に…。 どう 勉強のほうは?」

文也「お陰さまで 何とか。」

遥「あぁ よかった よかった。」

文也「あ… 行ってる?『ゆがふ』どうなの? それで…。 (人気のないところに引っ張られる)な… なに…?」

遥「言ってないよね? 誰にも 言ってないよね? とくに あなたの奥さんに?」

文也「言ってないよ。」

遥「よかった…。 言ったら どうなるか 分かってるよね 上村? 分かってるよね。」

文也「ええ。」

村田家

恵理「ありがとうございました。 酸素飽和度は98パーセントですね。 正常ですよ。 じゃ 次は お背中 当てましょうね。」

川越家

恵理「はい… 伸ばしますよ。 大丈夫ですか? このリハビリを 朝と夕方 10回ずつ やって下さいね。」

道中

奈々子「ちょっと 待って!」

恵理「あっ…。 え?」

奈々子「こっち…。」

恵理「あ…。 すみません。」

紺野家

恵理「はい おわりました。 このまま もまずに 3分ぐらい 押しておいて下さいね。」

(ノック)

真知子「どうぞ。」

渉「じゃ 出かけてくる。」

真知子「いってらっしゃい。」

恵理「いってらっしゃい。」

道中

奈々子「どうしたの?」

恵理「…ああ いえ。 ここの ご主人って 何されてる方なんですかね?」

奈々子「大学の先生だったかなあ… 経済学か 何かの…。 何で?」

恵理「あ… いえ…。 奥さん 今は 安定してるけど 慢性心不全だし 今の体の状態を 一緒に 見ていてもらったほうが いいと思うんですけど…。 ふだんは お二人なんだろうし…。」

奈々子「うん…。 看護を始めると 必ず 出かけちゃうのよね。 でも せんさくはしない。」

恵理「…はい。」

一風館
管理人室

島田✉『という訳で 街も食事も そして 演奏も何もかも すばらしい日々です。 足りないのは みづえさんだけだ。」

島田✉『ただ一つだけ 気になって しかたないんだが 恵理ちゃん達が来てから『一風館』で 何か面白い事が 起きてないだろうか…。 そこに いられないのが とても残念です。』

サロン

恵理「なんか いいね 恵達…。 やっぱり あんたは そういうのが 似合うよ ね?」

祥子「うん。」

恵達「姉え姉えに 褒められてもなあ。」

恵理「何 それは?」

恵達「…ありがとう。」

恵理「あれ… 真理亜さんは?」

容子「『ゆがふ』に 行っちゃった。 今日は 独身同盟の日だって。」

恵理「え?」

容子「真理亜ちゃんと 遥ちゃんと 静子さんと 飲むんだって…。」

文也「え?」

柴田「仲間に 入れてもらえないんです 独身同盟の日は…。 入っても 冷たい視線で 追い返されますよ。」

奈々子「私も 一度あった。 なんか 怖いですよね。」

柴田「怖いですよね。 私も 追い返されたんですけどね なんか 節分の 鬼のようでした。」

(笑い声)

柴田「はっ…。」

止めに入る容子w

容子「しっ。」

静止を振り切る柴田w

柴田「い… えい! …似ている! はあ~。 あれは中学1年の節分の日だった。 寒い日だった。 外は吹雪。 …でも 遊びたい盛りの僕達は 友達のうちに 集まっていた。 男の子が3人 女の子も3人 その中に 僕の大好きな 千寿子ちゃんが いたの…。」

柴田「楽しかった…。 だが 今日は節分だから 豆まきを しようということになった。 豆まきには 鬼が必要だ。 ぞの時… 僕の愛する千寿子ちゃんが こう言ったのだ。『やっぱりさ 鬼は 柴田君だよねぇ。 顔… お面に似てるしさ』あ~ハアハア…。 恋が終わった瞬間だった。 でも 僕は 鬼を全うしようと… 演じきろうと思った。 楽しそうに 僕に豆をぶつける 千寿子ちゃん。 うう~っ。」

柴田「僕は 鬼の お面の下で 泣いた。 しょせん 僕は鬼だ! ピエロだ! それで いい。 千寿子ちゃんが 楽しそうなら それで いい。 そして 僕は 窓を開けて『鬼は外』の声とともに 窓の外に飛んだ! 2階だという事を 忘れて!」

