あらすじ
奈津(江波杏子)が退院したと聞いて生活を心配する糸子(夏木マリ)。住所を知りたいが、教えてもらうことができない。そしてだんじり祭りの季節がめぐってくる。優子(新山千春)、直子(川崎亜沙美)、聡子(安田美沙子)ら三姉妹、糸子の孫やひ孫、遠方からの客など大勢の人が小原家に集合する。祭りが終わると、ファッションショーの準備に拍車がかかり、糸子からデザイン画を見せられたモデルたちは生き生きと目を輝かせる。
143回ネタバレ
病院
病室
「どないしました?」
糸子「ああ ここに いちゃあった 桜井奈津ちゅうんは?」
「桜井さん? ああ 退院されましたわ。」
糸子「退院?」
「はい おとつい。」
糸子「はあ~。 はあ… よかったあ。 もう 死んだかと思た!」
<せやけど>
小原家
オハラ洋装店
糸子「はあ…。 どこに いてるんやろなあ 今!」
孝枝「お独り暮らしなんですか?」
糸子「身寄りは ないよって せやろなあ…。」
孝枝「ふうん…。」
糸子「なんぼ 退院でけたちゅうたかて 弱った体の年寄り一人て… やっていけてんやろか…。」
孝枝「はあ そら 心配ですわねえ。」
篠山「老人の孤独死て このごろ よう聞きますよね。」
糸子「孤独死?」
孝枝「まこちゃん ほな事 言うたら また 先生が…。 ちょっ! 先生?!」
篠山「どこ いくつもりですか?!」
糸子「病院。」
孝枝「へ?」
糸子「奈津の住所 聞いてくる。」
孝枝「あきませんて 先生!」
篠山「『から 取材や』言うてるやないですか!」
孝枝「そうですよ!」
糸子「けど こないしてる間に 孤独死してしもたら…。」
篠山「しませんて そんな すぐ。」
浩二「ほな ほな 僕が 病院に問い合わせます。」
孝枝「せや 浩ちゃん そうしちゃり な! 浩ちゃん 言ってくれるよって。」
記者『ごめんください。』
孝枝「あ は~い! こんにちは。 来はった。『現代女性』さんです。 どうも いらっしゃいませ! いや~ ようこそ 遠い所 ありがとうございます! 暑かったでしょう。 すいませんねえ。」
(シャッター音)
<うちは 奈津の顔を 見てへんかったけど 奈津の方は うちの顔を 見てたんかもしれんねやなあ>
回想
奈津「何や。」
回想終了
カメラマン「ああ いいですね。 はい もう一枚!」
糸子「ハハハッ ハハハハハ。」
(シャッター音)
玄関前
記者「どうも ありがとうございました。」
孝枝「こちらこそ。」
糸子「気付けて。 おおきに。」
オハラ洋装店
糸子「分かったか? 奈津の住所。」
浩二「あ それが…。 すいません!『教えられへん』言われてしまいまして。」
糸子「はあ? 何?!」
浩二「はあ…。『個人情報やさかい あかん』言うて。」
糸子「んも~! 何でや?!」
浩二「すんません。」
糸子「あんた また ちっこい声で ボソボソ聞いたんやろ?!」
篠山「いや そら 声ちっさいんは 関係ないですよ。 今 個人情報ちゅうんは そない簡単に 他人に 教えられへんもんなんです。 なんぼ ドス 利かせたかて 一緒です。 ねえ。」
糸子「う~ん! うんう~ん うん!」
病院
受付
糸子「いや~ うれしいわ やっぱし。 頼んでみるもんやな。」
龍村「お安い御用ですて。 他でもない 糸子先生の頼みとくれば。」
3人「さいなら~ 院長先生!」
龍村「お大事に。」
「キャハハハハハ…。」
龍村「気ぃ付けて!」
「あの~ すんません…。」
龍村「うん?」
「桜井奈津さんの 連絡先なんですけど やっぱし お教えできません。」
龍村「え?」
糸子「何で?」
相川「当たり前です!」
糸子「え?」
相川「病院が 患者さんの個人情報を 漏らす訳にはいきますかいな!」
糸子「いや けど うちは あの子の古い友達で 様子が心配やよって 知りたいだけで…。」
相川「いかなる理由があろうと お断りします!」
糸子「何でや?! 教えてくれても ええやろ ケチ!」
相川「何とでも言うて下さい! あかんもんは あきません!」
糸子「ううう~ん…!」
龍村「怖~!」
<何や 個人情報て。 たかが奈津の住所が こむずかしいもんになりよって。 は~ 世の中 何でも えらい こむずかしなって さっぱり分からん>
