水口「会社の人間に言っちゃったんだよ。 今日 岩手から GMTのセンター候補が来るって。」
アキ「センターって!」
水口「ユイちゃんだよ! ユイちゃんに決まってるでしょ!」
アキ「すいません。」
水口「ごめん 君に言っても しかたないけど。」
アキ「本人は来たがってたんですけど…。」
水口「こっちもだよ! 君に言っても しかたないけど。」
<『君に言っても しかたない』という言葉を 水口さんは この日 23回 口にしました>
水口「ついてきて。」
<おらも 23回 申し訳ねえ気持ちになりました>
水口「本社は 渋谷にあるんだけど アメ横女学園関連のスタッフは ここに 常駐してます。 これから お世話になる人たちだから ちゃんと大きな声で挨拶して。」
アキ「おはようごぜえます! 天野アキです!」
水口「河島さんは アメ横のチーフマネージャー。」
河島「どうも。 あれ? 2人じゃなかったっけ?」
水口「ええ。 ちょっと事情があって また後日。」
河島「ああ そう。 かわいい方?」
水口「いえ なまってる方です。」
河島「…期待してるよ。」
水口「こっち。」
アキ「あの… 太巻さんは?」
水口「ここには めったに 顔出さないの。 ここが 社長の部屋。」
警備員「かわいい方?」
水口「なまってる方。」
水口「名札 帰る時 必ず裏返して。」
アキ「じぇじぇ! こんなに!?」
水口「この辺は 人気だから さすがに知ってるでしょ? ファンは この8人を アメ女八賢伝(はっけんでん)って呼んでる。 …で こっから上が レギュラー。 リザーブ ビヨンド ビンテージ。 まあ OBだよね。 で ここが GMT。」
2人「おはようございます!」
水口「おはよう。」
アキ「…。」
水口「何やってんの? 挨拶しなよ 先輩なんだから。」
アキ「ああ…。 どうも お… おばんです。」
水口「2人は アメ女の新メンバーで…。」
アリサ「アメ横女学園 出席番号36番! 片思い星からの転校生 両想いになると死んじゃうの! み~なのアリサこと 高幡(たかはた)アリサ 13歳で~す! よろしくぴょん!」
アキ「13歳!?」
りな「はい はい はい はい! アメ女の『あ』は?」
2人「愛してるの『あ』。」
りな「アメ女の『め』は?」
水口「メロンの『め』。」
りな「アメ女の『じょ』は?」
水口「情緒不安定の『じょ』。」
りな「よくできました! あっ ところで 私は誰だっけ?」
水口「成田りな!」
りな「上から読んでも…。」
水口「成田りな!」
りな「下から読んでも…。」
水口「成田りな!」
りな「成田りな 出席番号37番 15歳! う~ わおっ!」
2人「失礼しま~す!」
<帰りたい。 本気で そう思いました。 東京に着いて まだ2時間ですが 年下の先輩から 洗礼を受け 既に心が折れそうなアキです>
水口「ああ 天野にも面白い自己紹介 考えてもらうからね。」
アキ「じぇじぇ!」
水口「劇場 行こっか。」
水口「去年 オープンした アメ女専用の劇場です。 平日は 7時半から 土日は2ステージ アメ女のショーを ここで やってます。 グッズ関係は 隣のアイドルカフェ太巻で 販売してます。」
アキ「すげええ…。 写真 撮ってもいいですか? ユイちゃんに送ってやっぺ!」
(シャッター音)
アキ「こんな立派な舞台 立てるって 知ったら ユイちゃん ぶったまげるべ。」
水口「立てないよ。」
アキ「え?」
水口「立てるのはアメ女の正規メンバーだけ。 当たり前じゃん そんなに甘くないよ。 みんな 最低1年は レッスン積んでんだから。」
アキ「…すいません。」
「OK! じゃあ おっていきましょう! はい 指 立てて。」