恵理「ええ~っ!」

柴田「雪が積もっていて ケガをしないで 済んだ。 あの節分の 夜の空気に 似て…。」

容子「ない…。」

柴田「えっ?」

容子「だから 全然 似てないって。」

柴田「はい すみません…。」

恵理「いやぁ 久しぶりで 感動したさぁ。」

文也「ある意味 泣けたね。」

柴田「そうですか…。」

和也「柴田 イエ~イ!」

ゆがふ

静子「なんか 恰好いいねえ 今どきの 男の子はね…。」

真理亜「ちょっと 静子さん 何 考えてるの? もしもし?」

真理亜「もしもし?」

遥「…いや 違います。 そんなんじゃないんです。」

兼城「え?」

遥「いや…。 ハッハハハ…。」

静子「ねえ 多恵子ちゃん。 みんなで 一緒に飲まない? どうせ ほかには お客さんなんか 来ないんだしさ…。」

兼城「(せきばらい)」

静子「アッハハハ…。 ごめんなさい。」

兼城「いえいえ もう…。 俺も 一緒に飲んで いい?」

遥「あ そうですね。 飲みましょう。」

真理亜「え?」

静子「なんか いいねえ。 合コンみたいでね。」

遥「楽しい…。」

帰ろうとする真理亜を捕まえる静子w

静子「さあ~ 飲もうねえ!」

遥「真理亜先輩もね!」

静子「『帰る』なんて言わないの!」

真理亜「離して!」

そして

静子「あ… そうか…。」

喜屋武「はい。 ま なんか 東京かなと思って 沖縄から出てきたんですけど 東京来て 自分のやりたい事を 見つけようかなと思ったんです。」

平良「うん…。 でも 全然…。 見つかったのは バイトしかないし。」

多恵子「であるよね 私も…。」

玉城「みんな どうなふうにして 見つけてるのかなぁ…。」

兼城「である訳か…。 やりたい事ねえ…。 難しいよね。」

遥「そうですよねえ。」

静子「何 言ってるの! いいのよ いいの。」

喜屋武「『いい』…?」

静子「そう いいのよ。 それで いいの。 あのね… 自分のやりたい事なんて そんなに簡単に 見つかるものじゃないのよ。 今 それがないからって そんなに 落ち込むことないの。 そんなものはね 一生かかって 探せば いいの。 分かる?」

喜屋武「はあ…。」

静子「大体ね 自分が 何になりたいか なんて 答えをね 子供のうちに出せっていうほうが 間違ってるのよ。 …分かる? 大事なのは 探し続ける事なのよ いいのよ 何歳になったって…。 ねえ そうでしょ 店長!」

兼城「え… はい。」

遥「ですよね。」

静子「そうなのよ。 みんな まじめすぎ 難しいとか ダメだとか そんな事 全然 思う必要ないの。 これだと思ったら そこから 始めりゃ いいの。 恵理ちゃんって子がいるんだけど 君達と同じ 沖縄の出身で その子は メチャクチャよ。『これが やりたいんです』『はい やります』…。 それの連続。 まぁ 周りは大変だけどさ でも そういうのは 楽しいと思うよ。」

一風館

恵理「(くしゃみ)」

ゆがふ

静子「だからさ 元気 出しなさい! ちゃんと 胸張って! ほらっ いい男だよ! 3人とも…。 多恵子ちゃんだって かわいいし だから もっと 堂々と 顔を見せていきなさい! 分かった? うん?!」

多恵子「はい。」

喜屋武「ありがとうございます。 なんか 勇気が出てきました。」

平良「はい ありがとうございました。」

静子「何 言ってるのよ。 いつでも おいで。 ね!」

玉城「はい。 何か うれしいな 田舎の おばぁに 怒られてるみたいで…。」

多恵子「そうだよね。」

静子「『おばぁ』…。 あ… あれっ? どうして こんな事に なっちゃったんだろう…。」

喜屋武「俺たち そろそろ 失礼します。」

玉城「おやすみなさい。」

平良「ありがとうございました。」

兼城「いつでも おいでよ! いや~ 感動的だったねえ。 さすが 静子さん。」

遥「はい。」

静子「褒めないで。 お願い!」

兼城「…え?」

静子「なんで…。 いつの間に 私 説教してたんだろう…。 なんで?」

真理亜「ん? いいじゃん 別に…。」

静子「よかないよ。 よくない。 だって 合コンだよ。 私 そんな つもりじゃなかったんだからさ。」

真理亜「どういうつもりだった訳?」

静子「『どういうつもり』って…。 あ~ もう… 嫌だ…。」

さてさて 恵理は ついに 訪問看護を 1人で 任されるようになりました

北栄総合病院
訪問看護科

聡子「いい? まぁ あなたも 看護師としての キャリアもあるし 島の保健室もしてた訳だから 私ね 基本的には あなたは この仕事 向いてると思ってる。」

聡子「明るいし 人から好かれるし よく動くし めげないし…。 でもね 今までしてきた仕事よりは 責任 思いんだよ。 現場には 医師は 居ないんだから たくさんの事を 自分で判断してなくちゃ いけない仕事だから…。 分かるよね?」

