ゆがふ
恵里「大丈夫?」
祥子「友達では ないんですか? 私。」
恵里「友達さ。」
祥子「じゃ 何で 何も 相談してくれないの。」
恵里「いや…。」
祥子「古波蔵さんの事 友達と思ってる。 病院に 古波蔵さんがいて 本当に よかったと思ってる。」
恵里「それは どうも。」
祥子「今日 患者さんに 言われたんです。」
恵里「何て?」
祥子「何と言われたと思います? 笑顔で私の事を呼ぶので 私も笑顔で『何ですか』と言うと」
祥子「『お願いだから 私の担当に ならないで。 新人は嫌い』と こうですよ!」
恵里「あら。」
祥子「そんな時 古波蔵さんに話して すっきりしようと思ったし それに 古波蔵さんみたいな人が 頑張ってるんだから 私だって頑張れると思う訳ですよ。」
恵里「え? どういう意味?」
祥子「必要なの 古波蔵さんみたいな人。」
恵里「あ 祥子ちゃん。」
祥子「何ですか?」
恵里「古波蔵さんっていうのは 固いから 病院以外では『恵里』って呼んで。」
祥子「恵里?」
祥子「わかりました。 恵里!」
恵里「はい。」
祥子「ちゃんと教えて下さい。 何があって どうなってるのか 何で あの女に ひどい事を 言われなければ ならないのか ちゃんと教えて下さい。 じゃないと 絶交だからね。」
恵里「はあ? え?」
祥子「え?」
恵里「聞いてたの?」
祥子「もちろん。 だって友達でしょう?」
恵里「そう?」
祥子「そうよ。」
柴田「あの!」
恵里「はい。」
柴田「誰に 何を言われたんですか?」
祥子「何ですか? この男は!」
柴田「すみません。」
恵里「分かりました。 お話します。」
時間が経過し
祥子「それで いいの?」
恵里「いいの 本当だよ。 今は ちゃんとした看護婦に なる事が 最優先。
祥子「うそ。」
恵里「何で?」
祥子「看護婦だって 女だよ。 看護婦である前に 一人の女よ! 好きなんでしょ?」
恵里「そりゃ 文也君の事 好きだよ。 もし私が 自分の気持を言ってさ それで 気まずくなったり 文也君が困ってしまったりする顔 見たくないの。 そんなの 耐えられない。」
柴田「分かるなあ。」
恵里「ダメだからね 余計な事したら。 私 怒る。 絶交だよ。」
祥子「はい。」
一風館
マンデリン
恵里「ただいま。」
恵達「お帰り!」
恵里「あれ? なんか ご機嫌だね?」
恵達「今日さ 前に話しただろう? 姉え姉えもあった事ある 那覇の クロスロードの俺の先生。」
恵里「うん。」
恵達「あの人の弟が 東京で音楽プロデューサー やってて 有名な人なんだよ。」
恵里「へえ それで?」
恵達「バンドの皆と 会いにいったわけ。 デモテープ聴いてもらったんだ。 俺の作った曲だよ。」
恵里「それで?」
恵達「なんか 気に入ってくれて 検討してくれるって。」
恵里「ウソ! やったさ! 恵達!」
恵達「やったよ。」
恵里「いつ デビュー?」
恵達「まだ そこまでは。」
恵里「よかったねえ。 すごいね!」
恵達「姉え姉えは どうなの? 最近 忙しくて 話 出来ないけど。」
恵里「私 順調よ 天職だからね。」
恵達「そうなんだ。」
恵里「友達も出来たし 少し変わった子。 でも いい子。」
恵達「そう。 ここに 1人でいたらさ 東京来てからの事 思い出してさ。 頑張ってきたよな? 俺も 姉え姉えも。」
恵里「う~ん。 そうだよね。」
恵達「うん。 文也君とは どう? ごめん また余計な事 言ったかな。」
恵里「ううん。」
恵達「姉え姉えは 結構 いい女だと思うけど。」
恵里「ありがとう。 アパートの皆と 乾杯しよう? デビューのお祝いさ。」
恵達「だから まだ…。 する?」
恵里「は? 乾杯しよう! 私 明日 休みだし 明日は たくさん寝るよ。」
恵達「じゃ 今日は飲むか!」
恵里「飲むか!」