ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第52回「いつも想う」【第9週】

あらすじ

ぜいたく品として禁止されている布を問屋から買い取った糸子(尾野真千子)。布に一筋入っている金糸を黒リボンを縫いつけて隠し、逆にアクセントにすることを思いつく。完成した洋服を静子(柳生みゆ)らが着るとたちまち評判となり、客が客を呼んで大量の布は順調にさばけた。しかし、生地問屋で預かってもらっていた直子が、あまりのやんちゃぶりについに返されてきてしまい、糸子と勝(駿河太郎)は預け先を探し途方に暮れる。

52ネタバレ

生地屋

河瀬「ここに 1本だけ 金糸が 入ってますやろ?」

糸子「はあ。」

善作「お前 買うちゃれよ。」

糸子「えっ うちが?」

善作「う~ん。 大将 困ってんや。」

河瀬「正直 もう 首くくらんと あかんやわ。」

糸子「分かりました。」

河瀬「え?!」

糸子「まあ とりあえず 1反 もうて 何ぞ こさえてみます。」

小原家

オハラ洋装店

(ミシンの音)

<金糸の上から 黒リボンを縫い付けて 黒い線のデザインとして生かす。 残りの部分で 見頃とったら 無駄も出さんと 使えるはずや>

糸子「昌ちゃ~ん ちょっと来て!」

昌子「は~い。」

糸子「そこ 立って。」

昌子「何ですか? へえ~ ええ生地ですねえ これ。」

糸子「ちょっと じっとして。」

昌子「はい。」

糸子「ちょっと。」

昌子「はい。」

静子「わあ~ ええなあ!」

一同「ええなあ!」

糸子「ええなあ…。 いけるな これ。」

昌子「ものが ええさかい 着心地も よろしいわ。 軽いし あったかいし 売れますよ これは。」

糸子「まあ 売れるやろうけどなあ…。 ちょっとや そっとの売り方では さばけへんよってな。」

昌子「さばく?」

糸子「これ あと100反 あんやし。」

昌子「はあ? 100反?! どこに?」

糸子「生地問屋の蔵や。 販売禁止で 眠ってんねん。」

昌子「100反は 無理ですわ! なんぼ言うたかて!」

糸子「そやけど 売っちゃらんと 大将 首くくってしまうねんて。」

昌子「そんなん 言うてる人は くくりません! また 余計な事に 首 突っ込まんといて下さい。 それでのうても うちの店は 手いっぱい なんですさかい!」

糸子「昌ちゃんな…。」

昌子「聞いてました? 今の うちの話。」

糸子「しばらく これ着て 店出て。」

昌子「はあ?」

糸子「マネキンさんや。 よう似合うてるし。 これ見たら お客さんら 絶対 同じのん 欲しなんで。 ん?!」

昌子「はあ~?! うちがあ?」

糸子「うん!」

静子「そうやなあ! ええ考えや それ。」

昌子「はあ… マネキンさん。」

糸子「あんたらもやで。」

一同「え?!」

木岡履物店

(物売りの声)

美代「ちょっと 静ちゃん!」

静子「何?」

美代「しゃれたスカートやなあ それ! ちょっと見せて。 はあ~。」

静子「姉ちゃんが 縫うてくれてん。 何か 今 一番 流行りの生地らしいわ。」

美代「この黒の線が ええわ~。 うちも 縫うてもらおうかの。 いま お姉ちゃん いてる?」

静子「いてんで。」

美代「うん。」

(走っていく足音)

