ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第135回「宣言」【第24週】

あらすじ

階段から落ちて足を骨折した糸子(夏木マリ)。1階に運び込んだ介護ベッドで生活するはめに。糸子は松葉づえなしでは動けず、情けなく思うとともに、これからを考えると落ち込む。そんな糸子に、里香(小島藤子)はさりげなく寄り添って支える。駆けつけてきた優子(新山千春)と直子(川崎亜沙美)は糸子を心配して引退を勧める。これまで手伝いを頼んでいたのは仕事好きな糸子を思ってだという。糸子は憤慨して2人を追い出す。

135ネタバレ

小原家

階段

糸子「重たい体やなあ。 あ~!」

(階段を落ちる音)

リビング

里香「おばあちゃん! おばあちゃん!」

(うめき声)

里香「おばあちゃん! おばあちゃん! どうしたの? おばあちゃん! 大丈夫? おばあちゃん?」

(うめき声)

岸和田商店街

優子「よいしょ!」

小原家

オハラ洋装店

優子「ただいま!」

孝枝「お帰りなさい!」

優子「あれ? お母ちゃんは?」

孝枝「今 直子さんと 浩ちゃん 病院に迎えに行ってますわ。」

優子「あ~ ほんま。」

孝枝「奥で お茶でも どうぞ 優子さん。」

優子「ああ すんません。」

孝枝「あ お帰り。」

優子「里香…。 ちょっと 里香?」

優子「あ 帰って来た。」

孝枝「お帰りなさい!」

優子「お母ちゃん! 大丈夫かいな?」

糸子「大した事あらへん。」

直子「何で こんな遅なったんよ 姉ちゃん。」

優子「え?」

直子「朝一番に来るんやったん ちゃうん?」

優子「いや 会社 寄ったら 遅なってしもたんや。」

直子「はあ? 会社 寄ったん?」

優子「何や。」

直子「何で寄るんよ こんな時に。」

優子「ああ?」

直子「お母ちゃん こっから 階段から落ちたんやで!」

優子「どないしても 寄らなあかん 用事があったんや。 そない言い方せんで ええやろ!」

直子「はあ ほんまの事やろ!」

優子「何や 急いで来たやんか!」

直子「急いでへんやんか!」

糸子「もう けんかしな!」

孝枝「ご苦労さん!」

優子「来てそうそう 何やの!」

孝枝「怒りな もう!」

リビング

糸子「何や これ?」

直子「あ 浩ちゃん そのままな そこ 下しちゃって。」

浩二「はい。」

直子「ゆっくりやで。」

浩二「はい。」

優子「ほんまに ゆっくり ゆっくりな。 そ そ そうそう。」

浩二「ほな 先生下ろします。」

直子「つかまって。」

浩二「ゆっくり!」

糸子「あ~! 何や このベッド? テーブル どないしてん?」

直子「とりあえず 奥 片づけた。」

糸子「2階に 布団 敷いといてくれたら ええちゅうたやろ!」

優子「せやけど お母ちゃん 2階に上がってしもたら トイレかて 1人で行かれへんやんか。 足の骨 折ってしいもてるんやさかいなあ。」

直子「朝一番に 入れてもうたんや。 介護用では これが 最新式らしいわ。」

糸子「介護用?」

直子「何かな リクライニング式になってて 背中も こう上げれるように なってんやて。」

糸子「こんなとこに こんな でかいベッド置いて。 テーブル なかったら 御飯 食べられへんやないか。」

孝枝「あの…。」

糸子「何や?」

孝枝「お向かいの にいちゃんが 先生にて これ。 えらい心配してくれてましたわ。」

糸子「ほんまけ? まあ そら 心配かけてしもて。 うん。」

糸子「うう~!」

優子「ちょっと お母ちゃん?」

孝枝「大丈夫ですか?」

直子「何してんや?」

優子「ちょっと?」

糸子「手ぇ貸し。」

直子「ちょっと どこ行くんよ?」

糸子「にいちゃん とこ。」

孝枝「ええ~!」

優子「あかん もう! やめとき!」

直子「松葉杖で歩くん 難しいんやさかい ウロウロせんでええて!」

糸子「医者に習うた。」

直子「え?」

糸子「礼 言いに行くだけや。」

優子「ちょっと!」

糸子「うちの好きにさせ! うう~!」

優子「ほな 浩ちゃん おんぶしちゃって。」

浩二「はい。」

糸子「せんでええ。」

浩二「先生!」

玄関前

篠山「ありがとうございました~!」

