あらすじ
糸子(夏木マリ)は直子(川崎亜沙美)のファッションショーに里香(小島藤子)を連れていく。ジャージしか着ない里香は、嫌々ついて行くが、直子に中途半端にジャージを脱ぐなと言われる。小原家で開かれたパーティーで、糸子は河瀬譲(川岡大次郎)に声をかけられる。戦時中に糸子が、金糸を隠した服を作って助けた、あの生地問屋河瀬商会の跡取りだ。譲は、京都の老舗呉服屋の息子・吉岡栄之助(茂山逸平)を糸子に紹介する。
129回ネタバレ
小原家
リビング
糸子「あ 孝ちゃん!」
孝枝「はい。」
糸子「うち 明日から 直子のショー 見に 東京 行くのな。」
孝枝「はい。」
糸子「この子も 連れて行くよって 新幹線の切符 2枚 取っといて。」
孝枝「分かりました。」
里香「え? 行かないよ 私。」
糸子「何でや?」
里恵「大嫌いだし ショーとか。」
糸子「あかん! ええから ついて来。 土産も 山ほど持っていかんならんしな。 荷物持ちかて いるんや。」
里恵「めんどくせ~。」
糸子「小原の家訓は『働かざる者 食うべからず』や。 あんたも 仕事せえへんやったら 飯 食わせへんで。 心配せんでも 優子は 絶対 来えへんさかい。」
孝枝「はれ? そうなんですか。」
糸子「うん。 あの子ら けったいでな お互いのショーは 死んでも見よらへんねや。」
孝枝「はあ~ 骨肉の争いですねえ。 ハハハ!」
糸子「まあなあ。」
孝枝「骨肉の争い。」
直子の店
<昭和60年 日本にも ええデザイナーが どんどん出てきました。 デザイナーズ・ブランド・ブームちゅうて 斎藤源太 吉村君や 小沢君 ついでに うっとこの3姉妹らの店が 街じゅうに ギュウギュウ並んで 若い子ぉらが 毎日 押し寄せてるそうです。 みんなが自由に おしゃれを楽しめる時代 ほんな中 何でか知らん この子は 頑として ジャージーしか着ません>
スタッフ「5分前です!」
「こんな感じで大丈夫?」
直子「もっと 立てて。 ラインを まっすぐ。」
「はい!」
直子「もっと てらして。」
「はい。」
直子「シャドー もっと濃く。」
「はい。」
スタッフ「間もなくです! はい 行きましょう! どうぞ! はい 行きましょう どうぞ! はい 行きましょう どうぞ!」
大輔「ショーの成功を祝って 乾杯!」
一同「乾杯!」
(拍手)
ジョニー「おめでとう! おめでとう!」
ナナコ「わあ ジョニー!」
ジョニー「当然だよ。」
直子「ありがとう。」
ジョニー「ナナコ 久々。 今日もきれいだね!」
ナナコ「ありがとう!」
ジョニー「本当に きれいだね。 今度 御飯 行こうよ。」
ナナコ「御飯?」
直子「今 その話は…。」
ジョニー「OK! 写真ね。」
糸子「やっぱし 楽しいなあ~ ショーは。 まさに だんじりや! なあ!」
修平「おばあちゃん!」
糸子「あ~ 修ちゃん! え~! 顔 見せてみ。 こらまた一段と 男前になったんちゃうけ?」
直子「里香? はあ やっぱし 里香やんか! どこのクソガキが 紛れ込んだんか思たわ。 あんた 何や? この頭。 何で ジャージーなん?」
里香「関係ないじゃん。」
直子「グレてんけ? まあな かまへんわ。 けどええか ジャージーて 決めたんやったら ジャージーや。 絶対に中途半端に脱いだら あかんで。 分かったか?」
里香「はあ?」
直子「まあ うちも セーラー服ばっかし着て あんたのお母ちゃんに 笑われたもんや。」
糸子「直子 そろそろ うちら 次 行くで。」
直子「次? どこ行くん?」
糸子「ディズニーランド。」
直子「はあ? 今から? とりあえず いっぺん ホテル帰って 休みよ。」
里香「いや ばあちゃん 私も もう眠いし。」
糸子「あかん! まだ5時や! 今から ホテルなんて帰って どないすんねん! 行くで~!」
直子「ええ? ちょっと お母ちゃん!」
小原家
<3日ほど 昼間の東京を 連れ回したら 里香は あっさり 夜 寝るようになりました>
寝室
糸子『里香 起きや! 朝やで!』
玄関前
篠山「あの うちの店に何か?」
糸子「あ… あんたの店? 店 開いてんな。 おめでとうさん!」
篠山「はあ どうも!」
糸子「お宅 何屋なん?」
篠山「金券屋です。」
糸子「きんけんや? 何 売ってんや?」
篠山「まあ 切符とか チケットとか。」
糸子「はあ~ん?」
篠山「すんません。 店 開けますんで。」
糸子「ああ 堪忍。 邪魔したな。 切符…。 ハハハ! 切符屋け?」
<よう分からん商売や>
