ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第73話「1983」【第16週】

あらすじ

将来どんな道に進むべきかに悩んでいたひなた(川栄李奈)は、通い慣れた条映太秦映画村で、あるポスターをみつけます。それは「条映城のお姫様を探せ!」と謳(うた)われたミスコン大会のお知らせでした。優勝者は賞金50万円と映画出演デビューも。「これだ!」と思ったひなたは、ミスコンを受けようとるい(深津絵里)とジョー(オダギリジョー)に相談するのですが…。

73話ネタバレ

太秦映画村

ひなた「『ミス条映コンテスト』…? 見つけたかも…。」

大月家

居間

♬~(ラジオ)

ひなた「見て!」

錠一郎「『ミス条映コンテスト』?」

るい「何やの? これ。」

ひなた「条映城のお姫様を探すんやて。 優勝したら 『黍之丞』シリーズに出られんねん。 私 応募する。 ミス条映コンテストに出る。」

るい「はあ…。」

錠一郎「それは すごいな。」

るい「ジョーさん。」

錠一郎「いつや?」

ひなた「ちょうど夏休みや。」

錠一郎「あ~ それはええな。」

桃太郎「お姉ちゃん 女優さんになるん?」

ひなた「気ぃ早いわ 桃。 まあ これから目指すいうことやな。 フフフフ…。」

るい「あほらし。 夢みたいなこと言うてんと 真面目に将来のこと考えなさい。」

ひなた「私は 大真面目やで。」

るい「ひなた。」

錠一郎「まあ ええやんか。 将来のことは別にして コンテストに出てみよいう話やろ?」

ひなた「うん。」

るい「あんた もう高3やで。」

ひなた「そやから 何?」

るい「もっと ほかに やるべきことがあるでしょ。 コンテストや女優やいうて 浮かれてる時やあらへん。」

ひなた「浮かれてるんやない。 私は本気や。 この募集のポスター見た時 これやと思うた。 これが今 私がやるべきことやて!」

るい「そんな偉そうなことは 回転焼きの一つも まともに焼けるように なってから言いなさい。 お母ちゃんは ひなたのために言うてんの。」

ひなたの部屋

ひなた「お母ちゃん 何で分かってくれへんのやろ…。」

回想・ひなた『侍のように りんとして… 弱音を吐かず こうと決めたことは 命懸けで やり遂げる。』

(襖が閉まる音)

回想・るい『そういうものに 私は… なりたい。』

台所

錠一郎「50万やて。 優勝賞金。」

るい「はあ… まだ言うてんの?」

錠一郎「ひなたなりに考えたんと違うかな?」

るい「何を?」

錠一郎「家計のこととか いろいろ? 桃太郎もいてるし。」

るい「そやからいうて 極端やわ。 コンテストに出るやなんて。」

錠一郎「僕の時は応援してくれてたやん。 コンテスト出るってなった時。」

るい「あ…。 それとは… 全然意味が違うわ。」

錠一郎「僕は知ってるよ。 挑戦するのって わくわくすることやで。」

(足音)

ひなた「お母ちゃん! もういっぺん 回転焼き焼かせて。」

るい「えっ?」

ひなた「うまいこと焼けたら コンテストに出させてください。 お願いします。」

るい「はあ…。」

ひなた「生地作らんと。 ええと… 小麦粉と 水と 小麦粉と小麦粉と…。」

錠一郎「小麦粉ばっかりやないか。」

ひなた「あと何やったっけ? えっと…。」

るい「やめなさい。 材料の無駄や。」

ひなた「お母ちゃん!」

るい「回転焼き一つにも その人が出るんや。」

ひなた「そんな嫌み言わんでもええやん。」

るい「この… ちょっと はみ出す感じ…。 これが ひなたなんやろね。 やるんやったら 本気で優勝目指しなさい。」

ひなた「えっ…。」

るい「手ぇ抜いたりしたら お母ちゃん 許さへんで。」

ひなた「ハハ… ハハハッ ありがとう! お母ちゃん!」

るい「ちょっと ひなた。 台所でバタバタするんやないの。」

ひなた「ありがとう!」

るい「ジョーさ~ん。 もう… 何やの。」

広場

<ひなたは 早速 書類審査の準備を始めました>

ひなた「早うして お父ちゃん。」

(シャッター音)

錠一郎「あれ?」

ひなた「もう お父ちゃん! フィルムもったいないやんか。」

錠一郎「ああ… もう一回 もう一回 もう一回。」

ひなた「何やってんの…。」

錠一郎「はい そのまま そのまま。 はいはいはい。」

吉右衛門「写真撮影か。 どれ 私が撮って進ぜましょう。」

錠一郎「ああ ありがとうございます。 助かります。」

吉右衛門「カメラには 幼少のみぎりより親しんできたさかい。 こら また 骨とう品みたいなカメラやな。 ハッハッ。 どれ。」

ひなた「お父ちゃん 入ったらあかん!」

(シャッター音)

