古山家
音「千鶴子さん すごかったな~。」
裕一「ただいま!」
音「お帰りなさい! はい はい はい… うん?」
木枯「どうも。」
裕一「あっ 同期の木枯君。」
音「あっ…。」
木枯「お邪魔します。」
音「どうぞ。」
裕一「上がって 上がって。」
夕食
音「やっぱり! あの時 廿日市さんと一緒に いらっしゃいましたよね? どこかでお見かけした気がしたんです。」
回想
廿日市「期待の新人。」
回想終了
木枯「へえ~ 奥さんが 古山を売り込んだんだ。」
裕一「そう。 全部 彼女のおかげ。」
木枯「ふ~ん。」
音「彼の才能を埋もれさせるわけには いかないと思って。」
裕一「まあ まだ結果は出せてないんだけどね。」
音「裕一さんなら絶対大丈夫!」
裕一「頑張る!」
音「うん。」
裕一「ありがとう。」
音「木枯さんも頑張って下さいね。」
木枯「はい。」
夕食後
木枯「本当に実在するんだな できた嫁さん。」
裕一「ねっ? 言ったでしょ。」
木枯「会えてよかったよ。 へえ~。 これ 西洋音楽?」
裕一「うん。 福島の実家にね 蓄音機あって 親父が よくレコード買ってくれた。」
木枯「へえ~。」
裕一「五線紙も買ってくれて それで作曲の勉強始めた。」
木枯「俺 西洋音楽なんか 聴いたこともなかったよ。」
裕一「えっ そうなの?」
木枯「貧乏だったしな。 音楽っていったら 母ちゃんが 鼻歌で歌ってくれてた民謡ぐらいだよ。」
裕一「田舎 どこだっけ?」
木枯「福岡。 まあ 家 捨てて 飛び出してきちゃったから もう田舎とは 言えないのかもしれないけど。」
裕一「僕も おんなじ。 家族捨てて ここに来た。」
木枯「そっか。」
裕一「頑張んないとね。」
木枯「ああ。」
裕一「うん。」
喫茶バンブー
恵「へえ~ 作曲家仲間か。」
音「裕一さんとは正反対だけど 気が合うみたい。」
保「よき友人で よきライバルってとこか。 いいもんだね。」
恵「はっ! ライバルか…。 今頃 どうしてるかしら? 幼なじみのあの子?。 同じ男を好きになっては 取ったり取られたり。」
恵「最初の旦那も あの子に取られたから 別れたのよね。」
保「えっ 最初?]
恵「でも 彼女に負けたくないって気持ちが 今の私を作ってくれたの。 ライバルがいる人生って悪くないわよね。」
音「ライバルがいる人生…。」
東京帝国音楽学校
音「何 入ってる?」
潔子「今日? 今日は 卵と…。」
和子「あっ 卵。」
潔子「入ってる?」
和子「うん 入ってる。」
潔子「おっきくない?」
和子「お握り 3つ入ってる。」
千鶴子を見つける音
音「千鶴子さん よかったら みんなで お昼食べない?」
千鶴子「結構よ、 友達ごっこは性に合わないの。」
音「友達ごっこ?」
千鶴子「ここにいる人たちは みんな ライバルでしょ?」
音「意外。 千鶴子さんみたいに ぬきんでてる人でも そんなふうに思うんだ。 オペラ実習の時の千鶴子さん 本当にすてきで羨ましかった。」
音「私にも 千鶴子さんぐらいの才能が あったらなって。」
千鶴子「才能って言葉 私は大っ嫌い。 努力もしないで 誰かを羨むだけの人って 私には理解ができない。 じゃあ。」
コロンブスレコード
裕一「よし… 出来た。」
裕一「自分で言うのも何ですけど かなりいい曲が書けたと思うんです。」
杉山「確か 先月も そう おっしゃってらっしゃいましたが。」
裕一「今回は間違いありません。 よろしくお願いします。」
杉山「確かに お預かりしました。」
裕一「あっ… 廿日市さんは?」
杉山「本日は 木枯さんの録音に立ち会っています。」
裕一「えっ?」
杉山「木枯さんの曲が レコードになるんです。」