コロンブスレコード
♬「つつめば燃ゆる 胸に火に 身は焦れつつ」
木枯「変だろう? B面の曲だったのに…。」
裕一「まあ でも 木枯正人のデビュー曲だもん。」
木枯「まあね…。 最初に出した時は 認めてもらえなかったけど。」
録音室
木枯「大丈夫 入って。」
裕一「うん? いや… サロンで話せばいいのに。」
木枯「あ~… あそこだと いろんな人に声かけられるから。」
裕一「フフッ さすが 売れっ子だね。」
木枯「そんなことより… いろいろ聞いて 心配してたんだよ。」
裕一「あっ…。」
木枯「大丈夫?」
裕一「うん…。 も… もう1回 頑張ってみようかって 思ってる。」
木枯「そっか…。 よかった。」
裕一「うん。」
裕一「木枯君 曲 書けなくなったって経験ある?」
木枯「あ~… ギター持っちゃえば 何かしら浮かんでくるけど。」
裕一「そっか。」
木枯「曲が浮かんでこないって どんな気分なの? 教えてよ。 僕も いつか 書けなくなる時が来るかもしれない。」
裕一「僕… ずっと自分 見てた。 ただひたすらに 自分 自分 自分。 僕の頭ん中 僕でいっぱいだった。 そこに誰も… 誰も入る余地なんてなかった。」
木枯「へえ~… 俺は かわいい女の子でいっぱいだけどね。」
2人「フフフフ…。」
裕一「僕は 自分の力 示すことに固執してた。 うん… そんな 独り善がりの音楽 伝わるわけない。」
木枯「やっぱり 君は天才だよ。」
裕一「フフフ…。 天才なら とっくに気付いてるよ。」
木枯「天才だから気付かないんだ。」
裕一「ありがとう。 …といっても これから 何を どうしていいか分からないんだけどね。」
木枯「誰かを思い浮かべるんだろ? 目を閉じてみたら?」
裕一「うん…。」
裕一「うん? あっ!」
木枯「えっ?」
裕一「あっ!」
木枯「えっ?」
裕一「あっ!」
木枯「えっ?」
裕一「あ~! えっ? ああ…。」
木枯「何? 何?」
裕一「そうだよ… あっ あっ!」
廿日市「古山君 何してたの!?」
裕一「このままのやり方じゃ駄目だ!」
木枯「ああ…。」
裕一「今… 今できることを 頑張ってやってみるから! ありがとね! 本当にありがとう!」
廿日市「お~い! 古山君!」
音楽学校
潔子「息が続かなくてたおれちゃったのよ。」
音「え~?」
潔子「フフフ それでね みんな ためらっちゃって 声が出なくなっちゃったの。」
音「ふ~ん。」
千鶴子「やめたのかと思った。」
千鶴子「 2次選考会まで あと2週間。 なのに あなたは 先週 休んだ。 あなた 本気で歌手を目指してるの? それとも 私がいるから諦めてるの?」
音「もしかしたら 諦めていたのかもしれない。 今から千鶴子さんの技量を超すのは無理だって。 でも 歌は… 音楽は技量だけじゃない。」
音「心から生まれるものだってことを 昨日 彼のおかげで知りました。 ヴィオレッタ 本気で勝ち取りにいきます。 よろしくお願いします。」
音「行こっか。」
古山家
裕一「うん。」
鉄男「おう…。」
喫茶店 バンブー
裕一「大将 一緒に曲作んないか? 君も そろそろ 夢に向かって進む時期だ。」
裕一「しかも… 歌うのは久志だ!」
久志「久しぶり。 覚えてると思うけど… 佐藤久志です。」