高校

一恵「何で おっちゃん一緒に写ってるん。」

ひなた「気にせんといて。」

小夜子「これがええんと違う?」

ひなた「う~ん…。」

一恵「こっちの方が ようない?」

ひなた「これは ないやろ!」

一恵「履歴書は書いたん?」

ひなた「うん。 あ~ あと自己紹介文も書かなあかん。 作文 苦手やのに…。」

小夜子「私 手伝ったげるえ。」

ひなた「ホンマ? ありがとう!」

吉之丞「ひなた。 何や ミス条映コンテストに応募するんやて?」

ひなた「そや。」

吉之丞「お前が優勝できるんは ミスばっかりコンテストや。」

ひなた「吉之丞! お前 もう ホンマに! 帰れ! お前! お前は… いつもホンマに お前。」

広場

<ひなたは 無事に書類審査を通過しました。 あとは 本選を待つばかりです>

(ドラムロール)

「発表します! ミス映画村 条映城のお姫様に選ばれたのは… エントリーナンバー7番 大月ひなたさんです!」

(拍手と歓声)

「おめでとうございます! 大月さん どうぞ前へお越しください。」

(拍手)

「おめでとう。」

「おめでとうございます。」

ひなた「ありがとうございます。 夢みたいです。」

ひなた「一流の女優になれるよう頑張ります。」

一子「ひなたちゃん?」

ひなた「あ…。」

野田家

茶室

一子「条映の演技審査やったら きっと着物着せられるえ。」

ひなた「はい。」

一子「へり踏まんと。 背筋。 手 遊んでる。」

一恵「頑張って ひなちゃん。」

一子「へり」

大月家

ひなたの部屋

ひなた「イテテテテテ…。 足袋って疲れるんやな…。」

回想・ひなた『侍のように 弱音を吐かず こうと決めたことは 命懸けで やり遂げる。』

野田家

茶室

一子「お作法も覚えといて損はあらへんえ。 はい。 お茶わんの縁で 茶しゃくをう打って お茶を払て。」

(茶しゃくを縁に打つ音)

一子「そない大きい音立てたらあかん!」

ひなた「はい!」

大月家

回転焼き屋・大月

るい「どうも おおきに。」

「どうも…。」

ラジオ・磯村『さて 皆さん。 いよいよ今日 条映太秦映画村におきまして ミス条映コンテストが開催されます。 『条映城のお姫様を探せ!』という うたい文句のもと この先 条映映画や テレビドラマの スターになる女の子を 発掘しようという 一大イベントです。 どんな すてきなお嬢さんが 選ばれますでしょうか。 楽しみですねえ』。

<こうして 家族や友人 いろんな人の応援を受けて ひなたは いよいよ 本選の日を迎えました>

太秦映画村

司会者「皆様 大変長らくお待たせいたしました~!」

アシスタント「ミス条映コンテスト…。」

司会者「開幕です! いや~ いよいよですねえ。」

アシスタント「はい!」

司会者「一体 誰が選ばれるんでしょうか。 まずは ここまでの審査を通過いたしました お姫様候補の皆さんを お呼びする前に 審査員の皆様 ご紹介いたしましょう。 まずは 株式会社条映 八代 将社長です。」

(拍手)

司会者「続いて 『棗 黍之丞』シリーズをはじめ 数々の条映テレビ時代劇を 演出しておられます 轟 強監督です!」

(拍手)

司会者「そして 数々のヒット作を 世に送り出してきました 毎宝テレビ プロデューサー 香川雅彦さんです!」

(拍手)

司会者「それでは いよいよ お姫様候補たちの登場です。」

2人「『条映城のお姫様を探せ!』。」

(拍手)

一恵「めちゃくちゃ緊張してへん?」

小夜子「大丈夫やろか…。」

アシスタント「それでは エントリーナンバー1番のお姫様から 自己アピールをしていただきましょう。」

(拍手)

「澤田美奈子 19歳です。 父が河原町で呉服屋を営んでおり 条映さんの衣装も 担当させていただいております。 父の仕事を横で見ながら…。」

「おなごたちを守るためなら 己の命を惜しまないと 活躍されるお侍さんたちに恋い焦がれ…。」

「趣味は華道 特技は日舞。 新選組を こよなく愛します。 清く 気高く 美しい姫を 演じることができるのは この…。」

高山「幼い頃 憧れた 女優さんたちのように 私も 皆さんに夢を与えられる 女優になりたいです。 今日は よろしくお願いします。」

(拍手)

司会者「高山さん ありがとうございました。」

アシスタント「ありがとうございました。 続いて エントリーナンバー10番のお姫様です。 どうぞ。」

(拍手)

(鼓動)

ひなた「あ… 大月ひなた 18歳です。」

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