マンション前
りほ「このマンションです。」
奈々子「うん そうか ありがとう。」
祥子「ご苦労。」
奈々子「何号室?」
麻衣子「何 言ってるんですか! 上村先輩!」
3人「ん?」
麻衣子の部屋
恵里「村山さん?」
麻衣子「そんな簡単に 辞めると言って いいんですか? 天職でしょ? おばぁの言葉は どうなるんです? 死んだ和也君に 何て説明します? 今まで応援してくれた人達に 何て 言って説明するんですか?」
恵里「いや それは そうだけど。」
麻衣子「看護大学の勉強を ムダにするんですか?」
マンション前
奈々子「何で あの子 怒られてるの?」
祥子「さあ?」
麻衣子の部屋
麻衣子「バイトまでしてくれた弟に 何て謝るんですか?」
恵里「そうだよね。」
麻衣子「そうですよ!」
恵里「すみません。」
麻衣子「経済的には大丈夫? だんなさん。 外科の上村先生は まだ研修医でしょう? お給料も安いし子供までいて 和也君の将来は どうなるんです?」
恵里「はい。」
麻衣子「それに一体 先輩に看護婦以外に 何が出来るって いうんですか?」
恵里「いや 何かな?」
麻衣子「え?」
恵里「すみません。」
麻衣子「すみませんじゃないですよ 本当に。」
恵里「ん?」
麻衣子「ん?」
恵里「何で 私が怒られてるわけ?」
麻衣子「え? だって 私も そうですけど 辞めたくもないのに 辞めるとか その場の勢いで 言うからですよ。」
恵里「そっか ごめんなさい。 え?」
恵里「辞めたくないんだ?」
麻衣子「え? あ…。」
恵里「そうかぁ。」
麻衣子「『そうかぁ』って… あの。」
恵里「だったら話は早いさ 先に言ってよ それを。 辞めた後の事 考えてしまったさ もう! あ! きれいに アイロンかけてあるし。」
麻衣子「いや あの…。 もう辞めるって言ってしまって。」
恵里「何言ってる なんくるないさ。」
麻衣子「は?『なんくる』?」
恵里「私も よくやったけど 遅刻とかするさ 学校で。 先生が向こう向いてる間に すっと 自分の席に座ってしまうわけ。 それで 何もなかったかのような 顔をして 座ってるわけ。 そうすれば 大体OKよ!」
麻衣子「それは いくらなんでも。」
恵里「大丈夫 大丈夫!」