<あの靴下は 何をどないしたんや?>
<この子の服は 一体 何て言うてんや? はあ~ さっぱり分からん…>
看護婦「小原さ~ん!」
糸子「は~い。 あんなあ あんた。 女の子が そない おなか冷やした あかんで。」
小原家
<ほんでも うちには まだ 祭りがあります!>
ベランダ
♬~(お囃子)
「ソーリャ ソーリャ ソーリャ ソーリャ ソーリャ!」
<世の中が どんなけ こむずかしなったかて 祭りだけは なあんも変わらん 昔のまんま。 ゴロッと 熱て>
糸子「ええなあ!」
オハラ洋装店
<けど お客さんの顔ぶれは 随分 変わりました。 近所のおっちゃんらが 減ってしもた代わりに 遠くからのお客さんが 増えて 娘らも 年くうた分 お客さんも このごろは どこぞの偉いさんばっかし らしいんやけど うちには よう覚えられんよって とにかく…>
『おかあちゃん ハハハ!』
<飲んでもろて 食べてもらう。 楽しんでもらう>
糸子「ビール 足りてますか?」
「ああ どうもどうも。 お招き頂きまして ありがとうございます。」
聡子「はい どうぞ!」
「おお 聡子ちゃん!」
聡子「あ 橋田社長! ご無沙汰してます。」
「久しぶりやなあ! いつ見ても 別嬪やなあ!」
聡子「いや~。 またあとで ゆっくり!」
「『あとで』て そんな… 久しぶりに 会うたんやから ついでえな。」
譲「先生!」
栄之助「珍しい奴 連れてきましたで!」
高山「先生!」
糸子「あれ 守やないか~?! ハハハ!」
高山「ご無沙汰してます~!」
糸子「あんた 出世したんやて? 今 どこに いてんの?」
高山「東京本社です。」
糸子「よう来たなあ。」
<譲も 栄之助も 守も すっかり 一丁前の男になりました>
座敷
糸子「今度 病院で ファッションショー やるんや。」
直子「病院のファッションショー?」
糸子「うん。」
子供達「ひいばあちゃ~ん!」
里恵「あ~ こらこら 駄目駄目。」
直子「おばあちゃん ギュッとした あかん。」
里恵「駄目よ そ~っと したげて。」
糸子「堪忍なあ。 おばあちゃん キュッとされたら もう 体 痛い痛いよってな 堪忍 堪忍。」
子供達「え~っ!」
糸子「はい 賢いな ほら。」
里恵「ほら だんじり。」
糸子「だんじり 来るでえ ほら。 見とき。 賢い 賢い。」
直子「落ちなや。」
糸子「ほんでな ちゃんと歩き方の指導もつけて 事前に練習してもらお 思てんや。」
里恵「え 患者さんなのに 大丈夫なの?」
糸子「いや 患者やろうが 何やろうが やるからには きっちりせんとな。」
直子「そら そうや。」
里恵「怖~!」
糸子「ハハハ! あんた モデルの歩き方 教えてくれる人 知らんか?」
直子「ああ そら 何人か いてるわ。 紹介しよか?」
糸子「あ~ 頼むわ な!」
玄関前
正志「まだ 東京 いてんの?」
里香「うん。 相変わらず 母の会社 手伝ってる。」
正志「大阪に転勤とか ない?」
里香「まあ… ないね。」
(笑い声)
正志「まあ… 俺も 東京転勤とか 絶対 ないけどな。」
(笑い声)
「パパ~!」
正志「おう! よしよしよし。 ほな… また 来年も来るやろ?」
里香「うん。」
正志「ほな また 来年な。」
里香「うん!」
正志「よし 行くぞ。」
『ママ~!』
里香「うん?」
「おばあちゃんが 呼んでるよ~。 お願い事があるんだって~。」
里香「お願い事?」
オハラ洋装店
(小鳥の鳴き声)
浩二「お待たせしました 先生。 ほな 行きましょう。」
糸子「ちょっと 浩ちゃん。」
浩二「はあ…。」
糸子「一応 これも入れといてや。 頼むて。 万が一ちゅう事も あるかもしれんよって。 な!」
浩二「ほな 行きましょう。」
病院
デイルーム
「消しゴム ここ 置いときますね。」
「は~い ありがとうございます。」
香川「なるべく細かく書いて下さいよ。」
「チャームポイント? え~ 何やろう?!」
「ナイスバディ―て 書いときよ。」
「え~っ そんなん よう書かんわ!」
「ええやん そんなん何でも…。」
糸子「アハハハハ! ここ 座り。 ここには フワ~ッと ドレープ 作るよって。」
「へえ…!」
糸子「ええやろ? な! ここ どないしょ? こうしよか?」