恵理「はい。」

聡子「あと… 最初に言っておくけど お年寄りの方が 多いから 残念だけど 亡くなる方もいる。 死に直面することが 多いと思うが 悲しむのは もちろん 大切だし 当たり前だけど ダメージを 受けすぎないこと…。 ほかにも あなたを 待ってる人がいる訳だからね あなたの事を…。 分かるわね?」

恵理「はい。」

紺野家

恵理「よし 間に合った…。 こんにちは 上村です!」

(ノック)

渉「じゃ 出かけてくる。」

真知子「いってらっしゃい。」

恵理「あの…。」

真知子「何?」

恵理「本当は ご一緒に…。 手伝っていただかなくても いいですけど 見ていただいたほうが いいと思うんですけど… 必ず お出かけに なってしまいますよね。 あ… すみません。 余計な事 言いましたね。 すみません。」

公園

一風館
グアテマラ

容子「なるほどね…。 詳しくは 分からないけど 看護のやり方とかね 見てたほうが いざっていう時にね…。」

恵理「そうなんですよ…。 何でかなあ。」

真理亜「人 それぞれじゃないの?」

恵理「…ん?」

真理亜「あんたはさぁ すぐ これは こうあるべきだとか きめつけすぎだからね。」

恵理「はぁ…。 確かに 真理亜さんの言うとおり 私は そういうふうに 考えてしまうところ あると思うんですよね…。 でもですよ 人 それぞれだっていうのも 分かるようになってきた つもりなんです。」

容子「ほう 成長してるねえ。」

恵理「はい。 夫婦にも 夫婦の数だけ 種類があるって いうか… そうだと思うし。」

容子「うん。」

恵理「はい。 …ただね ただね 真理亜さん」

真理亜「ん?」

恵理「命に かかわる事に関しては そんな 人 それぞれで いいんですかね? こうしたほうがいい。 こうするべきだって… あると思うんですよね。」

真理亜「あぁ…。 う~ う~…。」

容子「いいね。 いいね 恵理ちゃん。 いいよ。 うん うん うん。 はい。 はい。」

真理亜「慰めるなって…。」

(ノック)

容子「はい どうぞ!」

真理亜「ちょっと 誰の部屋だと思ってるのよ。」

遥「こんばんは!」

容子「こんばんは。」

真理亜「お~う。」

恵理「遥さん 珍しいさ。 どうぞ どうぞ。」

遥「お邪魔します!」

容子「あぁ どうも ありがとう。」

真理亜「だから…。 ああ…。 いい。 座って。」

遥「はい。」

真理亜「(ため息) どうした?」

遥「いや あの~ 真理亜さんに ちょっと 話があって…。」

容子「じゃ 私達は 失礼しようか?」

恵理「そうですね。」

遥「いえ いえ いいんです。 居て下さい。」

容子「本当? よかった。 そうして下さいって言われたら どうしようかと思っちゃった。」

恵理「ですよね。」

真理亜「だから… あ そうだ 何?」

遥「はい。 真理亜さんは…。」

真理亜「え?」

遥「どうして 恋をしないんですか?」

真理亜「え?」

容子「いい質問だねえ。 すばらしい。 何で?」

真理亜「『何で』って…。」

遥「ごめんなさい。 どうしても 聞きたくて…。」

真理亜「あ そうか…。 …最後の恋を しちゃったんだ 私は。」

遥「『最後の恋』…?」

真理亜「何で そんな…。 もう 何年も前の話だけどさ 私 好きな人がいたのね 編集者でさ 私の担当でね。 私… もう ず~っと 好きでさ。 でもね 手が届かない人だと 思ってたんだよね。 何ていうか 私なんかとは 違ってさ 幸せに生きてきた人っていうのか 目なんか キラキラしてて 私のにも 優しくしてくれて… 励ましてくれて…。」

真理亜「その言葉は 信じられたんだよね。 一緒にやってた 一つの仕事が 終わってね。 私 告白した『好きだ』って…。『ずっと好きだった』って告白したの。 彼にはね 付き合ってる人がいた。 なんか 噂では 聞いたことがあったんだけど でも 私…『それでも いい』って言ったんだ。 そう思った…。」