糸子「兄ちゃん! 心配かけたな!」

篠山「大丈夫ですか? お大事にして下さい。」

糸子「おおきになあ。 おおきに。」

一同「あ~!」

糸子「う~ん! う~う! ちゃっ ちゃっちゃ!」

<はあ… 情けない>

糸子「ふふん。 ふ~ふん!」

リビング

<年を取るちゅう事は 当たり前に でけるはずの事が でけへん その情けなさに耐える事。 しかも 今 でけてる事も これから先 どんどん でけへんようになっていく。 その怖さに 耐える事。 たった1人で 何でやろ。 この家で いろんなもんを生んで 増やして 育ててきたつもりやのに。 結局 1人になってしもた どっかで 何か間違えたんやろか。 それとも そもそも 人間が そうゆうもんなんやろか? ここで泣いたら あいつの 思うつぼじょ うちは 泣かへん。>

糸子「泣かへんで。」

糸子「何や?」

里香「ママ達の いびきが うるさくて 寝られない。」

糸子「お休み。」

里香「おばあちゃん。」

糸子「うん?」

里香「私が いるから。 いるから… ずっと。」

(泣き声)

<朝の こんな時間に テレビ 見るなんか 初めてやで>

優子「お母ちゃん。 ほな うちら 一旦 東京 戻るよって その前に ちょっと 話ええ?」

糸子「これ 見てる。」

直子「ちょ お母ちゃん。 うちらも 出んとあかんねん。 昼の再放送 見たらええやろ。」

糸子「何や?」

優子「あんな お母ちゃん。」

(小鳥の鳴き声)

優子「昨日の夜 あれから 聡子と電話で話して そのあと 直子とも よう話したんや。 せやさかい これは うちだけやのうて 3人の意見やと思て 聞いてほしい。」

糸子「何や?」

優子「お母ちゃん もうそろそろ引退して ゆっくりしたら どやろ?」

糸子「何?」

直子「うちらも お母ちゃんの やりたいようにちゅうて 今日まで思てたけど やっぱし 70越えて もう そない ガツガツ仕事するんは 体に ええ事ないで。」

糸子「はあ~! あんたら 今更 何 言うてんや! うちが 仕事 辞めたら 誰が あんたらの手伝いすんや?」

優子「手伝い?」

糸子「毎日 電話してきて 何じゃかんじゃ モノ頼んでくんの どこの誰や!」

直子「ああ。」

優子「この際やから言うけど あれは うちらが あえて やってた事や。」

糸子「何?」

優子「お母ちゃんが 仕事好きなん 知ってるよって お母ちゃんの 負担になりすぎへんような事をちょっとずつ 頼むようにしてきたんやし。」

直子「何も 自分らのためちゃう。 お母ちゃんのためや。」

優子「せやけど あんな仕事 ほんまは どないでもなんねん。 お母ちゃんは 何も心配せんでええ。 お母ちゃんさえ その気になってくれたら うちらは いつでも 東京に 迎える準備は あるんや。」

直子「正直な うちらも その方が助かる。 お母ちゃんに 岸和田に1人で いてられたかて その方が心配や。 何かあったら そのたんびに 仕事 ほっぽって 岸和田 帰ってこなあかんねん。」

優子「頼むさかい ほんまに よう 考えてみてもらえへんやろか。 お母ちゃん?」

糸子「帰れ。」

優子「え?」

糸子「帰れ! 帰れ あんたら さっさと。」

優子「何で?」

糸子「うちに 仕事 辞め! 引退して ゆっくりせえ! あんたら うち 殺す気か?」

優子「何?」

直子「殺す?」

優子「お母ちゃん うちら何も ほんな事。」

糸子「うるさい! 帰れ!」

直子「言うてないやろ!」

優子「そうや! 何やの?」

糸子「帰り 帰り! 帰り!」

直子「痛っ! 何じゃ? 東京 帰り!」

優子「はあ?」

糸子「東京 帰らんか!」

直子「もう!」

糸子「ほれ! さっさと!」

優子「心配してんのに。」

糸子「帰れ! 帰れ!」

直子「強情やな! 何やねん。」

(テレビのスイッチを入れる音)

<ほんでも 確かに 今の うちは 自分で投げた おじゃみも 自分で よう拾わん>

糸子「そんな事せんでええ。 こんなとこ 居てんでええ。 あんたは 東京 帰りや。 はよ。」

<うちは 立ち上がらな あかん>

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