待合所
(産声)
剛男「おお…。」
咲太郎「生まれた… 生まれた!」
光子「おめでとうございます。」
泰樹「ご苦労さん…。」
分娩室
秀子「はい 生まれました。 元気な女の子です。」
<本日 私の孫が この世に誕生しました。>
病室
富士子「もう絵を描くの?」
なつ「生まれたばかりの姿も 記録しておきたいから。」
咲太郎「そんなことしなくたって カメラ持ってきたぞ。」
光子「バカね そういうことじゃないでしょ。」
なつ「ありがとう。 写真も撮ってほしいけどね。」
剛男「名前は もう決めてあるのかい?」
坂場「あっ いえ。 なつが付ければいいと思って。」
富士子「女の子だって さっき知ったんだもね。」
咲太郎「俺は一応 男でも女でも 両方 考えておいたぞ。」
光子「あなたは 出しゃばらなくていいんじゃないの。」
咲太郎「そうか?」
光子「うん。」
咲太郎「まあ… 困ったら言え。」
坂場「お義兄さんでも なつでもいいですから いい名前を付けて下さい。」
なつ「本当にいいの?」
坂場「うん。」
なつ「それじゃ…。」
咲太郎「よし 分かった。」
なつ「じいちゃん 付けて。」
咲太郎「えっ?」
泰樹「ん?」
なつ「この子に 名前を付けてほしいの…。 じいちゃんに。」
泰樹「いや わしはいいから…。」
なつ「お願い じいちゃん。 じいちゃんの夢を 少しは この子にも継がせてやってよ。」
泰樹「なつ…。」
富士子「付けるしかないしょや もう。」
剛男「なつの頼みですよ。」
泰樹「よし 分かった… そったら考えるべ。」
なつ「うん。 よかったね…。」
坂場家
リビング
<泰樹さんは 結局 東京にとどまり 7日間 考え抜きました。>