音楽学校
音「久志さんの心配が当たりました。」
久志「でしょう? 裕一みたいに 独学でやってきた人間は 往々にして はまりやすいケースだよね。」
音「久志さんは 悩み事とか ないんですか?」
久志「そう見える?」
音「だって… 学校内では憧れの的だし 歌も顔もいいですし 相談したら いつも的確な答えを下さいますし。」
久志「ほれた?」
音「人妻です。」
久志「裕一の最大の幸福は… 君だ。 音楽の才能は その次。」
音「そんな…。 そうだといいんですけど このままだと裕一さんが心配で。 才能を無駄にして 後悔しながら生きてほしくないんです。」
久志「応援歌を作ることで何かが変わる。 応援歌は 文字通り 人を元気づける歌だからね。」
覗いてる女生徒たちにウインクする久志
倒れる女生徒たち
女生徒「キャー! ああ… すてき…。」
音「それ 気を付けた方がいいですよ。」
久志「罪だな… 僕という存在が。」
喫茶店バンブー
恵「う~ん… どうだろう? 彼を変えられるのは 自分だけだと思うけど。」
音「私にできることは ないってことですか…。」
恵「そうねえ…。 あっ! あっ… あった あった。 はい。」
音「徳川家の遺訓?」
恵「『人の壹生は重荷を負て 遠き道をゆくが如し 急ぐべからず』。」
帰りの同中
音「『不自由を常と思えば 不足なし 心に望みおこらば 困窮したる時を思ひ出すべし 堪忍は無事 長久の基 怒りは 敵と思へ』。」
古山家
夕食
納豆をひたすらかき混ぜる裕一
朝食
裕一「う~ん… あと100回だな。」
裕一の仕事場
就寝前
音「何もしないって つらいわ 家康さん。」
裕一「出来た… 最高傑作かもしれない。」
裕一が書き上げたのは『反逆の詩』という西洋音楽でした。
早稲田応援部
田中「ん~… うお~! 曲は まだね!? あと5日ったい!」
小熊「団長! もう ほかの作曲家を手配しましょう!」
田中「こ~りゃ~! お前… それでも応援部とね!? 人ば信じられんで なにが応援ね! 俺は信じとう… あいつば 信じとう!」
小熊「はい…。」
事務局長「失礼するよ! うん? 君たち 新しい応援歌を 作っていると聞いたが 本当かね?」
田中「それが何か?」
事務局長「作曲はだれかね?」
田中「古山裕一っちゅう若者です。」
事務局長「おいおい! それは困るね~。 学校の応援歌を 勝手にやってもらっちゃあ。」
田中「詞も公募です。 問題なかでしょう。」
事務局長「西條八十先生が関わってるなら 詞は問題ないでしょう。 曲は 我々が選んだ人に作ってもらいます。」
田中「秋の早慶戦まで あと5日です! 間に合わんとです!」
事務局長「別に今季でなくてもいいでしょう。」
小熊「いや… それでは 団長が卒業になってしまいますよ!」
事務局長「だから?」
小熊「あっ いや…。」
事務局長「学校のことに個人の思いなど 挟める余地はなし。 話はつきましたね。 では私が 日本で最高の作曲家 小山田先生に頼んであげましょう。」
村田「小山田先生は1度 作っておられます!」
事務局長「だから?」
村田「その時の曲が 古くさいと あまり評判がよくなく…。」
事務局長「個人の主観など関係ない! では!」
村田「団長… どうしますか!?」
田中「フフッ… ハハハハハ…。 ハハハハ… ハハハハハ! これで俺ん腹は決まった。 古山裕一と心中ったい! 何が どげんなろうと早稲田第六応援歌は 今度ん早慶戦で歌う! よかか!?」
一同「はい!」
そのころ 裕一は…。