「あれ? かいらしいスカート はいてるやん。」

「ほんまや!」

静子「これのワンピースも ええで。 今 ちょうど 店の子らが 着てるよって のぞいちゃって。」

「へえ~ 見に行こよ!」

「うん なあ! ほな ちょっと。」

小原家

オハラ洋装店

美代「はあ…!」

「へえ~。」

ハル「な な ちょっと 糸子。」

糸子「ん?」

「おばあちゃんまで?!」

「ほんでまた 案外 似合うてらし。」

美代「あの生地 ごっつい流行ってんやて。」

2人「へえ~。」

河瀬「おおきになあ! いや 丸損や思ちゃったし そら 半分でも買うてもうたら どんだけ助かるか。 ほんま ほんまに おおきにやで!」

糸子「いや まだ半分残ってる。」

河瀬「え?」

糸子「あの生地は 冬物やし 年越したら 売れへんよって。」

河瀬「まあまあ 今年 売れへんかったら また来年 売っても ええんやし。」

糸子「いや 大将。 女の洋服ちゅうんは そんな簡単なもん ちゃいますねん。」

河瀬「そうけえ。 えらい難しいもん なんやなあ。」

糸子「どないかして 全部 売り切ってみせますよって。」

河瀬「えっ ほんまけ?! あ… おい 1人 来い! よっしゃ! 直ちゃん よこし。」

<ちょっと間したら 店の子らは もう 着物で働いても ええようになりました。

そのかわり お客さんらが…>

岸和田商店街

「ここが ほんまは 金糸なんや。」

節子「あれ ほんまや。」

「せやから 七・七禁令 解けたら このリボン取ってしもても ええんやて!」

「なるほどなあ!」

<あっちや こっちで…>

「あれ~!」

「珍しい 洋服 着てらし!」

美代「せやろ? 隣で作ってもうてん。 ウフフフ…。」

<ごっつい 宣伝してくれたからです>

「29円90銭?!」

「えっ そんな安うしてくれんの?!」

小原家

オハラ洋装店

糸子「あとは 縫うだけ。」

「いつごろ でける?」

糸子「う~ん ちょっと かかるやろけどなあ 正月までには 必ず 間に合わせますよって。」

「頼むな。」

<この調子やったら あと半分も ほんまに使いきれそうです>

糸子「ほれ 頼むわ。」

昌子「ちょっと 先生。 ちょっと!」

糸子「何や? え?」

昌子「ええかげんにして下さい!」

糸子「え~っ?」

昌子「無理です!」

糸子「何が?」

昌子「うっとこは 縫い子 5人しか おらんのです! 正月までに どんだけ みんなで急いだかて もう 今の分だけでも いっぱい いっぱいです! これ以上 注文 受けんといて下さい。 ええですね? あとのお客さんは うちが断ってきますよって。」

糸子「あっ ちょ ちょ ちょ ちょっ…。」

昌子「何ですか?!」

糸子「ちょ ちょ ちょ…。 なんとかする!」

昌子「はあ?」

糸子「縫い子が足らへんやったら 増やしたら ええんや。 なんとかするよって 心配しな。」

2階 仕事場

糸子「せやから 暮れまでは 下の仕事を 手伝うてもらわれへんやろか? このとおりや!」

勝「ええで。 どうせ 暮れまでは 国民服が 何着か入ってるだけやさかい。」

糸子「ほんま?」

勝「ああ。」

糸子「おおきに! 頼むわな。」

勝「ええやろ?」

2人「はい!」

<よっしゃ! こんで 職人3人 確保>

<あとは いつもの うちの お抱え助っ人団が おる!>

居間

ハル「うわ~ ようさん いてんなあ。 こら 米 足らんでえ。 どないすんねん? 千代。」

千代「いや~。 どない… どないしましょ?!」

ハル「知らん!」

千代「あっ あ…。」

オハラ洋装店

千代「糸子!」

糸子「ん?」

千代「こんで ええか?」

糸子「あ… いや もうちょっと こっち側にして。 ここら辺。」

千代「こっち側な…。」

糸子「うん。」

(直子の泣き声)

「こんにちは…。」

糸子「あ こんにちは。 堪忍なあ。」

(直子の泣き声)

(泣き声)

糸子「お母ちゃん 何か 甘いもん!」

千代「え 甘いもん? 甘いもんな。」

糸子「うん。」

千代「ほら おいで ほら おいで。」

「あの…。」

糸子「え?」

「昨日で 店の人らが みんな 里に帰ってしもたんです。」

糸子「何で?」

「戦争で きれが 売れへんように なったよって 店 ちいちょうせな あかんのやそうです。」

糸子「え~?」

「ほんで 大将と奥さんが 店 出んならんよって うちしか 子守りでけんのです。 どないしても つらかったら『明日からは 預かれませんて 言うてこい』て 大将に 言われたんやけど…。」

糸子「うん 分かった 分かった 分かった ああ 堪忍なあ。 お母ちゃん 甘いもんやて!」

千代「あ あ 甘いもんな。 ちょっと待ってや 甘いもん。 甘いもん 甘いもんな。」

糸子「甘いもんやで。」

(女の子の泣き声)

糸子「ここ 座り。 もうええで。 はいはい 堪忍やで なあ。」

(直子の泣き声)

糸子「あ~ まだ泣いてんの あんたは。 はいはいはい…。 堪忍なあ 堪忍なあ。」

糸子「どないしても お父ちゃん 預かってくれへんやろか?」

千代「無理やと思うでえ。 明日かて『優子 歌舞伎に 連れていく』言うちゃったしなあ。」

糸子「はあ 歌舞伎?! えらい優雅なこっちゃなあ!」

千代「なあ アハハ…。」

糸子「はあ~。」

「ほな 大将 お先に失礼します。」

勝「ああ。」

糸子「はあ? もう帰んけ? あんた そんな暇か?!」

「いや 暇やないですけど。」

糸子「そんな暇やったら 直子の子守りさせちゃろか ああん?!」

勝「当たんなって!」

「それだけは 勘弁して下さい。 ほな また明日!」

千代「お疲れさんでした! 糸子。」

勝「落ち着けよ。 座れ 座れ。」

糸子「ああ う~ん…。」

勝「うちの… 弟んとこ 頼もか?」

糸子「え?」

勝「馬場の山奥やさかい いっぺん預けてしもたら しばらくは 預けっぱなしに なってまうけどな。 明日 連れてって『大みそかに 迎えに来る』ちゅうて…。」

糸子「いや… そら そすがに ちょっと かわいそうや。」

勝「そやけど この暮れの忙しい中 他に預かって くれるとこなんか ないで。」

糸子「う~ん…。」

勝「なっ。」

糸子「う~ん…。」

電車

(直子の激しい泣き声)

<そいでも 背に腹は代えられへんよって うちらは お土産を山ほど持って 弟さんとこへ 向かいました>

道中

勝「大丈夫?」

糸子「うん。 こんな遠かったか? 前 来た時は もっと 近なかったか?」

勝「ほんな訳あるかい。 前 来た時は 手ぶらやったさかい 楽やったんやろ。」

糸子「前 来た頃は 結婚したばっかしで 気楽なもんやったなあ。 戦争も 始まってへんかったし 勘助も おった。 うちも 子供も いんで もっと若かったし もっと別嬪やった。 色かて もっと白かったし 足かて もっと長かった。」

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