真理亜「彼は… 受け入れてくれた。 …うれしかった。 もう ほんのちょっとでも 会えれば うれしくて…。 もう 会うだけで 私は ドキドキして…。 でもね 会って 別れるのが つらくて…。 会った瞬間から もう 別れる時の事 考えて つらくて 泣きそうになった。」

真理亜「でも やっぱり 会ってる時は 楽しかったなあ。 本当の自分で いられるような 気がした。 …ただね 私「好きだ 好きだ』って 会う度に 言っててさ しつこいくらい…。 電話でも『好きだ 好きだ』って…。 寝られないの。 一晩中 ず~っと 彼の事 考えているの…。 寝られないの。 今 何してるのかな…。」

真理亜「私の知らない人と会ってるのかな。 電話したいなあ…。 でも そんな時に電話しちゃったら どうなるんだろう…。 彼の声が 困った声だったりしたら きっと 耐えられない。 電話 かかってこないかなって…。 夜中に かかってくる訳ないのに。 電話の前で 一晩中 ひざ抱えて 座ってた。」

遥「その人とは どうなったんですか?」

真理亜「うん。 まぁ… 彼は 前から つきあってる人と結婚した。 申し訳なさそうに 私に言ったんだ。『ごめん 楽しかった』って…。『ありがとう』って…。 私ね… その時… 死のうかなって思ったの。 …うん 思ったんだ。」

真理亜「彼に会えないなんて 耐えられないと思ったから…。 でもさ そうすると あの楽しかった事が 彼にとっては 全部 嫌な思い出になっちゃうんだなって…。 そう思って… やめたよ。 私ね… 彼に 何度も言ったの。『こんなに 人を好きになるのは 絶対に 最初で 最後だ』って…。 何度も言ったのよ。 …うん。」

遥「だから もう 恋はしない?」

真理亜「うん。 …その言葉 ウソにしたくないからさ。」

恵理「今も 好きなんですか?」

真理亜「うん。 好きだね。 …大好き。」

容子「じゃ あれだね… 恋をしないんじゃなくて ず~っと してるんだね あんたは…。」

真理亜「ハハハ…。 まぁ… そうかもね。 泣くな! バカ…。」

恵理「すみません。 でも 私… その気持 分かります。」

遥「すごいな なんか…。 そこまで 人を好きになったこと ないのかもなぁ…。」

真理亜「なんで…。 いいじゃん 別に…。」

遥「私… ガード 堅いから…。 自分の弱いところとか 見せるの 苦手だし…。 ただ ここんとこ 真理亜先輩と 独身同盟とか言ってたんですが やっぱり 寂しくて『ちょっと いいなあ』って思ってた人 いるんですけど… 何か 言えなくて…。」

真理亜「バカ…。」

容子「え… どんな人?」

遥「はい。 私… 医者が みんな どうなのか 分からないけど 一日中 人の事ばっかり 考えるでしょう。」

恵理「うん。」

遥「それも 結構 プレッシャーになって…。 何ていうのかなぁ。 一日のうちに ほんの少しでいいから 自分の事を考えてくれる人が いたら いいなあって思って…。 わがままなのかも しれないけど…。」

真理亜「そうか…。 で 何? そういう人がいた訳だ?」

遥「はい。 何か ほっとするなって…。 笑顔が かわいくて…。 全然 いい男とかじゃないんですけど 和むっていうか 癒されるっていうか…。」

容子「ほ~っ…。」

恵理「ふ~ん。」

遥「あ… でも 何となく 覚めました。 恋では ありませんでした。 はい。 失礼しました。」

真理亜「ん?」

恵理「え?」

容子「はぁ?」

遥「…本当に。 だって いつでも 会えるし。 その人の顔 見て ほっとしたければ いつでも…。」

容子「『いつでも』?」

遥「はい。 それよりも もっと 自分が 相手の事を考えて 眠れなくなるような恋がしたい。 私のは 恋ではありませんでした。 要するに クマの縫いぐるみが 欲しかっただけなんだ。 ハッハハハ…。」

容子「いいの その結論で?」

遥「はい!」

ゆがふ

兼城「う~ん…。 ん?」

文也「どうしたんですか?」

柴田「…店長?」

兼城「いや… 今 何か こう ふ~っと…。」

2人「『ふ~っと』?」

兼城「ふ~っと 幸せが 通り過ぎた ような気がしてよ…。」

文也「はぁ?」

柴田「『幸せが』…?」

兼城「うん…。」

柴田「そ… それ 大変でしょう。」

兼城「こんな小さくない!」

柴田「あ そう…。」

紺野家

恵理「はい 終わりました。」

恵理「体重も増えてないですし むくみもありませんから 大丈夫ですよ。 じゃ お湯 捨ててきましょうね。」

一風館
グアテマラ

恵理「あ~ぁ。」

奈々子「あ~ぁ…。 疲れたねえ?」

恵理「はい。」

(物音)

