寝室
<そして なつと赤ちゃんが退院し お七夜を迎えた その日。>
富士子「何て読むの?」
泰樹「ゆう。」
なつ「ゆう?」
泰樹「そうだ。 なつのように 優しい子になってほしい。 わしの願いは… 夢は ただ それだけじゃ。」
なつ「ゆう…。」
剛男「坂場 優か。」
富士子「なつの子だから 優子にしないで 優がいいかもね ハハ…。」
なつ「どう? イッキュウさん。」
坂場「え… うん いい名前だ。」
なつ「そうだよね? うん いい名前…。 優! 優ちゃん…。 今日から あなたは坂場 優です。 じいちゃん ありがとう。」
剛男「優のじいちゃんは 私なんだけどな…。 優ちゃん。」
富士子「ハハ…。」
なつ「優ちゃんですって… はい。」
(泣き声)
泰樹「お~ ごめん ごめん…。 優… 優… 優…!」
<翌日 泰樹さんと剛男さんは 北海道に帰っていきました。>
富士子「勤めに出たら 優ちゃんには どうやって乳をあげるの?」
なつ「粉ミルクにするしかないわ。」
富士子「粉ミルクで育てんのかい?」
なつ「うん。 私が ずっと そばにいられるわけじゃ ないから しかたないしょ。」
富士子「でも 本当に 6週間で仕事に復帰して 大丈夫なのかい?」
なつ「私は大丈夫。 そのために イッキュウさんも 協力してくれてるんだから。 いつまでも休んでたら申し訳ない。 あんたは母親なんだよ もう。」
なつ「うん。 それは分かってるから…。」
(優の泣き声)
なつ「まただ。」
坂場「また おなかがすいたのか?」
なつ「イッキュウさん 大丈夫。 仕事してて。 あ~ ぬれてる。 おしめだわ…。 はいはい… よいしょ。 はいはい…。」
富士子「私 こっちにいようか?」
なつ「母さん… そんなに心配しないで。 母さんは 十勝の家に 絶対に必要な人でしょ。 照男兄ちゃんにも砂良さんにも 2人目が生まれるんだし 夕見子にも生まれるんだよ。 母さんが そばにいなくてどうすんのさ。」
富士子「あんたを 一人にしておく方が心配だわ。」
なつ「一人じゃないってば…。」
坂場「本当に大丈夫ですよ お義母さん。」
富士子「そりゃ 私がいたら邪魔だろうけど。」
なつ「そういうことじゃないってば…。 これ以上 母さんに甘えたら 私が 母さんみたいになれないでしょ。」
富士子「えっ?」
なつ「母さん…。」
富士子「ん?」
なつ「私は 母さんみたいになりたいの。 強くて たくましく。」
富士子「美しくね…。 そりゃ なるでしょや… あんたは 私の娘だもの。」
なつ「うん。 優… よろしくね。 できたよ。」
<そうして たちまち ひとつきが過ぎました。>
玄関
富士子「何かあったら すぐ連絡してね。 したらね。 体に気を付けて。」
なつ「母さんも気を付けてね。」
富士子「バイバイ。」
なつ「バイバイ…。」
寝室
なつ「優。」