「ほんま 21年ぶりやで。」
「ほんまっすよ。 タイガースが ですよ?」
「あ おはようす~!」
「おはようす!」
糸子「おはようさん!」
「優勝!」
糸子「そや!」
「おめでとう!」
糸子「おめでとうさん!」
<商店街は このごろ 店の入れ替えが激して ここも こないだまで お好み焼き屋やったんが 先月から 不動産屋になりました。 このごろの若い男は 何で あない金ピカなんや?>
リビング
孝枝「そら儲かってるからですわ。」
糸子「不動産屋け?」
孝枝「そらもう 今 にいちゃんらかて ごっつ稼いでるはずですわ。」
糸子「はあ~。 フフフ! そら 北村も 生きちゃあったら 今頃 甘い汁 吸えとったやろに。 あいつは ほんま 死ぬまで あと一歩が足らん 人生やったな。」
孝枝「せやけど キタムラちゅうたら もう おっきい メーカーさんですやんか!」
糸子「ほやけど あっこの服 見た事あるけ? そら 安いか知らんけど ちゃっちいで!」
孝枝「ま でも そらそんで 売れてんやさかい あんで ええんです。」
糸子「はあ~! ハハハ!」
<戦争が終わってから こっち みんながみんな 成功しました>
オハラ洋装店
糸子「時代が よかったんですわ。」
「いや けど お嬢様3人が3人とも 有名なデザイナーになられた ちゅうんは すごい事です。」
糸子「そら まあ あの子らも 頑張ったと思います。 ほんでも 日本ちゅう国が 豊かんなった おかげです。 今日かて見て下さい。 今日は りんどうの会ちゅう 着物の勉強会なんですわ。」
「ところで お嬢様の話に戻りますが…。」
糸子「まあ もうええやないですか 娘の話は。」
「は?」
糸子「正直 うち さっぱり 記憶が ないんですわ。 育児なんぞ いっつも人任せの ろくでもない 母親やったさかい。」
「はあ。」
糸子「自分の仕事の話やったら なんぼでも でけるんやけどなあ。」
糸子「孝ちゃん!」
孝枝『はい。』
糸子「この人に お料理 取ったげて。」
「いやいや あの 先生!」
孝枝「先生 高田さん 来てはります。」
糸子「あ 久しぶり どうも!」
「いや 久しぶりでございます。」
糸子「あら~! お久しぶり! ゆっくりしてってや。」
譲「いや 糸子先生!」
糸子「はれ! 河瀬商会のアホやないか。」
譲「何 言うてますの? 先生。 最近は僕 そないに アホでもないんですよ。」
糸子「あんた 遊んでばっかし いてんと 家 手伝いや。 こないだ お父ちゃん また 嘆いちゃったで。」
譲「いや ちゃんと手伝うてますって。」
糸子「ほんまかいな!」
栄之助「どうも! お初に お目にかかります。」
糸子「いや~ 京都の呉服屋さんかいな。 道理で 若いのに えらい 着物が サマんなってる思た。」
栄之助「いや うらしいわ! 糸子先生に褒めてもろたら 親父に言うときます。」
「先生 こいつも こう見えて 老舗の跡取りなんですわ。 15代目。」
栄之助「いやいや 親父に ちょっとでも 点数稼がんと 勘当されてまうんですわ。 ハハハ!」
糸子「かなんなあ! 世の中 アホぼん ばっかしやなあ!」
栄之助「先生 僕また 相談に寄せて もろても よろしいですか?」
糸子「あかん!」
栄之助「何でですのん?」
糸子「相談相談て このごろの若い男は ちょっと 甘い顔したら すぐ甘えて来よんや。」
栄之助「いや~!」
糸子「あかんで! 来なや!」
<ちゅうて しっかり くぎ 刺しといたにも かかわらず>
栄之助「こんにちは~! ごめんください!」
浩二「いらっしゃい!」
栄之助「先生 いはりますか?」
<さすが アホぼん なあんも 聞いてません>
リビング
糸子「5分やで 忙しいんやさかい。」
栄之助「そらもう 分かってます。 いやねえ 譲から先生の話は よう~聞いてたんです。 先生 あれでしょ? 戦争中 譲の ひいじいさん 助けてあげはったんでしょ? 金糸の入った生地100反 さばいて あげはったんでしょ?」
糸子「古い話やな。」
栄之助「感動しましたわ。 世の中には 立派な人も いてはるもんやな思て。」
糸子「お客が先や。 あんた はよせな 5分 終わんで。」
栄之助「あ… そら あかん! あの… ちょっと 見て頂きたい物が あるんです。」
糸子「へえ~! おもろい生地やな?」
栄之助「糸子先生! お願いします! 助けて下さい!」
糸子「何や?」
栄之助「僕 間違えて これ 100反も 仕入れてしもたんです!」
糸子「はあ?!」
<また100反かいな>