恵尚「あ イタ! あ~ あ~。 アッハハハ…。 ハイサイ! ただいまさん!」

恵尚「奈々子… ただいま。 チュ~。」

奈々子「何が チュ~ですか。 …恵尚さん!」

恵尚「えっ?」

恵理「おぉ?」

恵達「お母さんみたい。」

祥子「うん。」

奈々子「話があるのよ。 そこへ 座って下さい。」

恵尚「え? あ… はい。」

奈々子「ギャグは 要らない!」

恵尚「はい すみません。」

奈々子「恵尚さん これ…。」

恵理「えっ 離婚届?」

恵達「えっ?」

祥子「ウソ!」

恵尚「え… そんなぁ!」

奈々子「違うわよ。 那覇までの切符です。 あなたは 那覇に帰って『島袋製作所』に借金を返すまで 働きなさい。 それまで 帰ってこなくても よろしい。」

恵尚「ええっ? そんな…。」

奈々子「もし そうしなかったら… 離婚します。」

恵尚「げぇ…。 それは 嫌です。」

奈々子「私の貯金で 返しても いいけど それじゃ ダメだと思う。 好きな事をして 生きるのは いいの。 でも 責任はとって。 今 あなたが行かないと きっと お父さんや お母さん それに おばぁが 何とかしてしまうよ。 そんな事になったら 私… 古波蔵家の家族で いられない。 分かる?」

恵尚「…はい。」

奈々子「じゃ 今すぐ 行きなさい!」

恵尚「『今すぐ』?!」

奈々子「そうです。 今すぐ!」

恵尚「…はい。『チュ~』も ダメ?」

奈々子「ダメ!」

恵理「兄い兄い 頑張ってよ!」

恵達「社長に よろしく!」

祥子「古波蔵家にも…。」

恵尚「はい。」

恵理「すごいね 姉え姉え。 恰好よかったさ。」

祥子「うん。 私も見習おうっと。」

奈々子「はぁ…。 ちょっと 今すぐは かわいそうだったかな…。 ちょっと 一緒に 空港へ行ってくる。」

恵理「え?」

恵理「かわいい。」

古波蔵家

恵尚「やっぱり 古波蔵家には 俺がいないとねえ…。 それによ… この責任感の強い 古波蔵恵尚としては なんとしてでも この社長を 助けようじゃないかと… そう思った訳さ。 アッハハハ…。」

恵文「格好いいねえ 恵尚! これで 寂しくないさぁ!」

誠「やっぱり お兄さんは 一味 違いますねえ!」

恵尚「だろう?!」

ハナ「(せきばらい)」

恵尚「何 おばぁ?」

勝子「さっき 奈々子ちゃんから 電話があったさ。 約束を守るまでは 帰さないで下さいって…。」

恵尚「う…。」

恵文「なんで… 恵尚。 情けないねえ 嫁さんの尻にしかれて…。」

恵尚「おやじさんには 言われたくないよ!」

恵文「なんで?!」

恵尚「なんでもさあ!」

ハナ「ダメな親子だねえ。」

恵尚「話に加われ 正一!」

島袋「あ イタ! え?」

一風館
中庭

文也「へえ~…。」

恵理「なんか 夫婦って みんな 面白いね。 夫婦だけじゃなくて 人が人を 思う気持っていうかさ… たくさん あるんだなあって思った。」

文也「うん… そうだよなあ。 あ… 恵理が 言ってた 患者さん…。」

恵理「あぁ 紺野さん?」

文也「…だっけ? 旦那さんが 恵理が行くと すぐ出かけちゃうっていう…。」

恵理「うん…。」

文也「きっと その夫婦もさ 間違えでは ないんだろうな そういう夫婦なのかもね。」

恵理「…うん。 そうだよね。 そうかも しれないね。」

文也「うん…。 頑張ろうね。」

恵理「うん。 頑張ろうね。」

北栄総合病院
廊下

恵理「おはようございます!」

訪問看護科

奈々子「もしもし…。 あ… ちょっと 待って下さい! もしもし? もしもし?」

恵理「おはようございます! どうかしました?」

奈々子「うん。 あの… 紺野さんなんだけど…。」

恵理「はい。 どうしました? 急変ですか?」

奈々子「あ いや…。 そうじゃなくて…。」

恵理「え?」

奈々子「担当を替えてくれって…。」

恵理「え?」

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